JP2658246B2 - 内燃機関の燃料噴射量制御装置 - Google Patents

内燃機関の燃料噴射量制御装置

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JP2658246B2 JP21549388A JP21549388A JP2658246B2 JP 2658246 B2 JP2658246 B2 JP 2658246B2 JP 21549388 A JP21549388 A JP 21549388A JP 21549388 A JP21549388 A JP 21549388A JP 2658246 B2 JP2658246 B2 JP 2658246B2
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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、内燃機関のシリンダ内に流入する燃料の挙
動を表す物理モデルに則って燃料噴射弁からの燃料噴射
量を制御する内燃機関の燃料噴射量制御装置に関する。
[従来の技術] 従来より、内燃機関に供給される燃料混合気の空燃比
が目標空燃比になるように燃料噴射弁からの燃料噴射量
を制御する燃料噴射量制御装置の一つとして、例えば特
開昭59−196930号公報に記載の如く、内燃機関の回転速
度と吸入空気量とから求められる基本燃料噴射量を補正
する補正値を制御入力、空燃比センサを用いて検出され
る空燃比の実測値を制御出力とし、該制御入力と制御出
力との間に線形な近似が成り立つものとして同定を行
い、内燃機関の動的な振舞いを記述する数式モデルを求
め、これに基づき設計された制御則により燃料噴射量を
制御する、所謂線形制御理論に基づく制御装置が知られ
ている。
[発明が解決しようとする課題] しかし上記制御入力と制御出力との関係は本来非線形
であり、上記のように単に線形近似により数式モデルを
求めたのでは内燃機関の動的な振舞いを極めて狭い運転
条件下でしか記述することができず、制御を良好に行な
うには、例えば特開昭59−7751号公報に記載の如く、線
形近似が成り立つとみなし得る複数の運転領域毎に数式
モデルを設定し、これに基づき各運転領域毎に制御則を
決定しなければならなかった。
このため従来では、制御則を内燃機関の各運転領域毎
に切り替えなければならず、制御が煩雑になるといった
問題があった。
また各運転領域の境界点では制御則の切り替えのため
に制御が不安定になるといった問題もある。つまり例え
ば第5図に一点鎖線で示す如く、スロットルバルブの開
・閉によって内燃機関が加速運転或は減速運転に移行す
る過渡運転時に、空燃比が目標空燃比(図では14.5)か
ら大きくずれ、制御が不安定となってしまうといったこ
とがあった。
そこで本願出願人は、特願昭62−189889号,特願昭62
−189891号等により、内燃機関における燃料挙動を記述
した物理モデルに基づき、非線形補償された制御則を決
定することで、従来のように制御則を切り替えることな
く(即ち一つの制御則で)、空燃比を安定して目標空燃
比に制御し得る燃料噴射量制御装置を提案した。
しかし上記提案の装置では、制御則の基準となる物理
モデルに、次式(1)及び(2)で記述された物理モデ
ルを用いていたため、上記従来の装置に対しては内燃機
関過渡運転時の空燃比の制御精度を向上できるものの、
第5図の実線で示す如く、過渡運転時の空燃比変動を完
全に防止することはできなかった。
λ(k)・m(k)=(1−α1)fw(k) +(1−α2)fv(k)+(1−α3−α4)q(k) …(2) (但し、fw:吸気管壁面への付着燃料量、fv:吸気管内部
の蒸発燃料量、q:燃料噴射量、ω:内燃機関の回転速
度、Vf:壁面付着燃料の時間当りの蒸発量、λ:シリン
