JP2721254B2 - 電場発光蛍光体の製造方法 - Google Patents

電場発光蛍光体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は分散型の電場発光蛍光体に関する。
(従来の技術) 分散型の電場発光蛍光体(以下EL蛍光体と称する)
は、これを誘電物質中に分散し、その両側に電極を配置
して、少なくとも一方の電極を透明電極で構成してこの
電極間に交流電圧を印加することにより発光するもので
ある。
このようなEL蛍光体としては、硫化亜鉛(ZnS)を母
体とし、これに付活剤として銅またはマンガン、共付活
剤として塩素、臭素、よう素またはアルミニウムの少な
くとも一種を含有したものが一般的に用いられている。
この種のEL蛍光体は、硫化亜鉛などの硫化物母体に付
活剤、共付活剤原料を混合し、得られる混合物をイオ
ウ、不活性ガス、空気など適当な雰囲気中にて適当な時
間、温度で焼成することにより製造される。
そして、焼成直後のEL蛍光体は、粒子表面に析出した
硫化第一銅、または硫化第二銅(以下銅硫化物と称す
る)により灰色ないし暗灰色の体色を呈している。これ
ら銅硫化物は、EL発光と重複する短波長可視光領域に吸
収を有するため、有効なEL発光を著しく吸収し、その結
果EL蛍光体の発光輝度を低減させている。
また、これら銅硫化物は少なからず導電性を有してい
るため、電場印加時に電極間において放電を発生させる
原因ともなっている。
従って一般的に、焼成直後のEL蛍光体をそのまま使用
せず、焼成後の処理として体色除去のための洗浄処理が
行われている。
この種の体色除去を目的とした洗浄処理方法として
は、銅硫化物を速やかに溶解させることのできるシアン
化カリウム(KCN)、シアン化ナトリウム(NaCN)等シ
アン化合物の水溶液、あるいはこれらシアン化合物のア
ルカリ溶液を用い、焼成後のEL蛍光体を適当な条件で処
理する方法が知られている。
しかしながら、これらシアン化合物は致死量の非常に
低い毒性の高い危険な化合物であるため、シアン化合物
を用いることは安全面、公害面において問題が多く、ま
たこれらシアン廃液の処理は高価な設備を必要とするた
め、コスト面においても不利である。
そこで、このようなシアン化合物を用いる方法に替わ
って、次のような処理方法が提案されている。
たとえば、特開昭55−89381号公報にはH2O2、HClO4
の酸化剤による洗浄、あるいはその後に続くNH4OH洗浄
によりEL蛍光体表面から銅硫化物を除去する方法が開示
されている。
また、特開昭51−28589号公報には、焼成後のEL蛍光
体を水酸化アンモニウム(NH4OH)とポリ硫化カリウム
(k2Sx)を用いてEL蛍光体表面から銅硫化物を除去する
洗浄方法が開示されている。
このほか、特開平1−139685号公報には、焼成後のEL
蛍光体をアンモニア水と硫化アンモニウム溶液またはポ
リ硫化アンモニウム溶液にて洗浄する方法が開示されて
いる。
(発明が解決しようとする課題) しかし、上述した方法は、それぞれ次のような問題を
有しており、品質の高いEL蛍光体を得るには不十分であ
る。
まず、特開昭55−89381号公報による蛍光体の処理方
法は、銅硫化物の除去、およびそれに伴う体色の除去効
果は認められるが、本発明者らの実験によると酸化剤に
よる反応は非常に急激であり、処理温度、処理時間、処
理濃度等随時適切に複数の条件を制御しないとEL蛍光体
結晶中に酸化剤が浸透し、発光に大きく寄与する銅硫化
物をも除去してしまい、EL蛍光体発光輝度の大きな低減
を招くことになる。
これら条件の制御は、焼成後のEL蛍光体表面に析出し
ている銅硫化物の量に応じた極めて微少な調整が必要と
なり、実際のEL蛍光体の製造工程に適用することは極め
て困難である。
また、特開昭51−28589号公報による方法では、EL蛍
光体表面に析出している銅硫化物の除去効果は認められ
るが、除去の程度が充分ではなく、またポリ硫化カリウ
