JP2754676B2 - 内燃機関の燃料噴射量制御装置 - Google Patents

内燃機関の燃料噴射量制御装置

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JP2754676B2
JP2754676B2 JP1058443A JP5844389A JP2754676B2 JP 2754676 B2 JP2754676 B2 JP 2754676B2 JP 1058443 A JP1058443 A JP 1058443A JP 5844389 A JP5844389 A JP 5844389A JP 2754676 B2 JP2754676 B2 JP 2754676B2
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、内燃機関のシリンダ内に流入する燃料の挙
動を表す物理モデルに則って燃料噴射弁からの燃料噴射
量を制御する内燃機関の燃料噴射量制御装置に関する。
[従来の技術] 従来より、内燃機関に供給される燃料混合気の空燃比
が目標空燃比になるように燃料噴射弁からの燃料噴射量
を制御する燃料噴射量制御装置の一つとして、例えば特
開昭59−196930号公報に記載の如く、内燃機関の回転速
度と吸入空気量とから求められる基本燃料噴射量を補正
する補正値を制御入力、空燃比センサを用いて検出され
る空燃比の実測値を制御出力とし、該制御入力と制御出
力との間に線形な近似が成り立つものとして同定を行
い、内燃機関の動的な振舞いを記述する数式モデルを求
め、これに基づき設計された制御則により燃料噴射量を
制御する、所謂線形制御理論に基づく制御装置が知られ
ている。
しかし上記制御入力と制御出力との関係は本来非線形
であり、上記のように単に線形近似により数式モデルを
求めたのでは内燃機関の動的な振舞いを極めて狭い運転
条件下でしか記述することができず、制御を良好に行な
うには、例えば特開昭59−7751号公報に記載の如く、線
形近似が成り立つとみなし得る複数の運転領域毎に数式
モデルを設定し、これに基づき各運転領域毎に制御則を
決定しなければならなかった。このため従来では、制御
則を内燃機関の各運転領域毎に切り替えなければなら
ず、制御が煩雑になるといった問題があった。また各運
転領域の境界点では制御則の切り替えのために制御が不
安定になるといった問題もある。
そこで本願出願人は、特願昭62−189889号,特願昭62
−189891号等により、内燃機関における燃料挙動を記述
した物理モデルに基づき、非線形補償された制御則を決
定することで、上記のように制御則を切り替えることな
く(即ち一つの制御則で)燃料噴射制御を実行できる燃
料噴射量制御装置を提案した。
[発明が解決しようとする課題] しかし上記物理モデルによっても内燃機関の燃料挙動
を正確に記述することは難しく、実際には、内燃機関吸
気系の特性変化等によって、モデルパラメータが変動す
る。こうした変動に伴う制御量誤差は、制御則を周知の
サーボ系に拡大して積分動作によって補償することがで
きるが、積分補償の割合を大きくすると応答性が悪くな
るといったことがあり、制御性をより向上するには、モ
デルパラメータをなんらかの方法で求めて制御則を補正
することが望まれる。
そこで本願出願人は、こうしたモデルパラメータの変
動に対しても制御を良好に実行できる装置として、特願
昭63−24483号により、上記燃料噴射量制御装置に、燃
料噴射量や空燃比等からモデルパラメータを推定する同
定器を設け、その同定結果から制御則を補正して燃料噴
射量制御を行なう装置を提案した。
ところがこの提案の装置では、最小二乗推定式という
数学的原理に基づきモデルパラメータを推定するように
していたため、推定のための演算式が複雑で、従来内燃
機関制御装置で使用している安価な8ビットマイクロコ
ンピュータでは計算に時間がかかりすぎ、実現が困難で
あった。またモデルパラメータの推定には、空燃比セン
サを用いた空燃比の検出結果をそのまま使用しているの
で、空燃比センサの特性変動、外乱ノイズ、排気の流速
変化に伴う空燃比の検出遅れ等により、モデルパラメー
タの推定に誤差を生じ易く、これを防止するための空燃
比検出結果の平滑処理、安定性判定が複雑になるといっ
た問題もある。
そこで本発明は、内燃機関の燃料挙動を記述した物理
モデルに基づく制御則により燃料噴射量を制御すると共
に、必要に応じてモデルパラメータを推定し、このパラ
メータ変動に伴う制御誤差を補償するように構成された
装置において、モデルパラメータを簡単に、しかも精度
よく推定できるようにすることを目的としてなされた。
[課題を解決するための手段] 即ち上記目的を達成するためになされた本発明の構成
は、第1図に例示する如く、 内燃機関E/Gの所定の運転状態を検出する運転状態検
出手段M1と、 内燃機関E/Gのシリンダ内に流入する燃料の挙動を記
述した物理モデルに基づき設定された第1の演算式を使
用して、上記運転状態検出手段M1の検出結果と前回算出
した燃料供給量とに基づき該物理モデルの状態変数を推
定する状態変数推定手段M2と、 上記物理モデルに基づき設定された第2の演算式を使
用して、上記運転状態検出手段M1の検出結果と上記状態
変数推定手段M2の推定結果とに基づき燃料供給量を算出