ダ内に流入する燃料混合気の燃空比、m:シリンダ内に流
入する空気量、(k):現時点の値、(k+1):1サイ
クル後の値、α1〜α5:定数) これは制御則を非線形補償するための上記(1)式に
於ける非線形項がVf/ωとなっており、壁面付着燃料の
時間当りの蒸発量Vfが付着燃料量に関係なく機関温度や
吸気管圧力によって一律に決定されるものとされている
ためである。つまり吸気管壁面から蒸発する燃料量は、
吸気管壁面への付着燃料量、特にその表面積(即ち蒸発
面積)によって変化するものであるが、上記物理モデル
はこの蒸発面積が一定として設定されているため、この
蒸発面積が変化する内燃機関の過渡運転時には内燃機関
の燃料挙動を正確に記述できず、この物理モデルに基づ
く制御則では、内燃機関過渡運転時の制御精度が低下し
てしまうのである。
特に内燃機関が暖機運転状態にある場合には、吸気管
壁面に燃料が付着し易く、過渡運転時には付着燃料量が
大きく変化するので、空燃比が目標空燃比から大きくず
れてしまう。
そこで本発明は、非線形項として吸気管壁面付着燃料
の蒸発量をより正確に表すパラメータを設定した物理モ
デルに基づき制御則を決定することで、内燃機関の過渡
運転時の空燃比をより精度よく制御し得る内燃機関の燃
料噴射制御装置を提供することを目的としてなされた。
[課題を解決するための手段] 即ち上記目的を達するためになされた本発明の構成
は、第1図に例示する如く、 内燃機関M1のシリンダM2内に流入する燃料の挙動を表
す次式で記述された物理モデルに則って燃料噴射弁M3か
らの燃料噴射量を制御する内燃機関の燃料噴射量制御装
置であって、 λ(k)・m(k)=(1−α1)fw(k) +(1−α2)fv(k)+(1−α3−α4)q(k) (但し、fw:吸気管壁面への付着燃料量、fv:吸気管内部
の蒸発燃料量、q:燃料噴射量、ω:内燃機関の回転速
度、τ:吸気管壁面からの燃料蒸発速度、λ:シリンダ
内に流入する燃料混合気の燃空比、m:シリンダ内に流入
する空気量、(k):現時点の値、(k+1):1サイク
ル後の値、α1〜α5:定数) 内燃機関M1の回転速度ω、燃料の蒸発速度τ、及びシ
リンダM2内に流入する空気量mを直接又は間接的に検出
する運転状態検出手段M4と、 該運転状態検出手段M4で検出された燃料の蒸発速度τ
を回転速度ωで除算する除算手段M5と、 上記物理モデルに基づき設定された演算式を使用し
て、少なくとも上記除算手段M5の演算結果τ/ωと上記
燃料噴射弁M3からの燃料噴射量qとに基づき、吸気管M6
壁面への付着燃料量fw及び吸気管M6内部の蒸発燃料量fv
を推定する推定手段M7と、 該推定手段M7で推定された付着燃料量wと上記除算
手段M5の演算結果τ/ωとを乗算する乗算手段M8と、 上記物理モデルに基づき設定された演算式を使用し
て、少なくとも上記乗算手段M8の演算結果w・τ/ω
と、上記推定手段M7の推定結果w及びvと、上記運
転状態検出手段M4で検出された空気量mと目標燃空比λ
rとの積λr・mとに基づき、燃料噴射弁M3からの次回
の燃料噴射量qを算出する燃料噴射量算出手段M9と、 を備えたことを特徴とする内燃機関の燃料噴射量制御装
置を要旨としている。
[作用] 上記のように構成された本発明の燃料噴射量制御装置
においては、まず除算手段M5が、運転状態検出手段M4で
検出された燃料の蒸発速度τを回転速度ωで除算し、推
定手段M7が、その除算結果τ/ωと燃料噴射弁M3からの
燃料噴射量qとに基づき、吸気管M6壁面への付着燃料量
fw及び吸気管M6内部の蒸発燃料量fvを推定する。すると
乗算手段M8が、この推定された付着燃料量wと除算手
段M5の演算結果τ/ωとを乗算し、燃料噴射量算出手段
M9が、この乗算結果w・τ/ωと、推定手段M7の推定
結果w及びvと、運転状態検出手段M4で検出された
