JP2764909B2 - ブレージングシート及び熱交換器 - Google Patents

ブレージングシート及び熱交換器

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JP2764909B2
JP2764909B2 JP63033287A JP3328788A JP2764909B2 JP 2764909 B2 JP2764909 B2 JP 2764909B2 JP 63033287 A JP63033287 A JP 63033287A JP 3328788 A JP3328788 A JP 3328788A JP 2764909 B2 JP2764909 B2 JP 2764909B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は,耐食性に優れたブレージングシート及び該
ブレージングシートを用いたアルミニウム製熱交換器に
関する。
〔従来技術〕
従来,ドロンカップ型のアルミニウム製熱交換器に使
用するブレージングシートとしては,Al−Mn系のアルミ
ニウム合金を芯材とした材料が知られている。また,こ
の従来のブレージングシートは,腐食環境が厳しい条件
で使用される場合には腐食による孔食が生じ易いことも
知られている。
そこで,孔食が生じないブレージングシートを提供す
るための試みが幾つくかなされている。例えば,特開昭
62−40412号公報には,「高強度アルミニウム真空ブレ
ージングシート」が開示されている。この真空ブレージ
ングシートは,一定量のZn,Mg,Mn,Crなどを含有するア
ルミニウム合金を芯材とし,その片面には拡散防止層a
及びろう材を,また他の片面には拡散防止層bのみを有
する合計4層構造のクラッド材からなるものである。
上記拡散防止層aは,純アルミニウム又はMn1.5重量
%以下と通常の不純物と残部アルミニウムとからなるア
ルミニウム合金である。また,上記ろう材は,Al−Si−M
g系からなるアルミニウム合金ろう材である。また,上
記拡散防止層bは,上記a層と同様の純アルミニウム又
はアルミニウム合金である。
ところで,ブレージングシートをプレート材として使
用するドロンカップ型熱交換器(後述する第1図)は,
一般にブレージングシートを所定の形状にプレス成形
し,その成形物であるプレートをそれぞれ2つ1組でろ
う付けして1ユニットの液体タンク形成部分とチューブ
部分とを作製する。そして,これらのユニットをフィン
と交互にサンドイッチ構造に多数積層して,ろう付け加
熱により接合し,その全体を構成する。このろう付け
は,上記ブレージングシートの表面のろう材をフィンと
接合することにより行うものである。そして,このとき
使用する上記フィンは,一般にAl−Mg−Si系又はAl−Mn
−Zn−Sn系のアルミニウム合金が使用される。
〔解決しようとする課題〕
しかしながら,上記フィンに使用されるアルミニウム
合金は,上記ブレージングシートの芯材よりも電極電位
が卑である。そのため,従来のブレージングシートは,
ドロンカップ型熱交換器のプレート材として使用する場
合,上記フィンの犠牲腐食作用の働きによりプレート材
の耐食性向上を図ってきている。
しかし,従来のブレージングシートにおいては,特に
フィンが接合されていないプレート材の部分,例えばタ
ンク部分には,犠牲腐食作用が働く上記フィンが接触し
ていないため,耐食性が低下する。
その結果,タンク部分などのように,フィンが接合さ
れていない部分に孔食を生ずる場合がある。それ故,上
記従来のブレージングシートよりも更に耐食性に優れた
ブレージングシート,更には耐食性に優れた熱交換器の
出現が要望されている。
本発明は,かかる従来技術の問題点鑑みてなされたも
ので,耐食性に優れたブレージングシート及びこれを用
いたアルミニウム製熱交換器を提供しようとするもので
ある。
〔課題の解決手段〕
本発明におけるブレージングシートは,下記に示す組
成からなる第1アルミニウム合金を芯材とし,該芯材の
両面に純アルミニウム又はCu(銅)含有量が0.25重量%
以下である第2アルミニウム合金からなり,ろう付け用
の加熱をする際に上記芯材中のCuをろう材側である外方
へ拡散させるための中間層をクラッドし,更にその両面
にAl(アルミニウム)−Si(シリコン)系又はAl−Si−
Mg(マグネシウム)系のろう材をクラッドしてなること
