JP2760911B2 - ポリ(アリーレンエーテルケトン)繊維 - Google Patents
ポリ(アリーレンエーテルケトン)繊維Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なポリ(アリーレ
ンエーテルケトン)繊維に関し、さらに詳細には、耐熱
性、耐薬品性および機械的特性に優れたポリ(アリーレ
ンエーテルケトン)繊維に関する。
ンエーテルケトン)繊維に関し、さらに詳細には、耐熱
性、耐薬品性および機械的特性に優れたポリ(アリーレ
ンエーテルケトン)繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリ(アリーレンエーテルケトン)は、
結晶性の耐熱性熱可塑性樹脂で、優れた耐熱性、耐薬品
性、電気特性を有することが知られており、これらの有
用な特性を活かし、エンジニアリングプラスチックとし
て開発されつつある。従って、ポリ(アリーレンエーテ
ルケトン)の繊維化は、産業上極めて大きな意義を持つ
ものである。
結晶性の耐熱性熱可塑性樹脂で、優れた耐熱性、耐薬品
性、電気特性を有することが知られており、これらの有
用な特性を活かし、エンジニアリングプラスチックとし
て開発されつつある。従って、ポリ(アリーレンエーテ
ルケトン)の繊維化は、産業上極めて大きな意義を持つ
ものである。
【0003】ポリ(アリーレンエーテルケトン)の繊維
化の例は、現在のところ未だ限られたものであるが、ポ
リエーテルエーテルケトン(PEEK)に関しては、特
開昭57−191322号公報、特開昭62−2310
16号公報、「繊維学会誌」Vol.41,59(19
85)、同Vol.43,507(1987)、同Vo
l.45,509(1989)などに記載があり、ま
た、ポリエーテルケトン(PEK)に関しては、特公昭
56−33419号公報に開示されている。
化の例は、現在のところ未だ限られたものであるが、ポ
リエーテルエーテルケトン(PEEK)に関しては、特
開昭57−191322号公報、特開昭62−2310
16号公報、「繊維学会誌」Vol.41,59(19
85)、同Vol.43,507(1987)、同Vo
l.45,509(1989)などに記載があり、ま
た、ポリエーテルケトン(PEK)に関しては、特公昭
56−33419号公報に開示されている。
【0004】しかるに、前記公知文献に開示されている
ポリ(アリーレンエーテルケトン)繊維は、機械的特性
が充分とは言い難く、例えば市販されているポリエステ
ル繊維に比較しても、ヤング率などは低いレベルに止ま
っている。また、用いられた原料ポリマーのガラス転移
温度は、PEEKで143℃、PEKで154℃であ
り、より高いガラス転移温度を有しかつ溶融成形可能な
ポリ(アリーレンエーテルケトン)からの繊維が期待さ
れている。
ポリ(アリーレンエーテルケトン)繊維は、機械的特性
が充分とは言い難く、例えば市販されているポリエステ
ル繊維に比較しても、ヤング率などは低いレベルに止ま
っている。また、用いられた原料ポリマーのガラス転移
温度は、PEEKで143℃、PEKで154℃であ
り、より高いガラス転移温度を有しかつ溶融成形可能な
ポリ(アリーレンエーテルケトン)からの繊維が期待さ
れている。
【0005】
【発明の目的】そこで、本発明者らは、より高いガラス
転移温度を有し、かつ溶融成形可能なポリ(アリーレン
エーテルケトン)からの繊維を提供することを目的に鋭
意研究を行った結果、本発明に到達したものである。
転移温度を有し、かつ溶融成形可能なポリ(アリーレン
エーテルケトン)からの繊維を提供することを目的に鋭
意研究を行った結果、本発明に到達したものである。
【0006】
【発明の構成】すなわち、本発明は、下記式(I)
【0007】
【化3】
【0008】[ここでAr1 は1,5−、2,6−もし
くは2,7−ナフタレン環又はそれらの組合せを表わ
し、そしてAr2 はp−フェニレン、p,p' −ビフェ
ニレン、1,5−、2,6−もしくは2,7−ナフタレ
ン環又はそれらの組合せを表わす。]で表わされる繰返
し単位から主としてなり、かつ濃硫酸中30℃で測定し
た固有粘度が少なくとも0.3である結晶性ポリ(アリ
ーレンエーテルケトン)からなり、かつヤング率が少な
くとも1,000kg/mm2 であることを特徴とする繊維
である。以下、本発明のポリ(アリーレンエーテルケト
ン)繊維について詳細に説明する。
くは2,7−ナフタレン環又はそれらの組合せを表わ
し、そしてAr2 はp−フェニレン、p,p' −ビフェ
ニレン、1,5−、2,6−もしくは2,7−ナフタレ
ン環又はそれらの組合せを表わす。]で表わされる繰返
し単位から主としてなり、かつ濃硫酸中30℃で測定し
た固有粘度が少なくとも0.3である結晶性ポリ(アリ
ーレンエーテルケトン)からなり、かつヤング率が少な
くとも1,000kg/mm2 であることを特徴とする繊維
である。以下、本発明のポリ(アリーレンエーテルケト
ン)繊維について詳細に説明する。
【0009】本発明の繊維を構成するポリマーは、上記
式(I)で表わされる繰返し単位を有するものであり、
国際特許公開WO90/14379号公報(国際公開日
1990年11月29日)に記載されたものを用いるこ
とができる。
式(I)で表わされる繰返し単位を有するものであり、
国際特許公開WO90/14379号公報(国際公開日
1990年11月29日)に記載されたものを用いるこ
とができる。
【0010】さらに、本発明の繊維を構成するポリマー
としては、上記式(I)で表わされる繰返し単位を有す
るもので、該式(I)におけるAr1 はナフタレン環の
基であって、2個の結合手を有し、この結合手の位置
が、1,5、2,6、もしくは2,7にあることが好ま
しい。これらのうち、2,6に結合手があることが特に
好ましい。また、上記一般式(I)におけるAr2 は、
2価の芳香族基である。この芳香族基の具体例は、
としては、上記式(I)で表わされる繰返し単位を有す
るもので、該式(I)におけるAr1 はナフタレン環の
基であって、2個の結合手を有し、この結合手の位置
が、1,5、2,6、もしくは2,7にあることが好ま
しい。これらのうち、2,6に結合手があることが特に
