JP2727108B2 - レーザビーム走査用ポリゴンミラー - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明はレーザプリンタ等に用いられ、高速回転しな
がらレーザビームを反射して走査するガラス製のレーザ
ビーム走査用ポリゴンミラーに関する。

（従来の技術） レーザビーム走査用ポリゴンミラーには、アルミニウ
ム合金等の金属製のものと、ガラス製のものとがある。

レーザビーム走査用ポリゴンミラー１は、第６図に示
すように、その輪郭が多角形となるべく外周部にレーザ
ビームを反射する複数の反射面３が形成され、中心に嵌
合孔５が形成されており、ポリゴンミラー１はこの嵌合
孔５を介してモータに取り付けられる。

即ち、第７図に示すように、モータ７の回転軸に直結
された回転駆動軸９がポリゴンミラー１の嵌合孔５に嵌
挿され、嵌座11を介して例えばＥリング13等により回転
駆動軸９に押さえ付けられ、モータ７の回転でポリゴン
ミラー１が回転駆動軸９と一体に回転し、レーザビーム
15がポリゴンミラー１の反射面３で角度を変えながら反
射されて走査される。

従って、ポリゴンミラー１の側面17はモータ７へ取付
ける際基準となるため高精度の平面度が要求され、ポリ
ゴンミラー１の両側面17,17は回転モーメントを均一に
するため高精度の平行度が要求され、また、各反射面３
はレーザが直接反射する箇所であるため高精度の平面度
や隣接角、割出し角、面粗さ等が要求される。

そのため、金属製のポリゴンミラー１は生産性等の点
で優れているものの、種々の精度でガラス製の方がはる
かに優れているため、高精度が要求される場合にはガラ
ス製のポリゴンミラー１が用いられる。

（発明が解決しようとする課題） 一方、モータ７を高速で回転させると、ポリゴンミラ
ー１の嵌合孔５と回転駆動軸９との間に微小振動が発生
し、その細かい衝撃がポリゴンミラー１に加わり、従来
のガラス製のポリゴンミラー１は割れてしまい、高速回
転させることができない不具合があった。そして、高速
回転中に最大応力が生じるため、嵌合孔５の壁面に亀裂
が生じて破壊されるとの説が有力である。

従来のガラス製ポリゴンミラー１の場合、その嵌合孔
５の壁面はダイヤモンドホイール等で研削された研削加
工面である。

その研削加工面を顕微鏡で拡大してみると、第８図に
示すように表面が凹凸であって、その窪みには加工代を
除去する際に発生したガラスの微細な切粉20が入り込ん
でおり、また、加工時に発生した多数の微細なクラック
21が全面に存在している。

その結果、従来のガラス製のポリゴンミラー１は、例
えば、20000rpm以上の高速で回転させると、回転駆動軸
９との間の微小振動で嵌合孔５のクラック21が次第に成
長し、また、ガラスの微細な切粉20が楔的に作用し、ポ
リゴンミラー１自体が割れてしまうと考えられる。

高精度の像を高速で走査するにはポリゴンミラーを高
速回転する必要があるが、このようにガラス製のポリゴ
ンミラーを用いると回転数に限界があるため、レーザプ
リンタ等の機能向上を図る上でのネックになっていた。

本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本
発明の目的は、高速回転させても破損し難い耐久性に優
れたガラス製のレーザビーム走査用ポリゴンミラーを提
供することにある。

（課題を解決するための手段） 前記目的を達成するため、本発明に係るガラス製のレ
ーザビーム走査用ポリゴンミラーは、嵌合孔の壁面が微
細な凹凸が除去された仕上面で形成され、更に、この仕
上面には化学強化された強化層が形成されていることを
特徴とする。

（作用） 高速回転させガラス製ポリゴンミラーに微小振動が加
わった場合であっても、嵌合孔の壁面から微細な凹凸が
除去されているため切粉は存在しておらず、また、強化
層によりクラックの成長を阻止できるので、ガラス製ポ
リゴンミラーは割れにくくなる。

（実施例） 以下、本発明の好適一実施例を添付図面に従って説明
する。

第１図はガラス製ポリゴンミラーの平面図、第２図は
同・断面側面図、第３図は嵌合孔壁面の拡大断面図を示
す。

31は本発明に係るレーザビーム走査用のポリゴンミラ
ーで、ポリゴンミラー31は強度的に優れた硬いガラスを
素材としている。

ポリゴンミラー31はその輪郭が正六角形になるべく外
周部にレーザビームを反射する六つの反射面33が形成さ
れ、中心に嵌合孔35が形成されている。

ポリゴンミラー31の両側面37と各反射面33は高い精度
で研磨されており、化学強化は施されていない。特に、
反射面33は、レーザビームの入射角と反射角が寸分も狂
わないように鏡面仕上げにより滑らかな平面に仕上げら
れ、その表面に反射用のコーティングが施されている。