を特徴とする耐食性に優れたブレージングシートにあ
る。
即ち,上記第1アルミニウム合金は,Cu0.2〜0.7重量
%と,Mn(マンガン)1.5重量%以下,Mg0.5重量%以下,C
r(クロム)0.2重量%以下,Ti(チタン)0.2重量%以
下,Zr(ジルコン)0.2重量%以下の群より選ばれたいず
れか1種又は2種以上の金属と,通常の不純物と,残部
アルミニウムとからなるアルミニウム合金である。
本発明にかかるブレージングシートは,簡潔に言え
ば,特定組成の芯材の両面に特定の中間層を,更にその
上にろう材をクラッドした5層からなる複合材である。
そして,上記中間層は,該ブレージングシートを熱交換
器のフィン等にろう付け加熱接合する際に芯材中のCuを
外方へ拡散させるための,Cu濃度勾配形成層としての役
割を有する。
しかして,芯材としては,前記第1アルミニウム合金
を使用する。ここにCuを0.2〜0.7%(重量比,以下同
じ)としたのは,この範囲を外れるとブレージングシー
トの耐食性が著しく低下するからである(第5図〜第7
図参照)。また,Mnを1.5%以下としたのはMnをそれ以上
含有すると成形性が悪化するため,Mgを0.5%以下とした
のはMgをそれ以上含有すると成形性が悪化するため,更
にCr,Ti,Zrを0.2%以下としたのはCr,Ti,Zrをそれ以上
含有すると鋳造不可能になるためである。
また,該芯材両面には,芯材のCuを拡散するための中
間層をクラッドする。この中間層は,上記Cu濃度勾配形
成層としての役割を有する純アルミニウム,又は第2ア
ルミニウム合金により形成する。上記純アルミニウム
は,通常の不可避的な不純物を含有していても良い。ま
た,上記第2アルミニウム合金は0.25%以下のCuを含有
している。これは,上記芯材から中間層へCuを拡散し易
くするためである。Cu含有量を0.25%以下としたのは,
これより多くするとろう材加熱によって芯材中により拡
散してくるCuとの合計のCu量が多くなりすぎ,耐食性が
劣化するためである。
また,更に該中間層の両面に所定のろう材をクラッド
する。該ろう材としては,従来も用いられているAl−Si
系合金又はAl−Si−Mg系合金ろう材を使用する。
しかして,上記の芯材,中間層及びろう材からなる5
層は互いにクラッドされている。かかるクラッドは,こ
れらの5層の材料を積層し,約500℃の高温下で高温圧
延することなどにより,互いに結合することにより行
う。
次に,上記ブレージングシートを用いた熱交換器につ
き述べる。
該熱交換器は,プレート材としてブレージングシート
を用い,該ブレージングシートにフィンをろう付けして
なるドロンカップ型のアルミニウム製熱交換器におい
て,上記ブレージングシートは,下記に示す組成からな
る第1アルミニウム合金を芯材とし,該芯材の両面に純
アルミニウム又はCu含有量が0.25重量%以下である第2
アルミニウム合金からなり,ろう付け用の加熱をする際
に上記芯材中のCuをろう材側である外方へ拡散させるた
めの中間層をクラッドし,また更にその両面にAl−Si系
又はAl−Si−Mg系のろう材をクラッドしてなり,かつ該
ブレージングシートは芯材から中間層を経てろう材に至
るにしたがってCu含有量が漸次減少していることを特徴
とする耐食製に優れたアルミニウム製熱交換器である。
また,上記第1アルミニウム合金は,Cu0.2〜0.7重量
%と,Mn1.5重量%以下,Mg0.5重量%以下,Cr0.2重量%以
下,Ti0.2重量%以下,Zr0.2重量%以下の群より選ばれた
いずれか1種又は2種以上の金属と,通常の不純物と,
残部アルミニウムとからなるアルミニウム合金である。
ここに重要なことは,上記熱交換器は,前述したろう
付け用の加熱をする際に上記芯材中のCuをろう材側であ
る外方へ拡散させるための中間層を有するブレージング
シートをそのプレート材として用いるものである。ま
た,該熱交換器においてはフィンと接合されているプレ
ート材,即ちブレージングシートは内側から表面に至る
にしたがって徐々にそのCu含有量が減少していることで
ある(第3図参照)。しかして,ブレージングシートに
おけるCu含有量は,その基材としての芯材中においては
中央及びその周辺部はろう付け加熱の前とほぼ同様のCu
含有量を有しているが,その外側は中間層に向かうにし
たがって減少している。更に,中間層においては芯材と
接している側はその接している部分の芯材外面と同様の