する燃料供給量算出手段M3と、 該算出された燃料供給量に応じて当該内燃機関E/Gの
吸気通路に設けられた燃料噴射弁を開弁し、内燃機関E/
Gに燃料を供給する燃料供給手段M4と、 を備えた内燃機関の燃料噴射量制御装置において、 上記燃料供給量算出手段M3の算出結果に所定の変動成
分を重畳して、上記燃料供給手段M4により制御される燃
料噴射弁からの燃料噴射量を変動させる燃料噴射量変動
制御手段M5と、 内燃機関E/Gの排気成分に基づき内燃機関E/Gのシリン
ダ内に流入した燃料混合気の空燃比を検出する空燃比検
出手段M6と、 該空燃比検出手段M6の検出結果に基づき、上記空燃比
の変動量を算出する空燃比変動量算出手段M7と、 該算出された空燃比変動量に基づき上記物理モデルの
所定のモデルパラメータを推定するモデルパラメータ推
定手段M8と、 該推定されたモデルパラメータに基づき、上記燃料供
給量算出手段M3で燃料供給量を算出する際に用いる第2
の演算式を補正する補正手段M9と、 を設けたことを特徴とする内燃機関の燃料噴射量制御装
置を要旨としている。
[作用] 以上のように構成された本発明の燃料噴射量制御装置
においては、まず状態変数推定手段M2が運転状態検出手
段M1で検出された内燃機関E/Gの所定の運転状態と前回
算出した燃料供給量とに基づき、内燃機関E/Gにおける
燃料挙動を記述した物理モデルの状態変数を推定し、燃
料供給量算出手段M3が、この推定結果と内燃機関E/Gの
所定の運転状態とに基づき、燃料供給量を算出する。す
ると燃料噴射量変動制御手段M5が、この算出された燃料
供給量に所定の変動成分を重畳し、燃料供給手段M4が、
この変動成分の重畳された燃料供給量に応じて、燃料噴
射弁を開弁して内燃機関E/Gに燃料供給を行なう。
また本発明では、空燃比変動量算出手段M7が空燃比検
出手段M6で検出された空燃比の変動量を算出し、モデル
パラメータ推定手段M8がこの算出された空燃比の変動量
に基づき上記モデルパラメータを推定する。すると補正
手段M9がこの推定されたモデルパラメータに基づいて燃
料供給量算出手段M3が燃料供給量を算出するのに使用す
る第2の演算式を補正する。
即ち本発明では、燃料噴射量変動制御手段M5によっ
て、内燃機関への燃料噴射量に所定の変動成分を与え、
これによって生ずる空燃比の変動量からモデルパラメー
タを推定して、制御則を補正するようにされている。
[実施例] 以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
まず第2図は本発明が適用された内燃機関2及びその
周辺装置の構成を表す概略構成図である。
図に示す如く内燃機関2の吸気管4には、その上流か
ら、吸入空気を浄化するエアクリーナ6、吸入空気量を
制御するスロットルバルブ8、吸気の脈動を抑えるサー
ジタンク10、サージタンク10内の圧力(吸気管圧力)PM
を検出する吸気圧センサ12、及び吸気温度THAを検出す
る吸気温センサ14が備えられ、排気管16には、排気を浄
化する三元触媒18、及びこの三元触媒18より上流で排気
中の酸素濃度に基づき内燃機関2に供給された燃料混合
気の空燃比を検出する空燃比センサ19が備えられてい
る。
また当該内燃機関2には、その運転状態を検出するた
めのセンサとして、上記吸気圧センサ12,吸気温センサ1
4及び空燃比センサ19の他、ディストリビュータ20の回
転から内燃機関2の回転速度ωを検出するための回転速
度センサ22、同じくディストリビュータ20の回転から内
燃機関2への燃料噴射タイミングを検出するためのクラ
ンク角センサ24、及び内燃機関2のウォータジャケット
に取り付けられ、冷却水温THWを検出する水温センサ26
が備えられている。尚ディストリビュータ20はイグナイ
タ28からの高電圧を所定の点火タイミングで点火プラグ
29に印加するためのものである。
そして上記各センサからの検出信号は、マイクロコン
ピュータを中心とする論理演算回路として構成された電
子制御回路30に入力され、燃料噴射弁32を駆動して燃料
噴射弁32からの燃料噴射量を制御するのに用いられる。
即ち電子制御回路30は、予め設定された制御プログラ
ムに従って燃料噴射量制御のための演算処理を実行する
CPU40、CPU40で演算処理を実行するのに必要な制御プロ
グラムや初期データが予め記録されたROM42、同じくCPU
40で演算処理を実行するのに用いられるデータが一時的
に読み書きされるRAM44、上記各センサからの検出信号
を入力するための入力ポート46、及びCPU40での演算結
果に応じて燃料噴射弁32に駆動信号を出力するための出
力ポート48、等から構成され、内燃機関2のシリンダ2a
内に流入する燃料混合気の空燃比が予め設定された目標
空燃比になるように燃料噴射弁32からの燃料噴射量を制
御する。
次にこの電子制御回路30で実行される燃料噴射制御の
制御則を第3図に示すブロック図に基づいて説明する。
尚第3図は、当該実施例の制御則を示す図であって、
ハード的な構成を示すものではなく、実際の燃料噴射制
御は後述の第4図及び第5図のフローチャートに示した
一連の制御プログラムの実行により実現される。
またこの制御則は、後述するように、内燃機関2のシ
リンダ2a内に流入する燃料の挙動を記述した次式(1)
及び(2)に示す物理モデル(以下,燃料挙動モデルと
