JP2730941B2 - 窒化アルミニウム焼結体の製造方法 - Google Patents

窒化アルミニウム焼結体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は窒化アルミニウム粉末及び焼結助剤を含む
原材料を所定形状の生成形体に成形した後、加熱して焼
成する窒化アルミニウム焼結体の製造方法に関する。
〔従来の技術〕
一般に、窒化アルミニウム焼結体は電気絶縁性,熱伝
導性及び機械的強度等に優れた特性を有するため、電子
回路用基板として利用されている。このような窒化アル
ミニウム焼結体の製造方法としては、例えば、特公昭63
−46032号公報に開示されているように、窒化アルミニ
ウム粉末及び焼結助剤を含む原材料を所定形状の生成形
体に成形した後、1600〜1800℃で常圧焼結したり、前記
原材料をホットプレス法によって焼成したりする方法が
ある。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところが、上記のホットプレス法では、多大な設備費
を要求されるばかりでなく、複雑な形状の焼結体の生成
が困難で、生産性も低いという問題がある。一方、上記
の常圧焼結法によって製造された焼結体には、粒界に形
成された異物層に起因すると推察されるが、その異物層
による局部的な灰色のシミや縞模様が発生し易く、それ
らの外観上の欠陥を有する焼結体は製品から除外され
る。すなわち、前記外観上の欠点を有する原因は焼結体
内部の構造が不均一であることを意味し、その使用にお
いて悪影響を及ぼす恐れがあるからである。そのため、
生産性が低くなり、原材料も無駄に消費されるという問
題があった。
又、これら外観上の欠陥は材料の性能たとえば電子回
路基板としての熱伝導率、あるいは導体回路との密着性
等に影響をもたらし均一な性能を得られないことがあっ
た。
この発明は上記の事情を考慮してなされたものであっ
て、その目的は局部的な灰色のシミや縞模様等の発生を
未然に防止して、色調と性能すなわち構造の均一な窒化
アルミニウム焼結体を、ホットプレス法を用いることな
く常圧で確実かつ安価に製造することが可能な窒化アル
ミニウム焼結体の製造方法を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記の目的を達成するために、この発明では、窒化ア
ルミニウム粉末及び焼結助剤を含む原材料を生成形体を
成形した後、常圧焼結法で焼成する窒化アルミニウム焼
結体の製造方法において、前記生成形体の外側面に耐熱
性の多孔質体を接触させて焼成することによって、窒化
アルミニウム粒子の粒界に生成する異物をこの多孔質体
に吸収させるようにしている。
又、前記生成形体が薄板状に成形されている場合に
は、その表裏両面が前記多孔質体によって挟持される。
〔作用〕
窒化アルミニウム粉末及び焼結助剤を含む原材料を生
成形体に成形し、その生成形体の外側面に耐熱性の多孔
質体と接触させた状態で、その生成形体を加熱して焼成
する。すると、窒化アルミニウム粒子間における結晶粒
界には、焼結体の色調均一化を阻害する溶融状態の異物
が生成される。この異物は焼成過程で多孔質体に吸収さ
れ、焼成終了時には色調の均一な窒化アルミニウム焼結
体が生成される。
以下、本発明における窒化アルミニウム(以下AlNと
略す)焼結体の製造方法について説明する。
原材料は、100重量部のAlN粉末と、例えば酸化イット
リウム(Y2O3)に代表される希土類酸化物からなる適量
(0.1〜20重量部)の焼結助剤と、適量(1〜10重量
部)のアクリル樹脂等からなるバインダーとを含んでい
る。焼結助剤が前記所定量よりも過剰に存在すると、Al
N粒子の粒界には多量の異物が生成されて、多孔質体に
よる除去が不可能になり、前記所定量に満たないと、Al
N焼結体の強度低下を招く。又、バインダーが前記所定
量よりも過剰に存在すると、AlN焼結体の不純物濃度が
増加し、所定量に満たないと、生成形体の成形に支障を
来す。よって、焼結助剤及びバインダーの添加量は前記
各所定量内に維持することが望ましい。
上記の原材料を混合、乾燥させた後、所定形状、例え
ば薄板状の生成形体を得る。成形方法としてはプレス
法、ドクターブレード法、鋳込,押し出し法等種々の方
法を適用することができる。次に、この生成形体の表裏
両面に板状の耐熱性多孔質体を密着させて、それらを挟
持する。そして、前記多孔質体によって挟持された生成
形体を加熱容器に入れ、窒素雰囲気下で所定時間(0.1
