JP2750306B2 - 固定化低分子プロテインaの製造法 - Google Patents

固定化低分子プロテインaの製造法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は固定化低分子プロテインAの製造法、更に詳
細には、遊離型低分子プロテインAを絹フィブロイン膜
中に包括固定し安定性を増大せしめた固定化低分子プロ
テインAの製造法に関する。
〔従来の技術〕
遊離型低分子プロテインAは、先に本発明者らによっ
てスタフィロコッカス・アウレウスKS−1030(Staphylo
coccus aureus KS−1030)(微工研菌寄第9517号)の培
養物中から採取されたもので、ヒト及び種々の哺乳動物
由来の免疫グロブリンIgGのFc部分と特異的に結合する
性質を有することから、モノクローナル抗体の分離・精
製、免疫学的診断等の試薬として有用であると共に、重
要な治療的価値を有するものである(特開昭64−63391
号)。
〔発明が解決しようとする課題〕
遊離型低分子プロテインAは、従来のプロテインAに
比較して分離精製が容易であり、単位重量当りのIgG結
合活性が高いという利点をもっているが、熱安定性が低
く、医療等の目的に使用するためには、生体に無害な固
相に安定な状態で固定化することが必要である。
一方、生体由来の高分子の一つである絹フィブロイン
は、生理活性物質の固定化に適した特長をもち、すでに
酸素等の高分子化合物の固定化担体として検討されてい
るが、遊離型低分子プロテインAのような低分子化合物
の固定化については全く検討されていない。
〔課題を解決するための手段〕
斬かる実情において、本発明者は、鋭意研究を行った
結果、遊離型低分子プロテインAを緩和な条件下で絹フ
ィブロイン膜中に包括固定化することにより、熱安定性
に優れ、かつIgG結合活性を有する固定化低分子プロテ
インAを製造することに成功した。
すなわち、本発明は、遊離型低分子プロテインAを含
有する水可溶性絹フィブロイン膜を高湿度処理すること
を特徴とする固定化低分子プロテインAの製造法を提供
するものである。
本発明において、遊離型低分子プロテインAを含有す
る水可溶性絹フィブロイン膜は、絹フィブロイン水溶液
に遊離型低分子プロテインAを溶解し、これをアクリル
板等の基板上にキャストし、風乾することにより調製さ
れる。
絹フィブロイン水溶液は、通常生糸、絹紡糸、生糸
屑、キキ、ビス、くずまゆ、ブーレット等の絹及び絹原
料を、常法によりセリシンを精練除去した後、例えば銅
−アンモニア水溶液、水酸化銅−エチレンジアミン水溶
液、ロダン酸塩水溶液、臭化リチウム水溶液、塩化カル
シウム水溶液、硝酸カルシウム水溶液、あるいは硝酸マ
グネシウム水溶液等に溶解し、水に対して透析脱塩する
ことにより調製される。
フィブロイン水溶液のフィブロイン濃度は、通常2〜
25%が好ましい。
基板から剥離した遊離型低分子プロテインA含有水可
溶性絹フィブロイン膜を、相対湿度70〜100%、温度1
〜50℃の雰囲気中に放置して水への不溶化を行う。この
不溶化は湿度及び温度によっても異なるが、通常3〜24
時間で完了する。
更にこれを相対湿度60%以下で−10〜60℃の温度にて
乾燥すれば固定化低分子プロテインAが得られる。
〔発明の効果〕
本発明方法は特別の装置を使用することなく簡単な操
作で絹フィブロインの水への不溶化を行うことができる
と共に、緩和な物理的処理のみによって行うことができ
るので、遊離型低分子プロテインAの活性が失われるこ
となく、安定な固定化低分子プロテインAを得ることが
できる。
〔実施例〕
次に実施例を挙げて説明する。
実施例1 (1) 絹フィブロイン水溶液の調製: 精練繭2gを、塩化カルシウム、エタノール、蒸留水を
それぞれ21.34g、22.39ml、27.61ml(モル比1:2:8)を
配合した溶液に拡散させ、これを70℃に保温し絹フィブ
