JP2796214B2 - 銅および銅合金の変色防止処理方法 - Google Patents

銅および銅合金の変色防止処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】銅および銅合金条のインヒビター
水溶液を用いた変色防止処理方法において、インヒビタ
ーによる変色防止処理効果を損なうことなく、かつ液切
り不良による変色が発生しにくい変色防止処理方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】銅、黄銅、りん青銅等の銅合金は、比較
的耐食性の高い金属材料であるが、その表面を大気中に
さらすと酸化膜が成長して変色に至り、商品価値が低下
することがある。この変色を防ぐために、通常インヒビ
ターとしてベンゾトリアゾール系の化合物を含む水溶液
に浸漬して変色防止処理を施す。
【0003】条製品の製造工程では各種の熱処理と圧延
加工が行われるが、加工途中でも適宜一時防錆として変
色防止処理が行われる。例えば大気焼鈍ラインで最終の
湯洗槽にベンゾトリアゾール等のインヒビターを適宜添
加することにより、変色防止処理したり、圧延後、圧延
油を脱脂する工程で変色防止処理することもある。
【0004】ところがインヒビター水溶液により変色防
止処理する場合、処理液から条を引き上げた後、ロール
やエアーナイフ等により、できる限り条表面の液膜を切
った後乾燥するのが通例である。ところがこの液切りお
よび乾燥が不均一であると、これによる変色が外観の斑
として認められることがある。この変色は処理直後には
目視で認められなくても、数日経過すると明確になり不
良品になることがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は銅および銅合
金条の変色防止処理工程における処理の不均一に起因す
る変色を抑制する方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明の方法は銅および銅合金の変色防止処理におい
て、変色防止処理液を出た金属を水洗液のシャワーによ
り水洗する際に、前記水洗液を予め60〜80℃に保持
した変色防止処理液に通して40℃以上に予熱し、変色
防止処理液を出た金属をこの40℃以上に予熱された水
洗液により水洗する銅および銅合金の変色防止処理方法
である。
【0007】銅および銅合金の連続的な変色防止処理は
脱脂処理、酸洗等の後水洗されてから、即ち金属の表面
はできるだけ清浄な状態にされた後、変色防止処理液に
浸漬処理されるのが通例である。ところが水洗液中には
前工程からの持ち込まれた各種不純物が存在し、変色防
止処理液に持ち込まれる。また、金属表面は完全に活性
化することが困難であり、表面酸化物や微量の有機物に
より被覆されている。これらの金属の表面皮膜は変色防
止処理を汚染することになる。こうした変色防止処理液
の汚染物は変色防止処理後液切りが不均一であると、表
面に不均一に残留し変色の原因となる。液切りロールの
場合、金属によりロール表面の損耗が不均一で、甚だし
い場合は傷がつくことがある。液切りロール表面の凹凸
は液切り不良の原因となるが、これを完全に管理するこ
とは困難である。またエアーナイフを用いた場合も金属
材料(条)の全幅にわたり常時均一に液を切ることは困
難である。そのため公知のいかなる液切り方法を用いて
も、長時間操業を続けると液切りの均一性は低下する。
そこで変色防止処理後純水で再度、条表面を洗浄する
と、液切り不良に起因する変色はほとんどなくすことが
できる。
【0008】しかし、インヒビターによる保護皮膜は、
特に変色防止処理直後に水洗を過度に行なうと、保護性
が低下する。特に、水洗温度が高いと、インヒビター皮
膜の保護性が低下するため、水洗液の温度管理を適正値
に厳重に管理することが重要となる。銅および銅合金の
変色防止処理はインヒビターの錯化合物生成反応である
ため、水溶液の温度は高い方が効率よく、操業性も勘案
して60〜80℃で行われるのが通例である。この場
合、水洗温度としても、インヒビター水溶液と同程度の
温度が適している。水洗液の温度は変色防止処理液の温
度より低く、しかも変色防止処理液の温度より40℃以
上が適している。これより高いと、保護皮膜の保護性が
低下し、これより低いと洗浄効果が低下し、しかも、連
続的な乾燥に支障をきたすことになる。条は変色防止処
理槽で60〜80℃に予熱されているため、変色防止処
理後の水洗の温度が多少低くても、水洗時間が短時間で
あるため乾燥を行い易いが、それでも40℃以下になる
と乾燥むらによる変色が発生し易くなる。
【0009】そこで、水洗液は、変色防止処理液中に配
管を通入し熱交換させることにより、変色防止処理液と
同程度の温度にした後、変色防止後の洗浄に供すると非
常に効率的である。変色防止処理効果を安定させ、かつ
液切り不良による変色を起こさないために本発明の、液
温制御方法は極めて有効である。さらに、水洗水専用の
温度制御装置を設ける場合と比べて、操業管理面でも容
易に、かつ安定操業が可能である。
【0010】水洗方法としては、条材を変色防止処理液
から引き上げた後、液切りまでの間にスプレー方式等と
するか、1秒程度の短時間浸漬処理とするなどの方法が
考えられるが、特に制約はない。
【0011】また、同洗浄液中にインヒビターを添加す
ると変色防止皮膜の保護性を低下する事なく、条表面を
洗浄化することができる。洗浄液の不純物もなく、しか
も少量の洗浄液で液切り不良による変色問題を効果的に
解決できる。
