JP2716600B2 - 汚泥の電気浸透脱水方法 - Google Patents

汚泥の電気浸透脱水方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、上水・下水ある
いは各種産業廃水の処理過程で発生する汚泥の電気浸透
脱水方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般的に行われている汚泥の電気浸透脱
水方法は、汚泥貯槽から送られた汚泥を凝集した後に脱
水し、次いで、電気浸透脱水処理を行う方法である。こ
の電気浸透脱水方法が汚泥の脱水に採用されているの
は、上水汚泥、下水汚泥などの汚泥粒子は負の電荷を帯
びているため、圧搾通水する過程でこれらの汚泥中に直
流電流を通じると、単に圧搾しただけでは脱水できない
汚泥中の水分も電気浸透作用により陰極側に移動して脱
水が促進されるからである。
【0003】この電気浸透脱水は、従来のフィルタープ
レスによる機械的脱水と比較すると、上水汚泥の脱水に
ついては脱水時間が著しく短縮され、下水汚泥の脱水で
は塩化第2鉄、消石灰などの多量の薬品添加が不要とな
り、脱水ケーキの含水率を著しく低減させることがで
き、脱水ケーキの量が1/2以下となる。
【0004】電気浸透脱水では、脱水過程で汚泥中の塩
分が電気分解され、陽極側では濾液が酸性となり、陰極
側ではアルカリ性となる。
【0005】一般に、金属イオンはアルカリ側で不溶性
の金属水酸化物として析出し、これらの析出物が陰極側
の電極面や濾布に沈着して電気浸透脱水に悪影響を及ぼ
すようになる。その防止策としては、電気浸透脱水の最
終段階で通電方向を数分間逆転したり、数回の脱水毎に
通電方向を逆にして電気浸透脱水を行い、酸性濾液によ
り沈着物を溶解除去する方法が採られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、汚泥の種類
によっては、前記通電逆転方法では濾布の目詰まりが回
復できない場合がある。特にカルシウムを多量に含む汚
泥の場合に短時間で濾布の目詰まりが進行し、脱水性能
や脱水ケーキの剥離性が悪化することがある。
【0007】一般的に下水汚泥には、多くのCa++イオ
ンが含まれており、一方、pHが13以上である陰極側
の電極表面では電解反応によりOH- イオンが発生し、
液と共に陰極側に移動したCa++イオンと陰極側で反応
して不溶性の水酸化カルシウム〔Ca(OH)2 〕とな
って濾布の繊維内部で析出する。これが濾過速度および
脱水ケーキの剥離性に悪影響を及ぼす原因になってい
る。
【0008】本発明は従来の技術の有するこのような問
題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、陰極
側の濾布に水酸化カルシウムが析出する前に水酸化アル
ミニウムが析出し且つ析出した水酸化アルミニウムが容
易に再溶解しうる汚泥の電気浸透脱水方法を提供するこ
とにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明は、カルシウムを含む汚泥を電気浸透脱水する
に際して、陰極側の濾布に水酸化カルシウムが析出する
前に水酸化アルミニウムが析出し且つ析出した水酸化ア
ルミニウムが容易に再溶解するように、ポリ塩化アルミ
ニウムを被脱水汚泥に添加して電気浸透脱水処理を行う
ことを特徴としている。
【0010】
【作用】上記のように構成される本発明の電気浸透脱水
方法によれば、以下のようにして陰極側の濾布に水酸化
カルシウムが析出する前に水酸化アルミニウムが析出し
且つ析出した水酸化アルミニウムを容易に再溶解させる
ことができる。
【0011】すなわち、イオン化傾向は、Ca+>Al+
であるから、カルシウムを含む被脱水汚泥にポリ塩化ア
ルミニウムを添加することにより、Caはイオンのまま
残り、陰極近傍では,Ca(OH)2が析出するよりも
早くAl3+ イオンが優先的にOH-イオンと結合して水
酸化アルミニウム〔Al(OH)3〕が析出する。カル
シウムはCa2+イオンのまま濾布の繊維の中を通過し、
濾液とともに排出される。
【0012】そして、陰極側では、脱水が進むにつれて
アルカリ性が強くなり、pHが上昇する。そのため析出
した水酸化アルミニウムは濾液のpHが10以上では再
溶解して濾液とともに排出されるので、陰極側濾布の目
詰まりはなく、スムーズに脱水が進行する。ところで、
ポリ塩化アルミニウムは一般式〔Al2(OH)nCl