もいう)に基づき設計されたものである。
(但し上式において、fw:吸気管壁面付着燃料量、fv:吸
気管内蒸発燃料量、fi:燃料噴射量、Vfw:吸気管壁面か
らの燃料蒸発量、fc:筒内流入燃料量、P,Q,R,S,D:定
数、である。) 第3図に示すように、本実施例では、まず吸気圧セン
サ12で検出された吸気管圧力PMと水温センサ26で検出さ
れた冷却水温THWとが燃料蒸発速度算出部B1に入力され
る。
燃料蒸発速度算出部B1は、吸気管圧力PMと冷却水温TH
Wとから、吸気管壁面からの単位時間当りの燃料蒸発量
(燃料蒸発速度)Vfを算出するためのもので、まず冷却
水温THWから吸気管4内での燃料の飽和蒸気圧Psを求
め、この飽和蒸気圧Psと吸気管圧力PMとから燃料蒸発速
度Vfを算出する。
つまり吸気管壁面からの燃料蒸発速度Vfは、吸気管4
内での燃料の飽和蒸気圧Psと吸気管4内部の圧力(吸気
管圧力)PMとの関数として求めることができ、また飽和
蒸気圧Psは吸気管壁面への付着燃料温度Tqの関数であ
り、付着燃料温度Tqは内燃機関2の冷却水温域は吸気ポ
ート付近のシリンダヘッド温度によって代表させること
ができるので、本実施例においては、まず冷却水温THW
(゜K)をパラメータとする次式(3)を用いて飽和蒸気
圧Psを求め、 Ps=β1/THW2−β2・THW+β3 ……(3) (但し、β1,β2,β3:定数) その後この算出した飽和蒸気圧Psと吸気管圧力PMとか
ら燃料蒸発速度Vfを算出するようにされているのであ
る。
次にこの燃料蒸発速度算出部B1で算出された燃料蒸発
速度Vfは燃料蒸発算出部B2に入力される。この燃料蒸発
量算出部M2は、燃料蒸発速度Vfを回転速度セン22を用い
て検出された内燃機関2の回転速度ωで除算することに
より内燃機関2の1回転当りに吸気管壁面から蒸発する
燃料量Vfw(=Vf/ω)を算出するためのもので、その算
出結果(燃料蒸発量)Vfwは係数f4乗算部B3に入力され
て、予め設定された係数f4が乗算される。
また次に吸気管圧力PM及び回転速度ωは、吸気温セン
14により検出された吸気温THAと共に筒内流入空気量算
出部P4にも入力される。筒内吸入空気量算出部P4は、こ
れら入力された吸気管圧力PM,回転速度ω及び吸気温THA
に基づき、次式(4) mc={β×(ω)・PM−βy(ω)}/THA ……(4) (但し、β×(ω),βy(ω):回転速度ωの関数) を用いて、内燃機関2の吸気行程時にシリンダ2a内に流
入する空気量mcを算出するためのもので、その算出結果
mcは目標燃料量算出部B5に入力される。すると目標燃料
量算出部B5では、その算出された空気量mcと予め設定さ
れた目標燃空比(目標空燃比の逆数)λrとを乗算し
て、シリンダ2a内に流入すべき燃料量(即ち目標燃料
量)fcrを算出する。またこの目標燃料量fcrは、係数f3
乗算部B6に入力され、予め設定された係数f3が乗算され
る。
一方上記燃料蒸発量算出部B2で算出された燃料蒸発量
Vfwは、状態変数推定部P7にも入力される。状態変数推
定部P7は、予め設定された演算式を用いて、上記入力さ
れた燃料蒸発量Vfwと、一時遅延部B8を介して入力され
る前回算出した燃料噴射量fi(k−1)と、後述のモデ
ルパラメータ変動量算出部B13で算出されたモデルパラ
メータPの変動量ΔPと、当該状態変数推定部B7で前回
推定した状態変数量w(k−1)及びv(k−1)
とから、次回の燃料噴射量fi(k)を算出するための状
態変数量fw及びfvを推定する。そしてこの推定結果w
及びvには、係数f1乗算部B9及び係数f2乗算部B10
で、夫々係数f1及びf2が乗算される。
また次の空燃比センサ19による空燃比の検出結果A/F
は、A/F変動量算出部B11に入力される。A/F変動量算出
部B11は、空燃比センサ19により検出された空燃比の時
系列データからその変動幅(A/F変動量)ΔA/Fを算出す
るためのもので、その算出結果ΔA/Fを算出は、筒内流
入空気量算出部B4で算出された空気量mcと共に筒内流入
燃料変動量算出部B12に入力される。すると筒内流入燃
料変動量算出部B12では、その入力データΔA/F及びmcに
基づき、シリンダ2a内への流入燃料量fcの変動幅fcDを
算出し、その算出結果をモデルパラメータ変動量算出部
B13に出力する。
モデルパラメータ変動量算出部B13は、上記入力され
た流入燃料量fcの変動幅fcDに基づき、予め設定された
マップを用いて、上記(1)及び(2)式で記述された
燃料挙動モデルにおけるモデルパラメータPの変動幅Δ
Pを算出するためのもので、その算出結果ΔPは、上記
状態変数推定部B7の他、係数f5乗算部B14に出力され、
係数f5乗算部B14で係数f5が乗算される。またこの乗算
結果f5・ΔPは状態変数乗算部B15に入力され、状態変
数推定部B7で推定された状態変数wが乗算される。
そしてこの状態変数乗算部B15による乗算結果は、他
の係数乗算部B3,B6,B9,B10での乗算結果と共に加算部B1
6〜B19で加算され、これによって燃料噴射弁32からの燃
料噴射量fiが算出される。
またこの算出された燃料噴射量fiには、正弦波発生部
B20から出力される正弦波sin2πfTを増幅部B21でA倍に
増幅することによって得られる変動成分Δfi(=Asin2
