JPH05117307A - 重合体の製法 - Google Patents

重合体の製法

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JPH05117307A
JPH05117307A JP28117791A JP28117791A JPH05117307A JP H05117307 A JPH05117307 A JP H05117307A JP 28117791 A JP28117791 A JP 28117791A JP 28117791 A JP28117791 A JP 28117791A JP H05117307 A JPH05117307 A JP H05117307A
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JP
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polymerization
emulsion
vinyl ester
polymer
vinyl
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JP28117791A
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English (en)
Inventor
Naoki Fujiwara
直樹 藤原
Kazutoshi Terada
和俊 寺田
Hitoshi Maruyama
均 丸山
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Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高重合度の重合体、特に高重合度のビニルエ
ステル系重合体ならびにビニルアルコール系重合体を工
業的規模で容易に製造することである。 【構成】 減圧下でビニルエステル等の不飽和単量体を
乳化重合することにより、重合度の高い重合体、特にビ
ニルエステル系重合体を製造する方法、ならびにこのビ
ニルエステル系重合体からビニルアルコール系重合体を
製造する方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は重合体、特にビニルエス
テル系重合体の製法およびビニルアルコール系重合体の
製法に関する。さらに詳しくは乳化重合(特に連続重
合)において、重合熱の除熱等が容易で、またスケール
の発生がなく、工業的規模で効率よく重合体が得られる
重合体の製法、特にビニルエステル系重合体の製法、お
よびこの方法で得られたビニルエステル系重合体を用い
たビニルアルコール系重合体の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】ビニルエステル系重合体、とりわけ酢酸
ビニル系重合体は接着剤や塗料のベースポリマーとして
広範囲に利用されているほか、ビニルアルコール系重合
体の原料樹脂として極めて重要なものである。また、ビ
ニルアルコール系重合体は数少ない結晶性の水溶性高分
子としてすぐれた界面特性および強度特性を有すること
から、紙加工剤,繊維加工剤およびエマルジョン用の安
定剤等に利用されているのをはじめとして、ビニロンフ
ィルムやビニロン繊維の原料としても重要な地位を占め
ているのは周知のとおりである。
【0003】従来のビニルアルコール系重合体の重合度
は、加工特性や取扱いやすさの点と、原料の酢酸ビニル
系重合体が高重合度のものが得られにくいという点か
ら、2000が上限であり、特殊品として3000程度
のものがみられるにすぎなかった。しかし近年の急速な
加工技術の進歩は超高重合度領域の重合体の加工を可能
にし、それによって従来知られていなかった物性を引出
すことに成功しつつある。ビニルアルコール系重合体に
おいても、高重合度化することにより従来の用途におけ
る物性向上はもちろん、高強力繊維や高耐久性偏光フィ
ルム等の新規な分野において新たな可能性が期待されて
いる。
【0004】一般に高重合度の重合体は、低温下で遅い
重合速度で重合することにより得られ、酢酸ビニルにお
いてもいつくかの例が報告されている。〔例えば、A.R.
Shultz ; J. Am. Chem. Soc., 76,3422(1954),G.
M. Burnett, M.H. George, H.W. Melville; J. Polym.
Sci., 16,31(1955),M. Matsumoto, Y. Ohyanagi;J.
Polym. Sci,46,148(1960) 〕 しかしながら、これらの方法は全て塊状重合法であり、
重合系が極めて高粘度であるため、攪拌が困難となり均
質なポリマーが得られず、また除熱が困難になる等の問
題点を有する。従ってこれら塊状重合法による工業的規
模での製造はほとんど不可能であろうと考えられる。
【0005】これら塊状重合法による欠点を克服した方
法として懸濁重合法による方法が提案されている(特開
昭61−148209号公報)。しかし、ビニルエステ
ルのように連鎖移動が大きい系では、重合度を大きくす
るために重合温度を下げることが必須の条件であり、こ
のために上記の報告による塊状重合法や懸濁重合法での
重合速度は非常に小さくならざるを得ない。
【0006】さらに、これらの重合法による欠点を克服
した方法として、塊状重合や懸濁重合とは重合機構が異
なり、比較的速い重合速度で重合する場合でも、攪拌お
よび除熱に関する問題がほとんどなく、高重合度のビニ
ルエステル系重合体およびビニルアルコール系重合体が
得られる低温乳化重合法が提案されている(特開昭63
−37106号公報)。
【0007】しかし、この低温乳化重合法でも、大きな
スケールで重合を行う場合、20%/hr以上の高速度
で重合を行うときなどには、重合熱の除熱に関する問題
が生じることがある。また、気液界面および空間部分に
エマルジョンが付着し、凝集エマルジョンが発生したり
して、目的とする高重合度のビニルエステル系重合体お
よびビニルアルコール系重合体が得られなかったり、長
時間の重合に使用できない場合があるなどの問題点があ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、重合
体、特にビニルエステル系重合体を工業的な規模で安定
的に、しかも容易に得ることのできる方法を提供するこ
とにある。また、本発明の他の目的は、高重合度の重合
体、特に高重合度のビニルエステル系重合体を効率よく
製造することのできる方法を提供することにある。さら
に、本発明の他の目的は、高重合度のビニルアルコール
系重合体を安定的に効率よく製造することのできる方法
を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記従来
の重合法の問題点を解消し、容易かつ安定的に、しかも
より高重合度の重合体、特に高重合度のビニルエステル
系重合体およびビニルアルコール系重合体を、工業的な
規模で効率よく製造することのできる方法を開発すべ
く、鋭意研究を重ねた。その結果、減圧の状況下で、と
りわけ原料である単量体を沸騰させながら、不飽和単量
体、特にビニルエステルを乳化重合あるいはシード重合
することによって、目的を達成できることを見出した。
本発明はかかる知見に基いて完成したものである。
【0010】すなわち本発明は、減圧下で不飽和単量体
を乳化重合することを特徴とする重合体の製法を提供す
るものである。また本発明は、上記重合体の製法の好適
な態様として、減圧下でビニルエステルを乳化重合する
ことを特徴とするビニルエステル系重合体の製法をも提
供するものである。本発明の製法は、例えばスチレン
(スチレン誘導体を含む),アクリル酸エステル,メタ