〜10時間)にわたり、所定温度(1600〜2000℃)で常圧
焼成する。この焼成過程では、AlN粒子の結晶粒界に希
土類元素酸化物とAl2O3の共融物が存在しており、多孔
質体を接触させることなく冷却するとAlN粒子の結晶粒
界に、組成式 3Ln2O3・5Al2O3(Lnは希土類元素)で表されるガーネ
ット型構造の異物が析出すると共に、組成式 2Ln2O3・Al2O3(Lnは希土類元素)で表されるペロブ
スカイト型構造の異物が析出し、このペロブスカイト型
構造の異物が前述の色調及び性能を阻害する原因とな
る。
しかしながら、本発明の如く耐熱性多孔質体を生成形
体の表裏両面に密着させて挟持することにより、上記の
希土類元素の酸化物を多孔質体内へ拡散させ、AlN焼結
体に存在する量を減少させることができ、その結果、冷
却時に析出する異物はそのほとんどがガーネット型構造
になる。従って、焼成後のAlN焼結体の外側面には前記
異物に起因する局部的な灰色のシミや縞模様等が存在せ
ず、色調,性能の均一な白色の表面が形成される。又、
前記ペロブスカイト型構造の異物の生成が抑制されるこ
とにより、AlN焼結体の熱伝導性も向上する。
尚、上記の焼成温度が前記所定温度を越えると、AlN
焼結体におけるAlN粒子が成長しすぎて、強度低下を招
き、所定温度未満であると、粒界に液相が形成されず、
焼結が困難になる。よって焼成温度は上記の所定温度内
であることが望ましい。又、焼成時間が前記所定温度範
囲外であると、焼成が不十分になったり、熱エネルギー
を無駄に消費したりして、望ましくない。
一方、生成形体の外面を挟持する多孔質焼結体として
は、その成形材料として、各種のセラミックスを利用で
きるが、前記生成形体と同一成分のAlN焼結体であるこ
とが望ましく、助剤を含まない原材料を用い、ホットプ
レス法によって成形される。
なお、前記多孔質焼結体の平均気孔径は、0.1〜20μ
mの範囲であることが好ましい。その理由は平均気孔径
が0.1μmより小さいとAlNの焼結中に形成される異物を
十分に吸収することができず、一方20μmより大きいと
前記異物の吸収が不均一となり安定した吸収能力が得ら
れない。
さらに、多孔質焼結体の気孔率は、5%〜60%の範囲
であることが好ましい。その理由は、気孔率が5%より
低いと、実質的に前記異物を吸収できる気孔が少ないた
め吸収効果が小さく、又、気孔率が60%を越えると十分
強度のある均一な多孔質焼結体が得られにくい。又、前
記吸収効果の点から充分吸収可能な容積すなわち厚みの
あるものを使用することが望ましく、強度面も考慮する
と0.5mm以上が好ましい。
〔実施例〕
以下、この発明の実施例について説明する。
100重量部のAlN粉末(平均粒径1.3μm)に対し、5
重量部のY2O3粉末及び9重量部のアクリル樹脂製バイン
ダーを添加して、混合し、プレス成形により薄板状の生
成形体を得る。この生成形体の表裏両面を板状のAlN製
多孔質体によって挟持し、これらを温度1800℃,窒素雰
囲気及び常圧の条件下で、1時間加熱し、AlN焼結体を
得た。なお、使用したAlN製多孔質体は厚み2mmであり平
均気孔径8μm,気孔率50%のものである。この得られた
焼結体の表面には灰色のシミや縞模様が観察されず、色
調の均一な白色表面を有していた。熱伝導率は180W/mk,
密度は3.20g/cm3であった。又、走査型電子顕微鏡によ
ってAlN焼結体の表面を観察したところ、バインダーの
カーボンは存在しなかった。
〔発明の効果〕
以上詳述したように、この発明は局部的な灰色のシミ
や縞模様の発生を未然に防止して、色調の均一な窒化ア
ルミニウム焼結体を、ホットプレス法を用いることなく
常圧で確実かつ安価に製造することができるという優れ
た効果を発揮する。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】窒化アルミニウム粉末及び焼結助剤を含む
    原材料を生成形体に成形した後、常圧焼結法で焼成する
    窒化アルミニウム焼結体の製造方法において、 前記生成形体の外側面に耐熱性の多孔質体を接触させて
    焼成することによって、窒化アルミニウム粒子の粒界に
    生成する異物をこの多孔質体に吸収させることを特徴と
    する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
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