JP2777355B2 - 印刷版用アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents

印刷版用アルミニウム合金板及びその製造方法

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JP2777355B2
JP2777355B2 JP8250607A JP25060796A JP2777355B2 JP 2777355 B2 JP2777355 B2 JP 2777355B2 JP 8250607 A JP8250607 A JP 8250607A JP 25060796 A JP25060796 A JP 25060796A JP 2777355 B2 JP2777355 B2 JP 2777355B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オフセット印刷等
の支持体として使用される印刷版用アルミニウム合金板
に関し、特に短時間の電解粗面化処理で、均一な電解粗
面化面を形成することができる印刷版用アルミニウム合
金板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より一般にオフセット印刷において
は、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、総称し
てアルミニウムという。)板が支持体として使用されて
いる。このアルミニウム板に、感光膜に対する密着性及
び非画像部の保水性を付与するために、その表面は粗面
化される。この粗面化処理方法として、従来から、ボー
ル研磨法及びブラシ研磨法等の機械的処理法が使用され
ているが、最近は、塩酸若しくは塩酸を主体とする電解
液又は硝酸を主体とする電解液を使用してアルミニウム
板表面を電気化学的に粗面化する電解粗面化処理法、更
に前述の機械的処理法とこの電解粗面化処理法とを組み
合わせた処理方法が主に使用されるようになってきてい
る。この理由としては、電解粗面化処理法により得られ
た粗面板の製版適正及び印刷性能が、機械的処理法によ
って得られたものより優れていること、またコイル材の
連続処理に適していること等を挙げることができる。
【0003】このような電気化学的粗面化処理に適する
アルミニウム板は、Fe、Si、Cu及びその他の微量
元素を添加することにより得ることができるが、公知で
ある。例えば、Fe:0.2乃至1.0重量%、Cu:
0.1乃至2.0重量%及びSn、In、Ga及びZn
から選択された1種以上の元素が0.05乃至0.1重
量%添加されたアルミニウム合金板が提案されている
(特開昭58−210144号公報)。このアルミニウ
ム合金板は、化学的なエッチング処理に対して溶解速度
が速いことに加え、均一なピット形成を促進させるよう
な金属間化合物が形成されているという特徴がある。
【0004】また、Fe:0.1乃至1.0重量%、S
i:0.02乃至0.15重量%及び不純物のCu:
0.003重量%以下を含有し、更に残部がAl及びC
u以外の不可避的不純物からなるアルミニウム合金板に
均一な粗面を形成すると共に、非画線部の汚れを防止し
て画線部の調子再現性及び色調(明度)を良好にするこ
とが提案されている(特公平1−47545号公報)。
【0005】更に、Fe:0.1乃至0.5重量%、S
i:0.03乃至0.30重量%、Cu:0.001乃
至0.03重量%、Ni:0.001乃至0.03重量
%、Ti:0.002乃至0.05重量%及びGa:
0.005乃至0.020重量%を含有し、更にGa及
びTiの合計含有量が0.010乃至0.050重量%
であるアルミニウム合金板が提案されている(特開平3
−177528号公報)。このアルミニウム合金板にお
いては、筋状の粗面化ムラであるストリーク(ストリー
クスともいう。以下、ストリークに統一する)及び不規
則な画質ムラを改善すると共に粗面が均一であるため、
非画線部の汚れが防止されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近時、
コスト低減のために、電解処理速度の向上が要求されて
おり、短時間の電解粗面化処理で均一なピットが形成さ
れるアルミニウム板が要求されている。即ち、感光膜側
の技術進歩により、ピットが浅い場合であっても、短時
間で均一にエッチングされ、アルミニウム板に未エッチ
ング部(アルミニウム板表面のエッチングされていない
部分)及び過剰エッチング部(アルミニウム板表面の点
状又は筋状に深くエッチングされた部分)が発生しない
ことが要求されるようになった。
【0007】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、短時間の電解粗面化処理であっても、粗面
化ピットが均一に形成される印刷版用アルミニウム合金
板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係る印刷版用ア
ルミニウム合金板は、Fe:0.20乃至0.5重量
%、Si:0.03乃至0.1重量%、Ti:0.00
5乃至0.05重量%及びNi:0.005乃至0.1
0重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物から
なるアルミニウム合金板であって、前記Feと前記Ni
との総量が0.27乃至0.60重量%であることを特
徴とする。
【0009】本発明に係る他の印刷版用アルミニウム合
金板は、Fe:0.20乃至0.5重量%、Si:0.