好ましい。また、上記一般式(I)におけるAr2 は、
2価の芳香族基である。この芳香族基の具体例は、
【0011】
【化4】
【0012】等を例示することができるが、本発明では
これらのうち
これらのうち
【0013】
【化5】
【0014】が好ましい。
【0015】ポリ(アリーレンエーテルケトン)を構成
する上記式(I)の繰返し単位は、全繰返し単位の50
モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらに好まし
くは90モル%以上である。ポリ(アリーレンエーテル
ケトン)としては、さらに好ましくは下記式(II)
する上記式(I)の繰返し単位は、全繰返し単位の50
モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらに好まし
くは90モル%以上である。ポリ(アリーレンエーテル
ケトン)としては、さらに好ましくは下記式(II)
【0016】
【化6】
【0017】の繰返し単位を主とするものであり、とり
わけポリマー鎖の70モル%以上が該式(II)の繰返し
単位であるポリ(アリーレンエーテルケトン)の繊維
は、特に優れた溶融成形性と機械的性質を有する。
わけポリマー鎖の70モル%以上が該式(II)の繰返し
単位であるポリ(アリーレンエーテルケトン)の繊維
は、特に優れた溶融成形性と機械的性質を有する。
【0018】本発明の繊維を形成するポリ(アリーレン
エーテルケトン)は、濃硫酸中、30℃で測定した固有
粘度が0.3以上、好ましくは0.4以上である。固有
粘度が0.3未満の場合は、繊維の機械特性が不充分で
あるため、好ましくない。本発明ではポリ(アリーレン
エーテルケトン)に、流動性改良などの目的で他の熱可
塑性樹脂を少量ブレンドしてもよく、また、安定剤、酸
化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を含有させてもよ
い。
エーテルケトン)は、濃硫酸中、30℃で測定した固有
粘度が0.3以上、好ましくは0.4以上である。固有
粘度が0.3未満の場合は、繊維の機械特性が不充分で
あるため、好ましくない。本発明ではポリ(アリーレン
エーテルケトン)に、流動性改良などの目的で他の熱可
塑性樹脂を少量ブレンドしてもよく、また、安定剤、酸
化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を含有させてもよ
い。
【0019】本発明のポリ(アリーレンエーテルケト
ン)繊維は、該ポリ(アリーレンエーテルケトン)から
溶融紡糸―延伸することにより製造することができる。
すなわち、まず、ポリマーを(Tm+20℃)〜(Tm
+50℃)の温度(ただし、Tmはポリマーの融点)で
溶融させたのち、紡糸口金を通して溶融押出し、冷却固
化後、巻き取る。
ン)繊維は、該ポリ(アリーレンエーテルケトン)から
溶融紡糸―延伸することにより製造することができる。
すなわち、まず、ポリマーを(Tm+20℃)〜(Tm
+50℃)の温度(ただし、Tmはポリマーの融点)で
溶融させたのち、紡糸口金を通して溶融押出し、冷却固
化後、巻き取る。
【0020】紡糸口金の直下には、紡出糸を徐冷するた
めの加熱筒を設けることが好ましく、加熱筒内の雰囲気
温度は、Tm−50℃〜Tm+50℃が好ましい。
めの加熱筒を設けることが好ましく、加熱筒内の雰囲気
温度は、Tm−50℃〜Tm+50℃が好ましい。
【0021】溶融紡糸によって得られた未延伸糸は、引
き続き、該ポリアリーレンエーテルケトンのガラス転移
温度(Tg)以上、融点(Tm)以下、好ましくはTg
−50℃〜Tm−20℃の加熱媒体中又は加熱媒体の接
触下で熱延伸することにより、優れた機械的性質を発現
する。
き続き、該ポリアリーレンエーテルケトンのガラス転移
温度(Tg)以上、融点(Tm)以下、好ましくはTg
−50℃〜Tm−20℃の加熱媒体中又は加熱媒体の接
触下で熱延伸することにより、優れた機械的性質を発現
する。
【0022】延伸は、一段もしくは多段で行うことがで
きる。多段延伸は、好ましくは一段目の延伸温度を(T
g−50℃)〜(Tc−5℃)、二段目の延伸温度をT
c〜(Tm−20℃)とする。さらに好ましくは一段目
の延伸を(Tg−10℃)〜(Tc−5℃)、二段目の
延伸をTc〜(Tc+60℃)、三段目の延伸を(Tc
+67℃)もしくは二段目の延伸温度+20℃のうち、
高い方の温度〜(Tm−20℃)の温度とすることによ
り、より高い配向を得ることができる。ここで、Tc
は、DSCで測定した未延伸糸の結晶化温度である。
きる。多段延伸は、好ましくは一段目の延伸温度を(T
g−50℃)〜(Tc−5℃)、二段目の延伸温度をT
c〜(Tm−20℃)とする。さらに好ましくは一段目
の延伸を(Tg−10℃)〜(Tc−5℃)、二段目の
延伸をTc〜(Tc+60℃)、三段目の延伸を(Tc
+67℃)もしくは二段目の延伸温度+20℃のうち、
高い方の温度〜(Tm−20℃)の温度とすることによ
り、より高い配向を得ることができる。ここで、Tc
は、DSCで測定した未延伸糸の結晶化温度である。
【0023】かくして、本発明のポリ(アリーレンエー
テルケトン)繊維は、1,000kg/mm2 以上のヤング
率、好ましくは1,400kg/mm2 以上(さらに好まし
くは1,500kg/mm2 以上)のヤング率を発現する。
テルケトン)繊維は、1,000kg/mm2 以上のヤング
率、好ましくは1,400kg/mm2 以上(さらに好まし
くは1,500kg/mm2 以上)のヤング率を発現する。
【0024】本発明のポリ(アリーレンエーテルケト
ン)繊維のヤング率が、1,000kg/mm2 未満では、
一般産業用としての用途が狭く、その利点を生かすこと
ができない。
ン)繊維のヤング率が、1,000kg/mm2 未満では、
一般産業用としての用途が狭く、その利点を生かすこと
ができない。
【0025】本発明者らの研究によれば、このポリ(ア
リーレンエーテルケトン)繊維は、ある特定の微細構造
を形成したとき、特に優れた機械的性質を有することが
できることが判明した。ここでいう特定の微細構造と
は、繊維軸に垂直な結晶面の結晶サイズ(L1 )が60