空気量mと目標燃空比λrとの積λr・mとに基づき、
燃料噴射弁M3からの次回の燃料噴射量qを算出する。
このような本発明の制御則は、非線形項としてτ・fw
/ωが設定され、吸気管壁面付着燃料の単位時間当りの
蒸発量を燃料の蒸発速度τと付着燃料量fwとの乗算値τ
・fwにより記述した物理モデルに則って決定されている
ため、内燃機関の過渡運転時等に吸気管壁面付着燃料の
蒸発量が急変しても、乗算手段M8の乗算結果w・τ/
ωによりその蒸発量に対応して燃料噴射量qを決定する
ことが可能となり、空燃比の制御精度を向上できる。
以下、本発明の構成の基本となる物理モデルについて
説明する。
まず内燃機関の吸気管壁面への付着燃料量fwは、燃料
噴射弁からの燃料噴射によって増加し、吸気管内への蒸
発、及びシリンダ内への直接流入によって減少する。こ
のため付着燃料量fwの時間的変化量(即ち微分値)dfw/
dtは、次式の如く記述できる。
dfw/dt=X1・fi−τ・Sw −2・π・r・δ・ρf・Vf …(3) (但し、X1:定数,fi:時間当りの燃料噴射量(噴射速
度),τ:時間当りの燃料蒸発量(蒸発速度),Sw:燃料
の付着面積,r:吸気管の半径,δ:付着燃料の膜厚,ρ
f:燃料密度、Vf:燃料流速) ここで燃料の付着面積Swは、付着燃料量fwを膜厚δで
除した値fw/δに等しく、また燃料流速Vfは、膜厚δの
2乗δと内燃機関の回転速度ωとの乗算値δ・ωに
比例するので、上記(3)式は次式(4)の如く変形で
きる。
dfw/dt=X1・fi−τ・fw/δ −2・π・r・δ・ρf・ω・x …(4) (但し、x:比例定数) 上記(4)式において、膜厚δ及び燃料密度ρfを一
定とおき、上記(4)式を内燃機関の1サイクル時間を
サンプリング周期として離散化すると、1サイクル時間
は回転速度ωに反比例するので、上式(4)は次式
(5)の如く記述でき、 fw(k+1)−fw(k)=X1・q(k) −X2・τ・fw(k)/ω(k)−X3 …(5) (但し、q:燃料噴射量,X2,V3:定数) 更にこの(5)式を整理すると、現時点(k)の諸量
から1サイクル後の付着燃料量fw(k+1)を表す次式
(6)が得られる。
fw(k+1)=(1−αa・τ/ω(k))fw(k) +αb・q(k)−αc …(6) (但し、αa=X2,αb=X1,αc=X3) 次に吸気管内部には気化した燃料(蒸発燃料)が存在
し、その量(蒸発燃料量)fvは、燃料噴射弁からの噴射
燃料及び吸気管への付着燃料が蒸発することによって増
加し、シリンダ内への流入によって減少する。このため
蒸発燃料量fvの時間的変化量(即ち微分値)dfv/dtは、
次式(7)の如く記述できる。
dfv/dt=Y1・fi+τ・Sw −mc・R・T・fv/(P・V) …(7) (但し、Y1:定数,mc:時間当りにシリンダ内に流入する
吸気量(吸気流量),R:吸気のガス定数、T:吸気温度、
P:吸気圧力,V:吸気管容積) ここで吸気流量mcは、吸気圧力Pと回転速度ωと積P
・ωに比例し、また燃料の付着面積Swは、付着燃料量fw
を膜厚δで除した値fw/δに等しいので、上記(7)式
は次式(8)式の如く変形できる。
dfv/dt=Y1・fi+τ・fw/δ −y・ω・R・T・fv/V …(8) (但し、y:比例定数) 次に上記(8)式において、膜厚δ,ガス定数R,吸気
温度T及び吸気管容積Vを一定とおき、上記(8)式を
内燃機関の1サイクル時間をサンプリング周期として離
散化すると、上式(8)は次式(9)の如く記述でき、 fv(k+1)−fv(k)=Y1・q(k) −Y2・τ・fw(k)/ω(k)−Y3・fv(k)…(9) (但し、Y2,Y3:定数) 更にこの(9)式を整理すると、現時点(k)の諸量
から1サイクル後の蒸発燃料量fv(k+1)を表す次式
(10)が得られる。
