JP2740623B2 - 下水の高度処理方法 - Google Patents

下水の高度処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、下水の二次処理水のよ
うに色度、COD 、NH4-N 、SSの他に、病原菌等の生物を
も含有する有機性排水の浄化に使用される下水の高度処
理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】下水の高度処理方法としては、図8に示
すように粒状活性炭51を充填した処理槽52に、通水速度
100 〜200m/dayで下水を通水し、下水中の汚濁成分を粒
状活性炭51に吸着させる方法が知られている。ところが
この方法は、色度、COD 、SS等はよく除去することがで
きるものの、病原菌等の除去率はあまりよくなく、更に
NH4-N は全く除去できないという欠点があった。またこ
こで使用される粒状活性炭51は高価であるばかりでな
く、下水のようなダーティな水の処理に使用すると寿命
が短いため、処理費用が高くつくという欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記した従来
の問題点を解決して、色度、COD 等の有機物とSSについ
ては従来法による処理性能を維持しつつ、従来法では除
去が困難であったNH4-N や病原菌等をも除去することが
でき、しかもその処理費用を従来よりも大幅に低減させ
ることができる下水の高度処理方法を提供するためにな
されたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めになされた本発明の下水の高度処理方法は、原水のpH
を5〜7に調整した後、塩素系の酸化剤を加えて粒状二
酸化マンガンを充填した処理槽に通水し、得られた酸化
液を曝気することによりpHを5.8〜8.6に調整し、
排出水質基準に適合した高度処理水を得ることを特徴と
するものである。なお、粒状二酸化マンガンは電解二酸
化マンガンを使用し、処理槽の目詰まり時には空気洗
浄、同時逆洗、水逆洗の順で粒状二酸化マンガンの層を
逆洗する方法を取ることができる。また、処理性能が低
下した時には上記の逆洗に引続き、処理槽内水を全量引
き抜いた後、賦活液を粒状二酸化マンガンの層と接触さ
せて粒状二酸化マンガンを賦活したうえ、賦活廃液を全
量引き抜くことができる。更に、引き抜いた賦活廃液を
酸化剤の一部として原水に加えることができる。
【0005】
【作用】本発明によれば、下水中の色度、COD 等の有機
物及びNH4-N は粒状二酸化マンガンの酸化作用によって
除去することができ、SSは粒状二酸化マンガン層の濾過
作用によって除去される。また下水中の病原菌は共存す
る酸化剤の殺菌作用によって死滅する。さらに、曝気に
よって酸化液のpHを高めて水質基準値の5.8 〜8.6 に合
致させているので、アルカリなどの中和剤による中和処
理が不要になる。なお、二酸化マンガンは有機物等を酸
化するとMnO に変化するが、酸化剤によって再び二酸化
マンガンに戻るので、処理性能が低下することがない。
このため、高価な活性炭を使用することなく、色度、CO
D 等の有機物、SS、NH4-N、病原菌等を除去することが
できる。
【0006】
【実施例】以下に本発明を図1のフローシートに従っ
て、更に詳細に説明する。図1において、1はpH調整
槽、2は電解二酸化マンガンまたはパラジウム含浸電解
二酸化マンガンからなる粒状二酸化マンガン層を備えた
処理槽、3は曝気槽兼処理水槽、4は酸貯槽、5は酸化
剤貯槽、6は賦活廃液貯槽である。また、7はポンプ、
8はブロワ、9はpH指示調節計、10は攪拌機、11はレベ
ル調節装置である。原水は酸貯槽4から供給される酸と
ともにpH調整槽1で攪拌され、pH5〜7に調整される。
COD 等の有機物を除去するためにはpHは低い方がよい
が、処理水pHから見るとpHを高めに調整することが好ま
しく、有機物除去を高率に維持しつつ、処理水pHを後記
曝気処理により5.8 〜8.6 におさめるためには、図2に
示すように原水をpH5〜7に調整する。
【0007】このようにpH調整された原水は次に酸化剤
が添加され、処理槽2に供給される。添加する酸化剤の
種類としては、NaClO 等の塩素系酸化剤の他、過マンガ
ン酸塩、過酸化水素水などがあるが、オゾンは二酸化マ
ンガンを過マンガン酸塩にまで酸化するため、粒状二酸
化マンガンの目減りが激しく使用できない。また、過マ
ンガン酸塩は酸化液中にMn++が混入するため、別途処理
が必要であり、適当でない。
【0008】酸化剤の添加率としては、COD を完全分解
する酸化剤必要量の20〜50%がよい。図3はNaClO を酸
化剤としたときの例を示すが、酸化剤必要量(理論値)
