JP2722133B2 - 万年筆用ライティングユニット - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、万年筆用ライティングユニットに関する。
特に、ニブ、掴持部分、及びインク送給部を具え、前記
インク送給部が薄層状収集室を有し、前記インク送給部
の前記ニブに面する側が前記インク送給部の全長に亘っ
て延びる細管長手方向溝を有し、前記長手方向溝と繋が
る空気通路が半径方向外側に広がっている万年筆用ライ
ティングユニットに関する。

以下に説明されるタイプのライティングユニットを具
えた万年筆は市場において公知である。製造者側で充填
されボールで密封されたカートリッジは使用者がライテ
ィングユニットのピンに押込むと開放される。栓として
機能するボールは、カートリッジを突刺すときにカート
リッジの内部に押込まれる。以下に説明する万年筆が市
場に出回った後でも、その万年筆が新品であるときに
は、書き始めの際に非常に問題がある。一方、従来のラ
イティングユニット、すなわち、それに使用されるイン
ク送給システムでは、カートリッジが差し込まれてイン
クがニブに達し、インクが充填されて充分な機能を得る
のに要する全ての細管に達するまでに、数分かかってこ
の時間は非常に長い。

他方、カートリッジを差し込んだ後に、インクが漏れ
るという欠点がある。これは、インク送給部システムの
細管長手方向溝が、差し込まれた直後にインクで充填さ
れる間、すなわち、細管長手方向溝がニブにインクを供
給する間、インクの流れを規制するのに重要であり、流
体バルブとして名目上機能するコントロール通路がまだ
インクで充填されておらず、従って、カートリッジ内に
連続的に空気の流れを生じさせ、ニブに到達するインク
がコントロールされない状態になるためである。ニブか
らインクがぼた落ちするのは、特に、差し込まれた後
に、万年筆がデスクスタンドに差し込まれたり筆箱に置
かれたりする結果である。

現在までのところ、万年筆の主要製造業者は次のよう
にして前記問題を解決することを提案している。すなわ
ち、製造業者側でカートリッジを既に工場段階で万年筆
に装備し、書く準備がされた状態で万年筆を小売店に送
ることである。書き始めるまでの長い準備は、製造者が
カートリッジを万年筆に差し込んで遠心処理することで
短くすることができる。かくして、使用者はカートリッ
ジを差し込んで万年筆の書き始めまでの時間を短縮でき
るが、通常振動を伴う輸送中においては、特にインクが
漏れるという危険に曝される。

特に、空輪が行われるときには、気圧の変化及び温度
の変化はインク漏れの危険を招く。特に、インク送給部
が文字幅の太いものとして設計されている場合は、イン
ク及び空気の膨張が原因となって、この問題は顕著であ
る。これにより、かなりの損害が生じる。

最後に、現在公知のライティングユニットは、それが
文字幅の太いインク送給部に使用されるときには特に、
インク通路が大きいときにぼた落ち防止がほとんどなさ
れていない点において問題がある。

従って、本発明の目的は、第１に、カートリッジを差
し込んだ後にインクの漏れ、すなわち、漏出を防止して
準備を円滑にでき、第２に、圧力及び温度の変化によっ
てぼた落ちがかなり防止されるように、上述したタイプ
の万年筆用ライティングユニット、特に、文字幅の太い
インク送給部を具えたライティングユニットを設計し且
つさらに改良を加えることである。

本発明のライティングユニットは、請求項１の構成に
よって前記課題を解決している。

本発明では、第１に、カートリッジ差し込み後におけ
るぼた落ちの問題は、カートリッジが差し込まれた後
に、細管長手方向溝は直ちにインクで満たされるが、空
気通路は徐々にインクで満たされることによることが認
識された。従って、カートリッジが差し込まれた直後
は、コントロール通路とオーバーフロー細管のいずれも
がインクで満たされず、未だインクで満たされておらず
且つカートリッジで封鎖されていないコントロール通路
を通じて空気が流れ、これにより、コントロールされず
にニブに到達するインクが多くなり過ぎぼた落ちを生じ
ることになる。

さらに、温度変化によってインクが逃げることができ
る適当なスペースを設けことが必要であり、対応する通
路を予め定めておくことが必要であると考えられる。

本発明によると、コントロール通路をインクで円滑に
充填することは空気通路を工夫することによって可能で
あると考えられる。

最後に、本発明によると、コントロール通路を迅速に
インクで満たすことは、インク送給部の形状に関する異
なる特徴を組合せることによって達成されると考えられ
る。書く際に真空が発生すると、コントロール通路はそ
れ自身が空になり、すなわち、開放され、空気通路を通
じてカートリッジの方向に空気の流れを生じさせる。最
終的には、真空が解消され、すなわち、インクがなくな
ることを条件として、コントロール通路は後をたどるイ
ンクによって再び閉鎖される。

