JP2759288B2 - 酸化アルミニウム焼結体の製造方法 - Google Patents

酸化アルミニウム焼結体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、例えば耐熱部品、耐摩耗部品、耐酸耐アル
カリ性部品として使用可能な高靭性酸化アルミニウム焼
結体の製造方法に関する。
(従来技術) 酸化アルミニウム(Al2O3)は、セラミック材料の中
で最も一般的な材料として各種の分野で用いられてい
る。これは製造方法が比較的簡単で単価が安いためであ
る。しかし、酸化アルミニウムはジルコニアやSi3N4
比較して靭性が低いという問題があったため強度や靭性
が要求される部分にはより高価なジルコニアやSi3N4
使用される傾向にある。
そこで、従来よりも高靭性の酸化アルミニウム焼結体
が得られれば、その応用分野はさらに多岐に亘ると考え
られる。
(発明が解決しようとする問題点) そのため、酸化アルミニウムの靭性改善の方法が種々
検討されている。たとえば酸化アルミニウムにジルコニ
アを添加したり(特公昭59−6274号)、SiCのウィスカ
ーを添加したりする方法(特開昭61−274803号)があ
る。しかし、これらの方法はいずれも硬度や耐酸化性あ
るいは低コストといったアルミナ焼結体の特徴の一部ま
たは全部を損なうものであった。
(発明の目的) 本発明は新規微構造を有する高靭性の酸化アルミニウ
ム焼結体の製造方法を提供することを目的とするもので
ある。
(問題点を解決するための手段) 本発明者らは、上記問題点に対し研究を重ねた結果、
従来から行われているような酸化アルミニウム(以下、
単にアルミナという。)中に他の種類のセラミックスを
混合する方法ではなく、焼結体を形成するアルミナ粒子
自体を針状にすることで高靭性のアルミナ質焼結体が得
られることを知見した。
結晶体を形成するアルミナ粒子を針状にする方法は従
来見出されていいなかったが、先に本発明者らが提案し
た中間体としてホウ酸アルミニウムの針状晶物質を作製
し、これを特定の熱処理を施して針状晶酸化アルミニウ
ムを生成させる方法を応用する事により可能になった。
即ち、本発明は針状粒子より成るホウ酸アルミニウム
と所定量の酸化アルミニウムおよび必要に応じ焼結助
剤、その他の添加物を混合し、特定の温度で熱処理し、
次いで焼結温度に加熱することにより、針状の酸化アル
ミニウム粒子を含有することを特徴とする焼結体の製造
方法に関するものである。
以下、本発明を詳述する。
本発明の主たる特徴は、中間体として針状のホウ酸ア
ルミニウムを用いる点にある。
本発明において用いられる針状のホウ酸アルミニウム
はそれ自体、平均アスペクト皮が1を越える、特に10乃
至100のものを用いる。平均アスペクト比が1では、後
の熱処理によっても酸化アルミニウムは針状晶になり難
いからである。
次に、上記ホウ酸アルミニウムを適当な液体を用い
て、所定量の酸化アルミニウムおよび必要に応じ焼結助
剤、その他の添加物に良く混合させ、その後バインダー
を加えてスプレードライなど公知の方法で造粒を行う。
得られた造粒粉をプレス成形などの公知の方法で所望の
形状に成形しデワックスを行った後に焼成を行う。
焼成は針状酸化アルミニウム作製工程と緻密化工程と
に分けて行う。針状酸化アルミニウム作製工程は700℃
から1500℃で15分以上保持することによって行う。この
時の雰囲気は酸化、還元、真空のいずれであってもよい
が、針状酸化アルミニウムの作製を効率的に行うために
は高真空の雰囲気を用いる方が良い。緻密化工程では12
00℃から2000℃で10分以上保持する事が望ましい。
針状酸化アルミニウム作製工程の処理温度を700℃か
ら1500℃としたのは、700℃以下であれば硼素の蒸発に
時間かかり、生産効率が悪くなるためであり、1500℃を
越えると生成した酸化アルミニウムが針状でなくなるた
めである。また15分以上としたのは製品の品質の安定化
のためには15分程度の時間が必要だからである。
なお、成形体が比較的大きい場合、中心部の硼素が充
分蒸発しないことがある。このような場合は、予め針状
晶ホウ酸アルミニウム粉末のみを上記条件で熱処理する
かもしくは上記ホウ酸アルミニウム粉末と所定量の酸化
アルミニウム粉末および必要に応じ焼結助剤、その他の
添加物に良く混合させた粉末を上記条件で熱処理し、針