の20%を下回るとCOD の除去率が低下し、50%を越えて
もCOD の除去率がそれ以上向上しないばかりか、処理水
中に添加酸化剤に由来する残留塩素(R-Cl)が増加し、酸
化剤が無駄になる。
【0009】このようにpHを5〜7に調整し、酸化剤が
加えられた原水が処理槽2に供給されると、粒状二酸化
マンガンの酸化作用によって原水中の色度、COD 等の有
機物、及びNH4-N は分解されて除去される。またSSは粒
状二酸化マンガン層のろ過作用によって除かれ、病原菌
は共存する酸化剤の殺菌作用によって死滅する。
【0010】粒状二酸化マンガンは通常電解二酸化マン
ガンが使用されるが、この場合電解二酸化マンガンが有
機物等を酸化分解すると、MnO が粒状二酸化マンガンの
表面に生成し、共存する酸化剤によってMnO +NaClO →
MnO2+NaClのように反応して、再び二酸化マンガンに戻
る。ここで生成したMnO の量に比較して共存する酸化剤
の量が少ないとMnO が二酸化マンガンに戻らない部分が
できて、徐々に処理性能が低下することとなる。
【0011】また、粒状二酸化マンガンは電解二酸化マ
ンガンのほか、パラジウム含浸電解二酸化マンガンが使
用される。パラジウム含浸電解二酸化マンガンを使用す
ると、前記した電解二酸化マンガンによる反応ととも
に、添加した酸化剤が電解二酸化マンガンの作用により
活性酵素となり、これがパラジウムに吸着された後、原
水中の有機物等を酸化分解する反応も同時に起こるの
で、図4に示すように効果は一層高まる。ここでパラジ
ウム含浸電解二酸化マンガンの場合、パラジウム自身は
吸着した活性酵素量に見合うだけの処理しかしないの
で、経時的な処理性能の低下はないが、電解二酸化マン
ガン部分は前記したように処理に伴ってMnO が生成する
ので、生成したMnO の量に比較して共存する酸化剤の量
が少ないと、MnO が二酸化マンガンに戻らない部分がで
きて、徐々に処理性能が低下することとなる。
【0012】処理槽2における通水速度は、図5に示す
ようにLV=300m/day以下がよい。通水速度がこれを越え
ると粒状二酸化マンガンへのCOD 等の汚濁物質の拡散が
伴わなくなり処理性能が低下する。また、原水と粒状二
酸化マンガンとの接触時間はSV=6/hr以下がよい。但し
あまりSVが小さいと処理槽2が大きくなり必要な粒状二
酸化マンガンも多くなるので、これらを勘案すればSV=
1/hr〜6/hrが好ましい。
【0013】このようにして処理を継続すると、粒状二
酸化マンガン層の目詰まりによって徐々に処理槽2の水
位が上昇し、また先に述べたようにMnO2に戻ることがで
きなかったMnO が増加して処理能力が低下してくる。ま
ず、粒状二酸化マンガン層の目詰まりが進行したときに
は、空気洗浄→同時逆洗→水逆洗の順で粒状二酸化マン
ガン層の逆洗を行う。逆洗速度は通常の0.5 〜1.5m/min
でよく、時間は空気洗浄0.5 分、同時逆洗1分、水逆洗
1〜5分とする。この操作を1〜3回繰り返すことによ
り、SSを系外に排出し、目詰まりを解消する。このと
き、処理性能が低下しておれば、逆洗に引き続いて賦活
処理を行う。
【0014】賦活は、逆洗の終了した段階で処理槽2内
に満たされている水を逆洗ドレンとして引抜き、酸化剤
を含有する賦活液を供給して粒状二酸化マンガン層と一
定時間接触させる。この賦活操作により処理途中でMnO2
に戻ることができなかったMnO が処理途中の賦活の反応
と同様にMnO2に戻り、再び酸化力を発揮するようにな
る。
【0015】賦活液を粒状二酸化マンガン層と接触させ
る時間は、賦活液が含有する酸化剤の濃度と賦活の必要
程度によって異なるが、通常は5〜20分程度が必要にな
る。また、賦活液の含有する酸化剤の濃度は、賦活後の
賦活廃液に酸化剤が初期濃度の10%程度が残留すれば賦
活に関しては問題がないが、後述するように賦活廃液中
の酸化剤を更に利用するためには、0.2 %以上の酸化剤
が必要である。図6に示すように、酸化剤がNaClO の場
合、賦活液の含有する酸化剤濃度は有効塩素として0.5
%以上が好ましい。
【0016】このようにして賦活が終了したら、賦活廃
液は全量引抜いて賦活廃液貯槽6に貯え、処理の際の酸
化剤の一部として原水に添加する。上述の逆洗と賦活の
操作は必要時に実施すればよいが、特に賦活操作は維持
すべきCOD 等の除去率あるいは目的とする高度処理水の
水質によって決定する必要がある。
【0017】処理槽2で処理された水は、酸化液として
曝気槽兼処理水槽3に入る。ここで酸化液は曝気され、
高度処理水として排出される。このように酸化液の曝気
が必要であるのは、処理槽2における処理性能を向上さ
せるために原水のpHを5〜7に調整しているために酸化
液のpHも低いことが多く、曝気によって酸化液のpHを高