オングストローム以上、好ましくは70〜200オング
ストローム、かつ繊維軸に平行な結晶面の結晶サイズ
(L2 )が140オングストローム以下、好ましくは5
0〜130オングストロームであり、かつ配向度が90
%以上、好ましくは93%以上であることを特徴とする
微細構造である。
リーレンエーテルケトン)繊維は、ある特定の微細構造
を形成したとき、特に優れた機械的性質を有することが
できることが判明した。ここでいう特定の微細構造と
は、繊維軸に垂直な結晶面の結晶サイズ(L1 )が60
オングストローム以上、好ましくは70〜200オング
ストローム、かつ繊維軸に平行な結晶面の結晶サイズ
(L2 )が140オングストローム以下、好ましくは5
0〜130オングストロームであり、かつ配向度が90
%以上、好ましくは93%以上であることを特徴とする
微細構造である。
【0026】ここで、繊維軸に対して垂直な結晶面と
は、X線回折において、繊維軸を子午線方向にとったと
き、子午線方向へのスキャンで得られる回折ピークに対
応するものであり、また繊維軸に対して平行な結晶面と
は、同様に赤道方向へのスキャンで得られる回折ピーク
に対応するものであり、それぞれ最大の結晶サイズを持
つ回折ピークで代表されるものである。また、配向度
は、赤道方向の最大結晶サイズのピークの配向角から求
めた結晶配向度である。
は、X線回折において、繊維軸を子午線方向にとったと
き、子午線方向へのスキャンで得られる回折ピークに対
応するものであり、また繊維軸に対して平行な結晶面と
は、同様に赤道方向へのスキャンで得られる回折ピーク
に対応するものであり、それぞれ最大の結晶サイズを持
つ回折ピークで代表されるものである。また、配向度
は、赤道方向の最大結晶サイズのピークの配向角から求
めた結晶配向度である。
【0027】本発明のポリ(アリーレンエーテルケト
ン)繊維において、上記L1 が60オングストローム未
満ではTg以上の温度で繊維が軟化し易く、また上記L
2 が140オングストロームを超えると繊維が脆くなり
易く、さらに配向度が90%未満ではヤング率が不足す
る。
ン)繊維において、上記L1 が60オングストローム未
満ではTg以上の温度で繊維が軟化し易く、また上記L
2 が140オングストロームを超えると繊維が脆くなり
易く、さらに配向度が90%未満ではヤング率が不足す
る。
【0028】従来、ポリ(アリーレンエーテルケトン)
繊維の微細構造が報告されている例は少なく、しかもポ
リマー鎖中の芳香族基がフェニレン基であるポリエーテ
ルエーテルケトン(PEEK)に限られている。
繊維の微細構造が報告されている例は少なく、しかもポ
リマー鎖中の芳香族基がフェニレン基であるポリエーテ
ルエーテルケトン(PEEK)に限られている。
【0029】清水ら[繊維学会誌、Vol.41、No.
11 T−461(1985)]の報告では、PEEK
に対し、類似の微細構造パラメータが提出されている。
しかしながら、PEEKにおいては、L1 ≧60オング
ストロームかつL2 ≦140オングストロームを満たす
結晶サイズを有する範囲の繊維においては、ヤング率は
たかだか600kg/mm2 にすぎない。清水らは、PEE
Kを高温で長時間熱処理することで、結晶を粗大化させ
たため、この結晶の粗大化により機械的性質が低下した
ものと考えられる。
11 T−461(1985)]の報告では、PEEK
に対し、類似の微細構造パラメータが提出されている。
しかしながら、PEEKにおいては、L1 ≧60オング
ストロームかつL2 ≦140オングストロームを満たす
結晶サイズを有する範囲の繊維においては、ヤング率は
たかだか600kg/mm2 にすぎない。清水らは、PEE
Kを高温で長時間熱処理することで、結晶を粗大化させ
たため、この結晶の粗大化により機械的性質が低下した
ものと考えられる。
【0030】特に、上記式(II)で表わされる繰返し単
位を主たる繰返し単位とするポリ(アリーレンエーテル
ケトン)は、PEEKより繊維の結晶が成長し易い特性
を有する。
位を主たる繰返し単位とするポリ(アリーレンエーテル
ケトン)は、PEEKより繊維の結晶が成長し易い特性
を有する。
【0031】本発明のポリ(アリーレンエーテルケト
ン)繊維は、その結晶成長に関し、繊維軸に平行な方向
の結晶サイズを抑制し、かつ繊維軸に垂直な方向の成長
を促進することで、本来ポリマーの持つ強い凝集力を利
用し、優れた機械的性質を発現させることができる。
ン)繊維は、その結晶成長に関し、繊維軸に平行な方向
の結晶サイズを抑制し、かつ繊維軸に垂直な方向の成長
を促進することで、本来ポリマーの持つ強い凝集力を利
用し、優れた機械的性質を発現させることができる。
【0032】本発明のポリ(アリーレンエーテルケト
ン)繊維は、一般的には前述のような製造方法によって
得られるが、そのヤング率は1,000kg/mm2 以上で
あり、特にすでに述べた特定の微細構造を形成すること
により、そのヤング率は1,500kg/mm2 以上の、等
方性融体から紡糸される繊維としては、極めて高いヤン
グ率を示す素材である。また、引張強度も80kg/mm2
を超えうるものである。
ン)繊維は、一般的には前述のような製造方法によって
得られるが、そのヤング率は1,000kg/mm2 以上で
あり、特にすでに述べた特定の微細構造を形成すること
により、そのヤング率は1,500kg/mm2 以上の、等
方性融体から紡糸される繊維としては、極めて高いヤン
グ率を示す素材である。また、引張強度も80kg/mm2
を超えうるものである。
【0033】このような特定の微細構造を発現させるに
は、さらに限定された特殊な製造条件を採用する必要が
ある。まず、溶融紡糸において、比重1.29未満であ
り、かつ、X線的に実質的に結晶成分を含まない未延伸
糸を得ることが必要である。ここでX線的に実質的に結
晶成分を含まないとは、広角X線における散乱パターン
が明確な結晶ピークを有さないことを意味する。これ
は、例えば上記式(II)に示した化学構造のポリマーに
おいては、紡糸温度390〜410℃、かつ紡糸筒温度
340〜390℃の範囲で実現される。
は、さらに限定された特殊な製造条件を採用する必要が