fv(k+1)=(1−αd)fv(k) +αe・τ・fw(k)/ω(k)−αf・q(k) …(10) ここで1=α1,1−αf=α2,αb=α3,αf=α4,
αa=αe=α5とし、また膜厚δが充分小さい(即ち
αc=0)とすると、上記(6)及び(10)式から、次
式(11)式が得られる。
また次に吸気行程時に内燃機関のシリンダ内に吸入さ
れる燃料量fc(k)は、燃料噴射弁からの燃料噴射量q
(k)と、吸気管壁面への付着燃料量fw(k)と、吸気
管内部での蒸発燃料量fv(k)とを用いて次式(12)の
ように記述することができ、 fc(k)=(1−α1)fw(k) +(1−α2)fv(k)+(1−α3−α4)q(k) …(12) 更にこの燃料量fc(k)は、吸気行程時にシリンダ内
に流入する吸気量m(k)と、シリンダ内に流入する燃
料混合気の燃空比λ(k)との積λ(k)・m(k)と
して記述できるので、上記(12)式は次式(13)の如く
記述できる。
λ(k)・m(k)=(1−α1)fw(k) +(1−α2)fv(k)+(1−α3−α4)q(k) …(13) 従って、上記(11)及び(13)式のパラメータα1〜
α5を周知の同定法によって決定すれば、(11)式を状
態方程式、(13)式を出力方程式として、内燃機関にお
ける燃料挙動を表す本発明の基本となる物理モデルが定
まる。
[実施例] 以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
まず第2図は本発明が適用された内燃機関2及びその
周辺装置の構成を表す概略構成図である。
図に於て4はエアクリーナ6を介して空気を吸入する
吸気管を表し、この吸気管4には、吸気量を制御するた
めのスロットルバルブ8、吸気の脈動を抑えるためのサ
ージタンク10、その内部の圧力(吸気管圧力)Pを検出
する吸気圧センサ12、及び吸気温度Tiを検出する吸気温
センサ14が備えられている。
一方16は排気管で、排気を浄化するための三元触媒コ
ンバータ18が備えられている。
また当該内燃機関2には、その運転状態を検出するた
めのセンサとして、上記吸気圧センサ12及び吸気温セン
サ14の他、ディストリビュータ20の回転から内燃機関2
の回転速度ωを検出するための回転速度センサ22、同じ
くディストリビュータ20の回転から内燃機関2への燃料
噴射タイミングtを検出するためのクランク角センサ2
4、及び内燃機関2のウォータジャケットに取り付けら
れ、冷却水温Tを検出する水温センサ26が備えられてい
る。尚ディストリビュータ20はイグナイタ28からの高電
圧を所定の点火タイミングで点火プラグ29に印加するた
めのものである。
そして上記各センサからの検出信号は、マイクロコン
ピュータを中心とする論理演算回路として構成された電
子制御回路30に出力され、燃料噴射弁32を駆動して燃料
噴射弁32からの燃料噴射量を制御するのに用いられる。
即ち電子制御回路30は、予め設定された制御プログラ
ムに従って燃料噴射量制御のための演算処理を実行する
CPU40、CPU40で演算処理を実行するのに必要な制御プロ
グラムや初期データが予め記録されたROM42、同じくCPU
40で演算処理を実行するのに用いられるデータが一時的
に読み書きされるRAM44、上記各センサからの検出信号
を入力するための入力ポート46、及びCPU40での演算結
果に応じて燃料噴射弁32に駆動信号を出力するための出
力ポート48、等から構成され、内燃機関2のシリンダ2a
内に流入する燃料混合気の空燃比A/Fが予め設定された
目標空燃比(1/λr)になるように燃料噴射弁32からの
燃料噴射量qを制御する。
次にこの燃料噴射制御のための制御則を第3図に示す
ブロックダイヤグラムに基づいて説明する。尚、第3図
は制御則を示す図であって、ハード的な構成を示すもの
ではなく、燃料噴射制御は第4図のフローチャートに示
した一連のプログラムの実行により実現される。またこ
