JP2733157B2 - 熱圧着可能な導電性フィルム状接着剤 - Google Patents

熱圧着可能な導電性フィルム状接着剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、導電性及び耐熱性に優
れ、熱圧着して用いることのできるフィルム状接着剤に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、耐熱性の熱圧着可能なフィルム状
接着剤はいくつか知られている。例えば、特開平1-2822
83号公報には、ポリアミドイミド系やポリアミド系のホ
ットメルト接着剤、特開昭58-157190号公報には、ポリ
イミド系接着剤によるフレキシブル印刷回路基板の製造
法、特開昭62-235382号及び特開昭62-235383号公報に
は、熱硬化性のポリイミド系フィルム状接着剤に関する
記述がなされている。ところが、ポリアミド系やポリア
ミドイミド系樹脂は、アミド基の親水性のために吸水率
が大きくなるという欠点を有し、信頼性を必要とするエ
レクトロニクス用途としての接着剤に用いるには限界が
あった。またその他の公報に記載されているフィルム状
接着剤の熱圧着条件は、275℃、50kgf/cm2、30分間が
標準であり、熱や圧力に鋭敏な電子部品や、量産性を必
要とされる用途のフィルム状接着剤としては必ずしも有
利であるとは言えなかった。
【0003】一方で、従来用いられているエポキシ系、
フェノール系、アクリル系等の接着剤は、比較的低温、
低圧で熱圧着できるという利点を有するが、熱硬化型で
あるため、ある程度硬化時間を長く設ける必要があっ
た。また熱可塑性樹脂をホットメルト型接着剤として用
いることもよく行なわれるが、耐熱性に乏しい欠点を有
している。
【0004】また一方で、IC、LSI等の半導体チッ
プとリードフレームとの接合には、従来Au−Si共晶
が用いられていたが、Auが高価なため、最近では導電
性樹脂ペーストが主流になってきた。この種の導電性樹
脂ペーストとしては、特開昭55-25482号又は52-107036
号公報に開示されているように、通常エポキシ樹脂をバ
インダーとし、これに銀粉を混合した銀ペーストが作業
性や接着性が良いため、主に使用されてきた。しかしな
がら、このようなペースト状接着剤は、塗布量を厳密
にコントロールしないと厚み制御ができないこと、チ
ップ側面へのペーストの這い上がりのあること、表面
加工したリードフレームに均一に塗布できない、等の不
具合があり、これらを解決する方法として導電性並びに
耐熱性を有するフィルム状接着剤が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、耐熱性
に優れ、低温、低圧、短時間で熱圧着可能な導電性フィ
ルム状接着剤を得んとして鋭意研究を重ねた結果、特定
の構造を有するポリイミドに、導電性フィラーを必要量
分散させフィルム化した接着剤が上記の目標を達成し得
ることが判り、本発明を完成するに至ったものである。
その目的とするところは、導電性、耐熱性と熱圧着作業
性を両立させたフィルム状接着剤を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、式(1)又は
(2)で表される酸末端シリコーン化合物Aモル
【0007】
【化1】
【0008】及び他の酸二無水物成分として、4,4'-オ
キシジフタル酸二無水物又は3,3',4,4'-ベンゾフェノン
テトラカルボン酸二無水物Bモルからなる酸成分(但
し、A/(A+B)≧0.3)と、1,3-ビス(3-アミノ
フェノキシ)ベンゼンCモル及び他のジアミン成分とし
て、2,4-ジアミノトルエンDモルからなるアミン成分
(但し、C/(C+D)≧0.8)とを、(A+B)/
(C+D)が0.8〜1.2の範囲で反応させ、少なくとも80
%以上がイミド化されているポリイミドと、ポリイミド
に対して50〜900wt%の導電性フィラーとからなる熱圧
着可能な導電性フィルム状接着剤である。
【0009】本発明において用いられる酸二無水物は、
酸末端シリコーン化合物、4,4'-オキシジフタル酸二無
水物(以下ODPAと略す)及び3,3',4,4'-ベンゾフェ