さらに、本発明によると、収集室はインク送給部中の
膨張した空気又はインクを吸収する。従って、例えば温
度変化が原因となって空気が膨張するとき、インクはニ
ブに向ってインク送給部の外へ押し出されないが、オー
バーフロー細管を通じて、一方側で互いに連通し、他方
側で長手方向溝又は空気通路に連通する収集室に進入す
る。

従って、本発明の構成は、まず、特にインク送給部が
文字幅を太く設計されており、かなりのインク容積のあ
るものにおいて、インクのぼた落ちを防止するようにさ
れている。

さらに、分離したオーバーフロー細管が各々の収集室
に設けられていると有利である。従って、前記収集室は
一方側でオーバーフロー細管を通じてのみ互いに連通し
ており、他方側で長手方向溝又は空気通路と連通してい
る。インク送給部のこのような構成の結果、細管長手方
向溝が文字幅の太くなるように設計されているときで
も、すなわち、インクの出が多くなっているときでも、
温度変化によってインク送給部中の隙間すなわち空気が
膨張したとき、インク送給部中のインクはそこから押し
出されない。これは、インクリザーバーとして機能し且
つ実際には緩衝室として機能すると考えられる収集室中
に形成された通路を通じ、インクが導入されることによ
って説明される。

収集室は温度変化に起因する空気の膨張を吸収するの
で、前述の特徴は信頼性あるインクのコントロールを確
実にし、これにより漏れを防止し、また、特に、耐震性
をも増加させる。温度変化によりかなりの耐久性が実現
される。

空気通路をインクで迅速に充填するため、できるなら
ば、カートリッジが差し込まれた後に直ちに空気通路を
インクで迅速に充填するため、空気通路を長手方向溝と
反対側に向って段付壁状に広がらせることがさらに効果
的である。この構成によると、インクが細管長手方向溝
から進入したとき、インクは徐々に空気通路を充填し、
これにより、インク送給部とインクとの間の適切で良好
な湿潤手段として、空気通路は全体に迅速にインクで充
填される。かくして、インクは、また、オーバーフロー
細管及び最終的にはコントロール通路に迅速に進入す
る。

同様に、空気通路を長手方向溝と反対側に向って波壁
状に広がらせることも可能である。これにより、前述の
構成と比較して、インクの膨張の「障害」となるような
端部形状を防止し、充填作用が促進される。

さらに効果的な実施例によると、空気通路は長手方向
溝と反対側に向って凹状壁又は凸状壁に広がっている。
この構成もまた、空気通路への迅速なインクの充填が生
じる。この観点から、長手方向溝と反対側における空気
通路を同様に凹状壁又は凸状壁とすることによって、さ
らに、制限を加えることが可能である。最後に、空気通
路の充填時間を短くし且つ空気通路の設計及び製造を簡
単にする形状の双方の観点から、空気通路を長手方向溝
と反対側に向って空気溝が三角形断面を有するように広
がらせることが特に効果的である。この場合、三角形断
面を二等辺三角形又は正三角形とすることができる。

ここに、本発明の内容を改変し且つさらに改良する効
果的な種々の可能性がある。この目的のために、まず、
請求項１に従属する請求項を参考にすべきであり、さら
に、図面を参照した本発明の実施例の記載を参考にすべ
きである。図面を参照した本発明の好適実施例の記載と
関連して、また、内容のより好ましい構成及びその改良
が以下詳細に説明される。図面において、 第１図は、カートリッジ式万年筆用の本発明によるラ
イティングユニットの概略縦断面図である； 第２図は、第１図の物品の一部断面の上面図である； 第３図は、第２図の物品を拡大して示すＡ−Ｂ線概略
断面図である； 第４図は、第２図の物品を拡大して示すＣ−Ｄ線概略
断面図である； 第５図は、第２図の物品を拡大して示すＥ−Ｆ線概略
断面図である； 第１図及び第２図は、両方とも、カートリッジ式万年
筆用の本発明によるライティングユニットの実施例を示
している。ここに実施例として示されたライティングユ
ニットは、主要な部品として、ニブ１、掴持部分２及び
インク送給部３を有してなる。

インク送給部３は薄層状に形成された収集室3eを有し
ており、ニブ１の一方に面する側において、細い長手方
向溝3aがインク送給部３の全長に亘って延びている。収
集室3eの全範囲に亘り、長手方向溝3aは外方で空気通路
3cと繋がっている。空気通路3cは、長手方向溝3aよりも
実質的に大きな断面を占めている。空気通路3cは、長手
方向溝3aと反対側において収集室3eに通じるオーバーフ
ロー細管3dまで延びている。長手方向において、空気通
路3cは、収集室3eのニブ側端部に設けられたコントロー
ル通路3gまで延びている。