の制御則は後述の設計方法により、前記(11)及び(1
3)式で記述された物理モデルに基づき設計されたもの
である。
第3図に示すように、本実施例では、まず吸気圧セン
サ12で検出された吸気管圧力P及び水温センサ26で検出
された冷却水温Tが第1演算部P1に入力される。第1演
算部P1は、吸気管圧力Pと冷却水温Tとから、前述の燃
料蒸発速度τを算出するためのもので、まず冷却水温T
から吸気管4内での燃料の飽和蒸気圧Psを求め、この飽
和蒸気圧Psと吸気管圧力Pとから吸気管壁面からの燃料
の蒸発速度τを算出するといった手順で燃料蒸発速度τ
を算出する。
つまり燃料蒸発速度τは、吸気管4内での燃料の飽和
蒸気圧Psと吸気管M1内部の圧力(吸気管圧力)Pとの関
数として求めることができ、また飽和蒸気圧Psは吸気管
壁面への付着燃料温度Tの関数であり、付着燃料温度T
は内燃機関2の冷却水温或は吸気ポート付近のシリンダ
ヘッド温度によって代表させることができるので、本実
施例においては、まず冷却水温T(゜K)をパラメータ
とする次式(14)を用いて飽和蒸気圧Psを求め、 Ps=β1・T2−β2・T+β3 …(14) (但し、β1,β2,β3:定数) その後この飽和蒸気圧Psと吸気管圧力Pとから燃料蒸
発速度τを算出するようにされているのである。
そしてこの第1演算部P1で算出された燃料蒸発速度τ
は、除算部P2に入力され、回転速度センサ22を用いて検
出された内燃機関2の回転速度ωによって除算される。
次にこの除算部P2による除算結果τw(=τ/ω)
は、状態変数推定部P3に入力される。状態変数推定部P3
では、前述の状態方程式(11)をそのまま用いて、除算
部P2の除算結果τwと、燃料噴射弁32から前回噴射した
燃料量qと、当該状態変数推定部P3で前回推定した状態
変数量(即ち、吸気管壁面への付着燃料量w及び吸気
管内部での蒸発燃料量v)とから、燃料噴射弁32から
の次回の燃料噴射量を算出するための状態変数量fw及び
fvが推定される。そしてその推定結果w及びvに
は、夫々、係数f1乗算部P4及び係数f2乗算部P5で予め設
定された係数f1及びf2が乗算される。
また次に除算部P2の除算結果τwは、第1乗算部P6に
も入力される。第1乗算部P6は、この入力された除算結
果τwと状態変数推定部P3で推定された付着燃料量w
とを乗ずることによって、内燃機関2の1サイクル当り
に吸気管壁面から蒸発する燃料量を算出するためのもの
で、この乗算結果τw・には、係数f4乗算部P7で、予
め設定された係数f4が乗算される。
次に上記吸気管圧力P及び回転速度ωは、吸気温セン
サ14により検出された吸気温Tiと共に第2演算部P8にも
入力される。第2演算部P8は、これら入力された各値P,
ω,Tiをパラメータとする次式(15) m={βx(ω)・P−βy(ω)}/Ti …(15) (但し、βx(ω),βy(ω):回転速度ωの関数) を用いて、シリンダ2a内に流入する空気量mを算出する
ためのもので、その算出結果は第2乗算部P9に出力され
る。すると第2乗算部P9では、その算出された空気量m
と予め設定された目標燃空比λrとを乗算し、シリンダ
2a内に流入すべき燃料量(即ち、目標燃料量)λrmを算
出する。またこの目標燃料量λrmは、係数f3乗算部P10
に入力され、予め設定された係数f3が乗算される。
そしてこの係数f3乗算部P10による乗算結果は、他の
係数乗算部P4,P5,P7における乗算結果と共に、加算部P1
1〜P13で加算され、これによって燃料噴射弁32からの次
回の燃料噴射量qが決定される。
次に上記第3図の制御則の設計方法について説明す
る。尚、この種の制御則の設計方法としては、例えば、
古田勝久著「実システムのデジタル制御」システムと制
御,Vol.28,ωo.12(1984年)計測自動制御学会等に詳し