πfT)が、加算部B22で加算され、これによって燃料噴
射弁32から実際に燃料噴射を行なう燃料量TAU(=fi+
Δfi)が決定される。
次に上記制御則の基本となる燃料挙動モデル、及び該
燃料挙動モデルに基づく上記制御則の設計方法について
説明する。尚この種の制御則の設計方法としては、例え
ば、古田勝久著「実システムのデジタル制御」システム
と制御,Vol.28,No.12,1984年,計測自動制御学会等に詳
しいので、ここでは簡単に説明する。
まず内燃機関2のシリンダ2a内に流入する燃料量fc
は、燃料噴射弁32からの燃料噴射量fiと、吸気管4壁面
への付着燃料量fwと、吸気管4内部での蒸発燃料量fvと
を用いて次式(5)のように記述することができる。
fc=α1・fi+α2・fw+α3・fv ……(5) 即ち上記燃料量fcは、燃料噴射弁32からの噴射燃料の
直接流入量α1・fiと、その噴射燃料が付着した吸気管
4からの間接流入量α2・fwと、噴射燃料或は壁面付着
燃料の蒸発により吸気管4内部に存在する蒸発燃料の流
入量α3・fvとの総和であると考えられることから、上
式(5)のようにシリンダ2a内に流入する燃料量fcを記
述することができる。
上式(5)において、燃料噴射量fiは燃料噴射弁32の
開弁時間によって定まるので、吸気管4壁面への付着燃
料量fw及び吸気管4内での蒸発燃料量fvを知ることがで
きれば、燃料量fcを予測することができる。
そこで次に上記付着燃料量fw及び蒸発燃料量fvについ
て考える。
まず吸気管4壁面への付着燃料量fwは、吸気行程時の
シリンダ2a内への流入によって、吸気行程毎にその一部
α2が減少する他、吸気管4内部への蒸発によって減少
し、吸気サイクルと同期して燃料噴射弁32から噴射され
る燃料噴射量fiの一部α4が付着することによって増加
する。また吸気サイクル毎の燃料蒸発量は、単位時間当
りの燃料蒸発量(即ち燃料蒸発速度)Vfと内燃機関2の
回転速度ωとから、α5・Vf/ω(=α5・Vfw,α5:比
例定数)として表すことができる。このため吸気管4壁
面への付着燃料量fwは次式(6)に示す如く記述でき
る。
fw(k+1)=(1−α2)・fw(k)+α4・fi
(k)−α5・Vfw(k) ……(6) (但し、k:吸気サイクル) 一方吸気管4内部での蒸発燃料量fvは、吸気行程時の
シリンダ2a内への流入によって、吸気サイクル毎にその
一部α3が減少する他、燃料噴射量fiの一部α6が蒸発
することによって増加し、更に上記付着燃料の燃料蒸発
によって増加する。このため吸気管4内の蒸発燃料量fv
は次式(7)に示す如く記述できる。
fv(k+1)=(1−α3)・fv(k)+α6・fi
(k)+α5・Vfw(k) ……(7) 従って上記(5)〜(7)式において、(1−α2)
をP,(1−α3)をQ,α4をR,α6をS,α5をDとして
整理することにより、吸気管壁面への付着燃料量と蒸発
燃料量とを状態変数として内燃機関での燃料挙動を表す
前述の(1)及び(2)式を得ることができ、内燃機関
2の吸気サイクルをサンプリング周期として離散系で表
現された燃料挙動モデルが定まる。
このような燃料挙動モデルでは、Vfwの項によって非
線形補償されているため、各モデルパラメータP,Q,R,S,
Dを周知の同定法により定めれば、内燃機関の定常運転
時の燃料挙動を全運転領域で正確に記述することができ
るようになる。しかし内燃機関2の特性は経時的に変化
するため、上記燃料挙動モデルでは内燃機関2の燃料挙
動を正確に記述できなくなることがある。また内燃機関
は、たとえ同一機種であっても各機関毎に特性にばらつ
きがあるため、複数の内燃機関の燃料挙動を一つの燃料
挙動モデルで記述することは困難で、量産された内燃機
関の制御則を特定の燃料挙動モデルに基づき設計して
も、各機関毎の制御精度を確保するのは困難である。
そこで本実施例では、こうした内燃機関2の特性変動
やばらつきに応じて、制御則を自動修正しつつ、燃料噴
射制御を実行できるように、内燃機関2の運転中に上記
燃料挙動モデルのモデルパラメータPを推定し、設計時
の値からの変動量ΔPを求めて制御則を補正し得るよう
に、上記燃料挙動モデルを変形した次式(8)及び
(9)の如き燃料挙動モデルにより制御則が決定されて
いる。
次に上記(8)及び(9)式で記述された燃料挙動モ
デルに基づく当該実施例の制御則の設計手順について説
明する。
上記燃料挙動モデルは非線形であるので、線形制御理
論を適用するために、まず燃料挙動モデルを線形近似す
る。上記(8)及び(9)式において、 とおくと、上記(8)及び(9)式は で表すことができる。
ここで、 で定常となるとき、 とすると、上式(17)及び(18)は次式(19)、(20)
に示す如くなる。
上式(17)〜(20)より、 次に、上式(21),(22)において、 とおくと(21),(22)式は次式(26),(27)の如く
なる。
この(26)及び(27)において、X(k)→0すれば、
Y(k)=0となり, となる。従って上式(26)の最適レギュレータを設計す
ればよい。即ち、離散型リカッチ方程式を解くことで、
最適制御は次式(28)の如く求まる。
またこの(28)式は、上記(23)及び(24)式より次式
(29)の如くなる。
