JP2767629B2 - 塩化ビニル系重合体の製造法 - Google Patents

塩化ビニル系重合体の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、塩化ビニル系重合体の製造法に関し、さら
に詳しくは重合器内壁、およびその他単量体が接触する
部分にスケールが付着するのを防止するための、塩化ビ
ニル系重合体の製造法に関する。
(従来の技術) 従来、塩化ビニル系重合体を水性媒体中で重合するに
際して、重合器内壁等にスケールが付着するのを防止す
るために、重合器内部表面に薬剤を塗布する方法が多種
提案されている。この塗布剤として、例えば、セルロー
スまたはセルロース誘導体(特公昭58−14444号)、ポ
リエチレンイミンとヒドロキノン、p−ベンゾキノン、
カテコールまたはo−ベンゾキノンの混合物(特公昭57
−1527号)、フェノールまたは多価フェノール、および
それらのアルコール類との混合物のリン酸エステルまた
はそれらの縮合物(特公昭57−31730)などが開示され
ているが、これらの塗布剤を使用しても、20〜70バッチ
の重合を繰り返し行うと、重合器の内壁等にスケールが
付着し、重合器の除熱能力が低下したり、重合中に剥離
したスケールが製品中に混入し、これがフィッシュ・ア
イの原因となるなどして、製品の品質を低下させるなど
の問題があった。また、これらの混合物からなる塗布剤
は、スケール付着防止効果の持続性が不十分であるばか
りではなく、これらが重合系内に塩化ビニルなどの単量
体に対してわずか数ppm残留するだけでも重合の遅延や
重合体粒子の粗粒化,フイッシュアイの増加または製品
の着色等の原因となるという欠点があった。
一方、近年大型重合器やリフラックス・コンデンサー
を使用する塩化ビニル系重合体の製造法が工業的規模で
採用されるようになったことにより、スケール防止効
果、およびその持続性に優れた塗布剤が切望されてい
る。すなわち、大型重合器はその内容積に対して反応熱
を除去するためのジャケットの冷却面積が相対的に小さ
いため、重合の生産性を高めるためにはスケールの付着
を防止し、ジャケットの除熱能力を維持させることがき
わめて重要である。また、リフラックス・コンデンサー
は内部の伝熱管などの構造が複雑であるため、一度スケ
ールが付着すると、その除去作業に多大の時間と労力を
要する。したがって、スケール防止効果およびその持続
性に優れ、かつ品質の低下を招かない塗布剤を開発する
ことは、極めて重要な技術課題とされるのである。
(発明が解決しようとする課題) 本発明の目的は、重合体粒子の粗粒子およびフィッシ
ュ・アイの増加など品質の低下を招かず、かつスケール
防止の持続性の優れた塗布剤を塗布することにより、重
合器の内壁やリフラックス・コデンサー等へのスケール
付着防止性の改善された塩化ビニル系重合体の製造法を
提供することにある。
(課題を解決するための手段) 本発明のかかる目的は、塩化ビニル単量体または塩化
ビニル単量体および塩化ビニルと共重合し得る単量体と
の混合物を水性媒体中で重合するに際し、一般式(I)
で表される化合物を、予め重合器の内壁およびその他単
量体が接触する部分に塗布することによって達成され
る。
ただし、R1およびR2はそれぞれ−H、または炭素原子
1〜4個の炭化水素基を表し、R3はフェノール誘導体を
表す R3としては、2,5−ジヒドロキシフェニル、2−ヒド
ロキシ−5−(4−ヒドロキシベンジル)、2−ヒドロ
キシ−5−(4−ヒドロキシフェニルスルフォニル)、
2−ヒドロキシ−5−(4−ヒドロキシフェニルチオ)
などの置換基が例示される。
これらの化合物は、通常これを水酸化ナトリウムなど
アルカリ金属水酸化物の水溶液、またはメタノール、ア
セトンなどの極性溶剤の溶液として使用し、スプレーあ
るいはハケ塗りなどの公知の方法で重合器の内壁および
その他撹拌機、バッフル、リフラックス・コンデンサー
など、単量体が接触する部分に塗膜を形成させる。塗布
量は従来の塗布剤を使用する場合と同程度でよく、一般
には固形分で0.001〜20g/m2、好ましくは0.1〜10g/m2
ある。また、必要に応じて塗布後の当該表面を加熱乾燥
することもできるし、簡単な水洗を行ってもよい。
このようにして、内部表面に塗布剤の塗膜を形成させ
た重合器を用いて、塩化ビニル系重合体の製造が行われ
るが、本発明の方法は、水性媒体中での重合、すなわち
懸濁重合、乳化重合、微細懸濁重合に適用できる。
本発明において塩化ビニル単量体と共重合し得る単量
体としては、例えば酢酸ビニルなどのアルキルビニルエ
ステル、セチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエ
ーテル、エチレンまたはプロピレンなどのα−モノオレ
