JP2731444B2 - アルミニウム又はアルミニウム合金とステンレス鋼との接合方法 - Google Patents

アルミニウム又はアルミニウム合金とステンレス鋼との接合方法

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JP2731444B2 JP3222390A JP3222390A JP2731444B2 JP 2731444 B2 JP2731444 B2 JP 2731444B2 JP 3222390 A JP3222390 A JP 3222390A JP 3222390 A JP3222390 A JP 3222390A JP 2731444 B2 JP2731444 B2 JP 2731444B2
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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はアルミニウム(Al)又はアルミニウム合金
(以下、Al材という)とステンレス鋼とをろう付けによ
り接合してその複合材を得るAl材とステンレス鋼との接
合方法に関する。
[従来の技術] Al材とステンレス鋼との複合材は、Al材が有する軽量
性、高熱伝導率、耐蝕性及び良加工性という特長と、ス
テンレス鋼が有する極めて優れた耐蝕性という特長との
双方を兼ね備えており、電磁調理器用等の器物、車輌用
及び船舶用部品、電気部品、熱交換器用部品、接点材料
又は厨房用品としてその利用分野が拡大されつつある。
このようなAl材とステンレス鋼とを接合する技術とし
て、従来、両者を重ね合わせた状態で圧延する圧延クラ
ッド法がある。しかしながら、圧延クラッド材は製造段
階で発生するスクラップ材に経済的価値がないと共に、
部分的な複合化ができない等の欠点を有する。
また、Al材とステンレス鋼とを接合する他の技術とし
て、Al材とステンレス鋼とをろう付けにより接合する方
法がある。この場合に、Al材とステンレス鋼とを直接ろ
う付けした場合は、その界面にて脆弱な金属間化合物が
生成しやすいため、このような直接的なろう付けにより
高接合強度を得ることは困難である。一方、ステンレス
鋼にスズ又は銀等を被着して前処理した後、真空ろう付
けする方法(特開昭60-133971号)もあるが、この方法
においては、圧延クラッド材と同等の十分な接合強度を
得ることができないという難点がある。また、インサー
ト材としてTi箔を使用した接合方法(軽金属第37巻第6
号第413乃至418頁)もあるが、この方法はTiとステンレ
ス鋼との接合と、TiとAlとの接合とを別々の熱処理工程
により行なうから、製造方法が煩雑であるという欠点を
有する。更に、この場合、Tiとステンレス鋼との接合の
ために、850℃という高温に加熱する必要があるので、
母材であるステンレス鋼材の耐蝕性を劣化させてしまう
という欠点がある。
そこで、近時、ステンレス鋼材にTi又はTiNからなる
イオンプレーティング層を設け、更に、Al材との間にAl
ブレージング材を介在させてAl材とステンレス鋼材とを
ろう付接合する方法が提案されている(特開平1-143788
号)。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、上述したTi又はTiNからなるイオンプ
レーティング層を設けたステンレス鋼材とAl材とをAlブ
レージング材によりろう付接合する方法においては、イ
オンプレーティング層が十分な厚さを有していない場
合、又は大型部材を接合するためにろう付け時間が長く
なるような場合、このろう付け工程においてAl-Ti金属
間化合物が生成してイオンプレーティング層が局部的に
消失してしまうことがある。そうすると、Al材とステン
レス鋼材とが接触してその接合界面に脆弱な金属間化合
物が生成されるため、Al材とステンレス鋼材との間の接
合強度が低下してしまうという問題点がある。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであっ
て、接合界面に脆弱な金属間化合物が生成することがな
く、極めて高い接合強度が得られるアルミニウム又はア
ルミニウム合金とステンレス鋼との接合方法を提供する
ことを目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明に係るアルミニウム又はアルミニウム合金とス