いので、ここでは簡単に説明する。
既述したように本実施例の制御則は、前記(11)及び
(13)式に示す物理モデルに基づき設計されたものであ
る。このモデルは非線形であるので、線形制御理論を適
用するために、まず上記モデルを線形近似する。
まず前記(11)式に於て、 fw(k)・τ/ω(k)=Vfw(k) …(16) とし、更に(11)及び(13)式に於て、 とおくと、(11),(12)式は で表すことができる。
ここで、 で定常となるとき、 とすると、上式(24)及び(25)は次式(26)、(27)
に示す如くなる。
上式(24)〜(27)より、 次に、上式(28),(29)において、 とおくと、(28),(29)式は次式(33)(34)の如く
なる。
この(33)及び(34)において、X(k)→0とすれ
ば、Y(k)=0となり, であれば、 となる。従って上式(33)の最適レギュレータを設計す
ればよい。即ち、離散型リカッチ方程式を説くことで、
最適制御は次式(35)の如く求まる。
またこの(35)式は、上記(30)及び(31)式より次
式(36)の如くなる。
従って、上記(26)及び(27)式において、 について解ければ上式(36)が確定し、 を求めることができるようになる。
本実施例の場合、上式(37)は前述の(17)〜(23)
式より、次式(38)の如くなり、 (即ちfwr、fvr、qr)が夫々次式(39)〜(41)の如く
求まる。
fwr=β11・Vfw(k)+β12・{λr・m(k) −(1−α3−α4)q(k)} …(39) fvr=β21・Vfw(k)+β22・{λr・m(k) −(1−α3−α4)q(k)} …(40) qr=β21・Vfw(k)+β23・{λr・m(k) −(1−α3−α4)q(k)} …(41) (但し、β11〜β23は定数) 従ってこれら各式(39),(40),(41)式を上記
(36)式に代入することにより、制御入力 即ちq(k)を求めるための演算式が次式(42)の如く
求まる。
q(k)=f1・fw(k)+f2・fv(k) +f3・m(k)λr+f4・Vfw(k) …(42) ここでVfw(k)=fw(k)・τ/ω(k)であるの
で、上式(42)は次式(43)の如くなる。
q(k)=f1・fw(k)+f2・fv(k) +f3・m(k)λr+f4・fw(k)・τ/ω(k) …(43) 尚この(43)式は、前述の燃料噴射量算出手段M9で使
用される演算式に相当し、第3図の制御則を記述してい
る。
次に状態変数推定部P7は、上式(43)における状態変
数量,即ち付着燃料量fw及び蒸発燃料量fv推定するため
のものである。この種の推定装置は、通常、ゴピナスの
設計法等によってオブザーバとして設計されるが、本実
施例では内燃機関2に実際に供給された燃料混合気の空
燃比λを測定する空燃比センサが設けられていないた
め、通常のオブザーバを設計することができない。しか
し内燃機関2での燃料挙動は、前述の(11)式によって
記述できる。そこで本実施例では、(11)式をそのまま
用いて各状態変数量fw及びfvを求めるようにされてい
る。
次に電子制御回路30で実行される燃料噴射制御を第4
図に示すフローチャートに基づいて説明する。尚以下の
説明において、現在の処理で扱われる諸量には添え字
(k)を付して表し、前回の処理において求められた諸
量には添え字oを付して表す。
当該燃料噴射制御は内燃機関2の始動と共に開始さ
れ、内燃機関2の運転中繰り返し実行される。
処理が開始されると、まずステップ100を実行して、
付着燃料量wo及び蒸発燃料量voには初期値0を、燃
料噴射量qoには初期値qsを設定する初期化の処理を行な
い、続くステップ110に移行して、上記各センサからの
出力信号に基づき、吸気管圧力P(k)、吸気温度Ti
(k)、回転速度ω(k)及び冷却水温T(k)を求め
る。
