JPH0765343A - 積層型磁気ヘッド - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】記録再生時の外部磁界による誘導ノイズの影響
を減少させる積層型磁気ヘッドを提供することを目的と
する。 【構成】磁気コア１２をスライダ空気流入端側より磁気
ギャップ近傍まで一部浮上レール８とともに削除し、削
除部分で浮上レール８面上に空気流入端側に行くにした
がって徐々に幅が広くなる遷移領域を設ける。 【効果】この構造により外部磁界による誘導ノイズの取
り込み面積を減らし磁気ヘッドの記録再生時の外部磁界
による誘導ノイズの影響を減少させる。そして記録再生
時に外部磁場より受ける影響が少なくかつＣＳＳ特性の
良い積層型磁気ヘッドを安価にかつ大量に供給できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は磁気ディスク装置に用い
られる浮動型磁気ヘッドに関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、コンピュータ用外部記憶装置とし
ての磁気ディスク装置には、小型化、大容量化にともな
い面記録密度の向上が要求されており、それを実現する
ため磁気記録媒体としては高保磁力、高残留磁束密度を
持つ金属薄膜媒体が開発されている。一方、磁気ヘッド
ではこの媒体を十分に飽和記録し優れた記録再生特性を
得るために、高飽和磁束密度を有する金属磁性膜をギャ
ップ対向面に設けたメタルインギャップヘッドや、薄膜
ヘッドの開発実用化が進められている。また、薄膜作製
技術を用いて金属磁性膜を作製し、これを一対の非磁性
基板で挟み込んで磁気コアを形成する構造の積層型磁気
ヘッドの開発実用化も同時に行われている。

【０００３】以下、従来の積層型磁気ヘッドを図５を用
いて説明する。図５は従来の積層型磁気ヘッドを示す斜
視図である。図５において、１はスライダであり、スラ
イダ１には一対の互いに平行な浮上レール２，３が設け
られている。前記スライダ１はチタン酸カルシウム、α
ヘマタイト（α−Ｆｅ₂ Ｏ₃ 系）、結晶化ガラスなどの
非磁性材料よりなる基板４と、基板４と同じ材料で構成
された基板５と、基板４と基板５の間に設けられた、高
飽和磁束密度のＦｅ−Ａｌ−Ｓｉ系合金、窒化鉄系合金
あるいはアモルファスなどの金属磁性膜を積層した磁気
コア６によって構成されている。このような構成の積層
型磁気ヘッドは記録再生特性に優れており、メタルイン
ギャップ型フェライトヘッドなどと比較してウイグルノ
イズが少ないという特徴を有している。また、積層型磁
気ヘッドの磁気コアを構成する金属磁性膜はスパッタリ
ングなどの薄膜加工技術により成膜されるため、トラッ
ク幅の加工精度が高く、磁気ヘッドの狭トラック化に有
利である。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来の構成では、スライダ１の全長にわたり金属磁性膜で
形成された磁気コア６が存在する。このため、外界より
スライダ１に入射する誘導ノイズ量が、スライダ１全体
がフェライトなどの磁性材で構成されるモノリシックヘ
ッドに比べると小さいものの、非磁性材のスライダに小
体積の磁気コアチップを組み込んだコンポジットヘッド
に比べて大きいという問題があった。

【０００５】本発明は前記従来の課題を解決するもの
で、記録再生時に外部磁界による誘導ノイズの影響が少
ない積層型磁気ヘッドを提供することを目的としてい
る。

【０００６】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明は磁気コアをスライダ空気流入端側より磁気
ギャップ近傍まで一部浮上レールとともに削除し、削除
部分で浮上レール面上に空気流入端側に行くにしたがっ
て徐々に幅が広くなる遷移領域を設けた積層型磁気ヘッ
ドの構成とする。

【０００７】

【作用】このように積層型磁気ヘッドの磁気コアの一部
を切除することにより、磁気回路を構成する部分の磁気
コアの体積が減少する。そして外部磁界による誘導ノイ
ズの大きさは、磁気コアの体積に比例し、磁気コアの体
積が小さい程誘導ノイズは小さくなる。したがって磁気
コア体積の減少分、磁気ヘッドの記録再生時の外部磁界
による誘導ノイズの影響を軽減できることとなる。