本発明によると、空気通路3cは、長手方向において、
収集室3eの全範囲に亘りコントロール通路3gまで延びて
いる。コントロール通路3gは、ニブ１に面する収集室3e
の端部に形成され、流体バルブとして機能することに注
目されたい。空気通路3cは、半径方向において、長手方
向溝3aに対向する表面によって境界が定められている。
長手方向3aの反対側では、空気通路3cが、収集室3eに協
働接続されるオーバーフロー細管3dに延びている。

要するに、収集室3eが互いに協働接続され、且つ、空
気通路3c、すなわち、オーバーフロー細管3dとのみ通じ
る長手方向溝3aと協働接続されていることを図面が示し
ている。従って、インク及び空気は、収集室3e中に導入
され、そこからオーバーフロー細管3dを介してのみ排出
される。

第３図、第４図及び第５図は、空気通路3cが三角形断
面を有するように、空気通路3cが長手方向溝3aの反対側
表面に向って広がっていることを特に明確に示してい
る。この好適実施例において、空気通路3cの三角形断面
部分は二等辺三角形の形をしている。

上述の説明に加えて、第１図及び第２図は、本発明の
本質的特徴を示しており、その特徴とは、ニブ１がライ
ティングポイント1a及びスロット1bを有することであ
る。掴持部分２は、ボア2a、凹所2b、横方向ストッパ2
c、オフセットボア2d、突起2e、後端2gを具えた突出ピ
ン2f、及び、フランジ2hを有する。

細管溝3a及び空気通路3cを有するインク送給部３は、
さらに、ニブ１のためのストッパ3b、オーバーフロー細
管3d、オーバーフロー細管3dを介して空気通路3c、すな
わち、細管溝3aに協働接続する収集室3e、収集室3eを形
成する薄板3f、流体バルブとして機能するコントロール
通路3g、横方向リブ3h、ピン3i、及びフランジ3kを有す
る。さらに、空気溝4,4b及び横方向溝4aが図示されてい
る。

第３図の断面図から、掴持部分２、インク送給部３及
び細管長手方向溝3aが明確に理解できる。上述のよう
に、空気通路3cは断面が三角形状である。さらに、薄板
3f、オーバーフロー細管3d、コントロール通路3g、空気
溝４及び空気溝4cが図示されている。

第４図は、第１図及び第２図に示された物品の断面図
であるが、第３図とは異なる断面のもの、すなわち、Ｃ
−Ｄ線に沿った断面のものである。同図において、掴持
部分２、インク送給部３及び１つの薄板3fが示されてい
る。さらに、細管溝3aの位置、すなわち、形状、三角形
断面の空気通路3c、空気溝４及び空気溝4cが示されてい
る。

最後に、第５図は、また、第１図及び第２図のＥ−Ｆ
線に沿った断面図を示している。同図から、突出ピン2f
を具えた掴持部分２、インク送給部３上のピン3iが明確
に理解できる。さらに、インク送給部３のピン3i中の細
管長手方向溝3aが示されている。

以下に、上述の図面を参照して、本発明によるライテ
ィングユニットの動作をより詳細に説明する。

従来のライティングユニットにカートリッジを挿入す
ると、毛細管現象により、インクは常に細管長手方向溝
に流れ出し、そこからニブに通じる。ニブからの逆流の
結果のみによって、すなわち、細管長手方向溝中の逆流
によって、コントロール通路、空気通路及びオーバーフ
ロー細管が徐々にインクで満たされ、カートリッジ中へ
の空気のさらなる進入、従って、カートリッジからのイ
ンクの流れが防止される。

通常、この動作は数分かかり、ニブのスロットからイ
ンクが漏れるという望ましくない事態を引き起こす。特
に、カートリッジが挿入された直後に、机に設けられた
筆立て等にニブを下向きにして万年筆を置いたときは顕
著である。同様に、ライティングユニット中の空気が膨
張したとき、インクが空気によって押し出されるために
漏れが生じるであろう。

しかし、本発明によるライティングユニットでは、次
のことが生じる。図示しないカートリッジが差し込まれ
たとき、カートリッジの詰め玉は、掴持部分２の突出ピ
ン2fによってカートリッジの先端からカートリッジ内に
押込まれて開放される。そして、インクはインク送給部
システム内に流れ込む。カートリッジが挿入されると、
ボールの体積及び突出ピン2fはカートリッジ内の空気を
圧縮し、ライティングユニットの書き始めのための準備
がなされる。本発明によるインク送給部３の形状は、ニ
ブ１にインクを供給する細管溝3aだけでなく空気通路3c
の２つの三角の隅もが毛細管現象によって同時にインク
を充填するように機能する。カートリッジの外に流れ出
すインクは、細管長手方向溝3aとともに同時に毛細管現
象によって空気通路の三角形の細管隅部を充填する。

