JP2734931B2 - Ｐｃ版からなる床スラブ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、梁間に架け渡す複数
のＰＣ版で床組を構成した床スラブに関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種の床スラブは、長手方向の
両端を梁が支持するようにしたＰＣ版を、梁間に複数個
架け渡すことで床面を形成してなる、所謂、一方向板の
ものが一般に知られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した従来
の床スラブは、ＰＣ版長手方向の両端のみを梁が支持し
ている一方向板なので、スラブ構成用の各ＰＣ版が負担
すべき荷重を、スラブに加わる鉛直荷重のみとしてお
り、水平荷重は負担しないものとしている。

【０００４】そして、この従来の床スラブに鉛直荷重が
加わる時においては、各ＰＣ版が一方向板であることか
ら、このＰＣ版を受ける梁と受けない梁とが存在するこ
ととなり、この各梁で応力が異なることとなる。

【０００５】また、この従来の床スラブに水平荷重が加
わる時においては、主要な構造部分に有効に伝達負担さ
せるために、後打ちコンクリートあるいはその他の構成
材を設けて、床面の面内剛性を確保する必要がある。

【０００６】この発明は前述した事情に鑑みて創案され
たもので、その目的は床スラブを複数のＰＣ版で構成し
た時に、床スラブに加わる応力を受ける梁と受けない梁
とが存在することのないように、各ＰＣ版を二方向板に
することができると共に、各ＰＣ版で構成した床面の面
内や面外剛性を確保することのできるＰＣ版からなる床
スラブを提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この発明では、長手方向
の両端を梁に載置状態で支持させた複数のＰＣ版からな
る一方向板の床スラブを、各ＰＣ版の幅方向に貫通した
高強力度鋼線により各ＰＣ版を幅方向へ連結して一体化
することで、長手方向の両端だけでなく、幅方向の両端
においても梁に載置状態で支持される、二方向板とす
る。しかも、本発明での高強力度鋼線は、プレストレス
の導入で面内剛性を与えることにより各ＰＣ版を一体化
していると共に、下に凸の湾曲線状となるように配置さ
れて床スラブの面外剛性をも確保している。

【０００８】このような本発明の床スラブでは、各ＰＣ
版を一体化している高強力度鋼線によって、水平荷重に
対して発揮する、床スラブにおける面内剛性と共に、垂
直荷重に対して発揮する、床スラブにおける面外剛性も
確保することができる。そのため、床スラブを、施工が
簡単な複数のＰＣ版で構成すると共に、設置が簡単なよ
うにスラブ周端部を梁に載置する状態で固定しても、積
載荷重や自重等の鉛直荷重で床スラブに加わる応力を、
各ＰＣ版自身や高強力度鋼線によって四周の梁に分散し
て伝達することができる。

【０００９】従って、本発明の床スラブでは、高強力度
鋼線の緊張後、面外応力に対して二方向板として機能さ
せることができ、床スラブの四周の各梁に伝わる応力を
均一にすることができるので、構造上の強度を確実に保
持することができるようになる。

【００１０】

【実施例】以下、この発明のＰＣ版からなる床スラブ
を、図示する実施例によって説明する。

【００１１】長手方向の両端部を梁３に載置固定するこ
とにより、梁間に架け渡した複数のＰＣ版２で構成する
床スラブ１（図１参照）は、幅方向に貫通して各ＰＣ版
２を一体化している高強力度鋼線４を有しており、この
高強力度鋼線４両端の固定を行いＰＣ版２の幅方向に位
置する梁５へも載置固定されている。この高強力度鋼線
４は、プレストレスの導入で面内剛性を与えることによ
り各ＰＣ版２を一体化していると共に、下に凸の湾曲線
状となるように配置されて床スラブ１の面外剛性をも確
保している。

【００１２】そして、この各ＰＣ版２で構成される床ス
ラブ１は、その鉛直荷重を、各ＰＣ版２自身と高強力度
鋼線４とにより、各ＰＣ版２における、長手方向の両端
位置の梁３と幅方向両端の梁５とへ伝達できるように構
成されている。

【００１３】なお、この実施例でのＰＣ版２は、図１の
(b) および図６に示すように、その幅方向の両端にリブ
部2aを設けた断面略コ字形状に形成されていると共に、
リブ部2aの内部にＰＣ鋼棒2bがプレテンションにて配設
されてなっている。また、この各ＰＣ版２の形状として
は、図６の形状の他に、図７に示すように、内部に長手
方向へ延びる中空部６を有する肉厚の板状に形成したも
のも考えられる。

