JP2732958B2 - コラーゲン代謝賦活剤 - Google Patents

コラーゲン代謝賦活剤

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアスコルビン酸又はその
誘導体と、コラゲナーゼ産生促進物質を含有することを
特徴とするコラーゲン代謝賦活剤に係り、更に詳しく
は、コラーゲンの分解を亢進させるとともに、コラーゲ
ンの合成を刺激することによって、コラーゲンの代謝回
転を高めることの出来るコラーゲン代謝賦活剤に関す
る。
【0002】
【従来の技術】通常の蛋白質の代謝回転に比べ、コラー
ゲンの代謝回転は非常に遅く、生理的条件に於いても、
老化に伴ってコラーゲンの代謝回転がさらに低下してゆ
くことが知られている。コラーゲンの代謝回転はコラー
ゲンの分解速度と合成速度により決まるが、この様な老
化に伴う代謝回転の低下はコラーゲンの架橋構造(老化
架橋)の増加につながり、例えば、皮膚の硬化やしわの
形成に関わっている。難分解・難抽出性の固いコラーゲ
ンが増加することにより、細胞の足場として増殖・分化
・移動に関与するコラーゲンの機能が損なわれ、細胞活
性の低下を来し、さらにコラーゲンの代謝回転が低下す
るという悪循環に陥ると考えられている(現代化学、12
月号、36頁、1990年参照)。
【0003】この様な老化に伴うコラーゲン代謝回転の
低下を食い止めるためには、コラーゲン分解の律速酵素
であるコラゲナーゼを増強する方法が考えられる。即
ち、コラーゲンの分解を促すことにより老化架橋の形成
を阻止し、かつコラーゲン分解の結果として合成の刺激
を促す方法である。
【0004】コラゲナーゼは、結合組織中の間質型コラ
ーゲン(I型、II型、およびIII型コラーゲン)を
分解する際の律速酵素であり、コラーゲンの代謝に重要
な役割を果たしている。コラゲナーゼは、前駆体である
プロコラゲナーゼとして細胞より分泌され、生体内では
その後プラスミンやストロムライシン等のタンパク分解
酵素によってコラゲナーゼに活性化される(Biochemical
Journal、166 巻、21頁、1977年および Proceedings o
f the National Academy of Sciences of theU.S.A.、8
6巻、2632頁、1989年参照)と考えられているが、プロ
コラゲナーゼは一般的に得ることが困難で、充分に研究
が進んでいるとは言えず、その産生制御や活性化機構等
まだ未知の点が多い。
【0005】プロコラゲナーゼの産生を促進する物質に
ついては、既に本発明者らにより、例えば、エタノール
アミン誘導体(特願平2−97071、特願平2−12
7390および特願平2−212931)、セリン誘導
体(特願平2−99579および特願平2−18676
3)、絹部分水解物(特願平3−59752)などの低
分子物質が見出されている。
【0006】一方、コラーゲン,特に結合組織内で主た
るコラーゲンであるI型コラーゲンの合成あるいは分泌
の亢進は、線維芽細胞を用いた実験により、TGF−
β、アスコルビン酸およびその誘導体、エストロジェ
ン、テストステロンおよびインシュリンなどで達成でき
ることが知られている(細胞外マトリクスのバイオサイ
エンスとバイオテクノロジー、165 頁、株式会社アイピ
ーシー、1990年参照)。
【0007】ところで、例えばTGF−βやエストロジ
ェンの場合は、コラーゲンの合成を促進し、しかもコラ
ゲナーゼの分泌を抑制する為、コラーゲンの代謝賦活と
いうよりはむしろコラーゲンの蓄積を促進する物質であ
る。また、インターロイキン−1は、コラゲナーゼの分
泌を促進すると同時に、コラーゲンの合成を抑制する
為、この場合、コラーゲンの代謝賦活というよりはむし
ろコラーゲンの一方的な減少を促すと考えられる。ま
た、グルココルチコイドやレチノイン酸は、コラーゲン
とコラゲナーゼの分泌をともに抑制する物質である(細
胞マトリクスのバイオサイエンスとバイオテクノロジ
ー,165頁,株式会社アイピーシー,1990年参
照)。
【0008】つまり、これまでは、コラーゲンの合成又