Cu含有量を示し,外面に至るにしたがって減少してい
る。更に,ろう材においては中間層と接している部分は
その接している部分の中間層と同様のCu含有量を示し,
表面に至るにしたがって減少している。しかして,後述
のごとく,上記のごときCu含有量の漸次減少が熱交換器
の耐食性向上の大きく貢献しているのである。
また,芯材,中間層,ろう材の材質,クラッド等に関
しては前記ブレージングシートにおいて説明したものと
同様である。
次に,前記ブレージングシートを用いたもう1つの熱
交換器について述べる。
該熱交換器は,プレート材としてブレージングシート
を用い,該ブレージングシートにフィンをろう付けして
なるドロンカップ型のアルミニウム製熱交換器におい
て,該熱交換器は,前記第1アルミニウム合金を芯材と
し,該芯材の両面に純アルミニウム又はCu含有量が0.25
重量%以下である第2アルミニウム合金からなり,ろう
付け用の加熱をする際に上記芯材中のCuをろう材側であ
る外方へ拡散させるための中間層をクラッドし,更にそ
の両面にAl−Si系又はAl−Si−Mg系のろう材をクラッド
してなるブレージングシートを用いてなると共に,該ブ
レージングシートにフィンをろう付け加熱により接合し
てなることを特徴とする耐食性に優れたアルミニウム製
熱交換器である。
即ち,上記熱交換器は前述した,ろう付け用の加熱を
する際に上記芯材中のCuをろう材側である外方へ拡散さ
せるための中間層を有するブレージングシートをそのプ
レート材として用い,これとフィンとをろう付け加熱に
より接合したものである。かかるろう付け加熱によっ
て,プレート材としてのブレージングシートとフィンと
がろう付けされると共に,該ブレージングシートはその
中央から外部にかけてCuが拡散し,漸次Cu含有量が減少
している状態となる。また,芯材,中間層,ろう材,ク
ラッド等に関しては,前記ブレージングシートにおいて
説明したものと同様である。
〔作用及び効果〕
本発明にかかるブレージングシートは,Cu含有量0.2〜
0.7%など前記特定組成の芯材の両面に,純Al又はCu含
有量0.25%以下の第2アルミニウム合金からなる中間層
をクラッドし,更にその両面に特定のろう材をクラッド
してなるものである。そして,特に重要なことは,該ブ
レージングシートはその中央ブレージングに上記ろう付
用の加熱をする際に上記芯材中のCuをろう材側である外
方へ拡散させるための中間層を有することである。しか
して,該ブレージングシートは,これを例えば熱交換器
のプレート材として用い,ろう付け加熱によりフィンと
接合する場合には,このろう付け加熱時の高温度(例え
ば580〜630℃)により,その芯材中のCuが中間層及びろ
う材の方向に拡散する。
そして,その拡散の結果,前記のごとくブレージング
シート中のCu含有量が中央付近から外表面に向かって漸
次減少した状態となる(第3図参照)。このCu含有量の
漸次減少は,上記中間層を芯材とろう材との間に介在さ
せたことによって形成される。つまり,中間層はCuを拡
散させるための濃度勾配形成層としての役目を果たすも
のであり,このことはまた後述のごとくブレージングシ
ートの耐食性向上に大きな貢献をする層としての価値を
有する。
しかして,上記のごときCuの濃度勾配の形成により,
該ブレージングシートの電極電位分布は,第4図に示す
ごとくその表面から内部に向かって貴となるよう構成さ
れる。かかる電位勾配の形成によって,最表面のろう材
及びその内側の中間層が,芯材の犠牲腐食合金として作
用することとなり,そのために芯材の孔食を防止するこ
ととなる。それ故,熱交換器において該ブレージングシ
ートとフィンとが接触していない部分(例えば,タンク
部分)においても優れた耐食性が発揮されるのである。
上記のごとく,本発明によれば,耐食性の優れたブレ
ージングシートを提供することができる。また,該ブレ
ージングシートは,自動車用熱交換器,例えばラジエー
タ,ヒーター,クーラーコンデンサーなどの製造に,優
れた耐食性を有するAl合金製ブレージングシートとして
用いることができる。
また,上記中間層を有するブレージングシートを用い
た熱交換器については,上記ブレージングシートにフィ
ンをろう付けしたもので,熱交換器を構成しているプレ
ート材としてのブレージングシートは内側から外側に向
かってCu含有量が漸次減少している。つまり,前記のご
ときCuの濃度勾配層が形成されている。それ故,前記の