状晶の酸化アルミニウムを生成させたあとに、これらを
成形すればよい。
緻密化工程では真空焼成、任意の雰囲気での雰囲気焼
成のほか、ホットプレス法、HIP法など公知の方法が使
用できる。この時の焼成温度は1200℃以下であれば緻密
な焼結体が得られず、2000℃以上で焼結体の特性が低下
する傾向にある。望ましくは1400℃から1600℃である。
焼結体中の針状酸化アルミニウムの量は5体積%程度
からその効果が認められ多い程よい。また焼結体中の針
状酸化アルミニウムの形状は直径5μm以下が望まし
く、特に高強度を望む場合は1μm以下がよい。針状酸
化アルミニウムの長さは特に限定しなくてもよい。アス
ペクト比は1を越えていれば効果が認められるが針状酸
化アルミニウムの含有量が50体積%より少ない場合は2
以上が望ましい。アスペクト比は高い場合特に問題は生
じない。しかし、場合の工程により100以下に成ってし
まうのが普通である。なお、最適な平均アスペクト比が
3から30である。
なお、本発明の系において用いられる焼結助剤として
はアルミナ用焼結助剤として公知のものが使用でき、具
体的にはMgO、SiO2、NiO、Y2O3、等が使用でき、これら
は全量に対し0.05ないし5重量%の割合で配合すること
ができる。
以下、本発明を次の例で説明する。
(実施例) 所定量の酸化ほう素と水酸化アルミニウムをよく混合
し、ルツボに入れ、大気雰囲気で1300℃に加熱した。13
00℃で30分保持した後、室温まで冷却した。得られた固
形物を水洗した後、酸処理を行い、平均アスペクト比50
の針状晶を有する9Al2O3・2B2O3のホウ酸アルミニウム
を得た。
次に、アルミナ粉末とマグネシア粉末に対し、No.1〜
4の試料では上記ほう酸アルミニウムウイスカーを第1
表の割合で加えて混合後、乾燥し所望形状にプレス成形
を行った。その後、1300℃で4時間真空中で熱処理を行
いほう酸アルミニウムを酸化アルミニウムに変化させ
た。この成形体を1600℃でHIP法により焼結させた。No.
5からNo.17の試料はほう酸アルミニウムを一旦上記条件
で熱処理を行い、ほう酸アルミニウムを酸化アルミニウ
ムに酸化させた後にアルミナ粉末とマグネシア粉末に第
1表の割合で添加混合し、成型後、1500℃にてホットプ
レス法により粉末の混合時間や焼成温度を変えて焼成し
た。
得られた各焼結体に対し、研磨の後ポリッシングを
し、さらにエッチングを行って焼結体の微構造を観察
し、結晶体内針状粒子のアスペクト比および直径を測定
した。
更にIF法によりKIcを、JIS3点曲げ試験法により抗折
強度を測定した。
第1表より明らかなように針状粒子が含まれない場合
に比較して針状粒子が含まれる試料では何れもKIcおよ
び抗折強度が向上している。この傾向は成型後熱処理、
焼成した試料でも、粉体で熱処理した後に、成形、焼成
した試料でも同様である。なお、より大きな試料では内
部にボロンが残留する傾向に有るため粉体での熱処理を
行った方が良い場合がある。針状粒子のアスペクト比は
2でも効果が認められるが、10程度以上の方が良い傾向
にある。ウィスカーの直径は細い方が高い抗折強度が得
られる。
(発明の効果) 以上詳述にしたように、本発明によれば、簡単な処理
によって針状晶酸化アルミニウムを含有する焼結体を製
造することができることから、酸化アルミニウム焼結体
の優れた特性を劣化させることなく靭性を高めることが
でき、これによって酸化アルミニウムの用途をさらに拡
げることができる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸化アルミニウム原料粉末に針状のほう酸
    アルミニウムを添加混合し、所望の形状に成形した後に
    熱処理によって前記ほう酸アルミニウムを針状酸化アル
    ミニウムに変換し、その後焼成することを特徴とする酸
    化アルミニウム焼結体の製造方法。
  2. 【請求項2】ほう酸アルミニウムを熱処理することによ
    って得られた針状の酸化アルミニウムと、酸化アルミニ
    ウム粉末を含む混合粉末を所望の形状に成形後、焼成す
    ることを特徴とする酸化アルミニウム焼結体の製造方
    法。
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