JP2781829B2 - 自動化装置の吸着パッドおよび物品の保持方法 - Google Patents

自動化装置の吸着パッドおよび物品の保持方法

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修一 長尾
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、産業用ロボット等の自
動化装置において、物品を保持して搬送などを行なう吸
着パッド、およびこれを用いた物品の保持方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】産業用ロボット等の自動化装置において
は、物品を処理工程から次段の処理工程へ搬送したり、
物品を同じ位置で一時保持して持ち上げたりすることを
目的として、吸着パッドが用いられている。
【0003】図3に示したように、吸着パッド11′
は、ロボットのアーム21の先端に取り付けられ、ワー
ク31(物品)にその先端の吸着面17′を当接し、真
空ポンプ等で吸着パッド11′内を負圧とし、大気との
圧力差によりワーク31を保持するものである。吸着パ
ッド11′としては一般に、シリコンゴムなどの可撓性
材料が用いられている。可撓性材料からなる吸着パッド
11′を用いると、吸着パッド11′を軽くワーク31
に押し当て、ワーク31が確実に物品を吸引、保持して
いることを確認してからワーク31を取り上げることが
でき、取り上げミスの発生を防止できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、シリコ
ンゴム製の吸着パッド11′では、ワーク31を保持、
解放したのちに、吸着パッド11′の吸着面17′の跡
がワーク31上に付着して残るという欠点があり、特に
外観上の問題が厳格なガラス製品やプラスチック製品な
どで問題が大きかった。また、シリコンゴム等の可撓性
の素材は、一般に耐熱性が悪いため、高温下にあるワー
クを吸引、保持しようとすると、ワークに融着するとい
う欠点もあった。
【0005】フェノール樹脂、金属などのように耐熱性
を有する素材を用いて吸着パッドを製造することも考え
られるが、これらの素材は可撓性を有しないため、取り
上げミスの発生することが多い。そこで、図4に示した
ようにロボットのアーム21の先端に爪23を設け、ワ
ーク31の外側を両端から挟み込むようにして保持する
ことも行なわれている。しかしこの場合は、作業性が悪
く、ワーク31を傷付けるおそれもあった。本発明は、
吸着面の跡を残すことなく確実に物品を保持できる吸着
パッドを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の自動化装置の吸
着パッドは、物品を吸着して保持する自動化装置の吸着
パッドにおいて、吸着パッドがゴムないしは合成樹脂か
らなる可撓性の素材からなり、吸着パッドの吸着面が、
吸着パッドの可撓性を失なわないように非付着性かつ耐
熱性の無機物からなる厚さ2μm以下の薄膜で被覆され
ていることを特徴とする。
【0007】また、本発明の自動化装置における物品の
保持方法は、ゴムないし合成樹脂からなる可撓性の素材
からなる吸着パッドの吸着面を、吸着パッドの可撓性を
失なわないように非付着性かつ耐熱性の無機物からなる
厚さ2μm以下の薄膜で被覆した吸着パッドを用い、こ
吸着パッドの吸着面を物品に当接し、吸着パッド内を
負圧として物品を吸引、保持することを特徴とする。
【0008】
【実施例】図1は、本発明の吸着パッドの実施例を示す
断面図である。吸着パッド11は、蛇腹構造を有し伸縮
性を示す基部13と、伏せた盃ないし椀状のパッド部1
5とからなり、パッド部15の先端が吸着面17を形成
する。なお、基部13の蛇腹構造は必ずしも必要としな
い。そして、本発明の吸着パッド11では、物品と当接
される吸着面17が、非付着性物質、好ましくは更に耐
熱性を有する物質からなる薄膜で被覆されている。吸着
パッド11は、可撓性材料から成形され、シリコンゴ
ム、ABS樹脂、ナイロン等のゴムないしは可撓性の合
成樹脂などからなる。
【0009】非付着性かつ耐熱性の物質としては、無機
物を中心として広く選択でき、例えばカーボン等の非金
属性無機物単体、白金、金等の金属、炭化タングステ
ン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サーメット等のセラミッ
クスないしは超硬材料、アルミナ、シリカ、酸化ジルコ
ニウム等の酸化物、フッ化マグネシウム等の酸化物以外
の無機化合物などの無機物が好適に用いられる。
【0010】吸着面17に形成される薄膜の厚さは2μ
m以下が好適であり、好ましくは0.1〜1.5μmで
ある。この薄膜の厚さが厚くなりすぎると、吸着パッド
11の素材がもつ可撓性が失なわれ好ましくない。吸着
面17への薄膜の形成は、真空蒸着、スパッタリングな
どにより行なうことができる。
【0011】本発明の吸着パッド11は、可撓性を有
し、しかもワーク表面に吸着面15の跡を付けず、耐熱
性も良好であり、ワーク一般の取り上げ、搬送に好適で
あるが、特に以下の用途にすぐれている。 (1) ガラス製品、プラスチック製品、金属製品のよ
うに吸着面の跡が付きやすく、また、外観品質に対する
要求が厳しいもの、特にガラス製品の取り上げ、搬送。
【0012】(2) 加熱下に成形されたガラスレンズ
を、成形直後のまだ高温下にある状態で取り上げ、搬送
する場合のように、高温下のワークを取り扱う場合。 (3) 真空蒸着、スパッタリング時のように清浄化し
たガラス部品、プラスチック部品を汚染することなく基
板ホルダに装着するロボットの吸着パッド。
【0013】以下、一例としてガラスレンズの成形時の
取り上げ搬送について説明する。なお、このレンズ成形
法の詳細については、例えば、特公平3−52417号
公報などに報告されている。 (1) 第1工程:図2(A) 予備成形した光学ガラスからなるレンズ材料33を、ロ
ボットのアーム21に取り付けられた本発明の吸着ヘッ
ド11で吸引、保持し、下型41の上に載せてセットす
る。
【0014】(2) 第2工程:図2(B) 上型43と下型41との間で加熱下にプレスしてレンズ
35を押圧成形する。 (3) 第3工程:図2(C) 100〜300℃に成形レンズ35の温度が低下した時
点で、上型43を引き上げる。
【0015】(4) 第4工程:図2(D) 本発明の吸着パッド11を、高温下にある成形済みの成
形レンズ35に軽く押し当て、吸着パッド11の内部を
負圧として成形レンズ35を吸引し、吸着パッド11で
レンズ35を引き上げる。 (5) 第5工程 成形レンズ35をパレットへ移送し、パレット内に整列
させる。
【0016】実験例 真空蒸着装置を用い、シリコンムからなる吸着パッド
の吸着面およびその近傍にカーボン(炭素)を真空蒸着
し、膜厚約0.2μmの被膜を形成した。自動搬送機能
付きガラスレンズ成形システムにおいて、搬送用ロボッ
トのアームに上記の本発明の吸着パッドを取り付け、図
2に示した各工程により、直径10mmのガラスレンズ
を成形した。一方、薄膜が形成されていない通常のシリ
コンゴム製吸着パッドを用いて同様にガラスレンズを成
形し比較例とした。
【0017】結果は以下の通りであった。 (1) 本発明の吸着パッドを用いた場合 予備成形した光学ガラスからなるレンズ材料を吸引、搬
送した際に、レンズ材料に吸着面の跡が付かず、また、
成形レンズを250℃で吸引、搬送しても融着を起こさ
ず、吸着面の跡も付かなかった。この操作を5000回
連続後も同様の結果であった。
【0018】(2) 通常の吸着パッドを用いた場合
(比較例) 予備成形したレンズ材料を吸引、搬送した際に吸着面の
跡がレンズ材料に付いた。また、250℃の成形レンズ
を吸引、搬送したところ1回目で融着した。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、ゴム等の可撓性の素材
からなる吸着パッドの吸着面に、非付着性かつ耐熱性の
無機物質からなる薄膜を形成することにより、吸着パッ
ドによる物品の吸引時に吸着パッドの跡が物品に付着す
ることがない。また、薄膜が耐熱性を有するので、融着
を防止して高温下にある物品を取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の吸着パッドの実施例を示す断面図であ
る。
【図2】本発明の吸着パッドをガラスレンズ成形システ
ムに応用した場合の各工程を示す説明図である。
【図3】従来の吸着パッドにより、ワークを吸引、保持
した状態を示す説明図である。
【図4】爪にワークを保持した状態を示す説明図であ
る。
【符号の説明】
11,11′ 吸着パッド 13 基部 15 パッド部 17,17′ 吸着面 21 アーム 23 爪 31 ワーク 33 レンズ材料 35 成形レンズ 41 下型 43 上型