従って、上記(19)及び(20)式において、 について解ければ上式(29)が確定し、 を求めることができるようになる。
本実施例の場合、上式(30)は前述の(10)〜(16)
式より、次式(31)の如くなり、 (即ちfwr、fvr、fir)が夫々次式(32)〜(34)の如
く求まる。
fwr(β11・Vfw(k)+β12・{fcr(k)−(1−R
−S)fi(k)+ΔP・fw(k)} ……(32) fvr(β21・Vfw(k)+β22・{fcr(k)−(1−R
−S)fi(k)+ΔP・fw(k)} ……(33) fir(β21・Vfw(k)+β23・{fcr(k)−(1−R
−S)fi(k)+ΔP・fw(k)} ……(34) (但し、β11〜β23は定数) 従ってこれら各式(32),(33),(34)式を上記
(29)式に代入することによって、制御入力 即ちfi(k)を求めるための演算式が次式(35)の如く
求まる。
fi(k)=f1・fw(k)+f2・fv(k)+f3・fcr
(k)+f4・Vfw(k)+f5・ΔP・fw(k) ……(35) 尚この(35)式は、前述の燃料供給量算出手段M3で使
用される第2の演算式に相当し、第3図の各種乗算部B
3,B6,B9,B10,B14,B15及び加算部B16〜B19を記述してい
る。
また上記状態変数推定部B7は、上式(35)における状
態変数量,即ち付着燃料量fw及び蒸発燃料量fvを推定す
るためのものであるが、本実施例では状態変数推定部B7
において上記(8)式をそのまま用いて状態変数fw及び
fvを推定するようにされている。従って本実施例では、
上記(8)式が前述の状態変数推定手段M2で使用される
第1の演算式に相当することとなる。
次に上記(35)式における状態変数Pの変動量ΔPを
算出するための各種算出部B11〜B13,及び上式(35)に
基づき算出された燃料噴射量fiに変動成分Δfiを加えた
量を内燃機関2への実際の燃料噴射量とする正弦波発生
部B20,増幅部B21及び加算部B22について説明する。
まず上記(1)及び(2)式で記述された燃料挙動モ
デルにおいて、蒸発燃料量fv及び燃料蒸発量V fwは、付
着燃料量fw,燃料噴射量fiに比べ著しく小さく、モデル
パラメータR,S,Dに変動があっても制御精度には殆ど影
響しないため、これら各値を無視する。すると燃料挙動
モデルは次式(36)及び(37)の如く簡素化できる。
fw(k+1)=P・fw(k+1)+Rfi(k) ……(36) fc(k)=(1−P)fw(k)+(1−R)fi(k) ……(37) 次に上式において、制御入力をfi、制御出力をfcとし
て、Z変換を行ない、上記モデルの伝達関数を導く。尚
Z変換の手法等については、三谷政昭著「デジタルフィ
ルタデザイン」(昭晃堂)等に詳解されているので、詳
しい説明は省略する。
まず上式(36)及び(37)をZ変換すると、これら各
式は次式(38),(39)の如くなり、 ZFw(Z)=PFw(Z)+RFi(Z) ……(38) Fc(Z)=(1−P)Fw(Z)+(1−R)Fi(Z) ……(39) (但し、Fw(Z),Fi(Z),Fc(Z)は、夫々、fw,fi,
fcの変換値) 上式(38)からFw(Z)は次式(40)の如く記述でき
る。
Fw(Z)=R・Fi(Z)/(Z−P) ……(40) そこで上式(40)を(39)式に代入すると、 Fc(Z)=H(Z)・Fi(Z) ……(41) 但し、 となり、伝達関数H(Z)が得られる。
そこで次に燃料噴射弁32から実際に燃料噴射を行なう
燃料噴射量fiとして、次式(43)の如く、上記演算式
(35)により算出される通常の燃料噴射量fiOと、既知
変動分fiDとを考えると、 fi=fiO+fiD→Fi(Z)=FiO(Z)+FiD(Z) ……(43) 燃料噴射量fiOは、通常、空燃比が理論空燃比(14.7)
となるように設定されるため、上記演算式(35)が実際
の内燃機関2の特性に対応しているとすると、シリンダ
2a内への流入燃料fcは理論空燃比に対応した燃料量fcO
と燃料噴射量fiの既知変動分fiDにより次式(44)の如
くなり、 fc=fcO+fcD ……(44) 上記(41)式は、次式の如く記述できる。
Fc(Z)=FcO(Z)+FcD(Z) =H(Z)・FiO(Z)+H(Z)・FiD(Z) ……(45) 従ってシリンダ内への流入燃料量fcの変動量fcDは、
次式(46)の如く記述でき、 FcD(Z)=H(Z)・FiD(Z) ……(46) 燃料噴射量に加えた既知変動量fiDによる流入燃料の変
動量fcDが分かれば、次式(47)の如くシステムの伝達
関数H(Z)が分かる。
H(Z)=FcD(Z)/FiD(Z) ……(47) 一方、シリンダ2a内流入燃料の変動量fcDは、空燃比
センサ19により検出された空燃比A/Fの理論空燃比から
のずれと、シリンダ2a内に流入した空気量mcとが分かれ
ば、次式(48)の如く計算できる。
(但し、Mc(Z),A/F(Z)は夫々、流入空気量mc,空
燃比検出結果A/FのZ変換値) このため本実施例では、上記(35)式により求めた燃
料噴射量fiに加える既知外乱fiDとして、振幅A、周波
数fの正弦波を考え、燃料噴射量fiに所定の周期T[se
c.]で逐次加算し、これによる空燃比の変動量から、モ
デルパラメータPを推定して、モデルパラメータPの変
動量ΔPを算出するようにされている。
