JP2753097B2 - ガス絶縁機器 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［発明の目的］ （産業上の利用分野） 本発明は、絶縁ガスを封入した密閉構造の金属容器内
に、高電圧導体を絶縁支持部材を介して支持した収納し
たガス絶縁機器において、その絶縁性能向上を達成する
ための技術に関する。

（従来の技術） 密閉構造の金属容器内に、絶縁支持部材を介して高電
圧導体を支持して成るガス絶縁機器としては、各種開閉
器、遮断器を初めとして、管路母線など広く知られてい
る。このようなガス絶縁機器においては、組立時に金属
容器内部に混入した金属異物によって絶縁性能が低下す
る現象がある。

この点を第３図に示す従来の管路母線を例に挙げて説
明する。即ち、管路母線は、SF6ガスなどの絶縁ガス４
を封入した金属容器１内に絶縁支持部材２を用いて高電
圧導体３を支持する構成である。しかし、何等かの原因
により金属異物が金属容器１内に混入すると、高電圧導
体３に課電されている運転電圧の電界の影響で金属異物
が動き回り、仮に金属異物が針状の異物であれば起立し
てしまい、場合によっては絶縁破壊事故を招く恐れがあ
る。これらの金属異物対策として、金属容器１の内面に
固有抵抗の高い材料から成る絶縁被膜５を施すことが知
られている。なお、この場合、絶縁被膜５として固有抵
抗の低い材料を使用するとその作用が低下するので、固
有抵抗の高い材料を使用することが必要である。

ところで、従来の管路母線においては、通常は絶縁被
膜５の形成により金属異物は起立しないが、金属容器１
に機械的振動が加わると、その機械力により金属異物は
微小な動きをして、その反動で起立し浮上する恐れがあ
った。第４図に、長さ5mmの金属異物が金属容器１の内
面から浮上して管路母線のガスギャップ空間に位置して
いる時の、金属異物の金属容器１内面からの高さと急峻
波サージでのフラッシュオーバー電圧の関係を示す。こ
の図から分かるように、金属異物が金属容器１の内面か
ら浮上すると、金属異物がない場合または金属異物が金
属容器１内面に倒れている場合に比べて、管路母線の絶
縁性能が低下することが分かる。

この問題を解決するために、絶縁被膜５に粘着性を有
するゲル状絶縁被膜を適用することも提案されている。
しかし、金属容器１の内面にゲル状の絶縁被膜５を施す
と、金属容器の取扱いに問題を生じ、ガス絶縁機器とし
ての組立て作業性が著しく低下する恐れがある。

（発明が解決しようとする課題） 以上のように従来の技術では、ガス絶縁機器の金属容
器内面に絶縁被膜を形成しておいても、金属異物の浮上
による絶縁性の低下を避けることが困難であるとか、金
属異物の浮上は押さえられてもガス絶縁機器の組立て作
業性が低下するなどの面で不都合があった。

本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、
ガス絶縁機器の組立作業性を損うことなく、金属異物の
動きを抑制することにより、絶縁性能を向上させたガス
絶縁機器を提供することを目的とする。

［発明の構成］ （課題を解決するための手段） 本発明のガス絶縁機器は、上記の目的を達成するため
に、金属容器内面にゴム材料の液状エラストマーを塗布
して硬化させて成る絶縁被膜が形成されていることを構
成上の特徴とするものである。

（作用） 上記のような構成を有する本発明のガス絶縁機器によ
れば、金属容器の内面に形成された絶縁被膜であるゴム
材料の液状エラストマー固有の僅かな粘着性により、金
属容器内面に存在する金属異物の起立電界強度が高ま
る。且つ、ゴム材料の液状エラストマーは、硬化した場
合、それ自身粘着性材料でなく、弾性を有した固体絶縁
材料であるため、従来の絶縁被膜を施した金属容器と同
様の取扱いができ、また弾性を有する機械的振動に対し
ても、金属異物の振動を抑制できる点で効果的である。
そのため、本発明のゴム材料の液状エラストマーを塗布
した金属容器を有するガス絶縁機器によれば、機器の組
立作業性を損うことなく、絶縁性能を向上させることが
できる。

（実施例） 以下、本発明をガス絶縁機器の一つである管路母線に
適用した実施例について、第１図を参照して説明する。
なお、第３図に示した従来の管路母線と同一の部材につ
いては同一の符号を付し、説明は省略する。