テンレス鋼との接合方法は、アルミニウム又はアルミニ
ウム合金からなる第1の被接合材と、ステンレス鋼から
なる第2の被接合材とをろう付けにより接合する方法に
おいて、前記第2の被接合材の被接合面にPVD法により
膜厚が1μm以上のチタン薄膜を形成する工程と、前記
チタン薄膜上にろう材を介して前記第1の被接合材を重
ね合わせ真空又は不活性ガス中で加熱することにより前
記ろう材を溶融させて前記第1及び第2の被接合材を接
合する工程とを有し、前記ろう材の溶融保持時間Y
(秒)及び前記チタン薄膜の膜厚X(μm)が下記不等
式を満足することを特徴とする。
Y≦(1.3X2−2.6X+5.0)×102 [作用] 本願発明者等は、チタン薄膜を介してアルミニウム又
はアルミニウム合金とステンレス鋼材とを接合する方法
について種々研究を重ねた。その結果、チタン薄膜の膜
厚と、ろう材を溶融させる加熱温度での保持時間、即ち
ろう付け時間とを相互に関連づけて規定される範囲内に
することにより、Al材とステンレス鋼との間に高い接合
強度が得られることを見い出した。本発明はこのような
研究結果に基づいてなされたものである。
即ち、本発明においては、先ず、ステンレス鋼からな
る第2の被接合材の被接合面にチタン薄膜をPVD法によ
り形成する。この場合、チタン薄膜をPVD法により形成
するので、母材のステンレス鋼が高温に曝されることは
なく、その耐蝕性能が劣化したり、強度が低下するとい
う不都合は生じない。
次に、前記チタン薄膜との間にろう材を挟んでアルミ
ニウム又はアルミニウム合金(Al材)からなる第1の被
接合材を重ね合わせ、真空又は不活性ガス雰囲気中で加
熱することにより前記ろう材を溶融させて前記第1及び
第2の被接合材を接合する。このため、Al材とステンレ
ス鋼との間にはチタン薄膜が介在するので、両者は直接
接触せず、接合界面にて脆弱な金属間化合物が生成する
ことがない。
しかしながら、このろう付け工程において、チタン被
膜の膜厚が小さい場合、及びろう付け時間が長い場合
は、ろう付け工程における加熱により前記ろう材又は前
記第2の被接合材中のAlとTiとが反応してAl-Ti金属間
化合物が生成し、前記チタン薄膜の膜厚が減少して前記
チタン薄膜が局部的に消失することがある。そうする
と、第1及び第2の被接合材が直接接触し、接合界面に
て脆弱な金属間化合物が生成してしまう。
このため、本発明においては、前記チタン薄膜の消失
を防止するために、チタン被膜の薄厚を1μm以上にす
る。即ち、チタン薄膜の膜厚が1μm未満の場合は、必
要最小限の溶融保持時間でろう付け処理を行なっても、
チタン薄膜が局部的に消失してしまうので、チタン薄膜
の膜厚は1μm以上に限定する。
また、前記ろう材の溶融保持時間Y(秒)と前記チタ
ン薄膜の膜厚X(μm)との関係を下記式の不等式に
て示す範囲内に限定する。
Y≦(1.3X2−2.6X+5.0)×102 … この式は本願発明者等の実験結果に基づいて求めら
れたものである。
第1図はろう材の溶融保持時間Yとチタン薄膜の膜厚
Xとの関係を示すグラフ図であり、横軸はチタン薄膜の
膜厚を示し、縦軸はろう材の溶融保持時間を示す。
この第1図において、X≧1であって、ろう材の溶融
保持時間Y及びチタン薄膜の膜厚Xが上記式を満たす
範囲にある場合(図中ハッチング部)には、ろう付工程
にてチタン薄膜が消失しない。このため、第1及び第2
の被接合材は直接接触せず、接合界面にて脆弱な金属間
化合物が生成することがない。例えば、第1及び第2の
被接合材の大きさ又は形状等に起因してろう付け時間が
長くなる場合、即ちろう材の溶融保持時間Yが長くなる
場合であっても、チタン薄膜の膜厚Xを上記式に前記
Yを代入して得られる最小値以上の厚く設定すると、ろ
う付工程におけるチタン薄膜の消失が回避される。即
ち、チタン薄膜の膜厚Xを保持時間Yとの関連で第1図
のハッチング部内に設定すると、ろう付け工程において
Al-Ti金属間化合物が成長してチタン薄膜の膜厚が減少
しても、チタン薄膜は十分に厚く形成されているため消
失することがない。
従って、本発明においては、チタン薄膜の膜厚Xを1
μm以上にすると共に、前記式に基いてチタン薄膜の
膜厚に応じてろう付け時間を制限し、又はろう付け時間
に応じてチタン薄膜の膜厚を規定する。これにより、チ
タン薄膜の消失を防止することができる。このため、第
1及び第2の被接合材の接合界面に脆弱な金属間化合物
