JP2744214B2 - 乗用型田植機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は乗用型田植機において、
苗植付装置に施肥装置と薬剤散布装置とを備える構成に
関する。

【０００２】

【従来の技術】乗用型田植機では苗植付装置に施肥装置
を備えたものや、苗植付装置に薬剤散布装置を備えたも
のがあり、苗植付装置に施肥装置と薬剤散布装置とを備
えたものも考えられている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】前述のように苗植付装
置に施肥装置及び薬剤散布装置を備えた乗用型田植機の
場合、肥料を貯留する肥料ホッパが施肥装置の上部側に
備えられ、薬剤を貯留する薬剤ホッパが薬剤散布装置の
上部側に備えられており、植付作業時に肥料及び薬剤ホ
ッパに肥料及び薬剤を補給する必要がある。この補給の
際において作業者は苗植付装置の後方に位置しており、
苗植付装置の後方から肥料袋により肥料を施肥装置の肥
料ホッパに補給したり、薬剤袋により薬剤を薬剤散布装
置の薬剤ホッパに補給したりする作業形態となる。

【０００４】これにより、作業者にとって手前側（機体
の後端側）の肥料又は薬剤ホッパには補給が容易に行え
るのに対して、前方側（後端の装置より機体前方側）の
肥料又薬剤ホッパへの補給には、手前側の装置を上側か
ら越すように重量物である肥料袋又は薬剤袋を持ち上げ
て補給する作業形態となる。従って、補給作業が行い難
い面が考えられるので、改善の余地がある。本発明は、
苗植付装置に施肥装置及び薬剤散布装置を備えた乗用型
田植機において、施肥装置及び薬剤散布装置を適切に配
置して、肥料及び薬剤ホッパへの肥料及び薬剤の補給が
容易に行えるように構成することを目的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明の特徴は乗用型田
植機において、次のように構成することにある。肥料を
貯留する上部側の肥料ホッパと、肥料ホッパから肥料を
繰出す下部側の繰出し機構とを備えて、施肥装置を構成
し、薬剤を貯留する上部側の薬剤ホッパと、薬剤ホッパ
から薬剤を繰出す繰出し機構と、繰出された薬剤を回転
により薬剤ホッパの左右幅よりも幅広の範囲に亘って飛
散させる回転体と、回転体によって飛散された薬剤を拡
散させて圃場面に落下案内する下部側のガイド部材とを
備えて、薬剤散布装置を構成すると共に、機体の後部に
おける苗植付装置の後側に施肥装置を備え、施肥装置の
後側に薬剤散布装置を備えて、肥料ホッパと薬剤ホッパ
とが略同じ高さに位置するように設定し、且つ、肥料ホ
ッパの全体の左右幅よりも薬剤ホッパの左右幅を狭いも
のに設定してある。

【０００６】

【作用】〔Ｉ〕 請求項１の特徴のように、苗植付装置の後側に施肥装置
を備え、施肥装置の後側に薬剤散布装置を備えると、苗
植付装置に施肥装置を接近させて配置することができる
ので、苗植付装置によって植え付けられた苗の位置と施
肥装置との間の距離を短くすることができて、植え付け
られた苗の近傍への肥料の供給の遅れを抑えると言う面
で有利となる。さらに、薬剤と比較して多量の肥料を消
費する施肥装置は大型の肥料ホッパを備える必要がある
ので、重量物である満載時の肥料ホッパを苗植付装置に
接近させて配置することができれば、機体の重量バラン
スと言う面でも有利である。

【０００７】逆に薬剤散布装置は、苗が植え付けられた
圃場面において複数の植付条に亘って薬剤を散布する必
要があり、苗植付装置よりも少し後側に離れている方が
適切な散布が行えるので、施肥装置の後側に薬剤散布装
置を備えても支障はない。さらに、薬剤散布装置は圃場
面にあまり多くの薬剤を散布することはなく、小型の薬
剤ホッパでよいので、施肥装置の後側に薬剤散布装置を
備えても機体の重量バランスに悪影響を及ぼすことはな
い。

【０００８】〔ＩＩ〕 請求項１の特徴のように施肥装置の後側の薬剤散布装置
において、肥料ホッパの全体の左右幅よりも薬剤ホッパ
の左右幅を充分に狭いものに設定していると、肥料ホッ
パの後方に薬剤ホッパが存在しない空間が形成される。
これにより、肥料ホッパに肥料を補給する場合、苗植付
装置の後方に位置する作業者が肥料袋を肥料ホッパに接
近させる際に、薬剤ホッパが存在しない空間を介して肥
料ホッパに肥料袋を接近させて、肥料ホッパに肥料を補
給することができるようになって、例えば薬剤ホッパの
上側から肥料袋を肥料ホッパに接近させると言うような
労力の必要な作業を行わなくてもよい。又、肥料ホッパ
と薬剤ホッパとが略同じ高さに位置するように設定され
ているので、例え薬剤ホッパの上側から肥料袋を肥料ホ
ッパに接近させる必要が生じても、肥料袋を大きく持ち
上げる必要がないので、大きな労力は必要ない。