は分解の一方のみを促す物質,コラーゲンの合成を促進
しかつ分解をも抑制する物質,逆にコラーゲンの分解を
促進しかつ合成をも抑制する物質,あるいはコラーゲン
とコラゲナーゼを同時に抑制する物質(コラーゲン代謝
を抑制するもの)はあったが、本発明の如く、コラーゲ
ンの合成と分解と言う相反する作用を同時に促し、より
積極的にコラーゲンの代謝を促進しようという試みは、
全くされていなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、かかる
事情に鑑み鋭意研究を行った結果、驚くべきことに、プ
ロコラゲナーゼの産生を促進する物質と、コラーゲンの
合成を促進するアスコルビン酸又はその誘導体とが、互
いの作用を妨げることなく働く事を見いだし本発明を完
成したものであって、その目的とするところは、プロコ
ラゲナーゼの産生を促進し、コラーゲンの分解を促すこ
とにより、老化架橋の形成を阻止し、コラーゲンの代謝
回転を高めるコラーゲン代謝賦活剤を提供するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述の目的は、アスコル
ビン酸又はその誘導体と、コラゲナーゼ産生促進物質
含有することを特徴とするコラーゲン代謝賦活剤,又
は、分子量が500以下の絹繊維の硫酸加水分解物とア
スコルビン酸あるいはその誘導体を含有することを特徴
とするコラーゲン代謝賦活剤により達成される。
【0011】本発明に用いられるコラゲナーゼ産生促進
物質としては、プロコラゲナーゼ産生促進物質として一
般に知られているもの,例えば、絹部分水解物などを用
いることができ、中でも、分子量が500以下の絹繊維
の硫酸加水分解物等の低分子物質が特に好ましいものと
して挙げられる。
【0012】絹部分水解物、特に、可溶化した水溶性絹
ペプチドは皮膚化粧料等に用いられる公知物質であり、
例えばその製造法として特公昭58−17763号公報
(分子量分布;1500〜50000)、特公昭59−
31520号公報(平均重合度;2〜20)、特公昭6
0−41043号公報(分子量分布;200〜400)
等が知られている。
【0013】絹繊維の硫酸加水分解物としては、精練絹
繊維に40〜60容量%硫酸を直接添加し、60℃で1
〜48時間処理する(特公昭60−41043号公報)
か、或いは絹繊維を塩化カルシウム等により予め可溶化
フィブロイン溶液とした後、硫酸を添加(特公昭59−
31520号公報)することにより得た加水分解物等が
使用でき、プロコラゲナーゼの産生促進活性をもつの
は、分子量500以下の低分子物質である。
【0014】
【0015】本発明に用いられるアスコルビン酸および
その誘導体としては、アスコルビン酸とその塩、アスコ
ルビン酸りん酸エステルおよび硫酸エステルとその塩、
ステアリン酸エステル、ジパルミチン酸エステルおよび
モノパルミチン酸エステルなどが挙げられる。
【0016】本発明のコラーゲン代謝賦活剤を、その使
用目的に応じて、通常用いられる公知の成分に配合する
ことによって、液剤,固形剤,半固形剤等の各種剤形に
調製することが可能で、好ましい組成物として軟膏、ゲ
ル、クリーム、スプレー剤、貼付剤、ローション等が挙
げられる。
【0017】その例として、本発明のコラーゲン代謝賦
活剤を、ワセリン等の炭化水素、ステアリルアルコール
等の高級アルコール、ミリスチン酸イソプロピル等の高
級脂肪酸低級アルキルエステル、ラノリン等の動物性油
脂、グリセリン等の多価アルコール、グリセリン脂肪酸
エステル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等
の界面活性剤、無機塩、蝋、樹脂、水および要すればパ
ラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル等
の防腐剤に混合することによって、化粧品や医薬品を製
造することができる。
【0018】その際のコラーゲン代謝賦活剤の添加量は
剤形により異なるが、プロコラゲナーゼ産生促進物質で
ある絹繊維の硫酸加水分解物を用いる場合は、絹繊維と