【0012】図面を参照して、本発明を具体的に説明す
ると、図1は本発明を実施する場合のラインプロセスの
概念図である。
【0013】まず、巻き出しロール1から金属条2を巻
き出し、脱脂槽3へ送る。脱脂槽3の内部にはブラシロ
ール5とバックアップロール4とが対向しており、金属
条2はそれらの間を通過する間に例えばアルカリ洗浄液
で付着している油を除去される。
【0014】次に何組かの水洗スプレーを備えた水洗槽
に入り、洗浄液を洗い流した後、変色防止処理槽8に入
り、インヒビターを含有する変色防止液をスプレー12
から噴射される。インヒビターを含有する変色防止液
は、変色防止液循環管17によって、変色防止処理槽8
と循環槽9との間を循環される。循環槽9ではスチーム
等の熱源によって、変色防止液を所定の温度に維持して
いる。
【0015】変色防止処理をされた金属条2は水洗スプ
レー13によって水洗される。この水洗液は、水洗液送
給管11から送られ、循環槽9に内蔵された熱交換器1
0によって予熱された後、水洗スプレー13から金属条
2に対して噴射される。
【0016】水洗後、金属条2は液切りロール14によ
って液切りされた後、乾燥器15を通過した後巻き取り
ロール16に巻き取られる。
【0017】以下、実施例および比較例によって、本発
明を具体的に説明する。
【0018】
【実施例】板厚0.2mm、幅600mmのりん青銅条
(Cu−8%Sn−0.1%P)の圧延油の付着した圧
延材をアルカリ浸漬脱脂、水洗、変色防止処理、乾燥と
連続脱脂ラインにより、脱脂および変色防止処理を施し
た。各種条件で処理した後、耐変色性を試験した結果を
表1に示す。
【0019】通板試験条件は以下に示すものである。液
切り後は乾燥させてコイル状に巻き取った後、サンプリ
ングして硫化水素ガスによる変色防止効果、および液切
り不良による変色の発生の有無を評価した。
【0020】脱脂及び変色防止処理 1)脱脂液 組成 炭酸ナトリウム 20g/L りん酸第三ナトリウム 35g/L トリポリリン酸ナトリウム 5g/L メタケイ酸ナトリウム 30g/L 界面活性剤 10g/L 温度 50℃ 時間 10秒 2)水洗 スプレー水洗 時間 3秒 3)変色防止処理 組成 ベンゾトリアゾール 100ppm 温度 70℃ 時間 3秒 4)洗浄 図1に示すように、変色防止処理槽8から引き出された
後、リンガーロール(液切りロール)14によって液切
りが行なわれる以前に水洗スプレー13を設け、純水を
かけた。
【0021】洗浄時間すなわち、スプレーをかけてから
液切りロール14で液を切られるまでの時間は1秒と一
定にした。
【0022】スプレーによる液供給量は材料の600m
m幅に対し6L/minの流量で一定とした。洗浄液の
温度は70℃とした。
【0023】5)洗浄液の温度管理 洗浄用の純水は、変色防止処理液の循環槽内に配置した
熱交換器を通して加温した。また、変色防止処理への水
洗温度の影響を見る目的で、一部の条件では熱交換器を
通した洗浄用純水を更に加熱した。
【0024】6)液切り ネオプレン性の200mmφのゴムロールで条の両面か
ら、抑えて、液切りを行った。液切り不良の影響を見る
目的でゴムロール表面には、深さ0.5mm、長さ20
0mmの傷のあるものを用いた。
【0025】耐変色性評価方法 りん青銅条を短冊状試験片に切り出し、3ppmH
2S,40℃、50%RHの硫化水素雰囲気に20分間
暴露し、試験片の硫化変色の程度を目視により評価し
た。
【0026】液切り不良による変色の発生の評価 各通板条件毎にりん青銅条を通板幅(600mm)で1
mの長さ切り出し、1週間室内暴露して、液切り不良に
起因する変色の発生の有無を目視観察した。
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、銅
および銅合金条の変色防止処理工程において、インヒビ
ターによる変色防止処理効果を低下させることなく、液
切り不良による変色の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一具体例の説明図である。
【符号の説明】
1 巻き出しロール 2 条 3 脱脂槽 4 バックアップロール 5 ブラシロール 6 水洗槽 7 水洗スプレー 8 変色防止処理槽 9 循環槽 10 熱交換器 11 水洗液送給管 12 スプレー 13 水洗スプレー 14 液切りロール 15 乾燥器 16 巻き取りロール 17 変色防止液循環管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−119180(JP,A) 特開 平3−188289(JP,A) 実開 昭63−90789(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23F 11/00 C23G 1/20 C23G 3/00,3/02,5/00 B21B 45/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銅および銅合金条材の変色防止処理にお
    いて、変色防止処理液を出た金属条材を水洗液のシャワ
    ーにより水洗する際に、前記水洗液を予め60〜80℃
    に保持した変色防止処理液に通して40℃以上に予熱
    し、変色防止処理液を出た金属条材をこの40℃以上に
    予熱された水洗液により水洗することを特徴とする銅お
    よび銅合金の変色防止処理方法。
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