本実施例においては、金属容器１内に、絶縁支持部材
２によって支持された通電導体となる高電圧導体３が収
納されている。この絶縁支持部材２は、例えばエポキシ
樹脂のような合成樹脂から成る絶縁部材2aに、低圧電極
21及び高圧電極22を埋め込んで形成される。低圧電極21
は金属容器１の内側に当接し、また、高圧電極22は高電
圧導体３に当接して、高電圧導体３を絶縁支持してい
る。更に、これらの金属容器１の内面には、ゴム材料の
液状エラストマー被膜６が５〜1000μｍの厚さで施され
ている。ゴム材料の液状エラストマー被膜６は、液状ポ
リブタジエン,ABコポリマー，ポリウレタン，クロロプ
レン，ポリサルファイドなどの材料から形成されてい
る。

上記のような構成を有する本実施例の作用は、次の通
りである。即ち、管路母線の内部表面を被覆している前
記ゴム材料の液状エラストマー被膜６は、金属容器の組
立時には既に硬化され固化されているため、例えば従来
のエポキシ樹脂系の絶縁被膜と同様の取扱いが可能であ
る。しかし、エポキシ樹脂系の絶縁被膜は粘着性が全く
無いが、ゴム材料の液状エラストマー被膜６は材料固有
の特性で僅かな粘着性を有している。そのため、ガス絶
縁機器の組立時に万一金属異物が金属容器１内に入り込
んでいても、金属異物はゴム材料の液状エラストマー被
膜６の僅かの粘着性により接着状態を保ってしまう。

第２図に、例えば直径0.25mmのアルミニウムの針状金
属異物が金属容器１の内面に存在し、高電圧導体３の支
流電圧が印加された場合の金属異物、挙動の実験結果を
示す。この結果より、金属容器に被膜が無いときは、金
属容器の内面の電界強度が約5kVrms/cmになると、金属
異物は起立し浮上する。従来のエポキシ樹脂系の絶縁被
膜を施すと、金属異物の起立電界強度は約12kVrms/cmま
で上昇する。また、ゲル状の絶縁被膜を施すと、金属異
物の起立電界強度は約16kVrms/cmまでになる。これらの
絶縁被膜に比べ、ゴム材料の液状エラストマー被膜６を
塗布した金属容器１の金属異物は、電界強度が25kVrms/
cmになっても全く起立することがない。一般に、この種
の管路母線の内面の電界強度は、運転電圧で５〜10kVrm
s/cmであるが、将来コンパクト化を図る上で、15kVrms/
cmの要求もでてくる可能性もある。このことを考える
と、ゴム材料の液状エラストマー被膜６により、金属異
物の動きが効果的に抑制されていることが分かる。

なお、ゲル材料絶縁被膜もこの条件を満足するが、金
属容器１の取扱い、また組立作業性に問題が残る。

（他の実施例） なお、図示の実施例では、ゴム材料の液状エラストマ
ー被膜６を管路母線の金属容器１の全表面に塗布した
が、金属異物の存在、動きを考慮して、例えば金属容器
１の下方向の半円周部分など部分的にゴム材料の液状エ
ラストマー被膜６を形成しても、金属異物に対して抑制
効果がある。

また、図示のような管路母線以外に、金属容器に絶縁
支持部材及び高電圧導体を収納したガス絶縁機器全般
に、本発明を適用できることは言うまでもない。

［発明の効果］ 以上説明したように本発明によれば、ガス絶縁機器内
部表面にゴム材料の液状エラストマー被膜を塗布すると
いう簡単な手段により、従来の絶縁被膜に比べ金属容器
の取扱い及び組立作業性が格段に向上し、しかも金属異
物の浮遊が効果的に防止され、浮遊金属異物による絶縁
性能低下の恐れのないガス絶縁機器を提供することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明のガス絶縁機器を管路母線に適用した実
施例を示す断面図、第２図は金属容器の塗布材料と金属
異物の起立電界強度の関係を示すグラフ、第３図は従来
の管路母線の断面図、第４図は金属異物とフラッシュオ
ーバー電圧の関係を示すグラフである。 １…金属容器、２…絶縁支持部材、2a…絶縁部材、21…
低圧電極、22…高圧電極、３…高電圧導体、４…絶縁ガ
ス、５…絶縁被膜、６…ゴム材料の液状エラストマー被
膜。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−136811（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−129117（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−79711（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−45111（ＪＰ，Ａ) 実開 昭59−149422（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭62−51920（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】絶縁ガスを封入した密閉構造の金属容器内
   部に、高電圧導体を絶縁支持部材を介して支持して収納
   したガス絶縁機器において、 前記金属容器の内面にゴム材料の液状エラストマーを塗
   布して硬化させて成る絶縁被膜が形成されていることを
   特徴とするガス絶縁機器。