JP2804411B2 - 磁気ヘッド - Google Patents

磁気ヘッド

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気ヘッドに関し、よ
り詳細には、ビデオテープレコーダ(VTR)等の磁気
記録再生装置に搭載されるコンビネーションヘッドなど
の磁気ヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般のVTRに用いられているコンビネ
ーションヘッドは、ヘッドベース上に2個の磁気ヘッド
チップが近接して接着剤により貼り付けられている。V
HS(登録商標)規格等の保磁力(Hc)が650Oe
程度の酸化鉄テープを用いるVTRの磁気ヘッドでは、
磁気ヘッドチップの磁気コア材としてフェライトが用い
られている。図6は、従来のフェライトチップの磁気テ
ープとの摺動面形状を示す図で、図中、21はフェライ
ト基板、22はボンディングガラス、23はギャップで
ある。なお、2個のヘッドチップの構造は同じであるた
め片方のみ示す。ヘッドチップは、磁気コアであるフェ
ライト基板21と、非磁性であるボンディングガラス2
2及び非磁性であるギャップ23で構成されている。
【0003】また、S−VHS規格等の保磁力(Hc)
が950Oe程度の酸化鉄テープ又は保磁力(Hc)が
1500Oe程度のメタルテープ(ME、MP)などの
高保磁力テープを用いるVTRの磁気ヘッドでは、メタ
ルインギャップヘッド(MIGヘッド)や薄膜積層ヘッ
ドが用いられている。これらは、フェライトの飽和磁束
密度(Bs=5000G)に対して、センダスト(Bs
=11000G)、アモルファス(Bs=8000以
上)等の軟磁性合金膜を磁気コアの少くとも一部に用い
ることにより、高保磁力テープに記録が十分出来るよう
に対応した磁気ヘッドである。
【0004】図7(a)〜(d)は、MIGヘッドの代
表的な摺動面形状を示す図で、図(a)は平行型、図
(b)はΣ型、図(c)は傾斜型、図(d)はクロス型
である。図中、24は軟磁性合金膜で、その他、図6と
同じ作用をする部分は同一の符号を付してある。フェラ
イト基板21の上に軟磁性合金膜24が形成されている
構造となっている。図8(a),(b)は、薄膜積層ヘ
ッドの代表的な摺動面形状を示す図で、図(a)はラミ
ネート型、図(b)は傾斜型である。図中、25は軟磁
性積層合金膜、26は非磁性基板で、その他、図6と同
じ作用をする部分は同一の符号を付してある。非磁性基
板26の上に軟磁性積層合金膜25が形成されている構
造となっている。フェライトヘッド、MIGヘッド、薄
膜積層ヘッドの性能比較を表1に示す。表1より薄膜積
層ヘッドは、基板性能において、他のヘッドよりも優れ
ていることを示している。
【0005】
【表1】
【0006】薄膜積層ヘッドの非磁性基板25は、主
に、セラミック又は結晶化ガラスが用いられている。特
に、軟磁性合金膜24がセンダストをはじめとする鉄糸
合金の場合、熱膨張係数αは、例えば、100℃〜70
0℃の範囲において、160×10-7/℃であり、セラ
ミック材料の場合、α=145×10-7/℃が上限であ
る。従って、熱膨張係数αをできるだけ軟磁性合金膜に
合致させて成膜時の積層膜の内部応力およびヘッド製造
プロセスにおける熱応力を緩和するためにはセラミック
材料よりも熱膨張係数が高い結晶化ガラスの方が有利で
ある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、従来の
結晶化ガラスを用いた薄膜積層ヘッドの場合、ある特定
のテープにおいて、テープとヘッドの高速摺動にともな
い、ヘッドの摺動面上の結晶化ガラス基板において、摩
擦帯電によりプラスに帯電した電荷が蓄積され、ある一
定量を越えたときにテープとヘッド間の空気の絶縁破壊
現象により放電が起こり、放電にともない発生する磁界
により磁気ヘッドの巻線に誘導電流が生じ、再生画面上
にノイズ(放電ノイズ)が発生するという問題点があ
る。
【0008】本発明は、このような実情に鑑みてなされ
たもので、摩擦帯電量を少なくし、放電ノイズの発生を
なくすことにより、再生画面にノイズが発生しないよう
にした磁気ヘッドを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために、(1)複数の磁気ヘッドチップが近接し
てヘッドベース上に配設され、該磁気ヘッドチップが非
磁性基板の上に設けられ、軟磁性薄膜が磁気コアとして
形成されている磁気ヘッドにおいて、前記各磁気ヘッド