アクリル酸エステル,ブタジエン,塩化ビニル等の不飽
和単量体の乳化重合に適用できるものであるが、特にビ
ニルエステルの重合に好適である。したがって、ビニル
エステルの乳化重合を中心に、以下、本発明を詳しく説
明する。まず、ビニルエステルの乳化重合の際の重合温
度は、特に制限はなく、各種の状況に応じて定めればよ
いが、連鎖移動を抑えるためにできるだけ低い方が好ま
しい。しかし生長速度定数も温度低下に従って小さくな
るため、重合温度を下げすぎると重合速度の低下を招く
とともに、酸素の影響を受けやすくなる、また、減圧度
の調整が困難になる等の問題が発生する。そのため、重
合温度は、通常は−60〜50℃、好ましくは−40〜
40℃、より好ましくは−30〜40℃、さらに好まし
くは−30〜35℃の範囲で選定すべきである。
【0011】重合温度を0℃以下にする場合には、分散
媒である水相を凝結しないようにすべきであり、水溶性
のアルコール類,グリコール類,グリセリン類,ジメチ
ルスルホキシドあるいは無機塩類等の凝固点降下剤を水
相へ添加することが望ましい。このような凝固点降下剤
としては、具体的にはメタノール,エタノール,プロパ
ノール,t−ブタノール,エチレングリコール,グリセ
リン,ジメチルスルホキシド,塩化リチウム,塩化ナト
リウム,塩化カルシウム等が挙げられる。これらのう
ち、乳化剤およびビニルアルコール系重合体などの分散
安定剤の溶解性ならびにエマルジョンの安定性に対する
影響、さらには重合後の後処理やビニルエステル系重合
体のけん化反応等を考慮すると、メタノールやジメチル
スルホキシドが最も好ましい。凝固点降下剤の添加量
は、重合温度によって異なり一義的に決定できないが、
(水/凝固点降下剤)の比率は、重量比で100/0〜
50/50が好ましく、さらに好ましくは100/0〜
60/40である。
【0012】上記乳化重合においては、分散安定剤を用
いることが好ましく、ここで用いられる分散安定剤とし
ては、様々なものがあり、例えば各種乳化剤,ビニルア
ルコール系重合体あるいはカルボキシメチルセルロース
(CMC)等が挙げられ、そのうち乳化剤あるいはビニ
ルアルコール系重合体が好ましい。分散安定剤として用
いられる乳化剤およびビニルアルコール系重合体は、温
度−60〜50℃の範囲および(水/凝固点降下剤)が
100/0〜50/50の条件で溶解し、生成するエマ
ルジョンを安定化してエマルジョン状態を保つ能力のあ
るものが好適である。
【0013】これらを満足する乳化剤としては、ノニオ
ン性乳化剤,ノニオン−アニオン性乳化剤およびアニオ
ン性乳化剤が好ましい。ノニオン性乳化剤としては、ポ
リオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレ
ンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンアル
キルエステル,ポリオキシエチレンソルビタンアルキル
エステルが挙げられる。ノニオン−アニオン性乳化剤と
しては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル
硫酸エステル塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル
硫酸エステル塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル
リン酸エステル塩等が挙げられる。また、アニオン性乳
化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩,アル
キルアリールスルホン酸塩,脂肪族アルコールのリン酸
エステル塩等が挙げられる。上記の乳化剤は単独もしく
は組合わせて使用される。乳化剤の重合系への添加量
は、ビニルエステルの使用量により異なるが、乳化剤の
使用量(W1)は下記の式を満足する場合が好ましい。
【0014】
【数1】
【0015】但し、Mw:乳化剤の分子量 A1 :エマルジョン中の粒子の全表面積 Am:乳化剤の分子占有面積 更に、B1 =〔(Mw)×(A1)〕/〔(Am)×10
0〕とすると、乳化剤の使用量(W1)は(10×B1)〜
(500×B1)であることが好ましく、さらに好ましく
は(10×B1)〜(300×B1)、特に好ましくは(1
5×B1)〜(250×B1)である。
【0016】乳化剤の使用量が(10×B1)より少ない
と、エマルジョン中のビニルエステル系重合体の粒子を
安定に保つことが困難となり、該重合体の粒子の凝集が
起きる場合がある。また乳化剤の使用量が(500×B
1)より多くなると、新たな粒子を形成する期間が長くな
るためか、得られるビニルエステル系重合体およびビニ
ルアルコール系重合体の重合度が低下する場合がある。
【0017】一方、分散安定剤として用いられるビニル
アルコール系重合体としては、特に制限はなく、ビニル
アルコール単位だけからなるポリビニルアルコール,ビ
ニルアルコール単位を有する共重合体,ポリビニルアル
コールを一成分とするブロック重合体なども用いること
ができる。ビニルアルコール系重合体のけん化度は、通
常40〜100モル%、好ましくは60〜100モル%
である。ビニルアルコール系重合体の平均重合度につい
ても特に制限はないが、50〜30000が好ましく、
100〜20000が入手が容易な点からさらに好まし
い。上記のビニルアルコール系重合体は単独もしくは組
合せて使用される。ビニルアルコール系重合体の重合系
への添加量は、ビニルエステルの使用量により異なる
が、一般に分散媒100重量部に対して0.5〜30重量
部であり、好ましくは0.5〜20重量部、特に好ましく
は1.0〜10重量部である。ビニルアルコール系重合体
の使用量が0.5重量部より少ないと、エマルジョン中の
ビニルエステル系重合体の粒子を安定に保つことが困難
となり、該重合体の粒子の凝集が起きる場合があり、そ
の結果、高重合度のビニルエステル系重合体が得られな
い。またビニルアルコール系重合体の使用量が30重量
部より多くなると、重合系の粘度が高くなりすぎる場合
があり、均一に重合を進行することができなかったり、
重合熱の除熱が不十分であったり、新たな粒子が形成さ
れたりするために、高重合度ビニルエステル系重合体を
製造する上で好ましくない。
【0018】原料単量体であるビニルエステルの使用量
は、各種の条件により異なり、一義的に定められない
が、通常は分散媒100重量部に対して50〜300重
量部であり、好ましくは75〜280重量部、特に好ま
しくは100〜250重量部である。ビニルエステルの
使用量が50重量部より少なくなると、生産性の点から
好ましくない。またビニルエステルの使用量が300重
量部を超えると、エマルジョン中のビニルエステル系重
合体の粒子を安定に保つことが困難となり、該重合体の
粒子の凝集が起きる場合がある。
【0019】開始剤については、本発明の方法が上記の
如く比較的低温で重合を行うものであるため、低温で有
効にラジカルを生成するレドックス系の開始剤が最も効
果的に使用される。レドックス系開始剤は (a)ヒドロパーオキシド,過酸化物または過酸エステ
ルの中から選ばれた少なくとも1種の酸化性物質、 (b)1電子移動を受けることのできる金属イオンおよ
び (c)還元性物質 から成り、(a)および(b)成分、または(a),
(b)および(c)成分の組合せで使用する。具体的に
は(a)成分である酸化性物質としては、過酸化水素,
クメンヒドロパーオキシド,t−ブチルヒドロパーオキ
シド,過硫酸塩(K,Naまたはアンモニウム塩),過
酢酸t−ブチル,過安息香酸t−ブチルが挙げられ、
(b)成分である金属イオンとしては、Fe2+,C
2+,V2+,Ti3+,Co2+,Cu+ が挙げられ、さら
に(c)成分である還元性物質としては、ロンガリッ