して0. 5〜4重量%含むコラーゲン代謝賦活剤を、適
用する組成物全量を基準として通常0. 1〜10重量
%、好ましくは1〜5重量%添加することが望ましい。
【0019】同時に用いるアスコルビン酸およびその誘
導体は、適用する組成物全量を基準として通常0. 01
〜10重量%、好ましくは0. 1〜3重量%含有するこ
とが望ましい。
【0020】
【発明の効果】本発明のコラーゲン代謝賦活剤をヒト皮
膚線維芽細胞の培養系に添加すると、プロコラゲナーゼ
の産生が促進されると共に、同時にコラーゲン産生量を
増加させることができる(後記試験例参照)。従って、
本発明のコラーゲン代謝賦活剤は、線維芽細胞に作用
し、コラゲナーゼ活性を増強することにより低下したコ
ラーゲンの分解を促すとともに、コラーゲンの合成・分
泌を亢進して、コラーゲンの代謝回転を高めることがで
きる。
【0021】
【実施例】実施例1〜3 絹晒ノイル10gを40容量%硫酸50mlに浸積し、
60℃で12時間加熱した後、200mlの冷水を加え
1夜室温で放置した。次いで、10N水酸化ナトリウム
溶液を徐々に加えて中和した後、濾過して上清液330
ml(3重量%相当のフィブロインを含む)の絹部分水
解物溶液を得た。本水解物溶液に、L−アスコルビン酸
りん酸エステルマグネシウム塩水和物(和光純薬工業株
式会社製、20〜29重量%の水分を含む)を加え、そ
れぞれ終濃度1.2,2.0および4.0mg/mlと
した3種のコラーゲン代謝賦活剤を得た(実施例1〜
3)。
【0022】(試験例)正常ヒト線維芽細胞株〔白人女
性の皮膚より採取されたDetroit-551 (ATCC CCL 110)〕
を10容量%ウシ胎仔血清(以下FBSと略記)を含む
MEM培地にて1x105 個/mlに調整し、2枚の2
4穴プレートにそれぞれ0. 4mlずつ播種(4x10
4 個/穴)して、5%炭酸ガス、飽和水蒸気下、37℃
で培養した。
【0023】尚、MEM培地は、大日本製薬社製最少必
須培地10−101に、それぞれ終濃度0. 1重量%ラ
クトアルブミン酵素水解物(シグマ社製)、1容量%非
必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム(以上いず
れも大日本製薬社製)、0.12重量%炭酸水素ナトリ
ウムおよび50mg/lストレプトマイシンを添加して
調製した。
【0024】24時間後培養液を吸引除去し、終濃度
0. 6容量%FBSを添加したMEMで細胞を2回洗浄
した後、ポアーサイズが0. 2μmのニトロセルロース
膜(アドバンテック東洋製、DISMIC-25 )で濾過滅菌し
た実施例1〜3の3種のコラーゲン代謝賦活剤を終濃度
2.5容量%添加した同培地に交換した。
【0025】なお、比較例として培地のみの群(比較例
1)および絹部分水解物のみ終濃度2.5容量%含む培
地群(比較例2)を設け(全てn=4/プレート)、同
プレートを2枚作製して、1枚をコラーゲン産生量の測
定に、残りの1枚をプロコラゲナーゼ産生量の測定に用
いた。
【0026】2日間同様に培養後、1枚のプレートより
培養上清を得、プロコラゲナーゼ産生量の測定に用い
た。他の1枚には、β−アミノプロピオニトリルを終濃
度50μg/ml、トリチウム−L−プロリンを最終1
μCi/ml添加して、さらに24時間培養した。
【0027】本発明に於いて用いられる、絹繊維の硫酸
加水分解物のプロコラゲナーゼ産生促進活性を調べるの
に先立って、培養上清中にプロコラゲナーゼと同時に産
生されている、コラゲナーゼインヒビター(蛋白質)の
除去を行う。
【0028】コラゲナーゼインヒビターの除去: 得ら
れた培養上清250μlに10mMトリス塩酸緩衝液
〔4℃でpH7.8に調整、1mM塩化カルシウム、0.
05容量%Brij-35(ICI社製ポリオキシエチレン(23)
ラウリルエーテル)を含む〕を1.75ml加え、同緩
衝液で平衡化した CM-セファロースCL-6B TM(ファルマ
シア社製、ベッド容量0.5ml)に供した。
【0029】次に、125mM食塩を含む同緩衝液0.