チップの非磁性基板の材料が各々組成の異なる結晶化ガ
ラス基板であること、或いは、(2)複数の磁気ヘッド
チップが近接してヘッドベース上に配設され、該磁気ヘ
ッドチップの一方が結晶化ガラス基板の上に軟磁性膜が
磁気コアとして形成されており、他方がフェライトのみ
又はフェライト基板の上に軟磁性膜が成膜され、磁気コ
アとして形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
【作用】2種類の結晶化ガラスが同時にテープと摺動す
ることにより、一方の結晶化ガラス基板Aと磁気テー
プ、他方結晶化ガラス基板Bと磁気テープの摩擦帯電状
態がそれぞれ異なるため、各材料間の電子の移動の挙動
が複雑になり、結果的に同種類の結晶化ガラス基板で構
成されたコンビネーションヘッドと比べ、異なる組成の
結晶化ガラス基板で、構成されたコンビネーションヘッ
ドの方がヘッドとテープ系全体において、電子の移動が
少なくなり、摩擦帯電量が小さくなり、テープとヘッド
間の空気の絶縁破壊が生じるほどの摩擦帯電量に至らず
(緩和作用により、表面蓄積電荷量が大きく増え続けな
い程度の帯電量となる)放電ノイズは発生しない。
【0011】
【実施例】実施例について、図面を参照して以下に説明
する。図1は、本発明による磁気ヘッドの一実施例を説
明するための構成図で、図中、1はヘッドベース、2,
3はヘッドチップ、4は磁気ヘッドである。ヘッドベー
ス1上に2個のヘッドチップ2,3が近接して接着剤に
より貼り付けられている。図2は、図1に示す磁気ヘッ
ドの摺動面を示す図で、5はボンディングガラス、6は
ギャップ、7は軟磁性合金膜、8,9は非磁性基板であ
る。非磁気性基板8,9上に軟磁性合金膜であるセンダ
スト(FeAlSi)薄膜7が蒸着されており、非磁性
の数千オングストロームの膜厚の中間膜(たとえば、S
iO2膜など)で絶縁された多層膜構造となっている。
また、ギャップ6を介した磁気コアは、ボンディングガ
ラス5により接合されている。このヘッドチップ2に用
いられている非磁性基板8の材質は結晶化ガラスAであ
り、ヘッドチップ3に用いられている非磁性基板9の材
質は結晶化ガラスBである。結晶化ガラスA,Bの組成
を表2に示す。
【0012】
【表2】
【0013】また、図1,図2に示す磁気ヘッドは、ヘ
ッドチップ2のトラック幅Twは58μm(10層積層
膜)ヘッドチップ3のトラック幅は19μm(4層積層
膜)であり、それぞれのヘッドチップのギャップ6の間
隔Xは740μmである。これらの寸法は、この実施例
と異なっていても本発明の効果に対して何ら影響を及ぼ
さない。
【0014】次に、本発明ヘッドと従来のヘッドをS−
VHS据置VTRに搭載した結果について説明を行う。
図3は、S−VHS VTRを上ドラムの配置図で、図
中、1a,1bはヘッドベース、11A〜15Bはヘッ
ドチップ、16,17はフェライトヘッドである。ヘッ
ドベース1a,1b上に貼りつけられているヘッドチッ
プ11A,12B及びヘッドチップ11B,12Aが薄
膜積層ヘッド構造である。また、A,Bの記号はアジマ
ス角度を示し、Aが+アジマス(時計方向)、Bが−ア
ジマス(反時計方向)である。さらに、ヘッドチップ1
1A,11Bは標準モード(SP)の記録再生専用ヘッ
ドであり、ヘッドチップ12A,12Bは3倍モード
(EP)の記録再生専用ヘッドである。それ以外のヘッ
ドチップ13A,13B、及びヘッドチップ14A,1
4Bは特殊再生及びEPに関しては互換再生用のフェラ
イトヘッドで、ヘッドチップ15A,15BはFMオー
ディオ用のフェライトヘッドで、ヘッドチップ16,1
7はフライングイレース用のフェライトヘッド(アジマ
ス角度0°)である。これらのヘッド材料はフェライト
であるため摩擦帯電による放電ノイズは発生しない。薄
膜積層ヘッドチップ11A,11B及び12A,12B
をそれぞれ基板材質をかえて組み合わせたときの各種S
−VHSテープでの摩擦帯電による放電ノイズレベル量
を表3に示す。
【0015】
【表3】
【0016】各組合せにおける薄膜積層ヘッドをS−V
HS VTR(VCBS500(シャープ製)を使用)
に搭載し、無記録テープを再生し、デジタルオシロスコ
ープで放電ノイズレベル量を測定した。ただし、数値は
完全な絶対値測定ではなく、時間と共に変化するため測
定回数を多くする程精度が高くなる。表3のデータは放
電ノイズが発生した時の2回の合計値を相対値比較した
ものである。
【0017】ここで、ヘッドチップ11A,11B,1