が生成することがない。これにより、高い接合強度を有
する複合材を安定して得ることができる。
なお、ろう材としては、Al-Si系合金又はAl-Si-Mg系
合金等を使用することができる。また、このろう材は、
Al材と予め接合されて一体となったブレージングシート
として使用すると、接合工程が簡略化される。
[実施例] 次に、本発明の実施例に係るAl材とステンレス鋼との
接合方法について添付の図面を参照して説明する。
第2図はAl材の両面にステンレス鋼板を配設したAl材
とステンレス鋼との複合材を示す断面図である。
ステンレス鋼板1a,1bの被接合面には、夫々膜厚が1
μm以上のTi薄膜2a,2bがPVD(Physical Vapor Deposit
ion;物理気相蒸着)法により被着されている。このよう
なPVD法として、具体的には、真空蒸着、スパッタリン
グ又はイオンプレーティングがある。
一方、Al材3の表面及び裏面には夫々ろう材4a,4bが
被着されている。このろう材4a,4bとしてはAl-Si系合金
又はAl-Si-Mg系合金を使用することができる。また、Al
材3及びろう材4a,4bは相互に別体のものを使用するよ
りも、ブレージングシート5として市販されているもの
を使用した法が、Al材3とステンレス鋼板1a,1bとの間
の接合工程を簡略化できるため好ましい。
而して、Al材3の表裏面にろう材4a,4bが被着された
ブレージングシート5を、Ti薄膜2a,2bが被着されたス
テンレス鋼板1a,1b間で、そのTi薄膜2a,2bを夫々ろう材
4a,4bに接触させて挟み込む。そして、一対のステンレ
ス鋼板1a,1b間に一定の加圧力を印加しつつ、これらの
積層体を真空中又は不活性ガス中にて所定のろう付け温
度に所定時間加熱する。これにより、ろう材4a,4bが溶
融し、所定時間経過後冷却すると、ステンレス鋼板1a,1
bとAl材3とがろう付けされる。この場合、ろう付け温
度におけるろう材4a,4bの溶融保持時間は、本願発明に
て規定するように、Ti薄膜2a,2bの膜厚に対応して設定
する。また、ろう材4a,4bの溶融保持時間に対応させてT
i薄膜2a,2bの膜厚を設定しても良い。
このように本実施例方法においては、Al材3とステン
レス鋼板1a,1bとの間に夫々Ti薄膜2a,2bを介在させてい
るから、Al材3とステンレス鋼板1a,1bとが直接接触す
ることがない。また、Ti薄膜2a,2bの膜厚及びろう材4a,
4bの溶融保持時間を相互に関連づけて限定することによ
り、ろう付け工程においてTi薄膜2a,2bが消失すること
を防止できる。従って、Al材3とステンレス鋼1a,1bと
の界面で脆弱な金属間化合物が生成することがないの
で、Al材3とステンレス鋼板1a,1bとの間には十分に高
い接合強度が得られる。
なお、上述のろう付け工程は、真空又は不活性ガス雰
囲気中で行なうが、ろう付性を勘案すると、不活性ガス
雰囲気よりも真空中で前述の積層体を加熱した方が好ま
しい。
一方、Ti薄膜2a,2bはPVD法によりステンレス鋼板1a,1
bの被接合面に被着されるから、この被着工程に際して
母材のステンレス鋼板1a,1bを高温に曝すこともなく、
その母材性能を損なうことがない。従って、ステンレス
鋼のもつ高耐蝕性という優れた特性は十分に保持され
る。
また、Ti薄膜2a,2bは上記実施例のようにステンレス
鋼板1a,1bの被接合面に被着するのであって、Al材3の
表面及び裏面に被着するのではない。ステンレス鋼とAl
材とをろう付けする場合、母材であるステンレス鋼及び
Al材よりも融点が低いろう材を使用する必要があり、ろ
う材4a,4bとしては、通常、前述の如くAl-Si系合金又は
Al-Si-Mg系合金を使用する。このため、Ti薄膜2a,2bをA
l材3の表裏面に形成すると、Alを含有するろう材4a,4b
がステンレス鋼板1a,1bに接触してしまうから、ステン
レス鋼板1a,1bとろう材4a,4bとの界面で金属間化合物が
生成してしまう。一方、ろう材4a,4bを使用しないで、
ステンレス鋼板1a,1bとAl材3とをTi薄膜2a,2bを間に挟
んで接合しようとすると、ろう付けではなく高温での拡
散接合により接合せざるを得ず、従来技術と同様に母材
のステンレス鋼の変質を招来してしまう。このような理
由で、シテンレス鋼板1a,1bにTi薄膜2a,2bをPVD法によ
り被着し、Ti薄膜2a,2bとAl材3との間をろう材4a,4bに