ノンテトラカルボン酸二無水物(以下BTDAと略す)
である。
【0010】本発明において用いられる酸末端シリコー
ン化合物は、下記の式(1)で示されるフタル酸無水物
末端シリコーン化合物又は式(2)で示されるナジック
酸無水物末端シリコーン化合物である。
【0011】
【化1】
【0012】本発明において用いられるジアミン成分
は、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(以下A
PBと略す)と他のジアミンである。他のジアミンは、
2,4-ジアミノトルエンである。
【0013】本発明における酸二無水物とジアミンの反
応は、公知の方法で行なうことができる。予め、酸二無
水物成分あるいはジアミン成分の何れか一方を有機溶剤
中に溶解あるいは懸濁させておき、他方の成分を粉末又
は液状あるいは有機溶剤に溶解した状態で徐々に添加す
る。反応は発熱を伴うため、望ましくは冷却しながら反
応系の温度を室温付近に保って実施する。
【0014】酸二無水物成分とジアミン成分のモル比
(A+B)/(C+D)は、当量付近、特に0.8〜1.2の
範囲にあるのが望ましい。何れか一方が多くなり過ぎる
と、分子量が高くならず、耐熱性、機械特性が低下する
ので好ましくない。室温付近で反応させ、ポリアミド酸
を合成した後、加熱あるいは無水酢酸/ピリジン系触媒
を用いる等公知の方法によりイミド化を実施することが
できる。イミド化率は少なくとも80%以上であることが
望ましい。イミド化率が80%よりも低いと後にフィルム
化して熱圧着する際にイミド化が進行して水分が発生
し、ボイドの原因となって接着強度の低下を招くので好
ましくない。
【0015】A/(A+B)の値は0.3以上であるこ
とが必要であり、C/(C+D)の値は0.8以上であ
ることが必要である。A/(A+B)の値が0.3未
満、又はC/(C+D)の値が0.8未満であると、
溶融性が低下してしまい、少なくとも300℃以上、あ
るいは50kgf/cm2以上の熱圧着条件が必要となり、量
産性の点で好ましくない。A/(A+B)の値が0.3
以上、かつC/(C+D)の値が0.8以上であれば、
250℃以下の温度で、しかも20kgf/cm2以下の圧力
下、10分以内の短時間で熱圧着でき、良好な接着強度
を達成することができる。
【0016】
【0017】本発明において用いられる有機溶剤は特に
限定されるものではないが、均一溶解可能なものなら
ば、一種類或いは二種類以上を併用した混合溶媒であっ
ても差し支えない。この種の溶媒として代表的なもの
は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトア
ミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセト
アミド、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチル
スルホキシド、ヘキサメチルフォスホアミド、N-メチル
-2-ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホン、テトラ
メチルスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン、γ
-ブチロラクトン、ジグライム、テトラヒドロフラン、
塩化メチレン、ジオキサン、シクロヘキサノン等があ
り、均一に溶解できる範囲で貧溶媒を揮散調節剤、皮膜
平滑剤などとして使用することもできる。
【0018】本発明において用いられる導電性フィラー
は、特に限定されるものではないが、通常好ましく用い
られるものとして例を挙げると、金、銀、銅、ニッケ
ル、アルミニウム等であり、使用目的に応じてこれらを
単独又は混合して用いることができる。通常、このよう
な導電性フィラーの添加量は、樹脂に対して50〜900%
となるように用いるのが好ましい。50wt%未満では得ら
れるフィルム状接着層の導電性が発揮されないので好ま
しくなく、900wt%を越えるとバインダーである樹脂分
が少なくなるために、充分な接着強度が得られなくなる
ので好ましくない。形状は、特に制限されず、例えばフ
レーク状、樹枝状や球状等のものがあり、これらの金属
