JP2804991B2 - マンネンタケ由来ゲル状物、その製造法およびそれを含有するマンネンタケエキス - Google Patents

マンネンタケ由来ゲル状物、その製造法およびそれを含有するマンネンタケエキス

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、特定の培地でマンネンタケ菌糸体を培養す
ることによって得られる多糖体を主成分とするゲル状
物、その製法およびそのゲル状物を含むマンネンタケエ
キスに関する。
〔従来技術〕
マンネンタケ(Ganoderma lucidum)はセダナシタケ
目サルノコシカケ科に属する担子菌であり、古来中国で
は霊芝または芝草と呼ばれ、日本ではレイシ、サイワイ
タケとも呼ばれている。
マンネンタケは優れた薬理活性を有する有効成分を含
有する生薬として珍重されている。この有効成分の科学
的解明に関する種々の研究が近年盛んに行われており、
制癌作用、抗高血圧作用および抗高脂血症作用などの薬
理作用が認められている。この有効成分を医薬品として
利用したり、マンネンタケそのものを健康食品として用
いるなどの試みがなされているが、マンネンタケは天然
には稀にした収穫されないため、マンネンタケに含まれ
る有効成分の安定的な供給は困難とされている。近年、
マンネンタケの人工栽培法(特開昭48−85337号公報)
およびマンネンタケ菌糸体培養法(特開昭60−43318号
公報)の報告により、子実体、菌糸体の供給は安定して
きたが、その有効成分、例えば、制癌作用を持つとされ
るβ−1,3−グルカンを得るには、子実体、または菌糸
体を乾燥させ、それを熱水抽出することが必要とされ
た。従って、非常に手間がかかり、また、効率としても
大変悪かった。マンネンタケ培養物の利用としては培養
菌糸体をそのまま食するという方法(特公昭63−3577号
公報)が報告されているが、スープ、佃煮などの調理と
いうことは記載されているものの、詳細は乾燥した後、
粉砕し、錠剤化する等の方法であり、またマンネンタケ
エキスについての報告(特公昭63−3576号公報)はある
ものの、これは、培養終了後、得られた培養物(菌糸体
と培養液の混合物)を直接または培養物から分離した菌
子体を、溶媒で抽出するか培養物から菌糸体を分離した
残りの培養液を濃縮して得たものであって、培養液をそ
のまま利用するというものではなかった。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、マンネンタケの培養物を乾燥や粉砕または
濃縮を必要とせず、そのまま健康食品の加工に用いるこ
とができる多糖体を主成分とするゲル状物、特に制癌作
用を持つとされるβ−1,3−グルカンを含む多糖体を主
成分とするゲル状物とその製法を提供することにある。
また、健康食品の加工に用いることができ、β−1,3−
グルカンを含む新しい多糖体を主成分とするゲル状物を
含むマンネンタケエキスを提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明によれば、マルトース0.5〜10w/v%およびコー
ン・スチープ・リカー0.1〜2w/v%を必須成分とする液
体培地中で、マンネンタケ菌糸体を培養することによっ
て得られうる多糖体を主成分とするゲル状物(以下、多
糖体ゲル状物ともいう)により上記目的が達せられる。
すなわち、本発明の多糖体ゲル状物は、マルトースお
よびコーン・スチープ・リカーを必須成分とする液体培
地中で、マンネンタケ菌糸体を培養することによって、
好適に生産されうるが、以下に述べる製造法のみに限定
されて製造されるものではない。
該培地成分として用いるマルトースおよびコーン・ス
チープ・リカーは、培地成分として通常入手し得るもの
であればいずれでもよい。マルトースは、培地全量に基
づいて0.5〜10w/v%、好ましくは1〜5w/v%の割合で用
いる。コーン・スチープ・リカーは培地全量に基づいて
0.1〜2w/v%の割合で用いる。所望により、該液体培地
には無機塩や、小麦麦芽等の穀類胚芽、米ぬか、ビタミ
ン類、アミノ酸類、酵母エキス、ペプトンなどのごとき
他の栄養成分を適宜添加してもよい。また、糖源として
マルトース以外のマルトオリゴ糖やグルコース等の糖を
用いてもよい。ただし、窒素源が多くなると菌糸体の増
殖が良くなって液中の多糖体ゲル状物の生産が向上する
ことから、グルカンを生成するためには、グルコースの