6-nmで示され、塩基性成分を含むので、塩化アルミニ
ウムを添加する場合に比べて液中のpHは高く保たれ、
析出した水酸化アルミニウムの再溶解は極めてスムーズ
に行われる。
【0013】このように、本発明は、水酸化カルシウム
が析出する前に水酸化アルミニウムが析出し且つ析出し
た水酸化アルミニウムが容易に再溶解するように、カル
シウムを含む汚泥にポリ塩化アルミニウムを添加して電
気浸透脱水処理を行うことを特徴としているので、本発
明の作用を発揮するためには、凝集して脱水された後の
汚泥にポリ塩化アルミニウムを添加して電気浸透脱水す
ることが極めて重要である。
【0014】
【実施例】汚泥貯槽から送られたカルシウムを含む汚泥
を凝集した後に脱水し、この被脱水汚泥を以下のような
方法で電気浸透脱水処理した。その電気浸透脱水処理工
程を順次説明する。
【0015】図1a、図1b、図1cはフィルタープレ
ス型電気浸透脱水機による脱水過程の概要説明図であ
る。
【0016】 (1) 濾板1a、1bの間に形成され、2枚の濾布2
に囲われた密閉空間に供給孔5を通じて被脱水汚泥Cを
圧入して供給圧力により脱水し、濾液は排出孔6から機
外に排出する。(図1a) (2) 圧縮空気で濾板1aのダイヤフラム3を膨張さ
せて圧搾脱水を行い、次いで濾板1aとダイヤフラム3
の表面に装着した通水性の電極板4a、4bの間に通電
して電気浸透脱水を行う。(図1b) (3) 電気浸透脱水を終えると濾板1a、1bを離間
し、濾布2を降下させて脱水ケーキC′を排出する。
(図1c) 本発明においては、上記する電気浸透脱水において、被
脱水汚泥に対してアルミニウム塩を添加する。
【0017】表1は、濾過面積が2.1m2 のフィルタ
ープレス型電気浸透脱水機を使用し、下水処理場で発生
した余剰汚泥、生汚泥、および余剰汚泥と生汚泥との混
合汚泥について、ポリ塩化アルミニウムの添加による電
気浸透脱水の試験結果を示す。
【0018】なお、汚泥供給圧力は4kg/cm2、圧搾圧
力は4kg/cm2、直流印加電圧は40Vである。
【0019】
【表1】
【0020】上記試験結果より、被脱水汚泥に少量のA
23(Al23はポリ塩化アルミニウム中に約10重
量%含まれており、ポリ塩化アルミニウムとしては汚泥
中の乾燥固形物DSの10%前後)を添加することによ
り電気浸透脱水時の濾過速度、消費電力、および脱水ケ
ーキの剥離性が共に著しく改善されることが分かる。
【0021】なお、アルミニウム塩であっても、硫酸ア
ルミニウムは電極が炭素質である場合には腐食の原因と
なるため好ましくなく、また、アルミニウム以外の金属
塩((鉄塩など)はアルカリ側で水酸化物が再溶解しな
いため効果はない。
【0022】
【発明の効果】上記のように本発明によれば、カルシウ
ムを含む汚泥を電気浸透脱水するに際して、陰極側の濾
布に水酸化カルシウムが析出する前に水酸化アルミニウ
ムが析出し且つ析出した水酸化アルミニウムが容易に再
溶解するように、塩基性成分が含まれているポリ塩化ア
ルミニウムを被脱水汚泥に添加することで濾布の目詰ま
りが著しく軽減され、濾過性能を向上して消費電力の節
減を図り、ケーキ剥離性が改善できたものであり、電極
板を逆極性にしての電極板表面の沈着物の溶解除去と相
まって長期間にわたって安定した脱水機能を実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】1a、1b、1cは本発明が適用されるフィル
タープレス型電気浸透脱水機による脱水過程の概要説明
図である。
【符号の説明】
1a、1b…濾板 2…濾布 3…ダイヤフラム 4a、4b…電極板 5…供給孔 6…排出孔

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対の電極板で濾布を介して被脱水汚泥
    を挟み、被脱水汚泥を圧搾しながら電極板間に直流電流
    を通電して回分的に脱水処理を行う電気浸透脱水方法に
    おいて、カルシウムを含む汚泥を電気浸透脱水するに際
    して、陰極側の濾布に水酸化カルシウムが析出する前に
    水酸化アルミニウムが析出し且つ析出した水酸化アルミ
    ニウムが容易に再溶解するように、ポリ塩化アルミニウ
    ムを被脱水汚泥に添加して電気浸透脱水処理を行うこと
    を特徴とする汚泥の電気浸透脱水方法。
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