ある。まず、溶融紡糸において、比重1.29未満であ
り、かつ、X線的に実質的に結晶成分を含まない未延伸
糸を得ることが必要である。ここでX線的に実質的に結
晶成分を含まないとは、広角X線における散乱パターン
が明確な結晶ピークを有さないことを意味する。これ
は、例えば上記式(II)に示した化学構造のポリマーに
おいては、紡糸温度390〜410℃、かつ紡糸筒温度
340〜390℃の範囲で実現される。
【0034】そして、延伸においては、明確な結晶白化
の起こる第一段延伸条件を採用する。この結晶白化は、
繊維の配向結晶化と同時に失透する現象であり、Tg近
傍の限定された温度範囲、かつ特定の倍率以上で発生す
る。例えば、比重1.29未満、かつX線的に実質的に
結晶を含まない、上記式(II)に示した構造のポリマー
の未延伸糸では、175〜200℃の延伸温度でかつ延
伸倍率2倍以上でこの白化現象が起こりうる。この白化
繊維は、二段目以降の延伸もしくは熱固定で透明化して
も、あるいは白化した状態が保存されても物性に影響し
ない。
の起こる第一段延伸条件を採用する。この結晶白化は、
繊維の配向結晶化と同時に失透する現象であり、Tg近
傍の限定された温度範囲、かつ特定の倍率以上で発生す
る。例えば、比重1.29未満、かつX線的に実質的に
結晶を含まない、上記式(II)に示した構造のポリマー
の未延伸糸では、175〜200℃の延伸温度でかつ延
伸倍率2倍以上でこの白化現象が起こりうる。この白化
繊維は、二段目以降の延伸もしくは熱固定で透明化して
も、あるいは白化した状態が保存されても物性に影響し
ない。
【0035】一段延伸後の繊維は、前述の二段あるいは
三段延伸の条件下に全延伸倍率が4倍以上に延伸される
ことが必要である。
三段延伸の条件下に全延伸倍率が4倍以上に延伸される
ことが必要である。
【0036】一般の繊維において、通常の延伸時の顕著
な白化は、ボイドなどの発生を示唆するものであり、繊
維の機械特性を低下させる場合が多い。しかしながら、
本発明のポリ(アリーレンエーテルケトン)繊維には、
そのような劣化はみられず、かえって、第二段延伸以降
での熱固定結晶化段階で高度に配向を保持しながら、制
御された結晶の成長が起こるのである。これに対し、延
伸温度が低いため、あるいは延伸倍率が低いために、第
一段延伸時に白化が起こらない条件を採用した場合は、
熱固定時の緩和が大きく、高度の配向を保持することが
困難である。また、延伸温度が高すぎて白化しない場合
は、延伸配向効率が低下する。
な白化は、ボイドなどの発生を示唆するものであり、繊
維の機械特性を低下させる場合が多い。しかしながら、
本発明のポリ(アリーレンエーテルケトン)繊維には、
そのような劣化はみられず、かえって、第二段延伸以降
での熱固定結晶化段階で高度に配向を保持しながら、制
御された結晶の成長が起こるのである。これに対し、延
伸温度が低いため、あるいは延伸倍率が低いために、第
一段延伸時に白化が起こらない条件を採用した場合は、
熱固定時の緩和が大きく、高度の配向を保持することが
困難である。また、延伸温度が高すぎて白化しない場合
は、延伸配向効率が低下する。
【0037】本発明のポリ(アリーレンエーテルケト
ン)繊維は、その原料ポリマーの主鎖にナフタレン環を
有することにより、フェニレン基よりのみからなるポリ
(アリーレンエーテルケトン)からなる繊維に比べて、
ガラス転移温度(Tg)が高く、かつ延伸配向により
1,000kg/mm2 以上のヤング率を発現する、耐熱
性、機械特性に優れた繊維である。
ン)繊維は、その原料ポリマーの主鎖にナフタレン環を
有することにより、フェニレン基よりのみからなるポリ
(アリーレンエーテルケトン)からなる繊維に比べて、
ガラス転移温度(Tg)が高く、かつ延伸配向により
1,000kg/mm2 以上のヤング率を発現する、耐熱
性、機械特性に優れた繊維である。
【0038】また、本発明のポリ(アリーレンエーテル
ケトン)繊維は、特定の微細構造を形成させた場合、特
に優れた機械特性を示し、そのヤング率は1,500kg
/mm2 以上となる。
ケトン)繊維は、特定の微細構造を形成させた場合、特
に優れた機械特性を示し、そのヤング率は1,500kg
/mm2 以上となる。
【0039】本発明のポリ(アリーレンエーテルケト
ン)繊維は、広く産業用繊維として用いることができ、
例えば、モノフィラメントとしては、耐熱・耐摩耗性ブ
ラシ、ドライヤーキャンバスなどの耐熱、耐熱水性重布
の継手芯材、耐摩耗・高弾性ガットなどに有用であり、
マルチフィラメントとしては、耐熱・耐薬品フィルター
およびパッキン、さらにはガラス繊維、炭素繊維、セラ
ミック繊維などの無機繊維や芳香族ポリアミド繊維など
の高強度・高弾性繊維との複合材料用マトリックスなど
に有用である。例えば、本発明のポリ(アリーレンエー
テルケトン)繊維と、高強度・高弾性繊維との交織交編
を、本発明の繊維の融点以上の温度で熱プレスすること
により、ポリ(アリーレンエーテルケトン)がマトリッ
クス樹脂である繊維強化複合材料とすることができる。
ン)繊維は、広く産業用繊維として用いることができ、
例えば、モノフィラメントとしては、耐熱・耐摩耗性ブ
ラシ、ドライヤーキャンバスなどの耐熱、耐熱水性重布
の継手芯材、耐摩耗・高弾性ガットなどに有用であり、
マルチフィラメントとしては、耐熱・耐薬品フィルター
およびパッキン、さらにはガラス繊維、炭素繊維、セラ
ミック繊維などの無機繊維や芳香族ポリアミド繊維など
の高強度・高弾性繊維との複合材料用マトリックスなど
に有用である。例えば、本発明のポリ(アリーレンエー
テルケトン)繊維と、高強度・高弾性繊維との交織交編
を、本発明の繊維の融点以上の温度で熱プレスすること
により、ポリ(アリーレンエーテルケトン)がマトリッ
クス樹脂である繊維強化複合材料とすることができる。
【0040】
【実施例】以下、実施例および参考例をあげて本発明を
説明するが、実施例は本発明を例示するものであって、
本発明はこれに限定されるものではない。また、参考例
1〜3は実施例に記載した本発明繊維の原料となるポリ
マーの製造例である。なお、例中の「部」は「重量部」
を意味する。また、各種の評価項目は、次のようにして
求めた値である。