【０００９】逆に薬剤ホッパに薬剤を補給する場合に
は、施肥装置の後側に薬剤散布装置が備えられているの
で、苗植付装置の後方に位置する作業者が薬剤袋を薬剤
ホッパに接近させる際に、肥料ホッパに邪魔されること
なく薬剤袋を薬剤ホッパに接近させて、薬剤ホッパに薬
剤を補給することができる。

【００１０】〔ＩＩＩ〕 請求項１の特徴のように肥料ホッパの後側に位置する薬
剤ホッパの左右幅を、肥料ホッパの全体の左右幅よりも
充分に狭いものに設定していることにより、機体を旋回
させた際に薬剤ホッパの右又は左端部を他物に当ててし
まうと言うような事態が少なくなる。さらに、植付作業
中において機体の作業者が後方斜め下方を見て、苗の植
付状態を確認しようとした際、左右幅の充分に狭い薬剤
ホッパが視界の妨げになることは少ないので、苗の植付
状態の確認が行い易い。これにより、植付作業中におい
て機体の作業者が後方斜め下方を見た際、薬剤ホッパが
視界の妨げになって、欠株等の苗の植付異常の発見が遅
れると言うようなことがない。

【００１１】

【発明の効果】請求項１の特徴のように、乗用型田植機
の苗植付装置の後側に施肥装置を備えて、施肥装置の後
側に薬剤散布装置を備えることにより、施肥装置におい
て植え付けられた苗の近傍への肥料の供給の遅れを抑え
ることができる点、重量物である満載時の肥料ホッパを
苗植付装置に接近させて配置することができる点、並び
に、薬剤散布装置において苗が植え付けられた圃場面に
複数の植付条に亘って薬剤を適切に散布することができ
る点、小型の薬剤ホッパにより機体の重量バランスに悪
影響を及ぼさない点によって、施肥装置の施肥性能及び
薬剤散布装置の散布性能を向上させ、機体の重量バラン
スを良いものにすることができた。

【００１２】請求項１の特徴によると、前述のように苗
植付装置の後側に施肥装置を備え、施肥装置の後側に薬
剤散布装置を備えても、これに関係なく肥料ホッパに肥
料を楽に補給することができ、薬剤においても肥料ホッ
パに邪魔されることなく薬剤ホッパに薬剤を補給するこ
とができるようになって、肥料及び薬剤の補給作業の作
業性を向上させることができた。請求項１の特徴のよう
に肥料ホッパの後側に位置する薬剤ホッパの左右幅を、
肥料ホッパの全体の左右幅よりも充分に狭いものに設定
することにより、機体を旋回させた際に薬剤ホッパの右
又は左端部を他物に当ててしまうと言うような事態が少
なくなって、機体の旋回性能を向上させるこができた。
機体の作業者が後方斜め下方を見た際に、左右幅の充分
に狭い薬剤ホッパが視界の妨げになることが少なく、苗
の植付状態の確認が行い易くなるので、作業性も向上さ
せることができた。

【００１３】

【実施例】図１に本発明に係る乗用型田植機の苗植付装
置１を示している。苗植付装置１は走行機体（図示せ
ず）の後部に、リンク機構（図示せず）を介して昇降自
在に連結されており、苗植付装置１の後部に植付作動に
連動して施肥を行う施肥装置２が備えられ、施肥装置２
の後側に薬剤散布装置３が取り付けられている。

【００１４】図１及び図３に示すように苗植付装置１は
６条植え型式に構成されており、植付用の苗を載置する
後下り傾斜姿勢の苗載せ台４、苗載せ台４の後下方に横
方向に並置されて苗を一株ずつ切り出して植え付ける６
個の植付機構５等を、フレーム兼用の植付伝動ケース６
に取り付けて構成されている。

【００１５】植付伝動ケース６の後部両横側において中
央部の横軸芯Ｘ１周りで駆動回転される植付回転ケース
７が取り付けられ、植付回転ケース７の両端部に植付爪
８が備えられて、植付回転ケース７の回転に伴って植付
爪８が略楕円軌跡を描きながら苗を切り出して植え付け
るよう植付機構５が構成されており、植付回転ケース７
の一回転により２回の植付作動が行われて、高速で植付
作業が行えるように構成されている。