ト,l−アスコルビン酸等が挙げられる。そのなかでも
(a)成分としては過酸化水素、過硫酸塩(K,Naま
たはアンモニウム塩),クメンヒドロパーオキシド,
(b)成分としてはFe2+および(c)成分としてはロ
ンガリットが最も好んで用いられる。これらの開始剤の
使用にあたっては、重合中は常に(a)成分に対して
(b)成分または(b)成分と(c)成分の和が、充分
過剰に存在する様に用いることが重合速度および重合率
の調整の点から好ましいが、(a),(b)および
(c)成分の量は特に限定されるものではない。
【0020】本発明の乳化重合は減圧下で行われること
から、重合温度は比較的低温のほうが好ましく、その結
果、常圧下および加圧下での乳化重合に比して、重合系
のラジカル濃度が低い。そのため、重合系の酸素や不純
物の影響を受けやすく、重合前の重合系からのそれらの
除去および重合中の重合系へのそれらの侵入に関しては
ことさら注意を要する。このため、本発明に用いる水,
凝固点降下剤およびビニルエステルは、ともに充分に脱
酸素を行った後に用いるとともに、系中を純度99.9%
以上、好ましくは純度99.99%以上の窒素あるいはア
ルゴンガスで置換するのが好ましい。またビニルエステ
ルは使用前に、常法により精製するのが好ましい。
【0021】本発明において用いられるビニルエステル
としては、ギ酸ビニル,酢酸ビニル,プロピオン酸ビニ
ル,バレリン酸ビニル,カプリン酸ビニル,ラウリン酸
ビニル,ステアリン酸ビニル,安息香酸ビニル,ピバリ
ン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げら
れ、最終的にビニルアルコール系重合体を得る場合に
は、とりわけ酢酸ビニルが好ましい。また上記のビニル
エステルと共重合可能なモノマーを共重合することも差
しつかえなく、これらモノマーとしては例えば、エチレ
ン,プロピレン,1−ブテン,イソブテン等のオレフィ
ン類、アクリル酸およびその塩、アクリル酸メチル,ア
クリル酸エチル,アクリル酸n−プロピル,アクリル酸
i−プロピル,アクリル酸n−ブチル,アクリル酸i−
ブチル,アクリル酸t−ブチル,アクリル酸2−エチル
ヘキシル,アクリル酸ドデシル,アクリル酸オクタデシ
ル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸およびその
塩、メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタク
リル酸n−プロピル,メタクリル酸i−プロピル,メタ
クリル酸n−ブチル,メタクリル酸i−ブチル,メタク
リル酸t−ブチル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,
メタクリル酸ドデシル,メタクリル酸オクタデシル等の
メタクリル酸エステル類、アクリルアミド,N−メチル
アクリルアミド,N−エチルアクリルアミド,N,N−
ジメチルアクリルアミド,ジアセトンアクリルアミド,
アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アク
リルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩または
その4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびそ
の誘導体等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミ
ド,N−メチルメタクリルアミド,N−エチルメタクリ
ルアミド,メタクリルアミドプロパンスルホン酸および
その塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよ
びその塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリル
アミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体、
メチルビニルエーテル,エチルビニルエーテル,n−プ
ロピルビニルエーテル,i−プロピルビニルエーテル,
n−ブチルビニルエーテル,i−ブチルビニルエーテ
ル,t−ブチルビニルエーテル,ドデシルビニルエーテ
ル,ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、
アクリロニトリル,メタクリロニトリル等のニトリル
類、塩化ビニル,塩化ビニリデン,フッ化ビニル,フッ
化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類およびハロゲン化
ビニリデン類、酢酸アリル,塩化アリル等のアリル化合
物、マレイン酸およびその塩またはそのエステル、イタ
コン酸およびその塩またはそのエステル、ビニルトリメ
トキシシラン等のビニルシリル化合物、酢酸イソプロペ
ニル等が挙げられる。
【0022】本発明の方法は、上記の乳化重合を減圧下
で行うことに特徴を有する。従来の乳化重合は常圧下ま
たは加圧下でしか行われていなかったが、本発明の方法
では、減圧下、好ましくは単量体(モノマー)を沸騰さ
せながら乳化重合を行う。減圧下でかつモノマー(ビニ
ルエステルモノマー)を沸騰させながら乳化重合を行う
と、重合熱の除熱が容易であるとともに、モノマーが還
流するためスケール等の汚れの付着を有効に防止でき、
さらには低重合度の重合物生成の原因となる低沸点不純
物が除去できるなどの利点があり、工業的な規模での運
転に極めて好適である。また、この本発明の乳化重合
は、バッチ式で行うことも可能であるが、工業生産を想
定する場合には、連続式(連続重合)が好ましい。
【0023】本発明の乳化重合における重合率は、重合
度に影響するために重要である。本発明の乳化重合は、
減圧下、好ましくは減圧沸騰下で行うので、モノマー等
の還流が必要なために、重合率を90%以下に選定する
ことが望ましく、通常は10〜90%、好ましくは20
〜85%、さらに好ましくは30〜80%である。重合
率が90%を超えると、モノマー等の還流が少なくな
り、本発明の効果が低下するおそれがある。また重合時
間に関しては、特に制限はないが、1〜15時間が好ま
しい。平均重合速度も重合度に影響するために重要であ
り、平均重合速度は2〜30%/hrが好ましく、3〜
20%/hrがさらに好ましい。
【0024】本発明の減圧下、好ましくは減圧沸騰下で
の乳化重合法は、通常の乳化重合法をはじめ、低温乳化
重合法、後に説明するシード重合法,連続乳化重合法お
よび連続シード重合法のいずれの重合法にも適用するこ
とができるが、発熱量の多い場合および低温の場合に特
に効果を発揮する。また、重合法については、連続シー
ド重合法が最も好適である。減圧度は、使用するモノマ
ー,重合温度,重合速度,重合方法および重合装置によ
り異なるが、通常は重合温度下でモノマーあるいは凝固
点降下剤が沸騰する減圧度に適宜選定するのが好まし
い。
【0025】本発明の乳化重合によって得られるビニル
エステル系重合体の粒子の平均粒径は、系中に添加され
る分散安定剤の種類や使用量によって異なるため、特に
制限はないが、10μm以下が好ましく、5μm以下が
特に好ましい。また、ビニルエステル系重合体の粒子数
も、重合速度および重合度に影響するために重要であ
り、エマルジョン単位体積(1ミリリットル)あたりの
粒子数は、108 〜1016個が好ましい。分散安定剤が
乳化剤の場合には、1012〜10 16個/mlが好まし
く、1012〜5×1015個/mlがより好ましい。分散
安定剤がビニルアルコール系重合体の場合には、108
〜1015個/mlが好ましく、1010〜5×1014個/
mlがより好ましい。粒子数が1012個/ml(分散安
定剤が乳化剤の場合)または108 個/ml(分散安定