【００１４】さらに、この床スラブ１の構成としては、
図１の(b) および図３，図４に示したものの他に、図８
に示すように、敷き並べて一体化した各ＰＣ版２の上面
に場所打ちコンクリート７を打設して、このコンクリー
ト７と合成してなるもの。または、図９に示すように、
リブ部2aの上面に場所打ちコンクリート７を打設して、
中空部８を形成してなるものが考えられる。

【００１５】このように、この発明のＰＣ版２からなる
床スラブ１は、ＰＣ版２のプレキャスト部材単体で構成
する方法と、ＰＣ版２のプレキャスト部材と場所打ちコ
ンクリート７とを合成させ、合成構造として構成させる
方法とする。そして、この二方法とも、各ＰＣ版２の軸
直角方向に高強力度鋼線４であるＰＣ鋼材（ＰＣ鋼棒，
より線）を配設し、各ＰＣ版２にポストテンション方式
でプレストレスを導入している。

【００１６】なお、各ＰＣ版２の幅方向へ連結しての一
体化は、高強力度鋼線４（より線や鋼棒のＰＣ鋼材）を
各ＰＣ版２の幅方向へ挿入すると共に、この高強力度鋼
線４（ＰＣ鋼材）にポストテンション方式によって軸力
を導入することで、各ＰＣ版２相互を締め付け、その緊
張力によって行われる。

【００１７】このような構成からなるＰＣ版２からなる
床スラブ１を施工するには、次に述べるようにして行
う。

【００１８】先ず、ＰＣ版２を、その長手方向の両端部
を梁３に載置固定することで、梁間に架け渡す。この架
け渡し作業を繰り返し、図１の(a) に示したように、プ
レキャスト部材のＰＣ版２を複数敷き並べる。なお、こ
の時に、各ＰＣ版２からなる床スラブ１における各ＰＣ
版２幅方向の両端部も梁５に載置した状態となる。

【００１９】次に、各ＰＣ版２の幅方向に、防錆処理を
施した高強力度鋼線４であるＰＣ鋼材を配設する。この
時の高強力度鋼線４であるＰＣ鋼材は、図３および図４
に示すように、各ＰＣ版２の幅方向に配設したポストテ
ンション用シース９内に挿入すると共に、直線のみなら
ず、図１の(b) に示したように、下に凸の湾曲線状に配
置にする。

【００２０】この高強力度鋼線４であるポストテンショ
ン用のＰＣ鋼材を、下に凸の湾曲線状に配置すること
は、各ＰＣ版２を梁３に架け渡した時に発生している、
各ＰＣ版２長手方向への鉛直荷重の応力伝達を、幅方向
へも分散させるためである。即ち、下に凸の湾曲線状に
配置した高強力度鋼線４で、各ＰＣ版２からなる床スラ
ブ１の面外剛性を確保している。なお、この時の設計応
力は、全て高強力度鋼線４で受ける設計にすることとす
る。

【００２１】次に、各ＰＣ版２の幅方向に配設した高強
力度鋼線４であるＰＣ鋼材を緊張する。この緊張時にお
ける各ＰＣ版２は、その幅方向に貫通した高強力度鋼線
４により、プレストレスを導入されて床面の面内剛性が
確保でき一体化する。

【００２２】そして、この緊張後に、高強力度鋼線４の
両端を、各ＰＣ版２の幅方向に位置する梁５への固定を
行う。この高強力度鋼線４の両端の梁５への固定は、図
３および図４に示したように、後打ちコンクリート10を
打設することで行われる。また、この後打ちコンクリー
ト10により、床スラブ１における各ＰＣ版２幅方向両端
部と各ＰＣ版２幅方向に位置する梁５とが、完全に一体
化されて緊結されることとなる。

【００２３】次に、各ＰＣ版２の幅方向における、各Ｐ
Ｃ版２の間の目地11に、図２に示したように、モルタル
等を詰めると共に、養生を行うことで、床スラブ１の施
工が完了する。

