JP2773947B2 - テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムの製造方法 - Google Patents

テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムの製造方法

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、ヒドロシリル化、カルボニル化等に用いら
れるテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム
の製造方法に関するものである。
(従来技術とその問題点) 従来、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジ
ウムの製造方法は塩化パラジウムとトリフェニルホスフ
ィンをモル比で1:5をジメチルスルホキシドに140℃で加
熱溶解し、加熱源の油浴を取り除き、激しくかきまぜた
後、ヒドラジン水和物をゆっくり加え、次いで125℃ま
で冷却したのち、ゆっくりと室温まで冷却してテトラキ
ス(トリフェニルホスィン)パラジウムを合成していた
が、加熱源の油浴を取り除くとトリフェニルホスフィン
が析出する欠点と、140℃前後でヒドラジン水和物を加
えるとパラジウムが還元してブラックとなり沈澱する欠
点がありテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジ
ウムの純度が低下(不純物の混入による)し、得られた
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムが分
解しやすいという欠点があった。
(発明の目的) 本発明は、上記従来法の欠点を解決するために成され
たもので、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラ
ジウムの純度低下の原因となっているトリフェニルホス
フィンの析出を生じさせず、パラジウムブラックの沈澱
をも生成させないで、分解しにくい結晶の大きなテトラ
キス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを高い純度
と安定性を得ることのできる方法を提供することを目的
とする。
(問題点を解決するための手段) 本発明は、塩化パラジウムとトリフェニルホスフィン
にジメチルスルホキシドを加えて加熱溶解した溶液の温
度を125〜135℃として保ち、ヒドラジン水和物を5〜20
g/分の速度で加え窒素雰囲気下で反応させたのち、室温
まで徐々に冷却することを特徴とするテトラキス(トリ
フェニルホスフィン)パラジウムの製造方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
塩化パラジウムとトリフェニルホスフィンをモル比で
1:5をジメチルスルホキシドに140℃で加熱溶解したの
ち、該溶液の温度を125〜135℃の範囲に僅かに温度を下
げる。
上記のトリフェニルホスフィンはメタノールから再結
晶したものを用いるのがよく、トリフェニルホスフィン
中に含まれている不純物により、生成させたテトラキス
(トリフェニルホスフィン)パラジウムが分解されてし
まうからである。
上記溶液の温度の範囲にするのはトリフェニルホスフ
ィンの析出をさせることなく、パラジウムブラックの沈
澱が生じにくい温度であるからである。
次いで、ヒドラジン水和物を上記の温度を保ち撹拌し
ながら、5〜10g/分の速度で加える。
該速度でヒドラジン水和物を加えるのはゆっくりしす
ぎるとヒドラジン水和物の分解が起き反応が不完全とな
り、速すぎると溶液の温度が保てなくなりトリフェニル
ホスフィンが析出するからである。
次いで、加熱源の油浴を取り除き徐々に室温まで冷却
すると結晶が生成する。
徐々に室温まで冷却するのは、結晶が大きくなり分解
されにくくなるからである。
また、以上のテトラキス(トリフェニルホスフィン)
パラジウムの生成反応操作は窒素雰囲気下で行い空気酸
化等のないようにさせる必要がある。
該結晶を濾過分離したのち、エタノール、エーテル等
で洗浄し、デシケータ中で減圧乾燥するとテトラキス
(トリフェニルホスフィン)パラジウムが得られる。
以上の方法によればテトラキス(トリフェニルホスフ
ィン)パラジウムの純度は98%程度で収率は96%前後の
安定したものが得られる。
以下、本発明の実施例を記載するが該実施例は本発明
を限定するものではない。
(実施例1) 塩化パラジウム(21.25g、0.12モル)とメタノールか
ら再結晶したトリフェニルホスフィン(157.2g、0.6モ
ル)を還流器付きフラスコに入れ、次いでジメチルスル
ホキシド(1320ml)を加えて窒素ガス雰囲気とし、油浴
上で撹拌下で加熱し140℃で完全な溶液とする。
その後、撹拌は続けながら還流器付きフラスコの位置
を上方に移動させ該フラスコ中の溶液が油浴の油面より
僅かに上になるようにして溶液の温度を130℃とした。
次いで、ヒドラジン水和物(22g、0.44モル)を3分
間で加えたのち油浴を取り除き、室温までゆっくりと冷
却して結晶を生成させた。
次いで、上記生成した結晶をガラスフィルタを用いて
濾過しエタノール50mlで2回、次いでエーテル50mlで2
回洗浄したのち、デシケータ中で2時間減圧乾燥して13
2.5gの結晶が得られた。
上記の方法で得られた結晶をCHNコーダーで元素分析
したところ、Cは74.2wt%で、Hは5.34wt%であり、パ
ラジウムは化学分析したところ9.07wt%であった。
この結果からテトラキス(トリフェニルホスフィン)
パラジウム〔化学式=Pd{P(C6H5〕から理論
元素の含有率は、Cは74.9wt%、Hは5.20wt%、Pdは9.