【００１６】図１及び図３に示すように、施肥装置２は
植付条に対応して横方向に６個並列配備されて、上部側
の肥料ホッパ９、肥料ホッパ９の下部に備えられた回転
ロール式の繰出し機構１０、及び繰出し機構１０の下部
に接続された流下案内パイプ１１等から構成されてお
り、繰出し機構１０は植付機構５の回転に連動して所定
量の肥料を繰り出すように構成されている。図３に示す
ように、植付爪８の両端に亘って連結ブラケット１２が
架設されて、連結ブラケット１２の途中部位で植付回転
ケース７の回転中心（横軸芯Ｘ１）から所定量だけ偏位
した位置と、繰出し機構１０の回動ロール１３に備えら
れた回動駆動用の揺動アーム１４の端部とが、押引ロッ
ド１５を介して連結されている。これにより、植付回転
ケース７の回転に伴い押引ロッド１５を介して、揺動ア
ーム１４及び回動ロール１３が一定ピッチで往復回動さ
れて所定量の肥料が繰り出される。

【００１７】図２に示すように、植付機構５の各々と繰
出し機構１０との間に、植付機構５から飛散する泥土が
繰出し機構１０に降り掛かるのを防止し、繰出し機構１
０から植付機構５の上方に肥料の粉が降り掛かるのを防
止するカバー部材１６が、植付機構５の上方に位置する
作用姿勢とメンテナンス作業の為に後方側に移動した退
避姿勢とに亘り、スライド移動並びに固定自在に設けら
れている。

【００１８】植付伝動ケース６の上部横側から立設され
た縦フレーム４２に、取付ステー３８がボルト連結さ
れ、流下案内パイプ１１の支持部３９を備えたカバー支
持杆４０が取付ステー３８に固定されて、カバー支持杆
４０にカバー部材１６がスライド移動自在に係合止着さ
れている。縦フレーム４２から施肥装置２を支持するフ
レーム支柱４１が立設されている。

【００１９】図１，３，４に示すように薬剤散布装置３
において、薬剤を貯留する薬剤ホッパ１７、薬剤ホッパ
１７の下部から所定量ずつ薬剤を繰り出す繰出し機構１
８、繰り出された薬剤を回転力で薬剤ホッパ１７の左右
幅よりも幅広の範囲に亘って飛散させる回転体１９を備
えた薬剤供給部２０が設けられ、回転体１９によって飛
散された薬剤を略全植付幅に拡散させて圃場面に落下案
内するように、下方が開放された略箱形のガイド部材２
１が設けられて、薬剤散布装置３が構成されており、薬
剤散布装置３と施肥装置２との間に作業用空隙Ｓが形成
されている。この場合、図１及び図３に示すように、肥
料ホッパ９と薬剤ホッパ１７とが略同じ高さに位置する
ように設定され、肥料ホッパ９の全体の左右幅よりも薬
剤ホッパ１７の左右幅が充分に狭いものとなるように設
定されている。

【００２０】このように作業用空隙Ｓを設けることで、
肥料の詰まり故障時等のメンテナンス作業を行うために
揺動開閉自在に設けられる施肥装置２の繰出し機構１０
の後部壁１０ａを、支障なく開閉することができ、メン
テナンス作業を楽に行うことができる。カバー部材１６
の後方へのスライド移動が行えるように、略Ｌ字形に屈
曲成形されて取付ステー３８に固定された支持フレーム
２２を介して、薬剤散布装置３が植付伝動ケース６に支
持連結されている。

【００２１】図５，６，７に示すように薬剤供給装置２
０は、薬剤ホッパ１７の供給口２３の下方に、周方向に
沿って多数の薬剤通過用の透孔２４が形成された円板型
の繰出し部材２５が縦軸芯Ｙ周りに回動自在に配置さ
れ、繰出し部材２５の下方に、供給口２３とは異なる位
置の透孔２４の通過軌跡の部位に落下案内口２６が設ら
れ、落下案内口２６の下方に、電動モータ２７により高
速で回転駆動される回転体１９が設けられている。回転
体１９に、薬剤を飛散させる拡散羽根１９ａが立設され
ている。

【００２２】繰出し部材２５の駆動軸２８に一方向クラ
ッチ２９が設けられて、一方向クラッチ２９に備えられ
た揺動駆動アーム３０の端部と、植付回転ケース７及び
押引ロッド１５の連結部３１との間が連動連結されてい
る。図１に示すように、ガイド部材２１の前部壁２１ａ
に取り付けられたブラケット３２の横軸芯Ｘ２周りに揺
動自在に支持された天秤アーム３３の一端と、連結部３
１とが押引ロッド３４を介して連結され、ブラケット３
２の横軸芯Ｘ３周りで揺動自在に支持された揺動アーム
３５の揺動途中部位と、天秤アーム３３の他端とがリン
ク３６を介して連結されており、揺動アーム３５の端部
と一方向クラッチ２９の揺動駆動アーム３０とがワイヤ
３７を介して連結されている。これにより、植付機構５
の回転に伴って、繰出し部材２５が所定ピッチで間欠的
に回動して、所定量の薬剤が繰り出されるように構成さ
れている。