03乃至0.1重量%、Ti:0.005乃至0.05
重量%、Ni:0.005乃至0.10重量%及びB:
1乃至50重量ppmを含有し、残部がAl及び不可避
的不純物からなるアルミニウム合金板であって、前記F
eと前記Niとの総量が0.27乃至0.60重量%で
あることを特徴とする。
【0010】これらの印刷版用アルミニウム合金板は、
更に、Cuを0.003重量%以下含有していてもよ
く、Znを0.005乃至0.03重量%含有すること
が好ましい。
【0011】また、前記Tiは0.010重量%以上で
あることが好ましい。
【0012】本発明に係る印刷版用アルミニウム合金板
の製造方法は、上述の組成を有するアルミニウム合金鋳
塊に、500乃至600℃の温度で均質化処理を施し、
次いで開始温度を400乃至450℃として熱間圧延を
施すことを特徴とする。
【0013】この場合に、前記熱間圧延工程の後に、冷
間圧延工程及び中間焼鈍工程を設けてもよく、またレベ
ラー矯正工程を設けてもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】本願発明者等は、短時間で電解粗
面化処理を実施する場合であっても、均一な粗面化ピッ
トが形成されるアルミニウム合金板を得るべく、鋭意研
究を重ねた。その結果、以下の事実を見出した。即ち、
アルミニウム合金板表面に交流電解粗面化処理を施す
と、交流の1サイクル毎に不動態皮膜形成→皮膜破壊→
粗面化ピット形成→水素発生の反応が繰り返される。そ
して、参照電極に対する反応界面の電位を測定し、電位
ピークが変化する時間を計測することにより、上述の不
動態皮膜形成、皮膜破壊、粗面化ピット形成及び水素発
生の各反応が1サイクルに占める時間を知ることができ
る。1サイクルに占める不動態皮膜破壊時間が短い場合
に、それに応じて粗面化ピット形成時間が長くなる。即
ち、1サイクルに占める粗面化ピット形成時間の割合が
大きいので、電解粗面化処理を短時間で実施した場合で
あっても、均一な粗面化ピットが形成されることを見出
した。また、サイクル数が変化した場合であっても、不
動態皮膜破壊時間を安定させることで、粗面化ピットの
均一性が良好となることも見出した。
【0015】そこで、このような特性を有するアルミニ
ウム合金板を得るために、アルミニウムに添加する合金
元素について検討した結果、従来のFe、Si及びCu
の含有量を管理することに加え、適量のNi及びTiの
添加、更に必要に応じてB及び/又はZnを添加するこ
とが有効であることを究明した。これらの元素を添加す
ることにより、1サイクルに占める不動態皮膜破壊時間
の短縮をもたらし、粗面化ピットの形成時間を増加させ
て、短時間の電解粗面化処理であっても均一性が良好な
粗面化ピットを得ることができる。
【0016】而して、不動態皮膜破壊時間を短くするこ
とは、粗面化ピット形成時間を長くすることにつなが
り、未エッチング部及び過剰エッチング部の形成を防止
することができる。このためには、電解エッチングにお
いて各サイクル毎の粗面化ピット形成時間を積算して得
られた積算時間が、電解時間の44%以上であることが
望ましいことも究明した。
【0017】先ず、本発明における化学成分の数値限定
の理由について説明する。
【0018】Fe(鉄):0.20乃至0.5重量% Feは電解粗面化面に均一化なピットを形成する作用を
有する。Feはアルミニウム合金中で他の元素と結びつ
きAl−Fe系の共晶化合物を形成する元素である。こ
の共晶化合物は、再結晶粒を微細化する効果を有すると
共に、均一な電解粗面を形成する効果がある。Fe含有
量が0.20重量%未満では、電解粗面化ピットの反応
起点数が不足し、電解粗面化面の均一処理に必要とする
時間が長くなる。一方、Fe含有量が0.5重量%を超
える場合は、粗大化合物の形成により電解粗面化面が不
均一になる。よって、Fe含有量は0.20乃至0.5
重量%とする。
【0019】Si(珪素):0.03乃至0.1重量% Siは、Al−Fe−Si系金属間化合物を形成し、熱