次にステップ120では、上記ステップ110で求めた吸気
管圧力P(k)と、内燃機関2の回転速度ω(k)とに
基づき、内燃機関2の負荷に応じた目標燃空比λrを算
出する。尚このステップ120では、通常、燃料混合気の
空気過剰率が1(即ち理論空燃比)となるよう目標燃空
比λrが設定され、内燃機関2の高負荷運転時等には燃
料を通常より増量して内燃機関の出力を上げるため、目
標燃空比λrがリッチ側に設定され、内燃機関2の軽負
荷運転時等には、燃料を通常より減量して燃費を向上す
るため、目標燃空比λrがリーン側に設定される。
ステップ120で目標燃空比λr(k)が設定される
と、今度はステップ130に移行し、上記ステップ120で求
めた吸気管圧力P(k)と吸気温度Ti(k)と内燃機関
2の回転速度ω(k)とに基づき、前述の(15)式に示
した如き演算式またはデータマップを用いてシリンダ2a
内に流入する空気量m(k)を算出する第2演算部P8と
しての処理を実行する。
また続くステップ140では、上記ステップ110で求めた
冷却水温T(k)と吸気管圧力P(k)とに基づき吸気
管壁面からの燃料の蒸発速度τ(k)を算出する第1演
算部P1としての処理を実行し、続くステップ150に移行
して、その算出した燃料蒸発速度τ(k)をステップ11
0で求めた回転速度ω(k)で除算する除算部P2として
の処理を実行する。
そして続くステップ160では、上記ステップ150での除
算結果τw(k)と、前回の燃料噴射量qoと、前回求め
た付着燃料量wo及び蒸発燃料量voとにより、前述の
(11)式に基づき設定された次式(44) を用いて付着燃料量w(k)及び蒸発燃料量v
(k)を求める状態変数推定部P3としての処理を実行す
る。
また次にステップ170では、ステップ120で設定した目
標燃空比λr(k)とステップ130で求めた空気量m
(k)とを乗算して、シリンダ2a内に流入する目標燃料
量λrm(k)を算出する、第2乗算部P9としての処理を
実行する。
そして続くテップ180では、ステップ150〜ステップ17
0による演算結果τw(k),w(k),v
(k),及びλrm(k)に基づき、前述の(43)式を用
いて燃料噴射量q(k)を算出し、ステップ190に移行
する。
するとステップ190では、上記クランク角センサ24か
らの検出信号に基づき決定される燃料噴射タイミングt
で、ステップ180で求めた噴射量q(k)に応じて燃料
噴射弁32を開弁し、燃料噴射を行なう燃料噴射処理が実
行される。
そしてこのステップ190で燃料噴射が行なわれ、内燃
機関2への燃料供給が一旦終了すると、ステップ200に
移行し、今回求めた状態変数量w(k)及びv
(k)と、燃料噴射量q(k)を、夫々、次回の処理の
ためにwo,vo,qoに置き換え、再度ステップ110に移
行する。
以上説明したように本実施例の燃料噴射制御装置で
は、制御則が前述の(11)及び(13)式で記述された物
理モデルに基づき設定されており、内燃機関の運転状態
に応じて変化する吸気系での燃料挙動を、τw・fw(=
τ・fw/ω)の項によって非線形補償することができ
る。この結果、前記提案の装置と同様に単一の制御則に
よって燃料噴射量を制御することができるだけでなく、
内燃機関過渡運転時の制御精度をより向上することがで
きる。つまり内燃機関の運転変動に伴い吸気管壁面への
付着燃料量fwが変化し、これによって吸気管壁面からの
燃料蒸発量が変化しても、この変化に対応して燃料噴射
量qを決定することができるので、内燃機関の過渡運転
時にも空燃比を目標空燃比に精度よく制御することがで
きるようになるのである。
ここで上記実施例では、空燃比センサを用いず、空燃
比を目標空燃比に制御可能な燃料噴射量制御装置を例に
とり説明したが、排気系に空燃比センサを設けて空燃比
のフィールドバック制御を行なうように構成すれば、制