ムの高濃度溶液を直接得ることがほぼ不可能であること
から、この方法では体色の除去が完全ではない。
そして、特開平1−139685号公報による方法では、EL
蛍光体表面からの銅硫化物の比較的十分な除去効果が認
められたが、十分な洗浄効果を得るために必要な洗浄時
間が長く、実用面で問題がある。
また硫化アンモニウムあるいはポリ硫化アンモニウム
は複数の試薬メーカーから市販されているが、高価で、
しかも5%溶液での販売が一般的であるため、コスト的
にも不利である。
これらのことから、より安価、容易な方法で蛍光体の
体色を除去し、EL蛍光体の発光損失をできるだけ低減す
ることが重要課題となっている。
本発明はこのような課題を解決するためになされたも
ので、EL蛍光体表面に析出している銅流化物を、シアン
化合物を用いない比較的毒性の低い安全な処理液を用
い、安価な処理方法で有効に蛍光体体色を除去し、これ
によりEL蛍光体表面での発光の損失をできるかぎり低減
させることのできるEL蛍光体の製造方法を提供すること
を目的とする。
[発明の構成] (課題を解決するための手段) 本発明の電場発光蛍光体の製造方法は、硫化亜鉛を母
体とし、これに付活剤として銅またはマンガンの少なく
とも一種と、共付活剤として塩素、臭素、よう素または
アルミニウムの中から選ばれた少なくとも一種とを混合
して原料物質を調製し、この原料物質を焼成して蛍光体
粒子を得る電場発光蛍光体の製造方法において、前記焼
成の後、1.5〜3重量%のチオ尿素と、2〜6重量%の
イオウとを、濃度3〜7重量%のアンモニア溶液に溶解
させた処理液で、前記蛍光体粒子を洗浄することを特徴
としている。
また、本発明の第二の製造方法は、硫化亜鉛を母体と
し、これに付活剤として銅またはマンガンの少なくとも
一種と、共付活剤として塩素、臭素、よう素またはアル
ミニウムの中から選ばれた少なくとも一種とを混合して
原料物質を調製し、この原料物質を焼成して蛍光体粒子
を得る電場発光蛍光体の製造方法において、前記焼成の
後、0.5〜2重量%のチオ酢酸アミドと、2〜6重量%
のイオウとを、濃度3〜7重量%のアンモニア溶液に溶
解させた処理液で、前記蛍光体粒子を洗浄することを特
徴としている。
本発明において、洗浄液の溶媒して用いるアンモニア
溶液は、濃度が3重量%未満であると充分な体色の除去
効果が得られず、7重量%を超えると過剰洗浄による輝
度低下を招く。
また、同様にチオ尿素の濃度が1.5重量%より低いと
充分な体色の除去効果が得られず、3重量%を超えると
過剰洗浄による輝度低下を招く。
チオ酢酸アミドについても上記理由から、0.5〜2重
量%の濃度であることが好ましい。
イオウの濃度は、2重量%より低い場合、充分な除去
効果が得られず、6重量%を超えると溶解せずに残った
イオウを除去することが困難で、作業が繁雑となるため
実用性に問題が生じる。
(作 用) 本発明では、特定の処理液を用いて焼成後の蛍光体粒
子を洗浄している。
ここで用いる処理液は、反応の進行が穏やか、かつ着
実であり、蛍光体表面の銅硫化物の存在量の相違による
処理条件の設定変更が比較的容易に行うことができ、表
面の銅硫化物のみが、ほぼ選択的に除去される。
しかも除去反応の進行が穏やかであるため、発光に寄
与している有用なCuSを侵すことが無い。
また、多大な設備費用を要せずコスト的な負担が少な
いため、製造工程に適用可能である。
すなわち、比較的毒性が低く、また製造工程で調達の
比較的容易な処理液を用いて、蛍光体表面の不要な物質
を充分に除去し、高輝度のEL蛍光体を得ることができ
る。
(実施例) 次に、本発明の実施例について説明する。
実施例1 ZnS母体に、付活剤として(CH3COO)2Cu・H2O、共付
活剤としてNaBr、KBrを湿式にて混合し、そのスラリー
を乾燥後、H2S雰囲気中、900℃、120分間焼成し、ZnS:C
u,Br蛍光体を得た。
一方、70℃の温純水3.75に、20%NH4OH溶液1.25
を加え、これにチオ尿素100gを加え、約10時間撹拌し、