剤がビニルアルコール系重合体の場合)より少ない場合
には、重合速度が極度に小さくなってしまい、乳化重合
のメリットを損うことになる。
【0026】次に、ビニルエステルの減圧下でのシード
重合におけるシードエマルジョンとして好適なビニルエ
ステル系重合体エマルジョンの製法に関して説明する。
このビニルエステル系重合体エマルジョンは、ビニルエ
ステルを乳化重合することによって製造されるが、この
場合の重合温度は、特に制限はないが、連鎖移動を抑え
るためにできるだけ低いほうが好まししい。そのため、
重合温度は好ましくは−60〜50℃、より好ましくは
−50〜40℃、さらにより好ましくは−30〜30℃
の範囲にあることが望ましい。重合温度を0℃以下にす
る場合には、分散媒である水相を凝結しないようにする
必要があり、その目的で前記のビニルエステル系重合体
の製法の説明の際に列挙した凝固点降下剤が添加され
る。凝固点降下剤の添加量は重合温度によって異なる
が、(水/凝固点降下剤)の比率は重量比で100/0
〜50/50が好ましく、100/0〜60/40がさ
らに好ましい。
【0027】ビニルエステルの使用量は、状況に応じて
適宜定めればよいが、通常は分散媒100重量部に対し
て0.5〜20重量部であり、好ましくは1.0〜10重量
部、特に好ましくは1.0〜6.0重量部である。ビニルエ
ステルの使用量が0.5重量部より少なくなると、得られ
るビニルエステル系重合体エマルジョンの平均重合度は
高くても数100しかなく、所望する高重合度のビニル
エステル系重合体は得られない。またビニルエステルの
使用量が20重量部を超えると、シード重合用のシード
エマルジョンに適した小粒径・多粒子数のビニルエステ
ル系重合体エマルジョンが得られない。
【0028】続いて分散安定剤としては、前記のビニル
エステル系重合体の製法の説明の際と同様の乳化剤およ
びビニルアルコール系重合体が同様にして使用される。
分散安定剤の重合系への添加量は、ビニルエステルの使
用量により異なるが、分散安定剤が乳化剤の場合には、
乳化剤の使用量(W2)は下記の式を満足する場合が好ま
しい。
【0029】
【数2】
【0030】但し、Mw:乳化剤の分子量 A2 :エマルジョン中の粒子の全表面積 Am:乳化剤の分子占有面積 更にB2 =〔(Mw)×(A2 )〕/〔(Am)×10
0〕とすると、乳化剤の使用量(W2)は(10×B2)〜
(500×B2)であることが好ましく、さらに好ましく
は(10×B2)〜(300×B2)、特に好ましくは(1
5×B2)〜(250×B2)である。分散安定剤がビニル
アルコール系重合体の場合には、分散媒100重量部に
対して0.1〜10重量部であり、好ましくは0.2〜6重
量部、特に好ましくは0.3〜4重量部である。
【0031】分散安定剤の使用量が(10×B2)(分散
安定剤が乳化剤の場合)または0.1重量部(分散安定剤
がビニルアルコール系重合体の場合)より少ないと、エ
マルジョン中のビニルエステル系重合体の粒子を安定に
保つことが困難となり、該重合体の粒子の凝集が起きる
場合がある。また、分散安定剤の使用量が(500×B
2)(分散安定剤が乳化剤の場合)または10重量部(分
散安定剤がビニルアルコール系重合体の場合)より多く
なると、得られるビニルエステル系重合体エマルジョン
を、シードエマルジョンに用いたビニルエステルのシー
ド重合において、ビニルエステルがシードエマルジョン
のビニルエステル系重合体の粒子を膨潤させた後でも乳
化剤が過剰となって、新たな粒子を形成する場合があ
る。
【0032】次に、このシードエマルジョンを製造する
際の乳化重合において用いられる開始剤,ビニルエステ
ルおよびビニルエステルと共重合可能なモノマーは、前
記のビニルエステル系重合体の製法の際に記載したもの
と同様である。また、この乳化重合における重合率は、
重合度に影響するために重要であり、通常5%〜90
%、好ましくは10%〜70%、さらに好ましくは20
%〜60%である。また重合時間は、特に制限はない
が、5時間以上も要するのは操作上好ましくない。
【0033】さらに、上述した乳化重合によって得られ
たエマルジョン中のビニルエステル系重合体の平均粒径
および粒子数も、このビニルエステル系重合体エマルジ
ョンをシードエマルジョンに用いてビニルエステルをシ
ード重合することにより得られるビニルエステル系重合
体やビニルアルコール系重合体の重合度に大きく影響す
るために重要である。ここで、ビニルエステル系重合体
エマルジョン中のビニルエステル系重合体粒子の平均粒
径としては、0.005〜0.5μmが好ましい。分散安定
剤として乳化剤を用いた場合のビニルエステル系重合体
粒子の平均粒径は、0.005〜0.3μmが好ましく、さ
らに好ましくは0.01〜0.25μmである。平均粒径が
0.005μmより小さいエマルジョンは、乳化剤を大過
剰に用いれば製造可能であるが、本発明では過剰な乳化
剤を使用すると目的を達しえないので好ましくない。ま
た平均粒径が0.3μmより大では、粒子の数が減少する
とともにシード重合でのビニルエステル系重合体の粒子
の肥大化を生じるために好ましくない。分散安定剤がビ
ニルアルコール系重合体である場合のビニルエステル系
重合体粒子の平均粒径は、0.001〜0.5μmが好まし
く、さらに好ましくは0.02〜0.3μmである。平均粒
径が0.01μmより小さいエマルジョンは、ビニルアル
コール系重合体を大過剰に用いれば製造することができ
るが、本発明では過剰なビニルアルコール系重合体を使
用すると目的を達しえないので好ましくない。また平均
粒径が0.5μmより大では、粒子の数が減少するととも
にシード重合でのビニルエステル系重合体の粒子の肥大
化を生じるために好ましくない。
【0034】ここで得られるビニルエステル系重合体エ
マルジョンの単位体積(1ミリリットル)あたりのビニ
ルエステル系重合体粒子数は、1012〜1016個が好ま
しく、さらに好ましくは1013〜5×1015個である。
粒子数が1012個/mlより少ない場合には、シード重
合中に新しく粒子が形成されたり、重合速度が小さくな
るために好ましくない。上記の方法によると、従来の方
法では得られなかったビニルエステルのシード重合にお
けるシードエマルジョンに適した粒子径が小さく、かつ
単位体積当たりの粒子数が多いビニルエステル系重合体
エマルジョンが得られる。なお、このシードエマルジョ
ンの製造の際に行うビニルエステルの乳化重合は、常圧
下で行ってもよく、また前述したビニルエステル系重合
体の製造の際の乳化重合と同様に、減圧下で行ってもよ
い。この際の減圧の程度は、前述した乳化重合と同様と
すればよい。また、このシードエマルジョン製造の際の
乳化重合は、バッチ式で行えば充分であるが、場合によ
っては連続式とすることもできる。
【0035】次に、減圧下でのシード重合によるビニル
エステル系重合体の製法に関して説明する。シードエマ
ルジョンとしては、上記の乳化重合によって得られたビ
ニルエステル系重合体エマルジョンを用い、該シードエ
マルジョンに必要に応じてビニルエステル,水,凝固点
降下剤,前述の(b),(c)成分および乳化剤あるい
はビニルアルコール系重合体が添加される。添加される
ビニルエステルは、シードエマルジョン製造時に使用し
たものと同一であっても、異なっていてもよい。また、
その種類も前記ビニルエステル系重合体エマルジョンの
説明で言及したビニルエステル類を挙げることができ
る。そのなかでも、特にビニルアルコール系重合体を得
る場合には酢酸ビニルが特に好ましい。また上記ビニル
エステルと共重合可能なモノマーを共重合することも何
ら問題はない。
【0036】添加されるビニルエステルの量は、シード
エマルジョン中のビニルエステル系重合体(A)および
シード重合開始前のビニルエステル(B)の合計量