めて水質基準値の5.8 〜8.6 に合致させるためである。
曝気によって酸化液のpHが上昇するのは、処理槽2で酸
化により生成した炭酸又は重炭酸が脱炭酸されるためと
思われる。曝気量は通常の活性汚泥処理における曝気量
と同じく0.5 〜1m3air /m3槽・Hr程度でよく、曝気時
間は図7に示すように15〜30分で十分基準値に合致す
る。このように本発明では、アルカリなどの中和剤によ
る中和処理が不要になるという利点が得られる。
【0018】次に表1と表2に、同一の原水を本発明の
処理方法と従来法の活性炭処理方法とによって処理した
結果を示す。本発明の電解二酸化マンガンを使用した例
を従来法と比較すると、SS、COD 、BOD 、色度等につい
ては従来法と同等の結果となり、NH4-N 及び一般細菌、
大腸菌については従来法よりも大幅に優れた結果となっ
ている。また、処理費用は従来法の1/17と大幅に節減で
きることが判る。更に、パラジウム含浸電解二酸化マン
ガンを使用した例では、処理費用は電解二酸化マンガン
を使用したものと同等に維持しつつ、COD 、BOD 、色度
等の水質を更に向上させることができる。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【発明の効果】以上に説明したところから明らかなよう
に、本発明の下水の高度処理方法は、色度、COD 、BOD
の除去性は従来法と同率であり、NH4-N 、一般細菌、大
腸菌の除去性は従来法よりも大幅に優れている。従っ
て、最近の傾向であるCOD や窒素の排出規制にも十分に
対応することができる。またアルカリなどの中和剤によ
る中和処理が不要になることと併せて、処理費用が従来
法の1/17と大幅に低減でき、下水処理等の大量処理を必
要とする系に対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフローシートである。
【図2】原水調整pHと、COD 除去率及び処理水pHの関係
を示すグラフである。
【図3】酸化剤添加比率と、COD 除去率及び処理水R-Cl
の関係を示すグラフである。
【図4】電解二酸化マンガンとパラジウム含浸電解二酸
化マンガンを使用したときのCOD 除去率を比較するグラ
フである。
【図5】COD 除去率とLV及びSVの関係を示すグラフであ
る。
【図6】接触時間とCOD 除去率の回復性及び賦活廃液R-
Clの関係を示すグラフである。
【図7】酸化液の曝気時間と高度処理水pHの関係を示す
グラフである。
【図8】従来法のフローシートである。
【符号の説明】
1 pH調整槽、2 電解二酸化マンガン又はパラジウム
含浸電解二酸化マンガンからなる粒状二酸化マンガン層
を備えた処理槽、3 曝気槽兼処理水槽、4酸貯槽、5
酸化剤貯槽、6 賦活廃液貯槽、7 ポンプ、8 ブ
ロワ、9 レベル調整装置、10 攪拌機、11 pH指示調
節計

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原水のpHを5〜7に調整した後、塩素系の
    酸化剤を加えて粒状二酸化マンガンを充填した処理槽に
    通水し、得られた酸化液を曝気することによりpHを5.
    8〜8.6に調整し、排出水質基準に適合した高度処理
    水を得ることを特徴とする下水の高度処理方法。
  2. 【請求項2】粒状二酸化マンガンが電解二酸化マンガン
    である請求項1に記載の下水の高度処理方法。
  3. 【請求項3】処理槽の目詰まり時には空気洗浄、同時逆
    洗、水逆洗の順で粒状二酸化マンガンの層を逆洗する請
    求項1に記載の下水の高度処理方法。
  4. 【請求項4】処理性能が低下した時には請求項3の逆洗
    に引続き、処理槽内水を全量引き抜いた後、賦活液を粒
    状二酸化マンガンの層と接触させて粒状二酸化マンガン
    を賦活したうえ、賦活廃液を全量引き抜く請求項3に記
    載の下水の高度処理方法。
  5. 【請求項5】引き抜いた賦活廃液を酸化剤の一部として
    原水に加える請求項4に記載の下水の高度処理方法。
  6. 【請求項6】請求項1に記載の下水の高度処理方法であ
    って、処理槽の目詰まり時には空気洗浄、同時逆洗、水
    逆洗の順で前記二酸化マンガンの層を逆洗し、処理性能
    が低下した時には前記逆洗に引続き、処理槽内水を全量
    引き抜いた後、前記酸化剤と同種の酸化剤を含有させた
    賦活液を前記二酸化マンガンの層と接触させてそれを賦
    活したうえ、賦活廃液を全量引き抜くとともに、この引
    き抜いた賦活廃液を前記酸化剤の一部として原水に加え
    る下水の高度処理方法。
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