御精度をより向上することが可能である。
尚この場合、制御則としては空燃比センサにより検出
された内燃機関2の実空燃比と目標空燃比との偏差を一
つのパラメータとして燃料噴射量を決定する、周知のサ
ーボ系として設計すればよい。
またこの場合内燃機関の実空燃比を検出することがで
きるので、状態変数推定部P3を、最少次元オブザーバ、
同一次元オブザーバ、有限整定オブザーバ等、周知のオ
ブザーバとして構成することもできる。
[発明の効果] 以上説明したように本発明の内燃機関の燃料噴射量制
御装置によれば、制御則が、吸気管壁面付着燃料の単位
時間当りの蒸発量を燃料の蒸発速度τと付着燃料量fwと
の乗算値τ・fwにより記述した物理モデルに則って決定
されているため、内燃機関の過渡運転時等に吸気管壁面
付着燃料の蒸発量が急変しても、乗算手段の乗算結果に
よりその蒸発量に対応して燃料噴射量を決定することが
可能となり、空燃比の制御精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の構成を表すブロック図、第2図は実施
例の内燃機関及びその周辺装置を表す概略構成図、第3
図は電子制御回路による燃料噴射制御のための制御則を
示すブロックダイヤグラム、第4図は電子制御回路で実
行される燃料噴射制御処理を表わすフローチャート、第
5図は従来装置の問題点を説明する線図、である。 M1、2……内燃機関、M2、2a……シリンダ M3、32……燃料噴射弁 M4……運転状態検出手段、M5……除算手段 M6、4……吸気管、M7……推定手段 M8……乗算手段、M9……燃料噴射量算出手段 12……吸気圧センサ、14……吸気温センサ 20……回転速度センサ、26……水温センサ 30……電子制御回路

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内燃機関のシリンダ内に流入する燃料の挙
    動を表す次式で記述された物理モデルに則って燃料噴射
    弁からの燃料噴射量を制御する内燃機関の燃料噴射量制
    御装置であって、 λ(k)・m(k)=(1−α1)fw(k) +(1−α2)fv(k)+(1−α3−α4)q(k) (但し、fw:吸気管壁面への付着燃料量、fv:吸気管内部
    の蒸発燃料量、q:燃料噴射量、ω:内燃機関の回転速
    度、τ:吸気管壁面からの燃料蒸発速度、λ:シリンダ
    内に流入する燃料混合気の燃空比、m:シリンダ内に流入
    する空気量、(k):現時点の値、(k+1):1サイク
    ル後の値、α1〜α5:定数) 内燃機関の回転速度、燃料の蒸発速度、及びシリンダ内
    に流入する空気量を直接又は間接的に検出する運転状態
    検出手段と、 該運転状態検出手段で検出された燃料の蒸発速度を回転
    速度で除算する除算手段と、 上記物理モデルに基づき設定された演算式を使用して、
    少なくとも上記除算手段の演算結果と上記燃料噴射弁か
    らの燃料噴射量とに基づき、吸気管壁面への付着燃料量
    及び吸気管内部の蒸発燃料量を推定する推定手段と、 該推定手段で推定された吸気管壁面への付着燃料量と上
    記除算手段の演算結果とを乗算する乗算手段と、 上記物理モデルに基づき設定された演算式を使用して、
    少なくとも上記乗算手段の演算結果と、上記推定手段の
    推定結果と、上記運転状態検出手段で検出された空気量
    と目標燃空比との積とに基づき、燃料噴射弁からの次回
    の燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出手段と、 を備えたことを特徴とする内燃機関の燃料噴射量制御装
    置。
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