【００２３】図４及び図５に示すように、ガイド部材２
１は略全植付幅に亘る長尺状に構成され、下方が開放さ
れた略箱形であって、下方の開口を少し後方側に傾斜さ
せている。これにより、回転体１９により飛散した薬剤
が前部壁２１ａに反射しながら散乱して、略全植付幅に
亘り拡散した状態で植付条の上方から効率よく散布され
る。

【００２４】図４及び図５に示すように、ガイド部材２
１の上部面２１ｂが施肥装置２の肥料ホッパ９よりも低
い位置に設定されており、例えば肥料の補給時にガイド
部材２１の上部面２１ｂに肥料袋Ｑを載置して支持させ
ながら、肥料ホッパ９に肥料を補給することができ肥料
の補給作業が楽に行える。図５に示すように、ガイド部
材部材２１の下端縁が全域に亘って拡開するように屈曲
成形されており、雨水等が下端縁からガイド部材２１の
内側に回り込んで侵入することが抑えられ、薬剤の拡散
機能の低下が防止されている。

【００２５】図１及び図５に示すように、ガイド部材２
１の前部壁２１ａの下端が、後部壁２１ｃの下端と植付
爪８の植付作用位置とを結ぶ線よりも下方に位置するよ
うに設定されている。これにより、植付爪８の植付作用
位置（圃場面突入位置）から後方に泥土が跳ね飛ばされ
ても、泥土がガイド部材２１の内側に付着するおそれが
なく、薬剤の拡散機能の低下が防止される。

【００２６】尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を
便利にする為に符号を記すが、該記入により本発明は添
付図面の構成に限定されるものではない。

【図面の簡単な説明】

【図１】苗植付装置、施肥装置及び薬剤散布装置の全体
側面図

【図２】植付伝動ケースの後部及びカバー部材付近の側
面図

【図３】施肥装置及び薬剤散布装置の全体背面図

【図４】苗植付装置及び薬剤散布装置の全体平面図

【図５】薬剤散布装置における薬剤供給部付近の縦断側
面図

【図６】図５においてＶＩ−ＶＩ方向から見た断面図

【図７】図５においてＶＩＩ−ＶＩＩ方向から見た断面
図

【符号の説明】

１ 苗植付装置 ２ 施肥装置 ３ 薬剤散布装置 ９ 肥料ホッパ １０ 施肥装置の繰出し機構 １７ 薬剤ホッパ １８ 薬剤散布装置の繰出し機構 １９ 回転体 ２１ ガイド部材

フロントページの続き (72)発明者 富田 幸蔵 広島県高田郡吉田町大字山手739番地の ６ 株式会社啓文社製作所内 (72)発明者 早瀬 和幸 広島県高田郡吉田町大字山手739番地の ６ 株式会社啓文社製作所内 (72)発明者 門出 剛 広島県高田郡吉田町大字山手739番地の ６ 株式会社啓文社製作所内 (56)参考文献 特開 昭63−296611（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−304912（ＪＰ，Ａ)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 肥料を貯留する上部側の肥料ホッパ
   （９）と、前記肥料ホッパ（９）から肥料を繰出す下部
   側の繰出し機構（１０）とを備えて、施肥装置（２）を
   構成し、 薬剤を貯留する上部側の薬剤ホッパ（１７）と、前記薬
   剤ホッパ（１７）から薬剤を繰出す繰出し機構（１８）
   と、繰出された薬剤を回転により前記薬剤ホッパ（１
   ７）の左右幅よりも幅広の範囲に亘って飛散させる回転
   体（１９）と、前記回転体（１９）によって飛散された
   薬剤を拡散させて圃場面に落下案内する下部側のガイド
   部材（２１）とを備えて、薬剤散布装置（３）を構成す
   ると共に、 機体の後部における苗植付装置（１）の後側に施肥装置
   （２）を備え、前記施肥装置（２）の後側に前記薬剤散
   布装置（３）を備えて、 前記肥料ホッパ（９）と薬剤ホッパ（１７）とが略同じ
   高さに位置するように設定し、且つ、前記肥料ホッパ
   （９）の全体の左右幅よりも前記薬剤ホッパ（１７）の
   左右幅を狭いものに設定してある乗用型田植機。