((A)+(B))に対するシードエマルジョン中のビ
ニルエステル系重合体(A)の割合〔(A)/((A)
+(B))×100〕が0.01〜20%であることが、
高重合度のビニルエステル系重合体を得る点から好まし
く、0.05〜20%がより好ましく、0.05〜10%が
特に好ましい。この割合が20%を超えると、シードエ
マルジョン中のビニルエステル系重合体の影響が大とな
るため、高重合度のビニルエステル系重合体を得ること
が困難となる。
【0037】重合温度を0℃以下にする場合には、分散
媒である水相を凝固しないようにする必要があり、その
目的で前記のビニルエステル系重合体エマルジョンの製
法の説明の際に列挙した凝固点降下剤が添加される。凝
固点降下剤の添加量は重合温度によって異なるが、(水
/凝固点降下剤)の比率は重量比で100/0〜50/
50が好ましく、100/0〜60/40がさらに好ま
しい。
【0038】水の添加量は、シードエマルジョンの量に
対する割合が300%以下、好ましくは200%以下で
ある。添加される水の量が、シードエマルジョンの量に
対して300%を越える割合になると、シードエマルジ
ョンの粒子数が少なくなるため、シード重合時の平均重
合速度が小さくなるとともに、得られるビニルエステル
系重合体の重合度が低くなり好ましくない。
【0039】シードエマルジョンに添加されるビニルエ
ステル,水,凝固点降下剤,(b)成分,(c)成分お
よび分散安定剤の添加順序は、シードエマルジョンを安
定に保つ範囲内で任意である。シード重合温度は、高重
合度のビニルエステル系重合体を得るために、好ましく
は−60〜50℃、より好ましくは−60〜40℃、よ
り好ましくは−50〜40℃、より好ましくは−40〜
40℃、より好ましくは−30〜40℃、さらにより好
ましくは−30〜30℃である。重合温度を0℃以下に
する場合には、先に説明したと同様に凝結防止の目的て
凝固点降下剤を必要とする。
【0040】シード重合において用いる分散安定剤とし
ては、例えば乳化剤およびビニルアルコール系重合体が
挙げられる。これらの分散安定剤のなかでも、温度−6
0〜50℃の範囲および(水/凝固点降下剤)の比率
(重量比)が、100/0〜50/50の条件で溶解
し、シードエマルジョンを安定化してエマルジョン状態
を保つ能力のある分散安定剤が好ましい。分散安定剤の
うち乳化剤としては、前記のビニルエステル系重合体エ
マルジョンの製法の説明で記載したノニオン性乳化剤,
ノニオン−アニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤が
使用される。この乳化剤の使用量については、シード重
合前におけるエマルジョン中のビニルエステル系重合体
粒子の全表面積に対する乳化剤の吸着占有面積の割合
が、10〜200%の範囲内になるように、必要に応じ
て選定するのが好ましい。
【0041】本発明のシード重合においては、乳化剤の
使用量(W3)が下記の数式を満足することが好ましい。
【0042】
【数3】
【0043】但し Mw:乳化剤の分子量 A3 :エマルジョン中の粒子の全表面積 Am:乳化剤の分子占有面積 更に、B3 =〔(Mw)×(A3)〕/〔(Am)×10
0〕とすると、乳化剤の使用量(W3)は、(10×B3)
〜(200×B3)であることが好ましく、より好ましく
は(20×B3)〜(150×B3)であり、シード重合中
に重合系へ乳化剤を連続的に添加することが特に好まし
い。乳化剤は、エマルジョン中の乳化剤量が上記範囲内
であれば、間欠的に添加しても差しつかえない。乳化剤
の使用量が(10×B3)より少なくなると、エマルジョ
ンの安定性が失われて、高重合度のビニルエステル系重
合体が得られない。また乳化剤の使用量が(200×B
3)より多い場合には、乳化剤が過剰に重合系中に存在す
ることになり、新たな粒子が形成されるため高重合度の
ビニルエステル系重合体を製造する上で好ましくない。
【0044】分散安定剤のうちビニルアルコール系重合
体としては、前記のビニルエステル系重合体エマルジョ
ンの製法の説明において言及したビニルアルコール系重
合体が使用される。ビニルアルコール系重合体の重合系
への添加量は、ビニルエステルの使用量により異なる
が、通常は分散媒100重量部に対して0.5〜30重量
部であり、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましく
は1.0〜10重量部である。このビニルアルコール系重
合体を添加するにあたっては、シード重合中に重合系へ
連続的に添加するのが特に好ましい。なお、このビニル
アルコール系重合体は、エマルジョン中のビニルアルコ
ール系重合体量が上記範囲内であれば、間欠的に添加し
ても差し支えない。ビニルアルコール系重合体の使用量
が0.5重量部より少なくなると、エマルジョン中のビニ
ルエステル系重合体の粒子を安定に保つことが困難とな
り、該重合体の粒子の凝集が起きる場合があり、その結
果高重合度のビニルエステル系重合体が得られない。ま
たビニルアルコール系重合体の使用量が30重量部より
多い場合には、重合系の粘度が高くなりすぎる場合があ
り、均一に重合を進行することができなかったり、重合
熱の除熱が不十分であっり、新たな粒子が形成されたり
するために、高重合度ビニルエステル系重合体を製造す
る上で好ましくない。
【0045】さらに続いて、開始剤について説明する。
本発明のシード重合では、シードエマルジョンの製造時
と同様に(a),(b)および(c)成分からなるレド
ックス系開始剤が用いられる。またこれらのレドックス
開始剤の使用にあたっては、重合中は常に(a)成分に
対して(b)成分または(b)成分と(c)成分の和
が、充分過剰に存在する様に用いることが肝要であり、
そうでない場合には、重合後に(a)成分が重合系に残
存し、後処理などの工程において系の温度を高めたとき
に、望ましからぬ後重合反応が生起して、結果として本
発明の目的とする高重合度の重合物が得られない場合が
ある。この様な点を配慮して、(a),(b)および
(c)成分の重合系への添加は、(b)成分または
(b)成分および(c)成分は全量シード重合のはじめ
から添加しておいて、(a)成分をディレー添加する方
法によることが好ましい。(b)および(c)成分の添
加方法としては、(b)および(c)成分をシードエマ
ルジョンを製造する際にあらかじめ多めに添加する方
法、シード重合開始時に添加する方法等があるが、いず
れの添加方法も本発明では採用することができる。
【0046】この様な(a),(b)および(c)成分
の相互の濃度比や添加方法は、シードエマルジョンの製
造時と同様にビニルエステル系重合体やビニルアルコー
ル系重合体の重合度に大きく影響する因子であり、重要
である。
【0047】本発明のシード重合は減圧下で行われるこ
とから、重合温度は低温のほうが好ましく、その結果、
系中からの酸素除去および重合中の重合系への酸素侵入
に関しては、充分に注意を要する必要がある。本発明の
方法は、高重合度のビニルエステル系重合体およびビニ
ルアルコール系重合体を得る方法をも提供するものであ
り、本発明のシード重合における重合率は重合度に影響
するために重要である。本発明のシード重合は、前述の
乳化重合と同様に減圧下、好ましくは減圧沸騰下で行う
ので、モノマー等の還流が必要なために、重合率を90
%以下に選定することが望ましく、通常は10〜90
%、好ましくは20〜85%、さらに好ましくは30〜
80%である。重合率が90%を超えると、モノマー等
の還流が少なくなり、本発明の効果が低下するおそれが
ある。また重合時間に関しては、特に制限はないが、1
〜15時間が好ましい。平均重合速度も重合度に影響す
るために重要であり、平均重合速度はエマルジョン中の
粒子数によって異なるが、2〜30%/hrが好まし