間圧延における各パス間での再結晶の核として作用する
ため、熱間圧延時の再結晶粒を微細化する効果を有す
る。Si含有量が0.03重量%未満では、この効果が
少なく、印刷版支持体となった後のストリーク評価が劣
る。一方、Si含有量が0.1重量%を超える場合は、
粗大化合物の形成により電解粗面化面が不均一となる。
よって、Si含有量は0.03乃至0.1重量%とす
る。
【0020】Ni(ニッケル):0.005乃至0.1
0重量% Niは電解粗面化の均一化の作用を有する。NiはFe
と同様にアルミニウム合金中で他の元素と結合し、Al
−Ni系の共晶化合物を形成しやすい元素であると共
に、電気化学的にNiはFeより貴であるため、均一な
独立ピットを形成しやすい。このため、サイクル毎の不
動態皮膜破壊時間を短くする効果を有する。これによ
り、粗面化ピットの形成に使用される有効時間が増加
し、短時間の電解粗面化処理で均一な粗面が得られる。
【0021】Ni含有量が0.005重量%未満では、
不動態皮膜破壊時間を短縮する効果が少なく、電解不足
によるエッチングピットの不均一性を生じる。一方、N
i含有量が0.10重量%を超えると、サイクル毎の粗
面化ピット形成に使用される連続時間が長くなり過ぎ
て、深くて粗大なピットが形成されやすくなるため、電
解粗面化面が不均一となる。従って、Ni含有量は、
0.005乃至0.10重量%とする。
【0022】Ti(チタン):0.005乃至0.05
重量%、好ましくは0.01重量%以上 従来、結晶粒微細化剤としてTi−Bの母合金が添加さ
れている。これは、Ti−Bの添加により鋳塊組織が微
細化されるからである。Ti添加量が0.005重量%
未満では、この微細化効果が不足する。また、Tiには
この微細化効果に加え、上述の他の成分と同様に1サイ
クル当たりの皮膜破壊時間を少なくする効果があり、こ
の効果を得るためにはTi含有量が0.01重量%以上
であることが好ましい。Ti含有量が0.01重量%未
満では、この皮膜破壊時間を短縮する効果が不十分であ
り、粗面化ピット形成に使用される有効時間が少なくな
るため、電解不足によりエッチングピットが不均一なも
のとなりやすい。
【0023】一方、Ti含有量が0.05重量%を超え
ると粗大化合物が形成され、この粗大化合物に起因する
筋状の深いピットが形成されるため、電解粗面化面が不
均一となる。よって、Ti含有量は0.005乃至0.
05重量%であることが必要であり、好ましくは0.0
1乃至0.05重量%である。
【0024】Ni及びFe:総量で0.27乃至0.6
0重量% 上述のように、Fe及びNiは共に電解粗面化の均一化
の作用を有する。Fe及びNiはアルミニウム合金中で
他の元素と結合し、Al−Fe、Al−Ni、Al−F
e−Si及びAl−Fe−Ni−Si等の化合物を形成
する。これらの化合物は、サイクル毎の不動態皮膜破壊
時間を短縮し、粗面化ピット形成に使用される有効時間
を増加させ、電解時間が短時間であっても均一な電解粗
面化面を形成させる効果がある。
【0025】NiとFeとの合計が0.27重量%未満
では、不動態皮膜破壊時間を短縮する効果が少なく、電
解不足によるエッチングピットの不均一を生じる。一
方、NiとFeとの合計が0.60重量%を超えると、
サイクル毎の粗面化ピット形成に使用される連続時間が
長くなり過ぎて、深い粗大ピットが形成されやすくなる
ため、電解粗面化面が不均一なものとなる。よって、N
i及びFeの含有量は、総量で0.27乃至0.60重
量%とする。
【0026】B(ホウ素):1乃至50重量ppm 上述のように、Ti−Bは結晶粒微細化剤として作用す
る。この結晶粒微細化作用は、固溶Tiが減少しTi−
B粒子が増加することによって、微細化核が増加するこ
とに起因する。本願発明者等は、この効果に加えて、T
i−B粒子は電解粗面化サイクル毎の皮膜破壊時間を短
縮する効果があることを見出した。
【0027】Bが1重量ppm未満では、Ti−B粒子
数が不足するため、1サイクルにおける皮膜破壊時間が
長くなり、粗面化ピット形成に使用される有効時間が少