即ち、上記既知外乱fiDのZ変換値FiD(Z)は、次式
(49)の如くなり、 伝達関数H(Z)のシステムへ上記(49)式の入力を加
えたときの出力振幅,即ち流入燃料変動量は、次式(5
0)の如くなる。
そこで本実施例では、正弦波発生部B20,増幅部B21,及
び加算部B22により、上記(35)式で求めた燃料噴射量f
iに、振幅A、周波数f、周期Tを固定した所定の正弦
波変動成分Δfiを重畳し、これにより生ずるシリンダ2a
内への流入燃料量の正弦波変動成分fcDの振幅を、筒内
流入燃料変動量算出部B12において、A/F変動量算出部B1
1で求めた空燃比検出結果A/Fの変動量ΔA/Fと当該流入
空気量算出部B4で求めたシリンダ2a内への流入空気量mc
とに基づき算出し、モデルパラメータ変動量算出部B13
で、この値からモデルパラメータPを推定してモデルパ
ラメータPの変動量ΔPを算出するようにしている。
尚この算出は、上記(50)式を変形した演算式により
行なうことができるが、本実施例では、上記(50)式に
基づきモデルパラメータP推定用のマップを設定してお
き、このマップを用いてモデルパラメータPを推定する
ようにされている。
また上述の振幅A、周波数f、周期Tとしては、設計
時に判明しているモデルパラメータの値、及び空燃比セ
ンサの特性を考慮して、最も精度高くモデルパラメータ
Pを推定し得る値に設定されている。これは伝達関数H
(Z)はローパスフィルタであり、例えば周波数fが低
い領域においては、モデルパラメータPの変化に起因す
る伝達関数H(Z)の変化が応答の違いとして明確に出
てこなくなり、推定値に充分な精度が得られなくなる虞
があるためである。
次に電子制御回路30で実行される燃料噴射制御を第4
図及び第5図に示すフローチャートに基づいて説明す
る。尚、以下の説明では、現在の処理において扱われる
量を添字(k)を付して表わし、前回(即ち、内燃機関
2の1サイクル前)の処理で求めた値を添字(k−1)
を付して表わす。
まず第4図は内燃機関2の始動と共に開始され、内燃
機関2の運転中繰返し実行される燃料噴射制御のメイン
ルーチンを表わすフローチャートである。
図に示す如くこの処理が開始されると、まずステップ
100を実行して、付着燃料量w(k−1)、蒸発燃料
量v(k−1)、燃料噴射量fi(k−1)に所定の初
期値を設定し、続くステップ110に移行して、上記各セ
ンサからの出力信号に基づき、吸気管圧力PM(k)、吸
気温度THA(k)、内燃機関2の回転速度ω(k)及び
冷却水温THW(k)を求める。
次にステップ120では、上記ステップ110で求めた吸気
管圧力PM(k)と、内燃機関2の回転速度ω(k)とに
基づき、内燃機関2の負荷に応じた目標燃空比γrを算
出する。尚このステップ120では、通常、空気過剰率が
1(即ち理論空燃比)となるように目標燃空比λrが設
定され、内燃機関2の高負荷運転時等には燃料を通常よ
り増量して内燃機関の出力を上げるために目標燃空比λ
rがリッチ側に設定され、内燃機関2の軽負荷運転時等
には、燃料を通常より減量して燃費を向上するために目
標燃空比λrがリーン側に設定される。
ステップ120で目標燃空比λr(k)が設定される
と、今度はステップ130に移行し、上記ステップ120で求
めた吸気管圧力PM(k)と吸気温度THA(k)と内燃機
関2の回転速度ω(k)とに基づき、前述の(4)式ま
たはデータマップを用いてシリンダ2a内に流入する空気
量mc(k)を算出する筒内流入空気量算出部B4としての
処理を実行する。
また続くステップ140では、上記ステップ110で求めた
冷却水温THW(k)と吸気管圧力PM(k)とに基づき、
壁面付着燃料の蒸発速度Vfを求め、その値を内燃機関2
の回転速度ω(k)で除算することによって、内燃機関
2の1サイクル間に吸気管4壁面から蒸発する燃料量
(即ち燃料蒸発量)Vfw(k)を算出する、燃料蒸発速
度算出部B1及び燃料蒸発量算出部B2としての処理を実行
する。
そして次ステップ150では、ステップ140で求めた燃料
蒸発量Vfw(k)と、後述のモデルパラメータ変動量算
出処理で求めたモデルパラメータPの変動量ΔPと、前
回の燃料噴射量fi(k−1)と、前回当該ステップ150
で求めた状態変数量w(k−1)及びv(k−1)
とに基づき、前述の(8)式を用いて、状態変数量,即
ち付着燃料量w(k−1)及び蒸発燃料量v(k)
を推定する、状態変数推定部B7としての処理を実行す
る。
また次にステップ160では、ステップ120で設定した目
標燃空比λr(k)とステップ130で求めた空気量m
(k)とを乗算して、シリンダ2a内に流入する目標燃料
量fcr(k){=λr・mc}を算出する、目標燃料量算
出部B5としての処理を実行する。
そして続くステップ170では、上記ステップ140〜ステ
ップ160で求めた燃料蒸発量Vfw(k),付着燃料量w
(k),蒸発燃料量v(k)及び目標燃料量λr・mc
(k)と、後述のモデルパラメータ変動量算出処理で算
出されたモデルパラメータPの変動量ΔPとに基づき、
前述の(35)式を用いて燃料噴射量fi(k)を算出す
る。
また続くステップ180では、上記求めた燃料噴射量fi
(k)に、後述のモデルパラメータ変動量算出処理で設
定される変動成分Δfiを加算して、燃料噴射弁32から実