く、3〜20%/hrがさらに好ましい。シード重合に
おける減圧度は、使用するモノマー,重合温度,重合速
度,重合方法および重合装置により異なるが、通常重合
温度下でモノマーあるいは凝固点降下剤が沸騰する減圧
度に適宜選定すればよい。
【0048】さらに、ビニルエステル系重合体の粒子の
平均粒径は、系中に添加される分散安定剤の使用量によ
って異なるため特に制限はないが、10μm以下が好ま
しく、5μm以下が特に好ましい。シード重合中および
シード重合後のビニルエステル系重合体の粒子数も、重
合度および重合速度に影響するために重要であり、シー
ドエマルジョン単位体積(1ミリリットル)あたりの粒
子数は、108 〜1016個が好ましい。分散安定剤が乳
化剤の場合には、1012〜1016個/mlが好ましく、
1013〜5×1015個/mlがより好ましい。分散安定
剤がビニルアルコール系重合体の場合には、108 〜1
15個/mlが好ましく、1010〜5×1014個/ml
がより好ましい。粒子数が1012個/ml(分散安定剤
が乳化剤の場合)または108 個/ml(分散安定剤が
ビニルアルコール系重合体の場合)より少ない場合に
は、重合速度が極度に小さくなってしまい、シード重合
のメリットを損なうことになる。また、ビニルエステル
系重合体の粒子の平均粒径は、本発明の意図が、シード
エマルジョンを凝集させることなくそのまま成長させる
点にあることから、用いるシードエマルジョンの平均粒
径によって異なるため、特に制限はないが、10μm以
下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0049】これまでは、主として乳化重合およびシー
ド重合が、バッチ重合である場合についての説明である
が、本発明のビニルエステルの乳化重合およびシード重
合は、バッチ重合に限られたものではなく連続重合にも
適用できる。工業生産を想定した場合には、本発明のビ
ニルエステルの乳化重合およびシード重合は、バッチ重
合よりも連続重合の方が好ましい。
【0050】以下に、ビニルエステルのシード重合を減
圧下の連続重合で行う場合について説明する。本発明の
方法は連続重合法、すなわち反応器に連続的にビニルエ
ステル系重合体シードエマルジョン,ビニルエステル系
モノマー,水,乳化剤,保護コロイド,開始剤,凝固点
降下剤及び場合によっては他の重合助剤を導入し、かつ
連続的に重合エマルジョンを取り出すことによって行う
ことができる。この連続重合の操作を行うことによっ
て、装置の小型化,品質の安定化,スケール等の付着減
少等を図ることができる。この場合、反応器としては、
攪拌反応器であれ、管状反応器であれ、またその両者が
組合された反応器であれ、連続的に添加される物質が迅
速かつ完全に混合することが可能である限り、種々の公
知の装置を使用することができる。この場合、たとえば
1個以上の連続して接続された攪拌反応器,ループ状管
反応器,多室区分形反応器等を使用できる。
【0051】また前述の乳化重合法によるエマルジョン
およびシードエマルジョンを連続的に製造する場合も、
上記と同様にすればよい。装置については、減圧状態を
保持できるものであれば、重合反応液で完全に満たされ
空間部のないもの、又は窒素,アルゴンガス等で形成さ
れる空間部を有するものでも良い。シードエマルジョ
ン,ビニルエステル系モノマー,水,乳化剤,保護コロ
イド,開始剤,凝固点降下剤は先に説明したバッチ法に
よるシード重合の場合と同様である。また各成分の添加
の方法は、それぞれ個別に添加することもできるし、あ
るいは混合して全量添加することもでき、反応器の数に
対して均一あるいは不均一に分配して各反応器に添加す
ることも可能であり、特に制限はない。さらに、重合温
度,重合率,重合時間,平均重合速度についても、前述
したバッチ法によるシード重合と同様にして選定すれば
よい。また、平均滞留時間は1.0〜15.0時間、好まし
くは2.0〜10.0時間、特に好ましくは2.0〜8.0時間
である。
【0052】上記の方法によると、従来の方法に比べ
て、高重合度のビニルエステル系重合体、特に平均重合
度が4000以上、好ましくは7000以上のビニルエ
ステル系重合体を容易に製造することができる。ここ
で、ビニルエステル系重合体の平均重合度は、該ビニル
エステル系重合体をけん化後、再酢化したポリ酢酸ビニ
ルについて、アセトン中、30℃で測定した極限粘度
[η]から次式により求めた粘度平均重合度(P)で表
したものである。 P=(〔η〕×103 /7.94)(1/0.62)
【0053】最後に、ビニルアルコール系重合体の製法
に関して説明する。本発明の減圧下、特に減圧沸騰下で
の乳化重合,シード重合あるいは連続重合によって得ら
れたビニルエステル系重合体エマルジョンは、通常の凝
固またはストリッピングによりポリマーを析出、回収す
ることももちろん可能であるが、ビニルアルコール系重
合体を得る場合には、生成したビニルエステル系重合体
エマルジョンを禁止剤を含む大量のメタノールまたはジ
メチルスルホキシド中に投入溶解して、蒸留により未反
応のビニルエステルを除去し、ビニルエステル系重合体
のメタノール溶液またはジメチルスルホキシド溶液とす
るのが好ましい。これらの溶液は水を含むが、水酸化ナ
トリウム,ナトリウムメチラトまたはナトリウムエチラ
ート等を触媒とする加アルコール分解、さらには硫酸,
塩酸,リン酸等の酸を触媒とする酸分解によるけん化反
応でビニルアルコール系重合体を得ることができる。ま
た、けん化反応に用いるアルカリまたは酸触媒の使用
量、さらにはけん化反応の温度は特に制限はなく、従来
の方法と同様に行うことができる。
【0054】本発明で得られるビニルアルコール系重合
体は、一般に重合度が高いために、完全けん化物の場
合、冷水による洗浄が可能であり、酢酸ナトリウム,乳
化剤および開始剤等の不純物を除去できる。さらに金属
イオンの除去には酸水溶液での洗浄が有効である。ま
た、上記乳化重合法等で得られるビニルアルコール系重
合体は、乳化重合等時に乳化剤を使用しない場合には、
乳化剤を含まない純粋なものとなるが、さらに精製が必
要なときには、上述と同様に冷水による洗浄が可能であ
り、酢酸ナトリウムおよび開始剤等の不純物を容易に除
去できる。
【0055】上記の方法によると、平均重合度が400
0以上、好ましくは7000以上の乳化剤を含有しない
純粋なビニルアルコール系重合体を、容易に製造するこ
とができる。ここでビニルアルコール系重合体の平均重
合度は、該ビニルアルコール系重合体を再酢化したポリ
酢酸ビニルについて、アセトン中、30℃で測定した極
限粘度から次式により求めた粘度平均重合度で表したも
のである。 P=(〔η〕×103 /7.94)(1/0.62)
【0056】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるも
のではない。なお、実施例中の「%」および「部」は特
にことわりのない限りそれぞれ「重量%」および「重量
部」を表す。なお、ポリマーエマルジョンの平均粒径
は、サブミクロン粒子系アナライザーNICOMP Mod
el 370 (Hiac/Royco 社製)を用いて測定した。単位体
積あたりの粒子数は、測定した平均粒径および重合率か
ら下記の式により計算して求めた。 粒子数(個/ミリリットル)=3Mx/4πr3 d ここで、Mはモノマー量(g)を、xはモノマーからポ
リマーへの重合率を、rはエマルジョンの平均粒径(c
m)を、dはエマルジョンの比重をそれぞれ表す。
【0057】実施例1 攪拌機,温度計,窒素導入管およびドライアイス冷却管
を取り付けた冷却管をつけた反応器にイオン交換水10
00部,酢酸ビニル1000部,ポリオキシエチレン
[POE(40)]ノニルフェニルエーテル(ノニポー
ル400,三洋化成(株)製)40部,ロンガリット1.