なくなるので、電解不足によるエッチングピットの不均
一が生じやすい。一方、50重量ppmを超えると粗大
化合物が形成され、この粗大化合物が筋状の深いピット
を形成するので、電解粗面化面が不均一となる。従っ
て、Bを添加する場合は、その含有量は1乃至50重量
ppmとする。
【0028】Cu(銅):0.003重量%以下 Cuは電解粗面化の均一化に影響する。即ち、アルミニ
ウム合金板にCuが含有されていると、100サイクル
目以降の不動態皮膜の形成量を増加させ、粗面化ピット
の形成に使用される1サイクルあたりの有効時間が少な
くなるので、電解粗面化の均一性が劣化してしまう。一
方、Cuはアルミニウム中に固溶状態で存在して、アル
ミニウムマトリクスと金属間化合物との電位を調整する
作用も有している。このため、Cuを添加することによ
り反応初期の抵抗を低下させることができる。但し、C
u含有量が0.003重量%を超えると不動態膜の形成
量が多くなり、この不動態膜が皮膜の形成を遅らせ、粗
面化ピット形成に使用される1サイクル当たりの時間が
少なくなるため、電解不足となりエッチングピットが不
均一となる。従って、本発明においては、アルミニウム
合金板にCuを含まないものとするが、Cuを含有させ
る場合は、Cu含有量は、0.003重量%以下とす
る。
【0029】Zn(亜鉛):0.005乃至0.03重
量% Znはアルミニウム中に固溶状態で存在しやすく、アル
ミニウムマトリクスを電気的に卑にし、金属間化合物と
の電位を調整する作用がある。Zn含有量が0.005
重量%未満では、この電位調整効果が得られない。一
方、Zn含有量が0.03重量%を超えると粗大ピット
を形成するために電解粗面化面が不均一となる。よっ
て、Znを含有させる場合は、その含有量は0.005
乃至0.03重量%とする。
【0030】なお、本発明において、不可避的不純物と
しては、Mn、Cr及びMg等が考えられ、夫々0.0
2重量%以下であれば、本発明の効果には悪影響を与え
ない。
【0031】次に、上述の組成を有する印刷版用アルミ
ニウム合金板の製造方法における数値限定の理由につい
て説明する。
【0032】均質化処理温度:500乃至600℃ 先ず、上述の組成を有するアルミニウム合金の鋳塊を5
00乃至600℃で均質化処理する。均質化温度が50
0℃未満では均質化が不十分であり、電解粗面化面が不
均一となる。一方、温度が600℃を超えると結晶粒径
が粗大となり、マクロ組織が粗大となって、筋状の粗面
化ムラであるストリークが発生する。よって、均質化処
理は500乃至600℃の温度範囲で実施する。
【0033】熱間圧延開始温度:400乃至450℃ その後、熱間圧延する。400℃未満の温度で熱間圧延
を開始した場合に、組織の不均一化を招き、電解粗面化
面が不均一となる。一方、450℃を超える温度で熱間
圧延を開始した場合は、熱間圧延におけるパスでの結晶
成長により、ストリークが発生する。従って、熱間圧延
開始温度は400乃至450℃とする。
【0034】なお、この熱間圧延処理は、上述の均質化
処理後、400乃至450℃の温度まで冷却した後に開
始してもよく、また上述の均質化処理終了後、一旦温度
が低下したアルミニウム合金板を、400乃至450℃
の温度まで再度加熱した後に開始してもよい。
【0035】その後、冷間圧延、中間焼鈍及び冷間圧延
を実施して、所定の板厚の印刷版用アルミニウム合金板
を製造する。この場合に、曲げぐせをとるレベラー矯正
工程を設けてもよい。
【0036】
【実施例】以下、本発明の実施例について、その特許請
求の範囲から外れる比較例と比較して説明する。先ず、
印刷版アルミニウム合金板の実施例(第1実施例)につ
いて説明する。
【0037】下記表1及び2に示す化学組成を有する各
アルミニウム合金の鋳塊(実施例No.1〜7及び比較
例No.1〜13)を、面削して厚さを470mmと
し、590℃の温度で4時間の均質化処理を施し、次い
で開始温度を430℃に設定して熱間圧延し、更に冷間
圧延、中間焼鈍及び冷間圧延を順次施して、板厚が0.