5mlにてインヒビターを除去(計4回、総量2ml)
し、500mM食塩を含む同緩衝液0.5mlにてプロ
コラゲナーゼを回収(計4回、総量2ml)した。
【0030】プロコラゲナーゼ産生量の定量: 本実験
で用いた細胞では、産生されるコラゲナーゼはそのまま
では活性をもたないプロコラゲナーゼとして回収される
ので、プロコラゲナーゼ産生量は、トリプシンで活性化
して得られるコラゲナーゼ活性として定量した。トリプ
シンによる活性化法、およびフルオレッセインイソチオ
シアネートで標識されたI型コラーゲン(コスモバイオ
社製)を基質としたコラゲナーゼ活性の測定法は、永井
らの方法(JapaneseJournal of Inflamation、4巻、123
頁、1984年参照)に準じた。
【0031】なお1単位は、35℃で1分間に1μgの
I型コラーゲンを分解する酵素量を示す。
【0032】コラーゲン産生量の定量:コラーゲンの産
生量はβ−アミノプロピオニトリルを終濃度50μg/
ml,トリチウム−L−プロリンを最終1μCi/ml
添加して、更に24時間培養した培養液より、ペプシン
に耐性かつ食塩濃度依存的溶解度によって分画されたコ
ラーゲン画分に取り込まれた放射活性で測定した。ペプ
シン処理及び食塩濃度によるコラーゲンの分画法は、W
ebsterらの方法(Analytical Biochemistry ,2
20頁,1979年参照)に準じた。
【0033】得られた結果を表1に示した。
【表1】 平均値 ± SD(n=4) *培養時の終濃度として表示: 絹水解物;絹部分水解物、重量%Asc-P ;アスコルビン
酸りん酸エステルマグネシウム塩(20〜29重量%の
水分を含有),μg/ml
【0034】絹部分水解物(終濃度2.5%)はAsc-P
の存在の有無によらずプロコラゲナーゼの産生量を増加
させ(コラゲナーゼ活性を発現し)、その条件下で、As
c-Pは用量依存的にコラーゲン産生を促進することが分
かった。
【0035】この結果、本発明のコラーゲン代謝賦活剤
は、コラーゲン分解を促し、かつコラーゲン合成・分泌
を促進して、コラーゲンの代謝回転を高める作用を有す
る。
【0036】以下に本発明のコラーゲン代謝賦活剤を応
用した組成物の処方例を示す。
【0037】処方例1−軟膏実施例3のコラーゲン代謝
賦活剤3gと下記親水性成分とを、湯浴で80℃に加温
して混合し、これを、80℃に加温した下記の親油性成
分混合物に攪拌しながら徐々に加えた。次に、ホモジナ
イザー(TOKUSYUKIKA KOGYO 製)で2分半激しく攪拌(2
500rpm) して各成分を充分乳化分散させた後、攪拌しな
がら徐々に冷却し、100g中に3重量%のコラーゲン
代謝賦活剤を含む軟膏を得た。
【0038】 「親水性成分」 (g) パラオキシ安息香酸メチル 0.1 プロピレングリコール 6.7 精製水 41.1
【0039】 「親油性成分」 スクワラン 4.7 白色ワセリン 24.0 ステアリルアルコール 8.7 ミリスチン酸イソプロピル 6.0 モノステアリン酸ポリエチレングリコール (商品名NIKKOL MYS-45 、日本サーファクタント工業(株)製) 1.3 ポリエチレンアルキルエーテルリン酸 (商品名NIKKOL DDP-2、日本サーファクタント工業(株)製) 2.3 モノステアリン酸グリセリン 2.0 パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
【0040】 処方例2−ローション 重量% 実施例3のコラーゲン代謝賦活剤 1.0 エタノール 10.0 乳酸 0.3 クエン酸ナトリウム 0.1 グリセリン 2.0 防腐剤、香料および界面活性剤 適量 精製水 残量 ──────────────────────────────── 100%

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アスコルビン酸又はその誘導体と、コラ
    ゲナーゼ産生促進物質を含有することを特徴とするコラ
    ーゲン代謝賦活剤。
  2. 【請求項2】 コラゲナーゼ産生促進物が、分子量50
    0以下の絹繊維の硫酸加水分解物である請求項1記載の
    コラーゲン代謝賦活剤。
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