ごとく,ろう材及び中間層がろう付けの犠牲腐食合金と
して作用することになり,プレート材は耐食性が向上す
る。したがって,耐食性に優れた熱交換器を提供するこ
とができる。
また,前記もう1つの熱交換器に関しても,前記中間
層を有するブレージングシートをプレート材として用
い,該プレート材にフィンをろう付け加熱により接合し
ているので,このろう付け加熱の際に上記のごときCuの
濃度勾配層が形成される。そのため,上記と同様にろう
材層及び中間層が犠牲腐食合金として作用する。したが
って,腐食性に優れた熱交換器を提供することができ
る。
〔実施例〕
本発明の実施例にかかるアルミニウム製熱交換器につ
いて,第1図〜第7図を用いて説明する。
各実施例に先立って,まず本例の熱交換器につき示
す。
本例の熱交換器1は,第1図に示すごとく,熱交換を
行うコアー部7と冷媒等を流出入するためのパイプ8と
この両者を連結するタンク9とからなる。また,上記コ
アー部7にはプレート材6で形成したチューブ61の間に
多数のフィン71が併設されている。
そして,プレート材6はチューブ61の部分においては
フィン71と接合しているが,上下のタンク9の部分では
フィン71が接合されていない。
上記熱交換器は,いわゆるドロンカップ型熱交換器と
称されるもので,概略次のようにして作製する。即ち,
長板状のブレージングシートの両端部分を深く,その間
は浅くプレス成形して,この成形物であるプレートを2
つ1組でろう付けして1ユニットのタンク部分とチュー
ブ部分とを形成する。そして,このユニットを多段積層
すると共にタンク9を連通させる。そして,そのチュー
ブ61の部分における間隙にフィン71をろう付けする。
しかして,第2図に示すごとく,ブレージングシート
5は第1アルミニウム合金で作成した芯材2と,その両
面に形成された濃度勾配層の役割を有する中間層3と,
その両面に形成されたろう材層4との合計5層よりな
る。
実施例1〜4 第1表に示す芯材,中間層及びろう材を用いて,4種類
のブレージングシートを作製した。次いで,上記のごと
くしてドロンカップ型熱交換器を作製した。そして,こ
の4種の熱交換器につき腐食性評価のためのCASS試験を
行った。
上記芯材2としては,上記第1表に示すごとく,大別
して実施例1,2及び3,4において,2種類のアルミニウム合
金を使用する。即ち,実施例1及び2においては,Al−
1.2%Mn−0.5%Cuのアルミニウム合金を使用した。
他方,実施例3及び4において,芯材2としては,Al
−0.8%Mn−0.3%Cu−0.1%Crのアルミニウム合金を使
用した。
また,比較例として,芯材にはA3003(JIS規格)のア
ルミニウム合金を使用した。この合金は,Cu0.05〜0.2
%,Mn1.0〜1.5%等を含有している。なお,比較例にお
いては,中間層は形成せず,ろう材を芯材の両面にクラ
ッドした。これは腐食性の対比を明確にするためであ
る。
次に,中間層3としては,実施例1及び3において
は,上記A3003を,また実施例2及び4においては,A107
0のアルミニウム合金を使用した。この合金は,Cu0.04
%,Mn0.04%,Mg0.03%等を含有している。
そして,ろう材4としては,実施例1〜4のいずれの
場合においても,A4104アルミニウム合金を使用した。こ
の合金は,Cu0.04%,Mn0.04%,Mg1.2%等を含有してい
る。
しかして,上記芯材,中間層,ろう材は前記のごとく
5層に重ねて,約500℃にて圧延したクラッドしてブレ
ージングシートとした。また,熱交換器作製時において
該ブレージングシートのプレートとフィンのろう付けは
600℃において行った。更に,このフィンはAl−1.3%Mn
−0.05%Sn合金を用いた。
上記CASS試験は,金属の腐食を評価するためのもの
で,その概要は次の通りである。即ち,サンプル材に対
し,NaCl5%,CuCl20.026%溶液を酢酸でpH3に調整した腐
食液を連続噴霧し,このときの温度を50℃に保つもので
ある。
上記CASS試験の結果は,第1表に示した。
同表より知られるごとく,本発明に関する実施例1〜
4のいずれの場合も,700時間を経ても洩れが発生するこ
となく,またプレート材6に孔食は生じなかった。これ
に対し比較例は,約300時間でプレート材6に孔食を生
じ,洩れるに至った。
このように,本例にかかる熱交換器1のプレート材6