25部およびFeSO4 ・7H2 Oを0.12部仕込み、
30分間煮沸した後、窒素を導入しながら5℃まで冷却
し、別途脱気したイオン交換水を用いて調製した0.07
5%の過酸化水素水を10部/hrで均一に連続添加し
ながら減圧度35Torrで重合を開始した。重合中は絶え
ず酢酸ビニルモノマーが還流していた。4.1時間後に重
合率64.7%(最大重合速度18.0%/hr)に達した
ところで過酸化水素水の添加を停止し、重合を停止し
た。得られたエマルジョンの平均粒径を測定したとこ
ろ、0.25μmであった。またエマルジョン単位体積あ
たりのポリ酢酸ビニルの粒子数は6.4×1013個/ml
であった。反応器の器壁および攪拌機へのスケールの付
着はほとんどなく、反応器の温度制御も容易であった。
【0058】ここで得られたエマルジョンを、室温下で
メタノール25000部にヒドロキノンモノメチルエー
テル1部を溶解した中に投入し、攪拌しながら溶解し
た。溶解後、減圧下でメタノールを添加しながら、未反
応酢酸ビニルを除去し、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶
液を得た。この溶液の一部をとり、濃度6%,〔NaO
H〕/〔VAc〕(モル比)=0.1および温度40℃で
けん化し、得られたポリビニルアルコールの0.1部を無
水酢酸8部とピリジン2部の混合液中105℃で20時
間、ときどき攪拌しながら再酢化し、アセトン−エーテ
ル系,アセトン−水系で再沈精製をくり返したポリ酢酸
ビニルについて、アセトン中、30℃で測定した極限粘
度から求めた粘度平均重合度は19,800であった。
【0059】次にポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を、
濃度6%,〔NaOH〕/〔VAc〕(モル比)=0.1
5および温度40℃でけん化し、得られたポリビニルア
ルコールを脱液後、けん化に使用したNaOHと同量の
NaOHを添加し、メタノール中に浸漬して40℃で2
4時間再けん化した。その後メタノールで洗浄し、脱液
後40℃で乾燥し、精製ポリビニルアルコールを得た。
このポリビニルアルコールはけん化度が99.8モル%で
あり、このポリビニルアルコールを上記と同一の条件で
再酢化し、上記と同様に再沈精製を繰り返したポリ酢酸
ビニルについて、アセトン中、30℃で測定した極限粘
度から求めた粘度平均重合度は19,800であった。
【0060】比較例1 減圧重合を通常の常圧重合に変更した以外は、実施例1
と同様の方法により、5℃での乳化重合およびけん化お
よび精製を行い、得られたポリ酢酸ビニルおよびポリビ
ニルアルコールのけん化度および粘度平均重合度を測定
した。0.022%の過酸化水素水を10部/hrで均一
に連続添加しながら重合を開始した。重合中は系を窒素
ガスでシールし、酸素の侵入をおさえた。3.5時間後に
重合率60.2%(最大重合速度17.2%/hr)に達し
たところで重合を停止した。得られたエマルジョンの平
均粒径は0.28μm、エマルジョン単位体積あたりのポ
リ酢酸ビニル粒子数は、4.2×1012個/mlであっ
た。反応器の器壁および攪拌機へスケールが付着し、次
の重合を行なうためには、反応器および攪拌機のスケー
ルを除去する必要があった。
【0061】ここで得られたエマルジョンを室温下でメ
タノール35000部にヒドロキノンモノメチルエーテ
ル1部を溶解した中に投入し、攪拌しながら溶解した。
溶解後、実施例1と同様にして未反応酢酸ビニルを除去
し、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。この溶液
の一部をとり、実施例1と同様の条件下で、けん化反応
および再酢化反応を行い、精製したポリ酢酸ビニルを得
た。該ポリ酢酸ビニルについて、アセトン中、30℃で
測定した極限粘度から求められた粘度平均重合度は14,
000であった。次にポリ酢酸ビニルのメタノール溶液
を実施例1と同一の条件下で、けん化,再けん化,洗
浄,乾燥を行い、ポリビニルアルコールを得た。このポ
リビニルアルコールはけん化度が99.8モル%であり、
このポリビニルアルコールを上記と同一の条件下で再酢
化し、上記と同様にして再沈精製をくり返したポリ酢酸
ビニルについて、アセトン中、30℃で測定した極限粘
度から求めた粘度平均重合度は14,000であつた。
【0062】実施例2 攪拌機,温度計,窒素導入管および冷却管をつけた反応
器にイオン交換水1000部,酢酸ビニル30部,ポリ
ビニルアルコール(重合度500,けん化度88モル%
(PVA−205,(株)クラレ製))20部,ロンガ
リット0.40部およびFeSO4 ・7H2 Oを0.03部
仕込み、30分間煮沸した後、窒素を導入しながら25
℃まで冷却し、別途脱気したイオン交換水を用いて調製
した0.032%の過硫酸カリウム水溶液を5部/hrで
均一に連続添加しながら重合を開始した。重合中は系を
窒素ガスでシールし、酸素の侵入をおさえた。0.1時間
後に重合溶液は青色を呈し、0.5時間後に重合率50.1
%に達したところで過硫酸カリウム水溶液の添加を停止
し、重合を停止し、その後、0.5時間攪拌を続けたとこ
ろ、重合率は52.1%であった。また得られたエマルジ
ョンの平均粒径を測定したところ、0.070μmであっ
た。さらに求めた平均粒径の値を用いてエマルジョン単
位体積あたりのポリ酢酸ビニルの粒子数を算出すると7.