フィン類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなど
のアクリル類アルキルエステル類が例示されるが、これ
らに限定されない。
また本発明において使用される懸濁剤、乳化剤、重合
開始剤は、通常の塩化ビニルの懸濁重合、乳化重合また
は微細懸濁重合において使用されるものである。懸濁剤
としては例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル
の部分ケン化物、メチルセルロース、ヒドロキシプロピ
ルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、無水マレ
イン酸−酢酸ビニル共重合体などの合成高分子物質等が
例示される。また、乳化剤としては、高級脂肪酸のソル
ビタンエステルまたはグリセリンエステル、およびこれ
らのポリオキシエチレン付加物などのノニオン性界面活
性剤、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスル
フォン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤などが
例示される。重合開始剤としては例えばジ−2−エチル
ヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチル
パーオキシジカーボネート、α−クミルパーオキシネオ
デカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5
−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドおよびアセチ
ルシクロヘキシスルフォニルパーオキサイドなどのよう
な有機過酸化物ならびにα,α′−アゾビスイソブチロ
ニトリルおよびα,α′−アゾビス−2,4−ジメチルバ
レロニトリルなどのアゾ化合物また、過硫酸カリウム、
過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩やキュメンハイドロパ
ーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の
ハイドロパーオキサイドと還元剤との組合わせ等の一種
または二種以上の混合物が挙げられる。
また、所望に応じてメルカプトアルカノール、チオグ
リコール酸アルキルエステルなどの連鎖移動剤、ケン化
度20〜55モル%のポリビニルアルコール類などの油溶性
懸濁助剤、PH調整剤および重合禁止剤などを使用するこ
ともできる。重合は通常35〜80℃の温度で撹拌下に行わ
れ、各成分の仕込み量および仕込み部数などは、従来塩
化ビニル系の重合で行われている慣用の条件でよく、特
に限定されるものではない。
(発明の効果) かくして、本発明によれば、従来技術に比較して、ス
ケールの付着防止を効果的に行えしかもそれの効果を長
期間持続できるという点において優れている。またスケ
ール除去作業に要する時間を大幅に削減できるのみなら
ず、スケールの付着による重合器の所熱能力の低下を防
止できるので、高生産性下に塩化ビニル系重合体を製造
することができる。また、製品中へのスケールの混入に
よって生成するフィッシュ・アイを低減することがで
き、粒度、多孔性など製品の品質を悪化させることなく
スケールの付着を防止できるので、極めて有用である。
(実施例) 以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明す
る。なお、実施例、比較例中の部及び%はとくに断りの
ないかぎり重量基準である。また、各実施例で示した塩
化ビニル系重量体のフィッシュ・アイは次の方法により
測定した。
塩化ビニル系重合体100gにジオクチルフタレート45
g、ステアリン酸カドミウム2g、ステアリン酸バリウム1
g、およびグリーントナー1gを加えて混合した後、145℃
の6インチロールで6分間混練して厚さ0.4mmのシート
に引出し、そのシートの表面100cm2中に観察される透明
粒子の数をもって示した。
(比較例1) 内容積950のステンレス製重合器を脱気し、脱イオ
ン水350kg、塩化ビニル単量体250kg、部分ケン化ポリビ
ニルアルコール140g、ジ−2−エチルヘキシルパーオキ
シジカーボネート30gおよびt−ブチルパーオキシピバ
レート50gを仕込んで62℃で5時間塩化ビニルの重合を
おこなった。
重合終了後、重合器に付着したスケールの重量を測定
した結果、スケールは液相部で15g/m2、気相部で10g/m2
であった。
(実施例1) 10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキ
サ−10−ホスファフェナントレン=10−オキサイドを0.