【００２４】このような床スラブ１において、各ＰＣ版
２を一体化する面内剛性の確保に対しては、高強力度鋼
線４であるＰＣ鋼材の緊張力によって発生する面内圧縮
力により、十分発揮することができる。また、この高強
力度鋼線４は、下に凸の湾曲線状に配置されていること
により、各ＰＣ版２が一体化してなる床スラブ１の面外
剛性も確実に確保することができる。

【００２５】なお、各ＰＣ版２を一体化して二方向性の
床版にするには、前述した実施例のように、一枚づつ梁
上に設置すると共に、梁上でポストテンションを行なう
場合と、各ＰＣ版２を地面上で敷き並べてポストテンシ
ョンを行ない、二方向性の床版にしながら梁上に設置す
る場合とが考えられる。

【００２６】また、各ＰＣ版２は、その相互を、ただポ
ストテンション法により締め付けるだけでは二方向板に
ならない。そのため、二方向板になるように、高強力度
鋼線４であるＰＣ鋼材の配線方法，緊張力，定着方法お
よびリブ部2aの圧縮応力度等をコントロールする。

【００２７】

【発明の効果】本発明の床スラブでは、高強力度鋼線に
より、幅方向における各ＰＣ版相互を締め付け、その緊
張力によって各ＰＣ版を一体化していると共に、各ＰＣ
版の長手方向位置の梁と各ＰＣ版の幅方向位置の梁とに
スラブ周囲を載置状態で固定している。また、ポストテ
ンション方式によって軸力を導入することで幅方向にお
ける各ＰＣ版相互を締め付け、その緊張力によって各Ｐ
Ｃ版を一体化している高強力度鋼線は、下に凸の湾曲線
状に配設されている。そのため、水平荷重に対して発揮
する、床スラブにおける面内剛性と同時に、鉛直荷重に
対して発揮する、床スラブにおける面外剛性をも確保す
ることができる。

【００２８】そのため、本発明によれば、施工や固定が
簡単な複数のＰＣ版で床スラブを構成するようにして
も、積載荷重や自重等の鉛直荷重で床スラブに加わる応
力を四周の梁に分散して伝達することができる。従っ
て、床スラブの四周の各梁に伝わる応力を均一にするこ
とができることとなり、複数のＰＣ版で床スラブを構成
しても、特別な処置を施す必要がなく、構造上の強度を
確実に保持できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】(a) はこの発明の床スラブを示す概略平面図
で、(b) は(a) のＡ−Ａ線断面図である。

【図２】図１の(b) におけるＢ部の拡大断面図である。

【図３】図１の(b) におけるＣ部の拡大断面図である。

【図４】図１の(b) におけるＤ部の拡大断面図である。

【図５】図３のＥ−Ｅ線断面図である。

【図６】この発明の床スラブにおけるＰＣ版を示す概略
図である。

【図７】この発明の床スラブにおけるＰＣ版の別態様を
示す概略図である。

【図８】この発明の床スラブの構成の別態様を示す概略
図である。

【図９】この発明の床スラブの構成のさらに別態様を示
す概略図である。

【図１０】この発明の床スラブでの梁との納まり状態の
別態様を示す概略図である。

【符号の説明】

１…床スラブ、２…ＰＣ版、2a…リブ部、2b…ＰＣ鋼
棒、３…梁、４…高強力度鋼線、５…梁、６…中空部、
７…場所打ちコンクリート、８…中空部、９…ポストテ
ンション用シース、10…後打ちコンクリート、11…目
地。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 長手方向の両端部を梁へ載置固定するこ
   とで、梁間に架け渡してなる複数のＰＣ版によって構成
   する床スラブであり、 前記各ＰＣ版はその幅方向に貫通した高強力度鋼線で一
   体化されて床スラブを構成していると共に、この床スラ
   ブは前記高強力度鋼線両端の固定を行いＰＣ版幅方向に
   位置する梁へも載置固定してなり、 前記高強力度鋼線は、プレストレスの導入で面内剛性を
   与えることにより前記各ＰＣ版を一体化していると共
   に、下に凸の湾曲線状となるように配置して前記床スラ
   ブの面外剛性をも確保しており、 前記各ＰＣ版で構成される床スラブは、その鉛直荷重
   を、各ＰＣ版自身と前記高強力度鋼線とにより、各ＰＣ
   版における、長手方向の両端位置の梁と幅方向両端の梁
   とへ伝達できることを特徴とするＰＣ版からなる床スラ
   ブ。