本発明によると、インク送給部３のオーバーフロー細
管3d及びコントロール通路3gは適切にインクで充填さ
れ、毛細管現象によってインクがニブのスロット1bに達
すると、インクはさらなる流れを防止されるように止ま
る。その理由は、インクで密封されたコントロール通路
3gがもはやカートリッジ内に空気の流れを生じさせず、
これによって、最終的にインクの漏れを完全に防止する
からである。

収集室3eは、さらに、空気が長手方向溝3a又は空気通
路3cで膨張するときでもインクを保持するように機能
し、そして、温度変化によって生じるライティングユニ
ット中の空気の膨張を吸収する。従って、インクのぼた
落ちが効果的に防止される。収集室3eと細管長手方向溝
3aと空気通路3cが個々のオーバーフロー細管3dによって
のみ相互に接続されていることから、この構成によっ
て、温度変化からの保護ができるだけでなく、耐震強度
も具えたものとなっており、特に、約2.7mm迄の文字太
さのものとして設計されたインク送給部３にも適用する
ことができる。

本発明の本質、すなわち、温度変化に起因する等のラ
イティングユニットの望ましくないぼた落ちの防止は、
インク送給部の格別の構成によって達成されることに着
目すべきである。また、この構成は、上記した類似のラ
イティングユニットを有する文房具に適用することがで
きる。

Claims (7)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】前端と後端を具えたインク送給部（３）
   と、 前記インク送給部（３）の前端に取付けられたニブ
   （１）と、 前記インク送給部（３）の少なくとも後端を取り囲む掴
   持部分（２）と、 前記インク送給部（３）の後端の長手方向に沿って前記
   ニブ（１）まで延びる細管溝（3a）と、 前記インク送給部（３）の後端の長手方向に沿って延び
   前記細管溝（3a）に繋がる空気通路（3c）とを有し、前
   記空気通路は外方向に広がる側壁を具え該側壁とこれに
   隣合う前記インク送給部（３）の部分が横断面で見たと
   き全体として三角形の外形をなすようになっていて、イ
   ンクの初期供給の間、毛細管として機能する２つの角部
   を形成するようになっており、さらに、 前記細管溝（3a）の各側に沿って前記インク送給部
   （３）に薄層状に形成された複数の収集室（3e）を有
   し、前記収集室（3e）の各々はオーバーフロー細管（3
   d）を通して前記空気通路と連通しており、該オーバー
   フロー細管（3d）は前記インク送給部（３）の面の上に
   形成され前記角部の１つから、関連する収集室に延びて
   おり、さらに、 前記ニブ（１）に隣合う前記空気通路（3c）の端部にお
   いて前記角部の１つと連通するように前記インク送給部
   （３）に形成されたコントロールバルブ手段を具え、該
   手段は、毛細管現象によって前記２つの角部に沿って流
   れる初期のインクが該手段に達するまでの間においての
   み、前記空気通路への空気の流入を許すようになってい
   る、 万年筆用ライティングユニット。
2. 【請求項２】前記側壁と前記掴持部分（２）の該側壁に
   隣合う部分が横断面において二等辺三角形状である、請
   求項１のライティングユニット。
3. 【請求項３】前記ニブ（１）が長手方向に延び前記長手
   方向溝（3a）と整列且つ連通するスロット（1b）を有す
   る、請求項１のライティングユニット。
4. 【請求項４】前記ニブ（１）が前記インク送給部（３）
   から離れた自由端を有し、前記自由端には、前記前記ス
   ロット（1b）と整列するライティングポイントが具えら
   れている、請求項３のライティングユニット。
5. 【請求項５】前記コントロールバルブ手段が、前記イン
   ク送給部（３）の面に形成され前記角部の１つ及び外気
   と連通するコントロール通路（3g）を有している、請求
   項１のライティングユニット。
6. 【請求項６】前記コントロール通路（3g）が、前記オー
   バーフロー細管（3d）の断面積よりかなり大きい断面積
   を有している、請求項５のライティングユニット。
7. 【請求項７】前記掴持部分（２）が、インク送給部
   （３）の後端部を取り囲むカートリッジ突刺しピン（2
   f）を有し、カートリッジが差し込まれたとき、インク
   が前記インク送給部（３）の前記長手方向溝（3a）に自
   由に流入するようになっている、請求項５のライティン
   グユニット。