説明するが、実施例は本発明を例示するものであって、
本発明はこれに限定されるものではない。また、参考例
1〜3は実施例に記載した本発明繊維の原料となるポリ
マーの製造例である。なお、例中の「部」は「重量部」
を意味する。また、各種の評価項目は、次のようにして
求めた値である。
【0041】[固有粘度(ηinh)] 濃硫酸を溶媒とし、ポリマー濃度0.5g/dlの濃度
で30℃で測定した。 [ポリマーのガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)お
よび結晶化温度(Tc)] DSCを用い、10℃/分の昇温速度で測定した。
で30℃で測定した。 [ポリマーのガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)お
よび結晶化温度(Tc)] DSCを用い、10℃/分の昇温速度で測定した。
【0042】[結晶サイズ及び配向度] X線回折において、繊維軸を子午線方向に一致させ、回
折角2θに関し計数管を用いてスキャンしたとき、赤道
方向のスキャンに関しては面間隔4.7±0.5オング
ストローム付近のピーク、子午線方向に関しては面間隔
21.5±0.5オングストローム付近のピークのそれ
ぞれについて、ピークの半価幅βを求め、下記シェーラ
ーの式に従い、計算を行った。
折角2θに関し計数管を用いてスキャンしたとき、赤道
方向のスキャンに関しては面間隔4.7±0.5オング
ストローム付近のピーク、子午線方向に関しては面間隔
21.5±0.5オングストローム付近のピークのそれ
ぞれについて、ピークの半価幅βを求め、下記シェーラ
ーの式に従い、計算を行った。
【0043】
【数1】
【0044】ここで、λはX線の波長、βは装置定数補
正後のピーク半価幅(radian)である。なお、子
午線方向の測定には、位置敏感型比例計数管(PSP
C)を用いることが好ましい。
正後のピーク半価幅(radian)である。なお、子
午線方向の測定には、位置敏感型比例計数管(PSP
C)を用いることが好ましい。
【0045】結晶配向度は、2θを面間隔4.7±0.
5オングストローム付近のピークを固定し、繊維を方位
角方向に回転して計算したときの回折強度分布の半価幅
w(度)を用いて、次式より求めた。 結晶配向度=(w/180)×100(%)
5オングストローム付近のピークを固定し、繊維を方位
角方向に回転して計算したときの回折強度分布の半価幅
w(度)を用いて、次式より求めた。 結晶配向度=(w/180)×100(%)
【0046】[引張試験] 繊維の強度、ヤング率、伸度は試長50mmの単繊維を1
00%/min の引張速度で定速引張試験することにより
求めた。
00%/min の引張速度で定速引張試験することにより
求めた。
【0047】[参考例1] (1)1,5−ナフタレンジカルボン酸クロライド68
部と、フルオロベンゼン150部、FeCl3 6.4
部、ニトロベンゼン250部とを、5時間還流しながら
攪拌、混合した。その後、反応混合物をメタノール15
00部中にあけ、沈澱を濾過した。1,5−ビス(p−
フルオロベンゾイル)ナフタレンの収量は60部であっ
た。キシレンで再結晶した生成物の融点は214.5
℃、元素分析は重量%でC77.4%、H3.82%、
F10.2%であった。また、生成物はIR(ヌジョー
ル法)およびNMR(ジメチルスルホキシド−d6 溶
媒)の測定によっても確認された。
部と、フルオロベンゼン150部、FeCl3 6.4
部、ニトロベンゼン250部とを、5時間還流しながら
攪拌、混合した。その後、反応混合物をメタノール15
00部中にあけ、沈澱を濾過した。1,5−ビス(p−
フルオロベンゾイル)ナフタレンの収量は60部であっ
た。キシレンで再結晶した生成物の融点は214.5
℃、元素分析は重量%でC77.4%、H3.82%、
F10.2%であった。また、生成物はIR(ヌジョー
ル法)およびNMR(ジメチルスルホキシド−d6 溶
媒)の測定によっても確認された。
【0048】(2)上記(1)で得られた1,5−ビス
(p−フルオロベンゾイル)ナフタレン5.59部、ハ
イドロキノン1.65部およびジフェニルスルホン1
3.3部を、攪拌装置および留出系を備えた反応器に入
れ、窒素置換した後250℃に加熱した。約5分後内容
物は融解し、均一な溶液となった。次に無水炭酸カリウ
ム2.1部を添加し、常圧下窒素気流中250℃で30
分反応した後、330℃まで昇温し180分反応させ
た。得られた反応物を冷却し、これを粉砕して粒径50
0μm以下のチップとし、該チップをアセトン還流下で
2回、水還流下で2回、さらにアセトン還流下で1回抽
出処理し、ジフェニルスルホンおよび無機塩を除去し、
次いで150℃で3時間乾燥した。得られたポリマーは
ηinh=1.0、Tg=192℃、Tm=291℃で
あった。
(p−フルオロベンゾイル)ナフタレン5.59部、ハ
イドロキノン1.65部およびジフェニルスルホン1
3.3部を、攪拌装置および留出系を備えた反応器に入
れ、窒素置換した後250℃に加熱した。約5分後内容
物は融解し、均一な溶液となった。次に無水炭酸カリウ
ム2.1部を添加し、常圧下窒素気流中250℃で30
分反応した後、330℃まで昇温し180分反応させ
た。得られた反応物を冷却し、これを粉砕して粒径50
0μm以下のチップとし、該チップをアセトン還流下で
2回、水還流下で2回、さらにアセトン還流下で1回抽
出処理し、ジフェニルスルホンおよび無機塩を除去し、
次いで150℃で3時間乾燥した。得られたポリマーは
ηinh=1.0、Tg=192℃、Tm=291℃で
あった。
【0049】[参考例2] (1)2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド70
部と、フルオロベンゼン74部、AlCl3 74部、ニ
トロベンゼン200部とを、10時間80℃で攪拌反応
した。その後、反応物をメタノール1000部中にあ
け、沈澱を濾過した。生成物は2,6−ビス(p−フル
オロベンゾイル)ナフタレンであり、収量は78部であ
った。ジメチルホルムアミドで再結晶した生成物の融点
は265℃、元素分析は重量%でC77.2%、H3.