際に燃料噴射を行なうための燃料噴射量TAUを決定す
る。
するとステップ190では、上記クランク角センサ24か
らの検出信号に基づき決定される燃料噴射タイミング
で、ステップ180で求めた噴射量TAUに応じて燃料噴射弁
32を開弁し、燃料噴射を実行する。
このステップ190で燃料噴射で行なわれ、内燃機関2
への燃料供給が一旦終了すると、ステップ200に移行
し、今回の処理で求めた状態変数量w(k),v
(k)、及び燃料噴射量fi(k)を、次回の処理のため
に、夫々、w(k−1),v(k−1),fi(k−
1)に置き換え、再度ステップ110に移行する。
次に第5図は、上記第4図のメインルーチンに対して
所定時間毎の割り込み処理として実行されるモデルパラ
メータ変動量算出処理を表わすフローチャートである。
図に示す如くこのモデルパラメータ変動量算出処理で
は、まずステップ210を実行し、上記ステップ180で燃料
噴射弁32からの燃料噴射量TAUを設定する際に用いられ
る燃料噴射量fiの変動成分Δfiを次式(51)を用いて算
出する、正弦波発生部N20及び増幅部B21としての処理を
実行する。
Δfi=Asin2πfnT ……(51) (但し、n:当該モデルパラメータ変動量算出処理の実行
毎にインクリメントされる定数) そして続くステップ220では、空燃比センサ19からの
出力信号に基づき空燃比A/F(n)を検出してRAM44内に
格納し、次ステップ230で上記定数nをインクリメント
して、ステップ240に移行する。
ステップ240では、上記インクリメントされた定数n
の値から、前回次ステップ250以降の処理を実行した後
所定のサンプリング時間が経過したか否か、即ち上記ス
テップ230で空燃比A/Fの検出データが所定数サンプリン
グされたか否かを判断する。そしてこのステップ240で
所定のサンプリング時間が経過していないと判断される
とそのまま当該処理を一旦終了し、逆に所定のサンプリ
ング時間が経過したと判断されると、続くステップ250
に移行して、上記ステップ230で検出した複数のA/F検出
データから、空燃比の変動幅を表わすA/F変動量ΔA/Fを
算出する、A/F変動量算出部B11としての処理を実行す
る。
次に続くステップ260では、この算出したA/F変動量Δ
A/Fと上記メインルーチンのステップ130で算出された最
新の空気量mcとに基づき、シリンダ2a内への流入燃料の
変動量fcDを算出する当該流入燃料変動量算出部B12とし
ての処理を実行し、続くステップ270に移行して、この
算出した変動量fcDに基づき、予め設定されたマップを
用いてモデルパラメータPの変動量ΔPを算出するモデ
ルパラメータ変動量算出部B13としての処理を実行した
後、当該処理を一旦終了する。
尚この変動量ΔPの算出は、既述したように、上記変
動量fcDに基づき予め設定されたマップを用いて現時点
でのモデルパラメータPを推定し、この推定値と設計時
の値との偏差をとることによって実行される。
以上説明したように本実施例の燃料噴射制御装置で
は、前述の燃料挙動モデルに則って設定された演算式
(35)により算出される燃料噴射量fiに正弦波変動成分
Δfiを加えて燃料噴射を行ない、これにより生ずる空燃
比の変動量ΔA/Fから内燃機関への流入燃料の変動量fcD
を求め、この変動量fcDからモデルパラメータPの変動
量ΔPを算出し、この変動量ΔPを燃料噴射量算出系に
フィードバックするようにされている。この結果、内燃
機関の特性変動、或はそのばらつき等によって設計時の
燃料挙動モデルが実際の内燃機関と対応しなくなって
も、これによる制御誤差を良好に補正することが可能と
なり、空燃比の制御精度を向上できる。
またモデルパラメータの推定に当たって、従来技術に
記載した装置のように複雑な演算式を使用することな
く、マップを用いてモデルパラメータを簡単に推定する
ことができるので、その演算時間を短縮でき、従来より
内燃機関の制御装置に使用されているマイクロコンピュ
ータをそのまま使用して実現できる。
また更にモデルパラメータPの推定には、空燃比セン
サにより検出された空燃比の変動量ΔA/Fを用いるた
め、モデルパラメータPを精度よく推定することができ
る。つまり空燃比の検出値自体に誤差があっても、その
変動量は問題なく検出できるので、モデルパラメータを
精度よく推定することが可能となり、空燃比の制御精度
を向上できるようになるのである。
ここで上記実施例では、推定するモデルパラメータを
燃料挙動モデルにおいて状態変数fwにかかるパラメータ
Pとしたが、燃料噴射量fiにかかるパラメータRとして
もよく、またこれら両パラメータP,Rを推定して、パラ
メータ変動による制御誤差を補正するようにしてもよ
い。
尚モデルパラメータRを推定する際には、上記(50)
式を変形した演算式或はこれに基づくマップにより、上
記実施例と同様に推定することができるが、P,Rの両モ
デルパラメータを推定するには、上記(50)式のみでは
推定できない。そこでこの場合には、燃料噴射量fiに加
える変動成分Δfiと空燃比変動成分の位相遅れを求め、
この位相差と筒内流入燃料の変動量fcDとから、推定す
るようにすればよい。
即ち、伝達関数H(Z)のシステムへ上記(49)式の
入力を加えたときの出力の位相は、次式(52)の如くな