みを糖源とするよりも、マルトースやマルトオリゴ糖を
多く含む方がより好ましい。
該液体培地は、常法に従って調製すればよく、通常、
120〜130℃で、15〜30分間滅菌処理した後、マンネンタ
ケ菌糸体の培養に用いられる。マンネンタケ菌子体の培
養は該液体培地に適当量の種菌糸を接種し、好気的条件
下に行なわれる。
用いる種菌糸は担子菌類に属するセダナシタケ目サル
ノコシカケ科マンネンタケのものであればいずれでもよ
く、例えば、子実体の人工栽培を行なう農家より入手で
きる。
培養は、通常、1容マイヤーフラスコに300mlの培
地を入れ、種菌糸約10〜20mgを接種して、回転式振盪培
養機(100〜200rpm)にて、25〜30℃で3〜12日間行
う。
培養終了後、得られた培養物から培養上澄液を分離す
る。この分離は、濾過、延伸分離などによって行うこと
ができるが、常法の濾過では液が粘性を持つために分離
しにくく、延伸分離するほうが好ましい。
遠心分離は、8000rpm以上、15〜30分間かけることが
必要で、それ以下で行なう液と菌糸体とは容易に分離さ
れない。
得られた該液体培地が多糖体ゲル状物を含むマンネン
タケエキスであり、通常、1〜10℃で2〜5時間、好ま
しくは5℃で3時間放置することにより、多糖体ゲル状
物を凝固させることができる。
該多糖体を主成分とするゲル状物は、温度を40〜100
℃に上昇させても、一部溶解はするが、ゲル状物は溶解
せず、残る。また、温度を上昇させても、0.45μmのフ
ィルターを濾過せず、ゲル状を呈したままである。この
多糖体ゲル状物は、例えば、エバポレーター等により乾
固させることができるが、再び水を加えても溶解するこ
とはない。また、酸、アルカリを加えても溶解しない。
また、これと同じ乾固物は、該多糖体ゲル状物にエタノ
ール等の溶媒を加えて白沈させることによっても得られ
る。これも上記と同様に、水、酸、アルカリでは溶解し
ない。この乾固物は、培養液1当たり1.5g以上得るこ
とができる。
該多糖体を各種呈色反応、高速液体クロマトグラフィ
ー、ガスクロマトグラフィー、加水分解、酵素分解等で
調べることにより、子実体および菌糸体の有効成分であ
るβ−1,3−グルカンを主成分として含有していること
が判明する。
例えば、該多糖体を呈色反応に付した際、モリッシュ
反応、フェノール硫酸反応、アンスロン反応は何れも陽
性、ヨード反応多、ミロン反応、ビュレット反応、フェ
ーリング反応は何れも陰性を示し、さらに、該多糖体の
加水分解物は、フェーリング反応は陽性、トレンス反
応、セソワーク反応、ニンヒドリン反応は何れも陰性を
示す。尚、該多糖体乾固物20mgに2Nの硫酸を5ml加え、1
05℃の乾燥器内で6時間加水分解を行った。
〔発明の効果〕
上記のようにして得られた多糖体ゲル状物は、多糖体
を高濃度に含み、ゲル状物という、この種の組成物とし
ては、従来にない全く新規な形態を有するものである。
当該ゲル状物は、食品として利用することができ、ソー
ス、ジャム、バタークリーム等に使用する増粘剤とし
て、またマーガリン等の乳化剤として使用することがで
きる。
また、該多糖体ゲル状物は、それ自身が有効とされる
マンネンタケのエキスに含まれ、このマンネンタケエキ
ス自身が容易にゲル化され、食する状態を提供すること
ができる。
さらに、本発明による製造方法によれば、多糖体の収
量が極めて高く、工業的に有利に当該多糖体を製造する
ことのできる方法である。
〔実施例〕
以下に本発明の実施例および比較例を詳説するが、本
発明の技術的思想の限定を意図するものではない。
実施例1 まず、ポテト、デキストロース寒天培地で、暗所にお
いて、25℃で14日間静置培養して、マンネンタケの種菌
糸を得た。
次に、マルトース1.13w/v%、グルコース0.04w/v%、
マルトース以外のマルトオリゴ糖1.07w/v%及びコーン
・スチープ・リカー1w/v%を滅菌水に分散し、pH5〜6
に調製した後、1容マイヤーフラスコに300mlの培地
を分注し、シリコン栓をしてアルミ箔をかぶせた後、12
0℃、20分間滅菌処理した。種菌糸約10〜20mgを接種し
回転式振盪培養機(170rpm)にて25℃暗所で7日間培養
した。
培養終了後、得られた培養物を9900rpmで30分間遠心
し、250mlの培養上澄液を分離した。培養上澄液は、粘
性をもつ多糖体ゲル状物を含み、5℃の低温室に3時間
放置すると、ゼリーの様に凝固した。また、該多糖体ゲ