3×1013個/mlであった。
【0063】攪拌機,温度計,窒素導入管およびドライ
アイス冷却管を取り付けた反応器に、別途30分間、煮
沸した後、窒素を導入しながら室温まで冷却した酢酸ビ
ニル970部を、上記により得られたエマルジョンに添
加し、40℃に調整した。別途脱気したイオン交換水を
用いて調製した0.032%の過硫酸カリウム水溶液を1
0部/hrで、また別途脱気したイオン交換水を用いて
調製した20%のポリビニルアルコール(重合度50
0,けん化度88モル%(PVA−205,(株)クラ
レ製))水溶液を10部/hrで均一に連続添加しなが
ら、減圧度170Torrで重合を開始した。重合中は絶え
ず酢酸ビニルモノマーが還流していた。5.0時間後に重
合率75.6%(最大重合速度16%/hr)に達したと
ころで、過硫酸カリウム水溶液およびビニルアルコール
水溶液の添加を停止し、重合を停止した。得られたエマ
ルジョンの平均粒径を測定したところ、0.48μmであ
った。またエマルジョン単位体積あたりのポリ酢酸ビニ
ルの粒子数は1.0×1013個/mlであった。反応器の
器壁および攪拌機へのスケールの付着が非常に少なく、
反応器の温度制御も容易であった。
【0064】ここで得られたエマルジョンを、室温下で
ジメチルスルホキシド15000部にヒドロキノンモノ
メチルエーテル0.6部を溶解した中に投入し、攪拌しな
がら溶解した。溶解後、減圧下でジメチルスルホキシド
を添加しながら70℃で未反応酢酸ビニルを除去し、ポ
リ酢酸ビニルのジメチルスルホキシド溶液を得た。この
溶液の一部をとり、蒸溜水中に投入し、いったんポリ酢
酸ビニルを取り出した後、アセトン−水−ヘキサンで再
沈精製を数回くり返した後、蒸溜水中に投入し、煮沸し
て精製ポリ酢酸ビニルを得た。該ポリ酢酸ビニルをメタ
ノールに溶解し、濃度10%,〔NaOH〕/〔VA
c〕(モル比)=0.1,温度40℃でけん化し、得られ
たポリビニルアルコールの0.1部を無水酢酸8部とピリ
ジン2部の混合液中105℃で20時間、ときどき攪拌
しながら再酢化し、アセトン−エーテル、アセトン−水
系で再沈精製をくり返したポリ酢酸ビニルについて、ア
セトン中、30℃で測定した極限粘度から求めた粘度平
均重合度は5,300であった。
【0065】次に、ポリ酢酸ビニルのジメチルスルホキ
シド溶液を、濃度10%,〔NaOH〕/〔VAc〕
(モル比)=0.15,温度40℃,窒素流下でけん化
し、得られたポリビニルアルコールを脱液後、けん化に
使用したNaOHと同量のNaOHを添加し、メタノー
ル中に浸漬して40℃で24時間再けん化した。その後
メタノールで洗浄し、脱液後40℃で乾燥しポリビニル
アルコールを得た。このポリビニルアルコールはけん化
度が99.8モル%であり、このポリビニルアルコールを
上記と同一の条件で再酢化し、上記と同様に再沈精製を
くり返したポリ酢酸ビニルについて、アセトン中、30
℃で測定した極限粘度から求めた粘度平均重合度は5,3
00であった。
【0066】実施例3 以下に示した重合条件に変更した以外は、実施例2と同
様の方法により、重合,けん化および精製を行い、得ら
れたポリ酢酸ビニルおよびポリビニルアルコールのけん
化度および粘度平均重合度を測定した。重合条件を変更
した点のみを下記に示す。シードエマルジョンの製造条
件としては、反応器に仕込む乳化剤としてポリオキシエ
チレン[POE(30)]ラウリルエーテル硫酸ナトリ
ウム(トラックスK−300,日本油脂(株)製)の3
5%水溶液20部,ロンガリット0.60部,FeSO4
・7H2 Oを0.03部,イオン交換水1000部および
酢酸ビニル60部を仕込み、煮沸脱気後、5℃に冷却し
た。0.010%の過酸化水素水を5部/hrで均一に連続
添加しながら重合を開始した。1.0時間後に重合率26.
6%に達したところで、重合を停止した。得られたシー
ドエマルジョンの平均粒径は0.064μm、エマルジョ
ン単位体積あたりのポリ酢酸ビニル粒子数は、9.8×1
13個/mlであった。シード重合の製造条件は、別途
30分間煮沸した後、窒素を導入しながら室温まで冷却
した酢酸ビニル940部およびメタノール360部を上
記により得られたシードエマルジョンに添加し、−20
℃に冷却した。0.010%の過酸化水素水を5部/hrお
よびポリオキシエチレン[POE(30)]ラウリルエ
ーテル硫酸ナトリウム(トラックスK−300,日本油
脂(株)製)の35%水溶液を10部/hrで均一に連続
添加しながら、減圧度3Torrで重合を開始した。6.0時
間後に重合率50.9%(最大重合速度9.0%/hr)に
達したところで、重合を停止した。得られたエマルジョ
ンの平均粒径は0.210μm、エマルジョン単位体積あ
たりのポリ酢酸ビニル粒子数は、5.7×1013個/ml
であった。反応器の器壁および攪拌機へのスケールの付
着が非常に少なく、反応器の温度制御も容易であった。
【0067】ここで得られたエマルジョンを、室温下で
メタノール70000部にヒドロキノンモノメチルエー
テル1部を溶解した中に投入し、攪拌しながら溶解し
た。該ポリ酢酸ビニルの粘度平均重合度は32,500で
あった。また該ポリ酢酸ビニルをけん化して得たポリビ
ニルアルコールのけん化度は99.8モル%、粘度平均重
合度は32,500であった。
【0068】実施例4 実施例2と同様の方法により、減圧沸騰下5℃でのシー
ド重合を開始し、1.5時間後に重合率25.2%(最大重
合速度)に達したところで、別途実施例2と同様にして
調製したシードエマルジョン610部/hr,酢酸ビニ
ル590部/hr,20%のポリビニルアルコール(重
合度300,けん化度88モル%(PVA−203,
(株)クラレ製))水溶液10部/hrおよび0.010
%の過酸化水素水10部/hrの均一な連続添加を開始
し、同時に反応混合液を1220部/hrで連続的に除
去し、同一の装置を備えつけた2番目の反応器に導入し
た。2番目の反応器には20%のポリビニルアルコール
(重合度300,けん化度88モル%(PVA−20
3,(株)クラレ製)水溶液10部/hrおよび0.01
0%の過酸化水素水10部/hrを均一に連続添加し、
重合率50%(重合時間1.5時間)に達したところで、
反応混合液を1240部/hrで連続的に除去し、同様
の3番目の反応器に導入した。また、3番目の反応器に
は20%のポリビニルアルコール(重合度300,けん
化度88モル%(PVA−203,(株)クラレ製))
水溶液10部/hrおよび0.010%の過酸化水素水1
0部/hrを均一に連続添加し、重合率75%(重合時
間1.5時間)に達したところで、反応混合液を1260
部/hrで連続的に除去した。2番目および3番目の反
応器も1番目の反応器と同様に35Torrに減圧にした。
得られたエマルジョンの平均粒径を測定したところ、0.
458μmであり、またエマルジョン単位体積(1ミリ
リットル)あたりのポリ酢酸ビニルの粒子数は1.0×1
13個/mlであった。反応器の器壁および攪拌機への
スケールの付着が非常に少なく、反応器の温度制御も容
易であった。得られたエマルジョンを実施例1と同様に
して、けん化および精製等を行ったところ、ポリ酢酸ビ
ニルの粘度平均重合度は18,600であった。また該ポ
リ酢酸ビニルをけん化して得たポリビニルアルコールの
けん化度は99.8モル%、粘度平均重合度は18,600
であった。
【0069】
【発明の効果】上記の説明から明らかなように、本発明
の減圧下、特に減圧沸騰の状況下での乳化重合,シード
重合および連続乳化重合法は、従来の方法に比べて、重
合熱の除熱が容易で、スケール等の凝集エマルジョンが
なく、しかも、工業的な規模で容易にかつ安定に目的と
する重合体を得ることのできる。また、本発明の方法に
よって製造される重合体、特にビニルエステル系重合体
およびビニルアルコール系重合体は、高重合度の重合
体、特に高重合度のビニルエステル系重合体およびビニ
ルアルコール系重合体である。したがって、本発明の方
法は、各種重合体、とりわけビニルエステル系重合体お
よびビニルアルコール系重合体の工業的な製法として、
その実用的価値は極めて大きい。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 減圧下で不飽和単量体を乳化重合するこ
    とを特徴とする重合体の製法。
  2. 【請求項2】 減圧下でビニルエステルを乳化重合する
    ことを特徴とするビニルエステル系重合体の製法。
  3. 【請求項3】 乳化重合がシード重合である請求項2記
    載のビニルエステル系重合体の製法。
  4. 【請求項4】 乳化重合が連続重合である請求項2また
    は3記載のビニルエステル系重合体の製法。
  5. 【請求項5】 請求項2〜4のいずれか1つの項に記載
    の製法により得られたビニルエステル系重合体をけん化
    することを特徴とするビニルアルコール系重合体の製
    法。
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