るので、 ∠FcD(Z)=tan-1{H(j2πfT)} =tan-1[{R−P+(1−R)cos2πfT+j(1−
R)sin2πfT}・{P−cos2πfT+jsin2πfT} ……(52) この(52)式と前述の(50)式とに基づき、空燃比変
動成分の位相遅れと空燃比変動成分に基づく流入の燃料
の変動量とをパラメータとする2次元マップを予め作成
しておき、このマップを用いて上記モデルパラメータP,
Rを推定するようにすればよい。
またこのようにモデルパラメータP,Rを推定する際の
空燃比変動成分の位相遅れは、空燃比センサまでの排気
の流速等によって変化するので、位相遅れを算出する際
には、内燃機関の運転状態、例えば回転速度と吸気管圧
力とに基づき排気系において生ずる位相のずれを求め、
この算出結果を考慮して空燃比変動成分の位相遅れを算
出するようにすればよい。
また次に上記実施例では、上記(50)式を導く基礎式
として、燃料挙動モデルにおけるモデルパラメータR,S,
Dを無視した(36),(37)式を用いたが、これら各値
は固定値として、Z変換を行ない、上記と同様の手順で
上記(50)式を導き、モデルパラメータ推定系を設計す
るようにしてもよい。
[発明の効果] 以上説明したように、本発明の内燃機関の燃料噴射量
制御装置では、内燃機関への燃料噴射量に変動成分を与
え、これによって生ずる空燃比の変動量からモデルパラ
メータを推定し、この推定結果に基づき燃料供給量算出
用の演算式を補正するようにされている。このため内燃
機関の特性変動或は特性のばらつき等によって、設計時
の物理モデルが実際の内燃機関に対応しなくなった場合
にも、これによる制御誤差を補正することができ、空燃
比の制御精度を向上できる。またモデルパラメータは、
従来技術に記載した装置のように最小二乗推定式のよう
な複雑な演算を行なうことなく、空燃比の変動量から簡
単に推定することができるので、制御装置に高速処理の
可能な高価なマイクロコンピュータを使用することな
く、従来より内燃機関制御装置に使用されているマイク
ロコンピュータで充分実現が可能となる。また更にモデ
ルパラメータは、空燃比の検出結果を直接使用せず、そ
の変動量に基づき推定するため、空燃比を検出するセン
サの劣化等によって空燃比の検出結果に誤差が生じて
も、モデルパラメータを精度よく推定することが可能と
なり、これによっても空燃比の制御精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の構成を表すブロック図、第2図は実施
例の内燃機関及びその周辺装置を表す概略構成図、第3
図は電子制御回路による燃料噴射制御のための制御則を
表わすブロック図、第4図は電子制御回路で実行される
燃料噴射制御のためのメインルーチンを表わすフローチ
ャート、第5図は電子制御回路で所定時間毎に実行され
るモデルパラメータ変動量算出処理を表わすフローチャ
ート、である。 M1……運転状態検出手段 M2……状態変数推定手段 M3……燃料供給量算出手段 M4……燃料供給手段 M5……燃料噴射量変動制御手段 M6……空燃比検出手段 M7……空燃比変動量算出手段 M8……モデルパラメータ推定手段 M9……補正手段、E/G,2……内燃機関 12……吸気圧センサ、14……吸気温センサ 19……空燃比センサ、20……回転速度センサ 26……水温センサ、30……電子制御回路 32……燃料噴射弁

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内燃機関の所定の運転状態を検出する運転
    状態検出手段と、 内燃機関のシリンダ内に流入する燃料の挙動を記述した
    物理モデルに基づき設定された第1の演算式を使用し
    て、上記運転状態検出手段の検出結果と前回算出した燃
    料供給量とに基づき該物理モデルの状態変数を推定する
    状態変数推定手段と、 上記物理モデルに基づき設定された第2の演算式を使用
    して、上記運転状態検出手段の検出結果と上記状態変数
    推定手段の推定結果とに基づき燃料供給量を算出する燃
    料供給量算出手段と、 該算出された燃料供給量に応じて当該内燃機関の吸気通
    路に設けられた燃料噴射弁を開弁し、内燃機関に燃料を
    供給する燃料供給手段と、 を備えた内燃機関の燃料噴射量制御装置において、 上記燃料供給量算出手段の算出結果に所定の変動成分を
    重畳して、上記燃料供給手段により制御される燃料噴射
    弁からの燃料噴射量を変動させる燃料噴射量変動制御手
    段と、 内燃機関の排気成分に基づき内燃機関のシリンダ内に流
    入した燃料混合気の空燃比を検出する空燃比検出手段
    と、 該空燃比検出手段の検出結果に基づき、上記空燃比の変
    動量を算出する空燃比変動量算出手段と、 該算出された空燃比変動量に基づき上記物理モデルの所
    定のモデルパラメータを推定するモデルパラメータ推定
    手段と、 該推定されたモデルパラメータに基づき、上記燃料供給
    量算出手段で燃料供給量を算出する際に用いる第2の演
    算式を補正する補正手段と、 を設けたことを特徴とする内燃機関の燃料噴射量制御装
    置。
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