90%、F10.1%であった。また、生成物はIR
(ヌジョール法)およびNMR(ジメチルスルホキシド
−d6溶媒)の測定によっても確認された。
部と、フルオロベンゼン74部、AlCl3 74部、ニ
トロベンゼン200部とを、10時間80℃で攪拌反応
した。その後、反応物をメタノール1000部中にあ
け、沈澱を濾過した。生成物は2,6−ビス(p−フル
オロベンゾイル)ナフタレンであり、収量は78部であ
った。ジメチルホルムアミドで再結晶した生成物の融点
は265℃、元素分析は重量%でC77.2%、H3.
90%、F10.1%であった。また、生成物はIR
(ヌジョール法)およびNMR(ジメチルスルホキシド
−d6溶媒)の測定によっても確認された。
【0050】(2)上記(1)で得られた2,6−ビス
(p−フルオロベンゾイル)ナフタレン37.24部、
ハイドロキノン11.1部、およびジフェニルスルホン
67部を参考例1(2)と同様の反応容器に入れ、窒素
置換した後200℃に加熱した。約15分後内容物は融
解し、均一な溶液となった。次に無水炭酸カリウム4.
15部および無水炭酸ナトリウム7.42部を添加し、
常圧下窒素気流中200℃で1時間、次に昇温して25
0℃で同じく1時間反応させた後、さらに反応温度を3
40℃に昇温した。同温度で90分反応させたところ反
応物はしだいに粘稠となった。得られた反応物を冷却し
た後、参考例1(2)と同様に粉砕、抽出処理してジフ
ェニルスルホンおよび無機塩を除去した。得られたポリ
マー(前記式(II)の繰返し単位からなる重合体)はη
inh=1.08、Tg=178℃、Tm=367℃で
あった。
(p−フルオロベンゾイル)ナフタレン37.24部、
ハイドロキノン11.1部、およびジフェニルスルホン
67部を参考例1(2)と同様の反応容器に入れ、窒素
置換した後200℃に加熱した。約15分後内容物は融
解し、均一な溶液となった。次に無水炭酸カリウム4.
15部および無水炭酸ナトリウム7.42部を添加し、
常圧下窒素気流中200℃で1時間、次に昇温して25
0℃で同じく1時間反応させた後、さらに反応温度を3
40℃に昇温した。同温度で90分反応させたところ反
応物はしだいに粘稠となった。得られた反応物を冷却し
た後、参考例1(2)と同様に粉砕、抽出処理してジフ
ェニルスルホンおよび無機塩を除去した。得られたポリ
マー(前記式(II)の繰返し単位からなる重合体)はη
inh=1.08、Tg=178℃、Tm=367℃で
あった。
【0051】[実施例1] 参考例2と同様にして製造した上記式(II)の繰返し単
位からなり、かつ固有粘度が0.6のポリ(アリーレン
エーテルケトン)を400℃で溶融後、孔径0.2mm、
孔長0.6mmのノズルを有する通常の紡糸口金を用い
て、紡糸口金温度390℃の雰囲気温度をもつ加熱筒を
通過させた後空冷し、30m/min の速度で巻取った。
このポリマーのTmは367℃であった。またこの紡出
糸のTgは176℃であった。また、Tcは215℃で
あった。
位からなり、かつ固有粘度が0.6のポリ(アリーレン
エーテルケトン)を400℃で溶融後、孔径0.2mm、
孔長0.6mmのノズルを有する通常の紡糸口金を用い
て、紡糸口金温度390℃の雰囲気温度をもつ加熱筒を
通過させた後空冷し、30m/min の速度で巻取った。
このポリマーのTmは367℃であった。またこの紡出
糸のTgは176℃であった。また、Tcは215℃で
あった。
【0052】この未延伸糸を180℃で3.4倍延伸し
た後、240℃で定長熱処理した。得られた繊維の物性
は下記の通りであった。 ヤング率 1032kg/mm2 引張強度 57kg/mm2 引張伸度 9%
た後、240℃で定長熱処理した。得られた繊維の物性
は下記の通りであった。 ヤング率 1032kg/mm2 引張強度 57kg/mm2 引張伸度 9%
【0053】[実施例2〜4] 熱処理を260〜300℃の温度で実施することを除
き、実施例1と全く同じ方法で実験を行った結果、得ら
れた繊維の物性を表1に示す。
き、実施例1と全く同じ方法で実験を行った結果、得ら
れた繊維の物性を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】[実施例5] 用いたポリマーの固有粘度が0.8であることを除き、
実施例1と全く同様の方法で未延伸糸を得た。この未延
伸糸を180℃で3.4倍延伸した後、260℃で1.