ル状物は、一度エバポレーターにより乾固させると水、
酸、アルカリにも溶解しない特異なゲルであった。
該培養上澄液に50%濃度となる様エタノールを添加
し、繊維状白色沈澱を析出させ、エタノールで洗浄後60
℃、24時間減圧乾燥し、多糖体の乾固物を得た。
収量として測定した結果、培養液1当たり3.1gの多
糖体が得られた。
さらに、該多糖体を各種呈色版後、高速液体クロマト
グラフィー、ガスクロマトグラフィー、加水分解、酵素
分解等で調べた。
すなわち、呈色反応により、モリッシュ、フェノール
硫酸、アンスロン反応に対して陽性、ヨード反応、フェ
ーリング反応は陰性を示し、ミロン、ビュレットなどの
蛋白質反応は陰性を示した。
また、該多糖体の加水分解物(該多糖体乾固物20mgに
2N−硫酸5mlを加え、105℃の乾熱器内で6時間加水分解
したもの)についてはフェーリング反応陽性、トレン
ス、セソワーク、ニンヒドリンなどの諸反応に対して陰
性を示した。
さらに、該多糖体乾固物20mgに2N−硫酸5mlを加え105
℃の乾熱器内で6時間加水分解を行なった。次いで、炭
酸バリウムで中和し、遠心分離で濾過した後、高速液体
クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーで構成糖
を求めた結果、殆どがグルコースであることが認められ
た。
その微細構造を知る目的で、β−1,3−グルカナーゼ
で加水分解して得たオリゴ糖を同定することにより、β
−1,3−グルコシド結合をなすグルカン、すなわち、マ
ンネンタケの子実体および菌糸体の有効成分と同一の制
癌作用を持つとされるβ−1,3−グルカンが、本発明の
多糖体ゲル状物に主成分として含まれていることが確認
された。
実施例2 実施例1と同様の種菌子をマルトース2w/v%およびコ
ーン・スチープ・リカー1w/v%の培地組成の液体培地
で、同様に培養した結果、培養液1当たり2.8gの多糖
体が得られた。培養上澄液は5℃の低温室に3時間放置
すると、ゼリー状に凝固した。
該多糖体を実施例1と同様に調べることにより主成分
がβ−1,3−グルカンであることが明らかにされた。
比較例1 実施例1と同様の種菌子を糖源としてマルトース1.13
w/v%、グルコース0.04w/v%、マルトース以外のマルト
オリゴ糖1.07w/v%および窒素源として小麦胚芽0.7w/v
%を含む液体培地で培養した結果、多糖体は培養液1
当たり液状の多糖体が0.5gしか得られなかった。
尚、培養上澄液は、5℃の低温室に3時間放置して
も、ゼリー状に凝固しなかった。
すなわち、多糖体ゲル状物の生産には小麦胚芽を窒素
源としても生産するが、コーン・スチープ・リカーの方
がより多く生産することが明らかにされた。
比較例2 実施例1と同様の種菌子を糖源としてグルコース2w/v
%および窒素源としてコーン・スチープ・リカー1w/v%
を含む液体培地で培養した結果、培養液1当たり1.3g
の多糖体が得られた。尚、培養上澄液は5℃の低温室に
3時間放置しても、ゼリー状に凝固しなかった。
すなわち、多糖体ゲル状物はグルコースのみを糖源と
しても生産するが、マルトースやマルトオリゴ糖を多く
含む方がより多く生産することが明らかにされた。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12N 1/14 A23L 1/28

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】マルトース0.5〜10w/v%およびコーン・ス
    チープ・リカー0.1〜2w/v%を必須成分とする液体培地
    中で、マンネンタケ菌糸体を培養して得られうる多糖体
    を主成分とするゲル状物。
  2. 【請求項2】多糖体がβ−1,3−グルカンを含むことを
    特徴とする請求項(1)記載のゲル状物。
  3. 【請求項3】マルトース0.5〜10w/v%およびコーン・ス
    チープ・リカー0.1〜2w/v%を必須成分とする液体培地
    中で、マンネンタケ菌糸体を培養することを特徴とする
    請求項(1)または(2)記載のゲル状物を製造する方
    法。
  4. 【請求項4】請求項(1)または(2)記載のゲル状物
    を含むことを特徴とするマンネンタケエキス。
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