2A,12Bの基板材質とテープAの組合せ(試験No
1)の放電ノイズ量を100%とし、他の組合せは、こ
れに対する相対比較とした。表3の結果より、ヘッドチ
ップの基板材質を同種類のものよりも異種類のものにし
た方が、放電ノイズレベル量は小さくなっていることが
わかる。次に、ピンオンディスク試験機を用いてヘッド
チップの基板材質の直接的な摩擦帯電量の測定を行なっ
た。
【0018】図4は、測定装置の構成図で、図中、18
はディスク、19はピン試験片、20は磁気テープ、2
1は表面電位計である。ヘッドチップの基板材料をディ
スク18の形状にし、表面を鏡面100Åにした。ディ
スク18は1インチの円板であり、150rpmで回転
させた。ピン試験片19を一定荷重50gをかけた。ピ
ン形状は2mm角であるが、片方向に10Rの加工が施
してある。ピンの先端部に磁気テープ20を両面テープ
で貼りつけ、ディスク18と接触させた。摩擦帯電量
は、表面電位計21をディスク18より2〜3mmの上
に位置し測定を行った。なお、結晶化ガラスAと結晶化
ガラスBの複合ディスクは、図5のように90°毎に貼
りあわせたものを一体化させて作成した。結果を表3に
示す。放電ノイズレベル量と相関がとれていることが分
る。次に、各種テープを変えて検討を行なった結果を表
4に示す。本発明によるヘッドは、従来ヘッドと比較
し、すべてのテープに対し、放電ノイズレベル量が小さ
くなり、さらに、ピンオンディスク試験による摩擦帯電
量の直接測定の結果もこれを裏付けている。
【0019】
【表4】
【0020】上記の検討により、本発明ヘッドは摩擦帯
電量が少なく、結果的にVTR上での放電ノイズの発生
を抑制する効果があることが判明した。さらに、表3に
示すように、フェライトは摩擦帯電が発生しない。した
がって、結晶化ガラスとフェライトのそれぞれのヘッド
チップをヘッドベース上に配設すれば、同一の効果が得
られる。ただし、フェライトヘッドを用いた場合、従来
の磁気ヘッドの性能は、表1のように、薄膜積層ヘッド
より劣化する。そこで、MIGヘッドにするか、又はフ
ェライトヘッドのみとし、特殊再生専用に用いる等のヘ
ッドの使い方に応じた対応によりフェライトを基板とし
たものと組合せることも可能である。
【0021】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によると、以下のような効果がある。すなわち、複数の
磁気ヘッドチップの非磁性基板の材料がそれぞれ組成の
異なった結晶化ガラス基板であるので、摩擦帯電量が小
さくなり、放電ノイズが発生しなくなるため、再生画面
にノイズが発生するという問題が解消される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による磁気ヘッドの一実施例を説明する
ための構成図である。
【図2】図1における磁気ヘッドの摺動面を示す図であ
る。
【図3】本発明による磁気ヘッドを搭載したVTRの上
ドラムのヘッド配置を示す図である。
【図4】本発明に係るピンオンディスク試験による摩擦
帯電量測定装置の構成図である。
【図5】本発明に係る複合基板ディスクの説明図であ
る。
【図6】従来のフェライトヘッドの摺動面を示す図であ
る。
【図7】従来のMIGヘッドの摺動面を示す図である。
【図8】従来の薄膜積層ヘッドの摺動面を示す図であ
る。
【符号の説明】
1…ヘッドベース、2,3…ヘッドチップ、4…磁気ヘ
ッド、5…ボンディングガラス、6…ギャップ、7…軟
磁性合金膜、8,9…非磁性基板。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の磁気ヘッドチップが近接してヘッ
    ドベース上に配設され、該磁気ヘッドチップが非磁性基
    板の上に設けられ、軟磁性薄膜が磁気コアとして形成さ
    れている磁気ヘッドにおいて、前記各磁気ヘッドチップ
    の非磁性基板の材料が各々組成の異なる結晶化ガラス基
    板であることを特徴とした磁気ヘッド。
  2. 【請求項2】 複数の磁気ヘッドチップが近接してヘッ
    ドベース上に配設され、該磁気ヘッドチップの一方が結
    晶化ガラス基板の上に軟磁性膜が磁気コアとして形成さ
    れており、他方がフェライトのみ又はフェライト基板の
    上に軟磁性膜が成膜され、磁気コアとして形成されてい
    ることを特徴とした磁気ヘッド。
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