【０００８】

【実施例】以下本発明の一実施例を図面を参照しながら
説明する。図１は本実施例の積層型磁気ヘッドを示す斜
視図である。図１中の７はスライダであり、金属磁性膜
を積層した磁気コア１２を非磁性基板１０，１１で挟持
したコア上に、磁気コアのある方の浮上レール８、磁気
コアのない方の浮上レール９を設けた２レールスライダ
である。本実施例では非磁性基板１０，１１にはαヘマ
タイト、磁気コア１２にはＦｅ−Ａｌ−Ｓｉ系合金が使
用されている。図１中１３は磁気コアの切削部であり、
本実施例の積層型磁気ヘッドでは、切削部１３の浮上レ
ール８の長手方向１７に対する角度（切削角度）１４が
９０°未満である。

【０００９】図２は磁気コアのスライダ浮上レール８に
平行な方向の断面図であるが、本実施例の積層型磁気ヘ
ッドでは、切削部１３により磁気コア１２のスライダ空
気流入端側の部分が切除され、従来の積層型磁気ヘッド
に比べ図２中破線で囲まれた部分だけ磁気コア１２の体
積が減少する。外部磁界による誘導ノイズは磁気回路に
ランダムに入射してくるため、本実施例の積層型磁気ヘ
ッドでは図２中の破線で囲まれた部分の体積分、磁気回
路に入射する外部磁界による誘導ノイズが減少し、磁気
ヘッドの再生波形に加わるノイズが減少する。また、磁
気回路を構成する磁気コアの形状が小さくなることによ
り、スライダ長さ方向の反磁界が大きくなって、外部磁
界による磁気ヘッドの記録再生波形歪みを小さくでき
る。さらに、浮上レール８面の切削部分をスライダ長手
方向に対し斜めにすることにより、スライダ７の離着陸
時に浮上レール切削部と磁気ディスクの接触状態を改善
し、スライダ７の離着陸時の潤滑特性（以下ＣＳＳ特性
と呼ぶ）の劣化を抑えられる。

【００１０】一実施例として、長さ１５が２．８ｍｍ、
幅１６が２．１ｍｍのスライダに、幅１００μｍ、切削
角度４５°の切削部を設け、残存磁気コアのスライダ長
手方向の長さを８００μｍとした積層型磁気ヘッドを機
械的研削加工により作製した。この場合の切削部は、ス
ライダの前面より一度だけ研削するだけで加工できるた
め、極めて容易に作製できるものである。

【００１１】このような構成によることにより、磁気コ
アの体積は約７０％減少した。本実施例の積層型磁気ヘ
ッドに関して、外部磁界による誘導ノイズとして交流磁
界が存在する場合に磁気ヘッドに誘起される誘導ノイズ
電圧を測定した。磁気ヘッドに誘起される電圧は外界に
存在する交流磁界の磁界強度に比例する。実際に周波数
４ＭＨｚの交流磁界を０．２Ａ／ｍから２Ａ／ｍまで変
化させたときの誘導ノイズ電圧を測定した結果、各磁界
強度において従来の積層型磁気ヘッドが−４５ｄＢ（平
均）であったのに対して、本実施例の積層型磁気ヘッド
では−５２ｄＢ（平均）となり、７ｄＢの誘導ノイズ電
圧の低下が見られた。またこの誘導ノイズ電圧値は、従
来のコンポジットヘッドにて得られた値と同等であっ
た。これは本実施例の積層型磁気ヘッドにおいては、切
削部により磁気回路を構成する磁気コアの体積がほぼ７
０％減少していることを対応しており、本実施例の積層
型磁気ヘッドの外部磁界による誘導ノイズ低減に対する
効果が確認された。

【００１２】次に、本実施例の積層型磁気ヘッドにおい
て、弱い外部磁界を印加しつつ信号の記録・再生を行っ
たところ、同一条件下での従来の積層型磁気ヘッドより
も記録再生時の信号波形歪みが小さく、ビットシフトも
若干改良されたという結果が得られた。