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 物品を吸着して保持する自動化装置の吸
    着パッドにおいて、吸着パッドがゴムないしは合成樹脂
    からなる可撓性の素材からなり、吸着パッドの吸着面
    が、吸着パッドの可撓性を失なわないように非付着性か
    つ耐熱性の無機物からなる厚さ2μm以下の薄膜で被覆
    されていることを特徴とする自動化装置の吸着パッド。
  2. 【請求項2】 前記薄膜がカーボンからなる請求項1
    記載の吸着パッド。
  3. 【請求項3】 ゴムないし合成樹脂からなる可撓性の素
    材からなる吸着パッドの吸着面を、吸着パッドの可撓性
    を失なわないように非付着性かつ耐熱性の無機物からな
    る厚さ2μm以下の薄膜で被覆した吸着パッドを用い、
    この吸着パッドの吸着面を物品に当接し、吸着パッド内
    を負圧として物品を吸引、保持することを特徴とする物
    品の保持方法。
  4. 【請求項4】 前記薄膜がカーボンからなる請求項3に
    記載の物品の保持方法。
  5. 【請求項5】 前記物品が、ガラス製品、プラスチック
    製品または金属製品である請求項3に記載の物品の保持
    方法。
  6. 【請求項6】 前記物品が、高温下にある物品である請
    求項に記載の物品の保持方法。
  7. 【請求項7】 前記物品が、型体を用いて加熱下にプレ
    ス成形された直後のガラスレンズである請求項に記載
    の物品の保持方法。
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