さらに200gのイオウを加え5時間撹拌して、体色除去用
のと蛍光体洗浄処理液を得た。
このようにして得た洗浄処理液に、先のZnS:Cu,Br蛍
光体500gを加え、様々な時間にて洗浄処理を行い、その
後、静置沈降後上澄除去、水洗、脱水、乾燥後、篩別し
た。
また、このように処理したZnS:Cu,Br蛍光体は、洗浄
処理時間の変化によって、発光輝度および600nmでの体
色反射率がどう変化するかを調べ、第1図に処理時間の
関数として示した。
また第1図には、同様の方法で作製したZnS:Cu,Br蛍
光体500gを10%KCN溶液2中にて、30分間撹拌し、静
置沈降後上澄除去、水洗、脱水、乾燥後、篩別した結果
を×印として示した。
第1図に示される通り、輝度は約140分、体色反射率
は約120分の洗浄を行うことにより、KCN溶液洗浄によっ
て得られた蛍光体と同程度の品質を備えたEL蛍光体が得
られた。
実施例2 実施例1と同様の方法で得たZnS:Cu,Br蛍光体を、実
施例1と同様の方法で得た洗浄処理液で30分間洗浄処理
を行った。
そして、静置沈降後上澄除去、水洗、脱水、乾燥後、
篩別し、さらに上述の一連の処理を6回繰り返した。ま
た、洗浄処理の各回数ごとに600nmでの体色反射率、輝
度を調べ、KCN溶液洗浄にて処理した蛍光体の体色反射
率、輝度と比較した。
これらの結果を第1表に示す。
第1表から明らかなように、この実施例による処理液
を使用した場合、蛍光体の体色反射率は3回の繰り返し
洗浄によって、また輝度は4回の繰り返し洗浄によっ
て、KCN溶液を用いて洗浄した蛍光体に劣らない品質を
得ることができた。
実施例3 ZnS母体に付活剤としてCuSO4、共付活剤としてNaClを
湿式にて混合し、そのスラリーを乾燥後、H2S雰囲気
中、980℃、180分間焼成し、ZnS:Cu,Cl蛍光体を得た。
一方、洗浄処理液を実施例1と同様の方法で調製し、
この洗浄処理液に上記ZnS:Cu,Cl蛍光体500gを加え、種
々の時間にて洗浄処理を行った。
その後、この蛍光体の輝度および体色反射率を調べた
ところ、輝度は約120分、体色反射率は約90分の時間、
洗浄を行うことにより、KCN溶液洗浄により得られた蛍
光体の水準に到達した。
実施例4 実施例3と同様の方法にて得たZnS:Cu,Cl蛍光体を、
実施例1と同様の方法にて得た洗浄処理液で30分間洗浄
処理を行った。
静置沈降後上澄除去、水洗、脱水、乾燥、篩別し、さ
らに上述の一連の処理を6回繰り返した。
この結果、体色反射率は2回の繰り返し洗浄、輝度は
3回の繰り返し洗浄によってKCN溶液洗浄による蛍光体
と同程度の品質に到達した。
実施例5 続いて、洗浄処理液成分としてチオ酢酸アミドを使用
した実施例について述べる。
ZnS母体に、付活剤として(CH3COO)2Cu・H2O、共付
活剤としてNaBr、KBrを湿式にて混合し、そのスラリー
を乾燥後、H2S雰囲気中、900℃、120分間焼成し、ZnS:C
u,Br蛍光体を得た。
一方、70℃の温純水3.75に、20%NH4OH溶液1.25
を加え、これにチオ酢酸アミド60gを加え、約8時間撹
拌し、さらに200gのイオウを加え、3時間撹拌して、体
色除去用のと蛍光体洗浄処理液を得た。
このようにして得た洗浄処理液に、先のZnS:Cu,Br蛍
光体500gを加え、様々な時間にて洗浄処理を行い、その
後、静置沈降後上澄除去、水洗、脱水、乾燥後、篩別し
た。
また、このように処理したZnS:Cu,Br蛍光体は、洗浄
処理時間の変化によって、発光輝度および600nmでの体
色反射率がどう変化するかを調べ、第2図に処理時間の
関数として示した。
また第2図には、同様の方法で作製したZnS:Cu,Br蛍
光体500gを10%KCN溶液2中にて、30分間撹拌し、静
置沈降後上澄除去、水洗、脱水、乾燥後、篩別した結果
を罰×印として示した。
第2図に示される通り、輝度は約120分、体色反射率
は約100分の洗浄を行うことにより、KCN溶液洗浄によっ
て得られた蛍光体と同程度の品質を備えたEL蛍光体が得