3mmのアルミニウム合金板を得た。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】得られた各アルミニウム合金板を、10%
水酸化ナトリウム水溶液により、50℃の温度で30秒
間脱脂した後、20%硝酸により25℃の温度で30秒
間中和洗浄した。洗浄を終えた各アルミニウム合金板
を、温度が25℃の1重量%硝酸電解液中に浸漬し、周
波数が60Hz、電流密度が50A/dm2の正弦波で
交流電解粗面化処理し、次いで10%水酸化ナトリウム
水溶液により、40℃の温度で10秒間脱脂し、更に2
0%硝酸により25℃の温度で10秒間中和洗浄した後
に、水洗及び乾燥させた。なお、1dm2=0.01m2
である。
【0041】一連の粗面化処理を終えた各アルミニウム
合金板の切り板を、走査電子顕微鏡(SEM)を使用し
て、350倍の倍率で表面観察し、視野の面積が0.0
2mm2になるように写真を撮影した。得られた写真か
ら、下記数式1より未エッチング率を算出した。
【0042】
【数1】未エッチング率(%)=粗面化されていない部
分の面積/全体の面積×100
【0043】この算出結果から、未エッチング率が8.
0%以下の場合を○(良好)、そして未エッチング率が
8.0%を超える場合を×(不良)として、未エッチン
グ部を評価した。
【0044】また、各切り板の粗面化表面を走査電子顕
微鏡を使用して、500倍の倍率にてその表面を観察
し、写真撮影した。得られた観察写真上に全長が100
cmの線を引き、線の下のピットの大きさ(直径)を測
定した。最小のピットと最大のピットとの大きさの相異
が、5μmよりも大きいものを均一性が×(不良)、3
乃至5μmのものを均一性が○(良好)、3μm未満の
ものを均一性が◎(優良)と評価した。
【0045】更に、電解時間効率を以下のように算出し
た。圧延して得られた各アルミニウム合金板を、10%
水酸化ナトリウム水溶液により50℃の温度で30秒間
脱脂した後に、20%硝酸で30秒間中和洗浄した。こ
の洗浄を終えたアルミニウム合金板を、温度が25℃、
電解液が1重量%硝酸、交流周波数が60Hz及び電流
密度が50A/dm2という条件で粗面化処理し、この
際の参照電極(SCE)に対するアノード電位の時間変
化を0.2マイクロ秒間隔でサイクル毎に分極測定し
た。アノード電位が最初に極大を示すまでの時間を不動
態皮膜破壊時間とし、この時間から、アノードからカソ
ードに急激に電位が移行し、アノードの電位が急激に低
下するまでの時間を粗面化ピット形成時間とする。各サ
イクルの粗面化ピット形成時間を合計して積算時間を算
出し、この積算時間の全電解時間に対する割合を電解時
間効率とした。
【0046】更にまた、100サイクル終了時及び30
0サイクル終了時に、1サイクルに占める不動態皮膜破
壊時間の平均を求めた。
【0047】得られた実施例No.1〜7及び比較例N
o.1〜13に対する不動態皮膜破壊時間、電解時間効
率並びに未エッチング部及び均一性に対する評価を下記
表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】上記表3に示すように、実施例No.1〜
7においては、不動態皮膜破壊時間が100サイクルと
300サイクルとの間で殆ど変化しておらず、また電解
時間効率も44%以上の適切な値であった。このため、
未エッチング部が極めて少なく、各切り板表面の隅々ま
でピットが形成された。また、実施例No.1〜7の均
一性の評価はいずれも良好で、ピットの大きさのバラツ
キが少なかった。
【0050】一方、電解効率が44%未満であった比較
例No.1、3、5、6、8及び10では、未エッチン
グ部が切り板表面に多く存在した。また、比較例No.