ロインを溶解させた。この溶液を濾過した後に、蒸留水
に対して透析を行い脱塩した。この脱塩操作の終了は透
析外液と0.1N蓚酸アンモニウムの反応が無いことにより
確認を行った。透析終了後の溶液(42ml)を絹フィブロ
イン水溶液とした。
(2) 固定化低分子プロテインAの製造: 含有する低分子プロテインAの濃度は絹フィブロイン
に対する重量パーセントで表す。絹フィブロインの最終
濃度が2.5%、低分子プロテインAの含有率が0.2%の膜
は、上述の方法により得られた絹フィブロイン水溶液が
4.72%の場合、この絹フィブロイン水溶液12.2mlと濃度
が1mg/mlのプロテインA水溶液を1.15ml、蒸留水9.65ml
を混合し(総量23ml)、この混合溶液をアクリル板など
にキャストし、風乾する。この膜を目的の大きさに切断
した後に相対湿度90%以上、37℃の環境下に24時間以上
静置することにより不溶化して、プロテインA固定化絹
フィブロイン膜の作製を行った。
同様な方法で絹フィブロインを2.5%、低分子プロテ
インAをそれぞれ0、0.02、0.05、0.1、0.2、0.5%含
有する固定化膜を作製した。
試験例1 実施例1で得た固定化低分子プロテインAについて次
の試験を行った。
(1) IgG結合活性 上述の様に作製した固定化膜を3% BSA/PBSに24時
間以上浸漬し、この後ペルオキシダーゼ標識ヒトIgG(P
O−IgG)3.33μg/ml(3%BSA/PBS)700μ中に膜をい
れ37℃で1時間プロテインAとPO−IgGの反応を行っ
た。反応後、直ちに固定化膜をPBSで洗浄し未反応のPO
−IgGを除去し、この膜をペルオキシダーゼの基質溶液7
00μ(オルトフェニレンジアミン25mg/50ml Mcllvai
n buffer pH5.0 10μ H2O2)と25℃で20分間反応さ
せた。これを、700μ中の5N−H2SO4で酸素反応を停止
し、OD 492nmを測定した。この発色値より結合したPO−
IgGの量に換算した。この結果この膜にはプロテインA
由来のIgG結合活性が認められ、その含有量に対して良
好な濃度依存性があることが確認された。
結果は第1図に示すとおりであり、非特異的な反応は
殆んどみられず、良好な濃度依存性を示した。
(2) 熱安定性 低分子プロテインA固定化絹フィブロイン膜をそれぞ
れ25、50、75、100、121℃で15分間処理し、常温に戻し
た後、上述の活性測定法によって各々の膜の残存活性を
測定した。また、対照として低分子プロテインA水溶液
も同様な処理を行い、残存活性を測定した。この固定化
膜及びフリー低分子プロテインAの25℃におけるIgG結
合活性を100%としたときの各温度処理後の相対活性値
を求めた。結果は第2図に示すとおりであり、低分子プ
ロテインAを絹フィブロイン膜中に固定化することによ
り熱処理に対して高い安定性を付与することができた。
特に、高い温度領域においてその効果は顕著であり、オ
ートクレーブ滅菌下においても活性を有していた。
【図面の簡単な説明】 第1図は本発明の固定化低分子プロテインAのIgG結合
活性を示す図面であり、第2図は固定化低分子プロテイ
ンAとフリー低分子プロテインAの熱安定性の比較を示
す図面である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07K 14/435 A61K 37/02 (56)参考文献 特開 昭56−39783(JP,A) 特開 平1−228472(JP,A) 特開 昭64−63391(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】遊離型低分子プロテインAを含有する水可
    溶性絹フィブロイン膜を高湿度処理することを特徴とす
    る固定化低分子プロテインAの製造法。
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