5%水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、純分濃度0.75%
の塗布液を調整した後、この塗布液を内容積950のス
テンレス製重合器の内壁2g/m2の塗布量(純分換算、以
下同じ)となるように塗布し、80℃で10分間乾燥した。
次いで比較例1と同様の操作で塩化ビニルの重合を行っ
た。
重合終了後、重合器に付着したスケールの厚みを測定
した結果、スケールは液相部で1g/m2、気相部で皆無で
あった。
(実施例2) 10−〔2−ヒドロキシ−5−(4−ヒドロキシベンジ
ル)〕−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレ
ン=10−オキサイドを0.5%水酸化ナトリウム水溶液に
溶解し、純分濃度0.75%の塗布液を調整した後、この塗
布液を内容積950のステンレス製重合器の内壁2g/m2
塗布量(純分換算、以下同じ)となるように塗布し、塗
布面に脱イオン水を流下、洗浄した。次いで比較例1と
同様の操作で塩化ビニルの重合を行った。
重合終了後、重合器に付着したスケールの厚みを測定
した結果、スケールは液相部で1g/m2、気相部で皆無で
あった。
(実施例3) 10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−3,6−ジ
−t−ブチル−9−オキサ−10−ホスファフェナントレ
ン=10−オキサイドを0.5%水酸化ナトリウム水溶液に
溶解し、純分濃度0.75%の塗布液を調整した後、この塗
布液を内容積950のステンレス製重合器の内壁2g/m2
塗布量となるように塗布し、80℃で10分間乾燥した。次
いで比較例1と同様の操作で塩化ビニルの重合を行っ
た。
重合終了後、重合器に付着したスケールの重量を測定
した結果、スケールは液相部で4g/m2、気相部で2g/m2
あった。
(実施例4) 10−〔2−ヒドロキシ−5−(4−ヒドロキシフェニ
ルスルフォニル)〕−10H−9−オキサ−10−ホスファ
フェナントレン=10−オキサイドを0.5%水酸化ナトリ
ウム水溶液に溶解し、純分濃度0.75%の塗布液を調整し
た後、この塗布液を内容積950のステンレス製重合品
の内壁2g/m2の塗布量(純分換算、以下同じ)となるよ
うに塗布し、80℃で10分間乾燥した。次いで比較例1と
同様の操作で塩化ビニルの重合を行った。
重合終了後、重合器に付着したスケールの厚みを測定
した結果、スケールは液相部で2g/m2、気相部で1g/m2
あった。
(実施例5) 10−〔2−ヒドロキシ−5−(4−ヒドロキシフェニ
ルチオ)〕−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナン
トレン=10−オキサイドを0.5%水酸化ナトリウム水溶
液に溶解し、純分濃度0.75%の塗布液を調整した後、こ
の塗布液を内容積950のステンレス製重合器の内壁2g/
m2の塗布量(純分換算、以下同じ)となるように塗布
し、80℃で10分間乾燥した。次いで比較例1と同様の操
作で塩化ビニルの重合を行った。
重合終了後、重合器に付着したスケールの厚みを測定
した結果、スケールは液相部で3g/m2、気相部で2g/m2
あった。
以上の結果から明らかであるように、本発明の方法に
よればスケール防止効果が顕著であることがわかる。
(比較例2) 内容積35m3のステンレス製重合器を脱気し脱イオン水
16トンを仕込んだのち、塩化ビニル単量体13.5トン、部
分ケン化ポリビニルアルコール7.5kg、ジ−2−エチル
ヘキシルパーオキシジカーボネート3.5kgを同時に仕込
み、57.5℃の温度で8時間塩化ビニルの重合を行った。
重合が終了し内容物を排出した後、重合器内を200/mi
n,250kg/cm/2の高圧水で15分間洗浄し、以下同様の操作
で重合を繰り返し行った。
このようにして行った重合バッチ数と重合器ジャケッ
トの総括伝熱係数および得られた重合体粒子のフィッシ
ュ・アイは、第1表に示すとおりであった。
(実施例6) 内容積35m3のステンレス製重合器の内壁および撹拌
翼,バッフルその他単量体が接触する部分に実施例1で
得られた塗布得を噴射器で0.5g/m2の塗布量になるよう
に塗布し、さらに脱イオン水で塗布面に流下、洗浄し、
洗浄水を重合系外に排出した。
次いで、比較例2と同様の操作で塩化ビニルの重合を
行い、重合が終了し内容物を排出した後、重合器内を20
0/min,250kg/cm2の高圧水で15分間洗浄した。再び重
合器の内壁に塗布液を塗布し、以下同様の操作で塩化ビ
ニルの重合を繰り返し行った。
このようにして行った重合バッチ数と重合器ジャケッ
トの総括伝熱係数および得られた重合体粒子のフィッシ
ュ・アイは、第1表に示すとおりであった。
(実施例7) 実施例2で得られた塗布液を用いた以外は実施例6と
同様の操作で塩化ビニルの重合を繰り返し行った。
このようにして行った重合バッチ数と重合器ジャケッ
トの総括伝熱係数および得られた重合体粒子のフィッシ
ュ・アイは、第1表に示すとおりであった。
第1表より、本発明の方法によれば、繰り返し重合を
行っても長期間にわたって重合器ジャケットの除熱能力
を維持することができ、またフィッシュ・アイが増加す
ることもないので高能率で高品質の製品を製造すること
ができる。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塩化ビニル単量体または塩化ビニル単量体
    および塩化ビニルと共重合し得る単量体との混合物を水
    性媒体中で重合するに際し、一般式(I)で表される化
    合物を、予め重合器の内壁およびその他単量体が接触す
    る部分に塗布することを特徴とする塩化ビニル系重合体
    の製造法。 R1およびR2はH、またはC1〜C4の炭化水素基を表し、R3
    は多価フェノール誘導体を表す。
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