2、4、7、9、11、12及び13では、ピットの大
きさのバラツキが大きかった。
【0051】次に、本発明におけるアルミニウム合金板
の製造方法の実施例について説明する。上記表1及び2
の実施例と同様の化学組成を有するアルミニウム合金の
鋳塊を、面削して厚さを470mmとし、次いで下記表
4に示す条件で、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、中
間焼鈍及び冷間圧延して、板厚が0.3mmのアルミニ
ウム合金板(実施例No.8〜13、比較例No.14
〜17)を得た。
【0052】得られたアルミニウム合金板に、上述の第
1実施例と同一条件で、交流電解粗面化処理を施した。
得られた切り板の粗面化表面を走査電子顕微鏡(SE
M)を使用して、350倍の倍率で観察し、視野の面積
が0.02mm2となるように写真を撮影した。この写
真から、上記数式1より未エッチング率を求めた。得ら
れた、未エッチング率が10.0%以下の場合を○(良
好)、そして未エッチング率が10.0%を超える場合
を×(不良)として、各切り板の未エッチング部を評価
した。
【0053】更に、この粗面化表面を走査電子顕微鏡
(SEM)を使用して500倍の倍率で観察し、写真を
撮影した。得られた写真から、第1実施例と同様にし
て、均一性を評価した。即ち、最小のピットと最大のピ
ットとの大きさの相異が、5μmよりも大きいものを均
一性が×(不良)、3乃至5μmのものを均一性が○
(良好)、3μm未満のものを均一性が◎(優良)と評
価した。
【0054】また、上述のようにして得たアルミニウム
合金板(圧延方向15cm×圧延垂直方向10cm×2
枚=3dm2)の表面を王水にて化学エッチングし、ス
トリークの長さを評価した。圧延方向の筋模様の長さ
が、1cm未満の場合を○(ストリーク評価:良好)及
び1cm以上の場合を×(ストリーク評価:不良)とし
た。下記表4に、ストリーク、未エッチング部及び均一
性に対する評価を示す。
【0055】
【表4】
【0056】なお、上記表4中の材料No.1、2、
3、5、6及び7は、夫々、表1及び2に示す実施例N
o.1、2、3、5、6及び7と化学組成が同一であ
る。
【0057】上記表4に示すように、実施例No.8〜
13においては、ストリーク、未エッチング部及び均一
性に対する評価は、いずれも良好であった。一方、比較
例No.14は均熱温度が本発明にて規定した温度より
も低く、また比較例No.15は均熱温度が本発明にて
規定した温度よりも高いため、未エッチング部が少ない
と共に均一性が良好であったものの、いずれもストリー
ク評価が不良であった。また、比較例No.16及び1
7は、熱間開始温度が本発明にて規定した範囲外である
ため、比較例No.14及び15と同様に、ストリーク
評価がいずれも不良であった。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
所定の化学成分を含有しているため、電解粗面化処理時
に不動態皮膜が短時間で破壊されることに加え、この不
動態皮膜の破壊に必要とする時間が、電解エッチングの
サイクル数が変化した場合であっても一定であるので、
短時間の電解粗面化処理で、粗面化ピットを均一に形成
することができる。
【0059】また、本発明に係る印刷版用アルミニウム
合金板の製造方法は、均熱温度及び熱間圧延開始温度が
適切であるので、電解粗面化処理後に均一な粗面化ピッ
トが得られると共にストリークの発生が極めて抑制され
た印刷版用アルミニウム合金板を製造することができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−177528(JP,A) 特開 平3−122241(JP,A) 特開 昭62−230946(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 21/00 B41N 1/08 C22F 1/04

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe:0.20乃至0.5重量%、S
    i:0.03乃至0.1重量%、Ti:0.005乃至
    0.05重量%及びNi:0.005乃至0.10重量
    %を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるア
    ルミニウム合金板であって、前記Feと前記Niとの総
    量が0.27乃至0.60重量%であることを特徴とす
    る印刷版用アルミニウム合金板。
  2. 【請求項2】 Fe:0.20乃至0.5重量%、S
    i:0.03乃至0.1重量%、Ti:0.005乃至
    0.05重量%、Ni:0.005乃至0.10重量%
    及びB:1乃至50重量ppmを含有し、残部がAl及
    び不可避的不純物からなるアルミニウム合金板であっ
    て、前記Feと前記Niとの総量が0.27乃至0.6
    0重量%であることを特徴とする印刷版用アルミニウム
    合金板。
  3. 【請求項3】 更に、Cuを0.003重量%以下含有
    することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷版用
    アルミニウム合金板。
  4. 【請求項4】 更に、Zn:0.005乃至0.03重
    量%を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいず
    れか1項に記載の印刷版用アルミニウム合金板。
  5. 【請求項5】 前記Tiは0.010重量%以上である
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載
    の印刷版用アルミニウム合金板。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の
    組成を有するアルミニウム合金鋳塊に、500乃至60
    0℃の温度で均質化処理を施し、次いで開始温度を40
    0乃至450℃として熱間圧延を施すことを特徴とする
    印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記熱間圧延工程の後に、冷間圧延工程
    及び中間焼鈍工程を有することを特徴とする請求項6に
    記載の印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
  8. 【請求項8】 レベラー矯正工程を有することを特徴と
    する請求項7に記載の印刷版用アルミニウム合金板の製
    造方法。
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