嵌合孔35の壁面39は内周面39Aとその両端の面取部39B
からなる。

嵌合孔35の壁面39、即ち内周面39Aとその両端の面取
部39Bは高い精度で完成寸法に研磨され、微細な凹凸が
除去された仕上面で形成され、その後、第３図に斜線で
示すように、化学強化された強化層41が形成されてい
る。

このように嵌合孔35の壁面39が平坦な仕上面で、この
仕上面に強化層41が形成されたポリゴンミラー31は例え
ば次のようにして製作される。

まず、第４図及び第５図に示すように、完成品である
ポリゴンミラー31よりも輪郭及び厚みが大きい環板状の
素材43を設ける。

次に、素材43の中心孔45を研削したのち、高い精度で
完成寸法に研磨し、内周面39Aとその両側の面取部39Bか
らなる嵌合孔壁面39を得る。

研磨は例えば、酸化セリウム砥粒や、酸化鉄砥粒、或
は酸化ジルコニウム砥粒等の研磨剤を用いて行なう。

研磨を施すことで、第３図に示すようにクラック21は
存在しているものの、表面の凹凸が除去され、ガラスの
切粉20が除去された仕上面が得られる。

次に、化学強化槽に入れ必要な時間化学強化を施し、
嵌合孔35の壁面39を含む素材43の全表面に強化層41を形
成する。強化層41の形成は、例えば、380℃〜440℃に加
熱された硝酸カリウム槽に数時間入れ、ガラス表面層中
のNaをＫに置換し、ガラス表面層中の組織を緻密化する
ことで行なう。

尚、化学強化槽への浸漬時、熱変形や置換による面粗
さ等が発生するが、回転駆動軸９と嵌合孔35の嵌合隙間
は５μｍ許容されているので、化学強化の際、嵌合孔35
の壁面39に生ずる熱変形や面粗さはポリゴンミラー31の
性能に何ら影響を与えない。

次に、素材43の外周部と両側面に荒摺、スムージン
グ、研磨加工を施し、外周部と両側面の強化層を除去し
て高い精度の反射面33と両側面37を得、反射面33に反射
用のコーティングを施し、本発明に係るガラス製ポリゴ
ンミラー31を得る。

本発明に係るガラス製ポリゴンミラー31によれば、高
速回転させ、微小振動が加わった場合であっても、強化
層41によりクラック21の成長を阻止でき、また、切粉20
も存在していないので、ポリゴンミラー31は割れにくく
なり、その耐久性を高めることができる。

尚、実施例では嵌合孔35の壁面39を研磨して仕上面を
形成した場合について説明したが、仕上面を形成する加
工方法は研磨に限らず任意で、例えば、精研削やスムー
ジング等の加工方法でもよく、要するに、微細な凹凸が
除去され、切粉20が除去された仕上面を得れればよい。

また、実施例ではクラック21が存在している嵌合孔壁
面39に強化層41を形成した場合について説明したが、研
磨加工等により嵌合孔壁面39からクラック21を除去した
のち強化層41を形成してもよく、クラック21を除去した
のち強化層41を形成すれば、ポリゴンミラー31の耐久性
を更に高めることができる。

（発明の効果） 以上の説明で明らかなように本発明によれば、高速回
転させても破損し難い耐久性に優れたガラス製のレーザ
ビーム走査用ポリゴンミラーを得ることができる。従っ
て、ガラス製のポリゴンミラーを用いて高精度の像を高
速で走査することが可能となり、レーザプリンタ等の性
能を大幅に向上させることが可能となる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るガラス製ポリゴンミラーの平面
図、第２図は同・断面側面図、第３図は嵌合孔壁面の拡
大断面図、第４図は素材の平面図、第５図は同・断面側
面図、第６図はポリゴンミラーの斜視図、第７図はポリ
ゴンミラーをモータに取付けた状態の断面側面図、第８
図は従来のガラス製ポリゴンミラーの嵌合孔壁面の拡大
断面図である。 尚、図中1,31はレーザビーム走査用ポリゴンミラー、3,
33は反射面、5,35は嵌合孔、７はモータ、９は回転駆動
軸、17,37は側面、21はクラック、39は嵌合孔の壁面、4
1は強化層である。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】全体形状が多角形をなすべく外周部にレー
   ザビームを反射する複数の反射面が形成され、中心に回
   転駆動軸が嵌合される嵌合孔が形成されたガラス製のレ
   ーザビーム走査用ポリゴンミラーであって、 前記嵌合孔の壁面は微細な凹凸が除去された仕上面で形
   成され、更に、この仕上面には化学強化された強化層が
   形成されている、 ことを特徴とするレーザビーム走査用ポリゴンミラー。