15倍延伸した。得られたポリ(アリーレンエーテルケ
トン)繊維の物性は以下の通りである。 ヤング率 1047kg/mm2 引張強度 70kg/mm2 引張伸度 10%
実施例1と全く同様の方法で未延伸糸を得た。この未延
伸糸を180℃で3.4倍延伸した後、260℃で1.
15倍延伸した。得られたポリ(アリーレンエーテルケ
トン)繊維の物性は以下の通りである。 ヤング率 1047kg/mm2 引張強度 70kg/mm2 引張伸度 10%
【0056】[実施例6〜9] 実施例5で用いた未延伸糸と同じ未延伸糸を、表2に示
す条件で三段で延伸した。得られたポリ(アリーレンエ
ーテルケトン)繊維の物性を表2に示す。
す条件で三段で延伸した。得られたポリ(アリーレンエ
ーテルケトン)繊維の物性を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】[実施例10] 実施例1で得た繊維と炭素繊維(東レ(株)製「トレ
カ」T−300)とを炭素繊維の体積含有率が約60%
となるように交織交編して混織布を作製した。該混織布
を8プライ積層し、これを金枠にセットし、下記の如き
温度およびプレス圧をかけて成形した。 300〜350℃、10kg/cm2 350℃ポンピング(0〜30kg/cm2 、10回) 400℃に昇温(30kg/cm2 )後20分間保持 150℃に冷却 得られた成形サンプルはポリ(アリーレンエーテルケト
ン)をマトリックスとする炭素繊維強化複合材料であっ
て、表面性に優れており、熱変形温度は300℃以上で
あり、極めて強靭であった。
カ」T−300)とを炭素繊維の体積含有率が約60%
となるように交織交編して混織布を作製した。該混織布
を8プライ積層し、これを金枠にセットし、下記の如き
温度およびプレス圧をかけて成形した。 300〜350℃、10kg/cm2 350℃ポンピング(0〜30kg/cm2 、10回) 400℃に昇温(30kg/cm2 )後20分間保持 150℃に冷却 得られた成形サンプルはポリ(アリーレンエーテルケト
ン)をマトリックスとする炭素繊維強化複合材料であっ
て、表面性に優れており、熱変形温度は300℃以上で
あり、極めて強靭であった。
【0059】[参考例3] 2,6−ビス(p−フルオロベンゾイル)ナフタレン3
7.24部、ハイドロキノン11.01部、4−フルオ
ロベンゾフェノン0.20部およびジフェニルスルホン
66.37部を、参考例1(2)と同様の反応器に入
れ、窒素置換した後200℃に加熱した。約15分後内
容物は融解し、均一な溶液となった。次に無水炭酸カリ
ウム0.69部、無水炭酸ナトリウム15.9部を添加
し、常圧下窒素気流中200℃で1時間、次に昇温して
250℃で1時間反応させた後、さらに反応温度を34
0℃に昇温し、同温度で30分間反応させた。得られた
反応物にさらに4−フルオロベンゾフェノン3.6部を
加え、15分反応させた後冷却し、参考例1(2)と同
様に粉砕、抽出処理してジフェニルスルホンおよび無機
塩を除去した。得られたポリマーはηinh=0.76
8、Tg=177℃、Tm=376℃であった。このポ
リマーを150℃で6時間乾燥し、高化式フローテスタ
ーを用い、孔径0.5mmφ、孔長1mmのノズルより42
0℃の温度で溶融押出して、剪断速度103 /秒におけ
る溶融粘度を測定した。420℃の温度で5分間溶融保
持した後の溶融粘度は1410ポイズ、同じく20分間
溶融保存した後の溶融粘度は1540ポイズであり、ま
た得られたモノフィラメントはいずれも褐色透明でゲル
状物がなく、本ポリマーが良好な溶融安定性を有してい
ることがわかる。
7.24部、ハイドロキノン11.01部、4−フルオ
ロベンゾフェノン0.20部およびジフェニルスルホン
66.37部を、参考例1(2)と同様の反応器に入
れ、窒素置換した後200℃に加熱した。約15分後内
容物は融解し、均一な溶液となった。次に無水炭酸カリ
ウム0.69部、無水炭酸ナトリウム15.9部を添加
し、常圧下窒素気流中200℃で1時間、次に昇温して
250℃で1時間反応させた後、さらに反応温度を34
0℃に昇温し、同温度で30分間反応させた。得られた
反応物にさらに4−フルオロベンゾフェノン3.6部を
加え、15分反応させた後冷却し、参考例1(2)と同
様に粉砕、抽出処理してジフェニルスルホンおよび無機
塩を除去した。得られたポリマーはηinh=0.76
8、Tg=177℃、Tm=376℃であった。このポ
リマーを150℃で6時間乾燥し、高化式フローテスタ
ーを用い、孔径0.5mmφ、孔長1mmのノズルより42
0℃の温度で溶融押出して、剪断速度103 /秒におけ
る溶融粘度を測定した。420℃の温度で5分間溶融保
持した後の溶融粘度は1410ポイズ、同じく20分間
溶融保存した後の溶融粘度は1540ポイズであり、ま
た得られたモノフィラメントはいずれも褐色透明でゲル
状物がなく、本ポリマーが良好な溶融安定性を有してい
ることがわかる。
【0060】[実施例11] 上記式(II)の繰返し単位からなり、かつ固有粘度が
0.6のポリ(アリーレンエーテルケトン)を参考例3
に記載された方法で調製し、これを400℃で溶融後、
孔径0.2mm、孔0.6mmのノズルを有する通常の紡糸
口金を用いて、紡糸口金温度390℃で紡出し、380
℃の雰囲気温度を持つ加熱筒を通過させたのち、空冷
し、30m/分の速度で巻き取った。このポリマーのT
mは、367℃であった。また、この未延伸糸のTgは
176℃、Tcは215℃であった。この未延伸糸は、
延伸温度180℃、延伸倍率4.0倍以上で白化を示し
た。この未延伸糸を、180℃で4.5倍延伸後、24
0℃で1.1倍延伸した。得られた繊維の物性は、下記
のとおりであった。 ヤング率 1560kg/mm2 引張強度 75kg/mm2 引張伸度 7% 繊度 6de また、この繊維のL1 は90オングストローム、L2 は
100オングストローム、配向度は95%であった。
0.6のポリ(アリーレンエーテルケトン)を参考例3
に記載された方法で調製し、これを400℃で溶融後、
孔径0.2mm、孔0.6mmのノズルを有する通常の紡糸
口金を用いて、紡糸口金温度390℃で紡出し、380
℃の雰囲気温度を持つ加熱筒を通過させたのち、空冷
し、30m/分の速度で巻き取った。このポリマーのT
mは、367℃であった。また、この未延伸糸のTgは
176℃、Tcは215℃であった。この未延伸糸は、
延伸温度180℃、延伸倍率4.0倍以上で白化を示し
た。この未延伸糸を、180℃で4.5倍延伸後、24
0℃で1.1倍延伸した。得られた繊維の物性は、下記
のとおりであった。 ヤング率 1560kg/mm2 引張強度 75kg/mm2 引張伸度 7% 繊度 6de また、この繊維のL1 は90オングストローム、L2 は
100オングストローム、配向度は95%であった。