よりろう付けして接合することが必要である。
次に、本実施例方法において、PVD法により形成する
チタン薄膜の膜厚及びろう付け温度での保持時間を変化
させて、実際にステンレス鋼とAl材とを接合した結果に
ついて、その比較例と比較して説明する。下記第1表及
び第2表はステンレス鋼(SUS 304)とAl材(A 3003Al
合金)とを接合試験した場合の接合条件、ろう付け部の
引張試験結果及び金属間化合物の有無を示す。なお、こ
の第1表及び第2表における金属間化合物とは、接合界
面においてAl材の成分とステンレス鋼の成分とが反応し
て生成される脆弱な金属間化合物を示す。
また、第1表はろう材としてAl-Si-Mg系合金(BA 400
4)を使用した場合、第2表はろう材としてAl-Si系合金
(BA 4343)を使用した場合である。いずれの場合も、
前記Al材の表裏面にAl-Si-Mg系合金層又はAl-Si系合金
層をクラッドしたブレージングシートを用意した。更
に、ろう付け温度を620℃とし、このろう付けに際して
は、ろう材を0.02kgf/cm2又は5kgf/cm2の加圧力で加圧
した。
この第1表及び第2表から明らかなように、Ti薄膜の
膜厚及びろう付時間が本願発明にて規定する関係を満た
す実施例1乃至35の場合は、いずれも剪断強さが4kgf/m
m2以上と高く、接合強度が高い健全な接合部が得られ
た。また、ろう付時間が比較的長い場合には、これに対
応してTi薄膜が厚く形成してあるため、Ti薄膜が消失す
ることがなく、Al材とステンレス鋼との接合界面におい
て脆弱な金属間化合物が殆ど形成されなかった。
一方、Ti薄膜の膜厚及びろう付時間が本願発明にて設
定する関係を満たさない比較例1乃至12の場合は、いず
れも剪断強さが4kgf/mm2未満と低く、接合強度が低いも
のであった。特に、Ti薄膜の膜厚が1.0μmである比較
例1,2,7及び8においては、Al材とステンレス鋼とが完
全に接合していないため、引張試験によりその接合部で
剥離が生じてしまった。また、いずれの場合において
も、接合界面にて脆弱な金属間化合物が形成されてい
た。
[発明の効果] 以上説明したように本発明によれば、ステンレス鋼か
らなる第2の被接合材の表面にチタン薄膜をPVD法によ
り形成する工程と、Al又はAl合金からなる第1の被接合
材と前記チタン薄膜とをろう材を介して重ね合わせ真空
又は不活性ガス雰囲気中で溶融させて第1及び第2の被
接合材を接合する工程とを有し、前記チタン薄膜の膜厚
及び前記ろう材の溶融保持時間を相互に関連づけて限定
するから、前記チタン薄膜によりステンレス鋼とAl材と
の接合界面に脆弱な金属間化合物が生成されることを確
実に防止でき、高い接合強度を有する複合体を安定して
得ることができる。
従って、熱交換器又は電磁調理器等の分野において、
ステンレス鋼とAl材との双方の優れた特徴を生かした高
品質の複合材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係るろう材の溶融保持時間とチタン薄
膜との関係を示すグラフ図、第2図は本発明の実施例に
係るAl材とステンレス鋼との複合材を示す断面図であ
る。 1a,1b;ステンレス鋼板、2a,2b;チタン薄膜、3;Al材、4
a,4b;ろう材、5;ブレージングシート

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミニウム又はアルミニウム合金からな
    る第1の被接合材と、ステンレス鋼からなる第2の被接
    合材とをろう付けにより接合する方法において、前記第
    2の被接合材の被接合面にPVD法により膜厚が1μm以
    上のチタン薄膜を形成する工程と、前記チタン薄膜上に
    ろう材を介して前記第1の被接合材を重ね合わせ真空又
    は不活性ガス中で加熱することにより前記ろう材を溶融
    させて前記第1及び第2の被接合材を接合する工程とを
    有し、前記ろう材の溶融保持時間Y(秒)及び前記チタ
    ン薄膜の膜厚X(μm)が下記不等式を満足することを
    特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金とステン
    レス鋼との接合方法。 Y≦(1.3X2−2.6X+5.0)×102
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