粉末の一種又は二種以上を混合して用いてもよい。粒径
についても特に限定されないが、最終接着層の厚さ、作
業性等を考慮すると、平均粒径は、50μm以下のものが
好ましい。
【0019】本発明の熱圧着可能な導電性フィルム状接
着剤の使用方法としては、特に限定されるものではない
が、通常充分にイミド化されたワニスに導電性フィラー
を加えて、公知の分散装置である三本ロール、ボールミ
ル、擂潰機等により均一分散させ、ペースト状にしたも
のを、テフロン等の離型性に優れた基材に塗布した後、
加熱処理によって溶剤を揮散させてフィルム化し、基材
から剥がして導電性フィルムを得る。これを被接着体間
に挟んだ後、熱圧着する。または予め被着体の上に塗布
した後、加熱処理を施して充分に溶剤を揮散させた後、
一方の被着体と合わせて熱圧着することもできる。
【0020】また本発明の接着剤のベース樹脂であるポ
リイミドには、必要に応じて各種添加剤を加えることが
できる。例えば、基材に塗布する際の表面平滑剤、濡れ
性を高めるためのレベリング剤や各種界面活性剤、シラ
ンカップリング剤、また接着剤の熱圧着後の耐熱性を高
めるための各種架橋剤などの添加剤である。これらの添
加剤は、フィルム状接着剤の特性を損わない程度の量で
使用することができる。
【0021】以下に実施例を以て本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。
【0022】
【実施例】
(実施例1)温度計、撹拌機、原料投入口、乾燥窒素ガ
ス導入管を備えた四つ口のセパラブルフラスコ中に、1,
3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)29.23
g(0.1モル)を300gのN-メチル-2-ピロリドン(NM
P)に溶解させ、4,4'-オキシジフタル酸二無水物(O
DPA)15.51g(0.05モル)、下記式の酸末端シリコ
ーン化合物50.99g(0.05モル)
【0023】
【化3】
【0024】を30分間かけて固形のまま徐々に添加した
後2時間撹拌を続けた。この間ずっと乾燥窒素ガスを流
しておき、更に酸無水物を添加する前から氷浴で冷却
し、系を反応の間ずっと20℃に保っておいた。
【0025】次いで、この系にキシレン60gを添加し、
乾燥窒素導入管を外して、代りにディーンスターチ還流
冷却管を取付け、氷浴を外してオイルバスで加熱して系
の温度を上昇させる。イミド化に伴って生じる水をトル
エンとの共沸により系外へ除去しながら加熱を続け、15
0〜160℃でイミド化を進めて水が発生しなくなった5時
間後に反応を終了させた。このポリイミドワニスを30リ
ットルのメタノール中に撹拌しながら1時間かけて滴下
し、樹脂を沈澱させ、濾過して固形分のみを回収した
後、真空乾燥機中にて減圧下120℃で5時間乾燥させ
た。このようにして得られたポリイミドのFT-IRスペク
トルを測定し、1650cm-1に現れるイミド化前のアミド結
合に基づく吸収と、1780cm-1に現れるイミド環に基づく
吸収からイミド化率を求めたところ、100%イミド化さ
れていることが判った。
【0026】このポリイミドをジエチレングリコールジ
メチルエーテル(ジグライム)に溶解させ、濃度10%に
調整した。このワニスに、平均粒径3μmの銀粉をポリ
イミドに対して400wt%となるように加え、三本ロール
を用いて均一に分散させ、ペースト状物を得た。このペ
ーストをアプリケータを用いて表面研磨されたテフロン
板の上にキャストし、乾燥機中で120℃、5時間加熱処
理をすることによって溶剤を揮散させ、テフロン基板か
ら剥がして、厚み25μmのフィルムを作成した。このフ
ィルムから、3mm×3.5mm角の大きさを切出し、銅製のリ
ードフレームと、3mm×3.5mm角の大きさのシリコンチッ
プの間に挟み、250℃のホットプレート上で500gの荷重
をかけ(約4.76kgf/cm2)、10秒で熱圧着した後、室温
まで冷却してプッシュプルゲージで剪断強度を測定した
ところ、10kgf以上の値のところでシリコンチップが破
壊して正確な剪断強度が得られない程、強固に接着して
いた。次に、260℃のホットプレート上に10秒間、同様
の接着サンプルを置いて剪断強度を測定したところ、2.