【００１３】さらに、本実施例の積層型磁気ヘッドのＣ
ＳＳ特性を調べた結果を示す。図３は同一浮上条件下で
ＣＳＳを２万回行ったときのスライダ・ディスク間の摩
擦係数μの履歴を示し、磁気ディスクにはスパッタリン
グにより作製された薄膜磁気ディスクを用いた。この薄
膜磁気ディスクの表面にはカーボンの保護膜と、さらに
その上に潤滑剤がコーティングされている。図３中、１
８は本実施例の積層型磁気ヘッド、１９は従来のテーパ
ーフラットスライダ型の積層型磁気ヘッド、２０は本実
施例のスライダにおいて切削角を９０°とした場合の結
果である。本実施例の積層型磁気ヘッドのＣＳＳ特性は
従来のテーパーフラットスライダ型の積層型磁気ヘッド
とほぼ同等であり、本実施例のスライダにおいて切削角
を９０°としたものよりも約１０％改善されている。こ
れにより、本実施例の積層型磁気ヘッドにおいて切削角
が浮上レールの長手方向に対し斜めになっていることに
よる、浮上レール切削部と磁気ディスクのＣＳＳ時の接
触状態の改善効果が確認された。

【００１４】なお、本実施例ではスライダの切削部の切
削角度を９０°未満としているが、切削角を９０°と
し、切削部分にエッジだれ加工をほどこして浮上レール
面上に遷移領域を設けたスライダでも同様の効果が得ら
れる。その詳細を図４で説明する。

【００１５】図４中の２１はスライダであり、金属磁性
膜を積層した磁気コア２６を非磁性基板２４，２５で挟
持したコア上に、磁気コアのある方の浮上レール２２、
磁気コアのない方の浮上レール２３を設けた２レールス
ライダである。図４中の２７は磁気コアの切削部であ
り、浮上レール２２の長手方向２９に対する角度（切削
角度）２８が９０°になるよう加工されている。このよ
うに切削角２８を９０°にすると、切削角を９０°未満
としたときよりも切削部２７をより磁気ギャップ付近ま
で設けることができ、磁気コア２６の体積をより減少さ
せられる。また、浮上レール２２上の切削部分にはエッ
ジだれ部３０が設けられ、ここで浮上レール幅はスライ
ダ空気流出端側に行くにしたがって徐々に広くなってい
る。この浮上レール幅の遷移領域により、ＣＳＳ特性を
従来のテーパーフラットスライダ型の積層型磁気ヘッド
と同等に保てる。

【００１６】以上のように、本実施例では、磁気ヘッド
の記録再生特性への外部磁界による誘導ノイズおよび外
部磁界の記録再生波形の影響が少なく、ＣＳＳ特性の良
い積層型磁気ヘッドを得ることができる。

【００１７】

【発明の効果】前記実施例の説明より明らかなように本
発明の積層型磁気ヘッドは、スライダ空気流入端側より
磁気ギャップ付近まで磁気コアを一部浮上レールごと削
除し、磁気回路を構成する磁気コアの体積を減少させた
ことにより、磁気ヘッドに入射する外部磁界による誘導
ノイズによる磁気ヘッドの記録再生特性の劣化を防ぐこ
とができる。したがって本発明の積層型磁気ヘッドで
は、外部磁界による誘導ノイズの少ない積層型磁気ヘッ
ドを安価に、かつ大量に供給でき、産業上の利用価値が
高いものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の積層型磁気ヘッドの斜視図

【図２】同積層型磁気ヘッドの磁気コアの断面を示す平
面図

【図３】同積層型磁気ヘッドのＣＳＳ特性図

【図４】本発明の他の実施例の積層型磁気ヘッドの斜視
図

【図５】従来の積層型磁気ヘッドの斜視図

【符号の説明】

７ スライダ ８ 浮上レール ９ 浮上レール １０ 非磁性基板 １１ 非磁性基板 １２ 磁気コア １３ 切削部 １４ 切削角度 １５ スライダの長さ １６ スライダの幅 １７ 浮上レールの長手方向

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 非磁性基板間に挟持された金属磁性膜に
   より磁気コアが構成された積層構造を有し、前記磁気コ
   アの存在するスライダ浮上レール面上に前記浮上レール
   の幅が前記スライダの空気流入端側より前記スライダの
   空気流出端側の方が広くなる遷移領域を有し、かつ前記
   遷移領域より前記スライダの前記空気流出端側のみ前記
   磁気コアを存在させた積層型磁気ヘッド。