【0061】[実施例12〜14] 二段目の延伸条件を、表3に示す条件に変更した以外
は、実施例11と同様の方法でポリ(アリーレンエーテ
ルケトン)繊維を得た。それぞれの結果を表3に示す。
は、実施例11と同様の方法でポリ(アリーレンエーテ
ルケトン)繊維を得た。それぞれの結果を表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】[比較例1] 実施例1と同様の方法で未延伸糸を得、これを160℃
で2.5倍延伸した。このとき、繊維の白化は起こらな
かった。この延伸繊維を、215℃で4倍の二段延伸を
した。得られた繊維の物性は、次のとおりであった。 ヤング率 950kg/mm2 引張強度 56kg/mm2 伸度 10% また、この繊維のL1 は98オングストローム、L2 は
73オングストローム、配向度は88%であった。
で2.5倍延伸した。このとき、繊維の白化は起こらな
かった。この延伸繊維を、215℃で4倍の二段延伸を
した。得られた繊維の物性は、次のとおりであった。 ヤング率 950kg/mm2 引張強度 56kg/mm2 伸度 10% また、この繊維のL1 は98オングストローム、L2 は
73オングストローム、配向度は88%であった。
【図1】対称反射法の幾何学的配置の構成図である。
【図2】参考例1の対称反射法により回折パターンのチ
ャートである。
ャートである。
1 X線源 2 計数管 3 フィルム
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平2−325364 (32)優先日 平2(1990)11月29日 (33)優先権主張国 日本(JP) (56)参考文献 特開 平3−190927(JP,A) 特開 平3−287625(JP,A) 特開 平3−121125(JP,A) 特開 昭58−87127(JP,A) 特開 昭57−182321(JP,A) 特開 昭62−231016(JP,A) 特開 平4−343710(JP,A) 特開 昭62−11726(JP,A) 特開 平3−199424(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08G 65/34 - 65/48 D01F 6/66 D01F 6/78
Claims (4)
- 【請求項1】 下記式(I) 【化1】 [ここで、Ar1 は1,5−、2,6−もしくは2,7
−ナフタレン環又はそれらの組合せを表わし、そしてA
r2 はp−フェニレン、p,p' −ビフェニレン、1,
5−、2,6−もしくは2,7−ナフタレン環又はそれ
らの組合せを表わす。]で表わされる繰返し単位から主
としてなり、かつ濃硫酸中30℃で測定した固有粘度が
少なくとも0.3である結晶性ポリ(アリーレンエーテ
ルケトン)からなり、かつヤング率が少なくとも1,0
00kg/mm2 であることを特徴とする、ポリ(アリーレ
ンエーテルケトン)繊維。 - 【請求項2】 ポリ(アリーレンエーテルケトン)が、
下記式(II) 【化2】 で表わされる繰返し単位から主としてなる請求項1記載
のポリ(アリーレンエーテルケトン)繊維。 - 【請求項3】 繊維軸に垂直な結晶面の結晶サイズ(L
1 )および繊維軸に平行な結晶面の結晶サイズ(L2 )
が次の関係式を満たし、 L1 ≧60オングストローム L2 ≦140オングストローム かつ結晶配向度が90%以上である請求項1又は請求項
2記載のポリ(アリーレンエーテルケトン)繊維。 - 【請求項4】 L1 およびL2 が次の関係式を満たし、 200オングストローム>L1 >70オングストローム 130オングストローム>L2 >50オングストローム かつ結晶配向度が93%以上である請求項1又は請求項
2記載のポリ(アリーレンエーテルケトン)繊維。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP13163891A JP2760911B2 (ja) | 1990-05-09 | 1991-05-08 | ポリ(アリーレンエーテルケトン)繊維 |
Applications Claiming Priority (9)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2-117509 | 1990-05-09 | ||
JP11750990 | 1990-05-09 | ||
JP2-118735 | 1990-05-10 | ||
JP11873590 | 1990-05-10 | ||
JP32536390 | 1990-11-29 | ||
JP2-325364 | 1990-11-29 | ||
JP32536490 | 1990-11-29 | ||
JP2-325363 | 1990-11-29 | ||
JP13163891A JP2760911B2 (ja) | 1990-05-09 | 1991-05-08 | ポリ(アリーレンエーテルケトン)繊維 |
Related Child Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP17380097A Division JP2989158B2 (ja) | 1990-05-09 | 1997-06-30 | ポリ(アリーレンエーテルケトン)フィルム |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH04227927A JPH04227927A (ja) | 1992-08-18 |
JP2760911B2 true JP2760911B2 (ja) | 1998-06-04 |
Family
ID=27526768
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP13163891A Expired - Fee Related JP2760911B2 (ja) | 1990-05-09 | 1991-05-08 | ポリ(アリーレンエーテルケトン)繊維 |
Country Status (1)
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---|---|
JP (1) | JP2760911B2 (ja) |
-
1991
- 1991-05-08 JP JP13163891A patent/JP2760911B2/ja not_active Expired - Fee Related
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---|---|
JPH04227927A (ja) | 1992-08-18 |
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