が洩れを発生しなかった理由は,主として次のように考
えられる。
即ち,第3図に示すごとく,ブレージングシート5に
おける中間層3には,ろう付け加熱時に芯材2からCuが
拡散移動する。そのため,中間層3はCuの濃度勾配層を
形成し,そのCu濃度分布は,第3図に示すようになる。
即ち,同図において,芯材2は,その両端部を除いてCu
濃度が約0.5%であるが両端部ではCu濃度が低下してい
る。また,中間層3では,外方向(ろう材層4の方向)
に向かうにしたがって漸次Cu濃度が0に近づく。また,
ろう材層4においては,殆どCu濃度は0になる。この結
果,ブレージングシート5の電極電位は,第4図に示す
分布となる。即ち,芯材2においては,その中央部分付
近の電極電位は約−710mvで貴であるのに対し,外へ向
かうにしたがって低い電位となる。更に,中間層3にお
いては,電極電位は外部に向かうにしたがって低下す
る。また,ろう材層4は,電極電位が約−750mvとな
り,卑となる。
このように電極電位勾配が形成されることによって,
中間層3及びろう材層4は芯材2に対し,犠牲腐食作用
が働き,芯材の腐食防止の役割を果たすことになる。そ
のため,芯材2は,腐食されることなく,したがって孔
食を生ずることはない。したがって,プレート材6にお
いて,フィンと接触していない部分も優れた耐食性を有
することになる。
実施例5〜7 次に,芯材2と中間層3との組成割合を変化させ,種
々のブレージングシートを作製し,孔食腐食テストを行
った。
上記ブレージングシートにおける各層の組成及びその
結果を,第2表〜第4表並びに第5図〜第7図を用いて
説明する。
即ち,厚み0.4mmの芯材2と,その両面にそれぞれ厚
み0.005mmの中間層3とろう材層4とをクラッドした,
合計板厚み0.6mmのブレージングシート5を作成した。
次に,このブレージングシート5を温度600℃におい
て3分間真空加熱処理した。この処理は,ブレージング
シートをフィンとろう付けして熱交換器を製造する際の
加熱に相当し,この加熱によって前記のごとく芯材中の
Cuが拡散する。
その後,ブレージングシート5を800mm×100mmのサイ
ズに切断した。このようにして作成した平板をテストピ
ースとして,上記CASS試験による金属腐食テストを行っ
た。
以下,実施例5〜7に関する,各層の材質を第2〜4
表に示す。
実施例5にかかるブレージングシートNo.5−1ないし
5−4は,上記第2表に示すごとく,芯材2としてはい
ずれの場合もAl−1.2%Mn−0.5%Cuを使用した。また,
中間層3及びろう材4は,上表に示す通りである。な
お,No.5−2,No.5−4に示す0.3Cuとは,0.3%のCuを更に
含有させたものである(以下同じ)。
実施例6においては,芯材中のMn及びCu量を実施例5
よりも少なくしている。
実施例7において,Cu量を実施例6よりも更に少なく
した。
これらのブレージングシートを上記CASS試験のテスト
ピースとして使用し,第5図〜第7図に示すごとき,金
属腐食の試験結果を得た。同図は,縦軸に最大孔食深さ
(mm)を,また横軸に試験時間(Hr)を取ったものであ
る。
第5図に示す実施例5において,その試料No.5−1及
びNo.5−3は,試験時間約450時間においても最大孔食
深さは0.1mm以下であった。これに対し,No.5−4は450
時間経過時には最大孔食深さは約0.4mmであり,No.5−2
は0.6mmにも達して孔があいていた。この結果から明ら
かなように,芯材2はAl−1.2%Mn−0.5%Cuのアルミニ
ウム合金を,また中間層3はA3003又はA1070のアルミニ
ウム合金を使用したもの(No.5−1,No.5−3)が耐食性
に優れていることが分かる。しかして,No.5−2,No.5−
4が耐食性に劣る理由は,中間層に0.3%ものCuを更に
含有させているためである。
次に,第6図に示す実施例6において,そのNo.6−1
は試験時間約450時間において,最大孔食深さは約0.2m
m,No.6−3は約0.1mmであった。これに対し,No.6−2及
びNo.6−4は,いずれも孔があいていた。この結果から
明らかなように,芯材2はAl−0.8%Mn−0.3%Cuのアル
ミニウム合金を,また中間層3はA3003及びA1070のアル
ミニウム合金を使用したもの(No.6−1,No.6−3)が耐
食性に優れていることが分かる。しかして,No.6−2,No.