られた。
実施例6 実施例5と同様の方法で得たZnS:Cu,Br蛍光体を、実
施例5と同様の方法で得た洗浄処理液で30分間洗浄処理
を行った。
そして、静置沈降後上澄除去、水洗、脱水、乾燥後、
篩別し、さらに上述の一連の処理を4回繰り返した。ま
た、洗浄処理の各回数ごとに600nmでの体色反射率、輝
度を調べ、KCN溶液洗浄にて処理した蛍光体の体色反射
率、輝度と比較した。
これらの結果を第2表に示す。
第2表から明らかなように、この実施例による処理液
を使用した場合、蛍光体の体色反射率は2回の繰り返し
洗浄によって、また輝度は3回の繰り返し洗浄によっ
て、KCN溶液を用いて洗浄した蛍光体に劣らない品質を
得ることができた。
実施例7 ZnS母体に付活剤としてCuSO4、共付活剤としてNaClを
湿式にて混合し、そのスラリーを乾燥後、H2S雰囲気
中、980℃、180分間焼成し、ZnS:Cu,Cl蛍光体を得た。
一方、洗浄処理液を実施例5と同様の方法で調製し、
この洗浄処理液に上記ZnS:Cu,Cl蛍光体500gを加え、種
々の時間にて洗浄処理を行った。
その後、この蛍光体の輝度および体色反射率を調べた
ところ、輝度は約80分、体色反射率は約60分の時間、洗
浄を行うことにより、KCN溶液洗浄により得られた蛍光
体の水準に到達した。
実施例8 実施例5と同様の方法にて得たZnS:Cu,Cl蛍光体を、
実施例5と同様の方法にて得た洗浄処理液で30分間洗浄
処理を行った。
静置沈降後上澄除去、水洗、脱水、乾燥、篩別し、さ
らに上述の一連の処理を4回繰り返した。
この結果、体色反射率、輝度共に2回の繰り返し洗浄
によって、KCN溶液洗浄による蛍光体と同程度の品質に
到達した。
これらの結果から明らかなように、実施例の製造方法
では、毒性の低い処理液を用いて焼成後のEL蛍光体を洗
浄し、蛍光体自身を侵すことなく表面の不要物質のみを
充分に除去し、優れた品質のEL蛍光体を得ることができ
た。
[発明の効果] 以上説明したように、本発明のEL蛍光体の製造方法で
は、毒性の低い反応の穏やかな処理液を用いて蛍光体表
面の不純物を除去しているため、高輝度かつ体色反射率
の高いEL蛍光体を得ることができる。
また、この洗浄方法は安価、容易であるため、コスト
的にも負担がなく、蛍光体の高品質化に大きく貢献する
ものである。
【図面の簡単な説明】
第1図および第2図は、本発明による製造工程中の洗浄
処理時間と、洗浄後の蛍光体の体色反射率および輝度と
の関係を示す図である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】硫化亜鉛を母体とし、これに付活剤として
    銅またはマンガンの少なくとも一種と、共付活剤として
    塩素、臭素、よう素またはアルミニウムの中から選ばれ
    た少なくとも一種とを混合して原料物質を調製し、この
    原料物質を焼成して蛍光体粒子を得る電場発光蛍光体の
    製造方法において、 前記焼成の後、1.5〜3重量%のチオ尿素と、2〜6重
    量%のイオウとを、濃度3〜7重量%のアンモニア溶液
    に溶解させた処理液で、前記蛍光体粒子を洗浄すること
    を特徴とする電場発光蛍光体の製造方法。
  2. 【請求項2】硫化亜鉛を母体とし、これに付活剤として
    銅またはマンガンの少なくとも一種と、共付活剤として
    塩素、臭素、よう素またはアルミニウムの中から選ばれ
    た少なくとも一種とを混合して原料物質を調製し、この
    原料物質を焼成して蛍光体粒子を得る電場発光蛍光体の
    製造方法において、 前記焼成の後、0.5〜2重量%のチオ酢酸アミドと、2
    〜6重量%のイオウとを、濃度3〜7重量%のアンモニ
    ア溶液に溶解させた処理液で、前記蛍光体粒子を洗浄す
    ることを特徴とする電場発光蛍光体の製造方法。
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