22wt%、残はPであるから、純度は98.4wt%で、収率は
96%であった。
また、上記で得られた結晶の分解温度は115℃で理論
分解温度〔テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラ
ジウムは116℃〕とほぼ一致した。
(従来例) 塩化パラジウム(21.25g、0.12モル)とトリフェニル
ホスフィン(157.2g、0.6モル)を還流器付きフラスコ
に入れ、次いでジメチルスルホキシド(1320ml)を加え
て油浴上で撹拌下で加熱し140℃で完全な溶液とする。
その後、油浴を取り除き激しくかきまぜたのち、ヒド
ラジン水和物(22g、0.44モル)を15分間かけてゆっく
り加えたのち125℃に冷却し、その後、放冷して室温ま
でゆっくり冷却して結晶を生成させた。
次いで、上記生成した結晶をガラスフィルタを用いて
濾過しエタノール50mlとエーテル50mlでそれぞれ2回洗
浄したのち、デシケータ中で2時間減圧乾燥して124.1g
の結晶が得られた。
上記の方法で得られた結晶を実施例1と同様に元素分
析したところ、Cは73.8wt%で、Hは5.50wt%で、Pdは
10.12wt%であった。
この結果からテトラキス(トリフェニルホスフィン)
パラジウム〔化学式=Pd{P(C6H5〕から理論
元素の含有率は、Cは74.9wt%、Hは5.20wt%、Pdは9.
22wt%、残はPであるから、純度は91wt%で、収率は90
%であった。
また、上記で得られた結晶の分解温度は100℃で理論
分解温度〔テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラ
ジウム116℃〕と比べ極めて低い温度であった。
(実施例2) 実施例1と同様に塩化パラジウムとトリフェニルホス
フィンとジメチルスルホキシドを加えて140℃で加熱し
完全に溶液としたのち、溶液の温度を125℃として保
ち、ヒドラジン水和物を5分間で加えて油浴を取り除き
徐々に室温まで冷却した。
以下実施例1と同様に操作して結晶を得た。
該結晶の得られた量は131.5gで元素分析したところ、
Cは75.2wt%、Hは5.50wt%、Pdは9.18wt%で、テトラ
キス(トリフェニルホスフィン)パラジウムとしての純
度は99.7wt%で収率は95%であった。
(実施例3) 実施例1と同様に塩化パラジウムとトリフェニルホス
フィンとジメチルスルホキシドを加えて140℃で加熱し
完全に溶液としたのち、溶液の温度を135℃として保
ち、ヒドラジン水和物を1分間で加えて油浴を取り除き
徐々に室温まで冷却した。
以下実施例1と同様に操作して結晶を得た。
該結晶の得られた量は131.0gで元素分析したところ、
Cは74.8wt%、Hは5.45wt%、Pdは9.20wt%で、テトラ
キス(トリフェニルホスフィン)パラジウムとしての純
度は99.9wt%で収率は95%であった。
また、実施例2と3で得た結晶の分解温度は115℃、1
16℃であった。
(発明の効果) 以上説明したように、本発明の方法ではメタノールか
ら再結晶したトリフェニルホスフィンを用い溶液の温度
を125〜135℃に調節して保ちながらヒドラジン水和物を
加える速度も定めて、窒素雰囲気下で反応させること
と、また、反応させた後に徐々に冷却することによりパ
ラジウムブラックやトリフェニルホスフィンが混入する
ことがほとんどなく、安定な高い純度のテトラキス(ト
リフェニルホスフィン)パラジウムが高い収率で得られ
るという優れた製造方法である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塩化パラジウムとメタノールから再結晶し
    たトリフェニルホスフィンにジメチルスルホキシドを加
    えて加熱溶解した溶液の温度を125〜135℃として保ち、
    ヒドラジン水和物を5〜20g/分の速度で加え、窒素雰囲
    気下で反応させたのち、室温まで徐々に冷却することを
    特徴とするテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラ
    ジウムの製造方法。
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