6−4が耐食性に劣る理由は,中間層に0.3%ものCuを更
に含有させているためである。
また,第7図に示す実施例7においては,そのNo.7−
1〜No.7−4のいずれも試験時間約450時間において孔
が明いていた。この結果から明らかなように,芯材2と
してAl−0.8%Mn−0.1Cuのアルミニウム合金は,Cu量が
低く,耐食性に劣ることが分かる。即ち,上記実施例5
及び6にかかるクラッド材に比較して,Cuが僅か0.1%し
か含有されていないアルミニウム合金を芯材とする場合
には,耐食性が極めて低いことが分かる。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第7図は本発明の実施例を示し,第1図は熱交
換器の斜視図,第2図はブレージングシートの断面図,
第3図は各層におけるCu濃度を示すグラフ,第4図は各
層における電極電位を示すグラフ,第5図〜第7図は実
施例5ないし7におけるブレージングシートのCASS試験
結果で,試験時間(Hr)と最大孔食深さ(mm)との関係
を示すグラフである。 1……熱交換器, 2……芯材, 3……中間層, 4……ろう材, 5……ブレージングシート, 6……プレート材, 61……チューブ 7……コアー部, 71……フィン, 8……パイプ, 9……タンク,
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−100250(JP,A) 特開 昭61−99597(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 21/00 B32B 15/01

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記に示す組成からなる第1アルミニウム
    合金を芯材とし, 該芯材の両面に純アルミニウム又はCu含有量が0.25重量
    %以下である第2アルミニウム合金からなり,ろう付け
    用の加熱をする際に上記芯材中のCuをろう材側である外
    方へ拡散させるための中間層をクラッドし, 更にその両面にAl−Si系又はAl−Si−Mg系のろう材をク
    ラッドしてなることを特徴とする耐食性に優れたブレー
    ジングシート。 上記第1アルミニウム合金は,Cu0.2〜0.7重量%と,Mn1.
    5重量%以下,Mg0.5重量%以下,Cr0.2重量%以下,Ti0.2
    重量%以下,Zr0.2重量%以下の群より選ばれたいずれか
    1種又は2種以上の金属と,通常の不純物と,残部アル
    ミニウムとからなるアルミニウム合金。
  2. 【請求項2】プレート材としてブレージングシートを用
    い,該ブレージングシートにフィンをろう付けしてなる
    ドロンカップ型のアルミニウム製熱交換器において, 上記ブレージングシートは,下記に示す組成からなる第
    1アルミニウム合金を芯材とし, 該芯材の両面に純アルミニウム又はCu含有量が0.25重量
    %以下である第2アルミニウム合金からなり,ろう付け
    用の加熱をする際に上記芯材中のCuをろう材側である外
    方へ拡散させるための中間層をクラッドし, また更にその両面にAl−Si系又はAl−Si−Mg系のろう材
    をクラッドしてなり, かつ該ブレージングシートは芯材から中間層を経てろう
    材に至るにしたがってCu含有量が漸次減少していること
    を特徴とする耐食性に優れたアルミニウム製熱交換器。 上記第1アルミニウム合金は,Cu0.2〜0.7重量%と,Mn1.
    5重量%以下,Mg0.5重量%以下,Cr0.2重量%以下,Ti0.2
    重量%以下,Zr0.2重量%以下の群より選ばれたいずれか
    1種又は2種以上の金属と,通常の不純物と,残部アル
    ミニウムとからなるアルミニウム合金。
  3. 【請求項3】プレート材としてブレージングシートを用
    い,該ブレージングシートにフィンをろう付けしてなる
    ドロンカップ型のアルミニウム製熱交換器において, 該熱交換器は,下記に示す組成からなる第1アルミニウ
    ム合金を芯材とし, 該芯材の両面に純アルミニウム又はCu含有量が0.25重量
    %以下である第2アルミニウム合金からなり,ろう付け
    用の加熱をする際に上記芯材中のCuをろう材側である外
    方へ拡散させるための中間層をクラッドし, 更にその両面にAl−Si系又はAl−Si−Mg系のろう材をク
    ラッドしてなるブレージングシートを用いてなると共
    に, 該ブレージングシートにフィンをろう付け加熱により接
    合してなることを特徴とする耐食性に優れたアルミニウ
    ム製熱交換器。 上記第1アルミニウム合金は,Cu0.2〜0.7重量%と,Mn1.
    5重量%以下,Mg0.5重量%以下,Cr0.2重量%以下,Ti0.2
    重量%以下,Zr0.2重量%以下の群より選ばれたいずれか
    1種又は2種以上の金属と,通常の不純物と,残部アル
    ミニウムとからなるアルミニウム合金。
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