7kgfの強度が得られた。破壊のモードは凝集破壊であ
り、リードフレームにもチップにもフィルムの一部が残
っていた。またフィルムにはボイドは全く認められなか
った。このフィルムの体積抵抗率を測定したところ、1
×10-4[Ω-cm]であり、導電性に優れていることを確認
した。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】(実施例2及び比較例1〜5) ポリイミドの組成、イミド化時間、導電性フィラーの種
類、添加量以外は全て実施例1の方法と同様に行ない、
表1の結果を得た。
【0032】
【表1】
【0033】実施例1並びに表1の実施例2のように、
酸末端シリコーン化合物が酸成分のうちモル数の割合で
0.3以上、APBがアミン成分のうちモル数の割合で
0.8以上であり、酸無水物とジアミンのモル比が0.8
〜1.2の範囲にあり、イミド化率が80%以上のポリイミ
ドを用いて、導電性フィラーを樹脂に対して50〜900wt
%の割合で均一分散させフィルム化したものは、250℃
以下の比較的低い温度で、しかも5kgf/cm2以下という比
較的低い圧力で、10秒間という短時間の熱圧着条件で強
固な接着強度が得られ、さらに260℃という高温におい
ても0.5kgf以上の接着強度を有していた。また得られた
接着フィルムの体積抵抗率で全て1×10-3[Ω-cm]以下
であり、良好な導電性を有していた。
【0034】一方、比較例1のように酸末端シリコーン
化合物が酸成分のうちモル比で0.3未満であるか、A
PBがアミン成分のうちモル比で0.8未満であると、
250℃、5kgf/cm2、10秒の熱圧着条件では充分な接着強
度が得られなかった。比較例2のように導電性フィラー
の添加量が樹脂分に対して50wt%未満になると充分な導
電性が得られなかった。また逆に比較例3のように、フ
ィラーの添加量が900wt%を越えると、接着成分である
樹脂の相対量が減少し、充分な接着強度が得られなかっ
た。比較例4のように、酸二無水物とジアミンとの反応
の当量比が一方に極端にずれると、樹脂の分子量が上が
らず、充分な接着強度が得られなかった。比較例5のよ
うにイミド化率が80%未満であると、熱圧着後のフィル
ム面にボイドが発生してしまうため、充分な接着強度が
得られなかった。以上のように本発明の条件以外では良
好な結果を得ることができなかった。
【0035】
【発明の効果】本発明の熱圧着可能なフィルム状接着剤
は、銅、シリコンなどの金属、セラミックスへの接着性
に優れており、室温だけでなく、260℃のような半田溶
融温度でも充分な接着強度を有する耐熱性に優れたもの
である。また接着層は充分な導電性を有していた。しか
も従来にない、低温、低圧、短時間で熱圧着できる量産
性の点においても有利な導電性フィルム状接着剤を得る
ことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特表 昭59−501215(JP,A) 特開 昭63−234031(JP,A) 特開 昭61−143477(JP,A) 特開 昭62−48784(JP,A) 特開 昭59−64685(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(1)又は(2)で表される酸末端シ
    リコーン化合物Aモル及び他の酸二無水物成分として、
    4,4'-オキシジフタル酸二無水物又は3,3',4,4'-ベンゾ
    フェノンテトラカルボン酸二無水物Bモルからなる酸成
    (但し、A/(A+B)≧0.3)と、1,3-ビス(3-
    アミノフェノキシ)ベンゼンCモル及び他のジアミン成
    として、2,4-ジアミノトルエンDモルからなるアミン
    成分(但し、C/(C+D)≧0.8)とを、(A+
    B)/(C+D)が0.8〜1.2の範囲で反応させ、少なく
    とも80%以上がイミド化されているポリイミドと、ポリ
    イミドに対して50〜900wt%の導電性フィラーとからな
    る熱圧着可能な導電性フィルム状接着剤。 【化1】
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