JP2714555B2 - 高強度・高導電率銅合金板材 - Google Patents

高強度・高導電率銅合金板材

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JP2714555B2 JP4272548A JP27254892A JP2714555B2 JP 2714555 B2 JP2714555 B2 JP 2714555B2 JP 4272548 A JP4272548 A JP 4272548A JP 27254892 A JP27254892 A JP 27254892A JP 2714555 B2 JP2714555 B2 JP 2714555B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】この発明は、高強度・高導電率銅
合金板材に関するものである。さらに詳しくは、この発
明は、ICリードフレーム材、マグネット導体材料等と
して有用な、高強度で、かつ導電率の高い銅合金板材に
関するものである。
【従来の技術とその課題】高強度・高導電率板材は、特
に電子工業においてはICのリードフレーム材として、
また世界中で開発が競われている超強磁界マグネットの
導体材料等として、強くその開発が望まれている。たと
えば、現在、リードフレーム材においては、クラスII
HH(導電率80%IACS以上、引張強さ650MP
a以上)およびクラスIIIH (導電率80〜50%I
ACS、引張強さ650MPa以上)の特性を満足する
材料は実際的な例がなく、高集積化、高性能化が進むI
C技術においては、これらのクラスIIIH 及びクラス
IIIHHの特性を有する安価で信頼性の高いリードフレ
ーム材の開発が強く望まれている。また、板材を導体材
とするピッター型強磁界マグネットの開発では、発生す
る強い電磁力に抗することのできるだけの高強度と、発
熱を防ぐことのできる高導電率を有する導体材が必要と
されている。強磁界マグネット用導体材としては、これ
までにもCu−Be合金、Cu−Cr合金、Cu−Al
2 3 合金等が知られているが、Cu−Be合金は導電
率が低く、Cu−Cr合金やCu−Al2 3 合金では
強度が低く、いずれの合金も強度及び導電率のバランス
が悪い。たとえば、最も強度及び導電率のバランスがと
れた導体材として評価されている、米国で開発されたC
u−Be合金は強度800MPa、導電率63%IAC
Sの特性を有している。しかしながら、より高い磁界を
発生するマグネットの開発にはこれらの特性値よりもさ
らに優れた高強度・高導電率材料の開発が必要とされて
いるのが実情である。そこでこのような状況に鑑みて、
この発明の発明者は、新しい高強度・高導電率合金材と
してCu−Ag合金を開発し、これを実用に供するもの
として検討を進めている。しかしながら、このCu−A
g合金材については、その加工面において板材とするに
は強度が充分に得られないのではないかという問題があ
り、発明者にとっての大きな課題となっていた。この発
明は、以上の通りの事情からなされたものであって、従
来にない優れた特性を有するCu−Ag合金板材を、高
強度性を損うことなく、高導電率の板材として提供する
ことを目的としている。
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、Ag:6〜24wt%を含有
し、残りがCuおよび不可避不純物からなる組成で、C
u固溶体及びAg固溶体が熱処理され、冷間加工により
繊維状に引き延ばされた板材組織を有する板材であっ
て、1回以上の、冷間加工と300〜550℃の温度で
0.5〜40時間の熱処理とが行われ、かつ、冷間加工
の少なくとも1回は加工度80%以上で行われており、
加工方向の引張強度よりも直角方向の引張強度が大きい
ことを特徴とする高強度・高導電率銅合金板材を提供す
る。
【作用】すなわち、この発明の合金板材においては、6
〜24wt%AgをCuに含有することを特徴としてい
るが、6〜24wt%のAgをCuに添加することによ
り合金材はCu固溶体及びAg固溶体の二相からなる組
織を示し、圧延加工を行うことで、それら二相は引き伸
ばされてフィラメント状になり、Cu−Ag合金材の強
度は著しく上昇する。しかも、この発明では、加工方向
の引張強度よりも直角方向の引張強度が大きい銅合金板
材が提供されることになる。Cu固溶体及びAg固溶体
中には、それぞれAg及びCuが過飽和に固溶されてお
り、それらを熱処理により析出させることができれば、
Cu−Ag合金の強度並びに導電率はより一層上昇す
る。しかし、これまで一般に、Cu−Ag合金の熱処理
による析出硬化はあまり期待できないと考えられてい
た。実際に、上記組成のCu−Ag合金を熱処理しても
その硬度はあまり上昇しない。しかしながら、この発明
では、加工と熱処理の組合せにより析出が促進されて著
しくCu−Ag合金の硬度が上昇するとの新しい知見に
基づいて高強度で、かつ高導電率の、加工方向よりも直
角方向の引張強度の大きいCu−Ag合金板材を提供す
ることを可能とした。この場合の加工と熱処理の組合せ
とは、加工−熱処理−加工−熱処理−加工のように、加
工と熱処理を1回以上適宜に繰り返すことを意味してい
る。Cu−Ag合金はどの程度の加工度で、何度の温度
で、何時間、そして何回、熱処理するかによって、その
強度及び導電率特性が変化する。そして、Cu−Ag合
金は圧延加工することで繊維複合板材になるが、一般に
各種金属、合金材における繊維複合材は、圧延加工方向
の強度に対して直角方向の強度は著しく低いことから、
このCu−Ag合金も板材として利用することは難しい
と考えられていた。しかしながら、この発明のCu−A
g合金板材の場合には、このような従来の常識に反して
圧延方向に対して強度及び導電率の異方性が小さく、加
工方向よりも直角方向の引張強度が大きく、かつ、従来
に例のない優れた高強度・高導電率を有している。合金
板材としては、この発明では6〜24wt%Agを、C
uとともに含有させた組成を有しているが、6wt%以
上のAgの添加により、初晶(Cu固溶体)及び共晶
(Cu固溶体とAg固溶体からなる相)が均一に晶出
し、冷間加工することで繊維状に組織が引き延ばされ
る。これによって、この発明の合金板材では高い強度が
得られる。6wt%未満のAg添加量では所定の特性は
充分に得られず、また、24wt%以上のAg添加は、
Cu−Ag合金の強度向上に顕著な効果はなく、一般的
な使用を考えた場合、経済的ではない。そして、この発
明の合金板材においては、Cu固溶体並びにAg固溶体
からなり、それぞれの固溶体中には過飽和なAg並びに
Cu粒子を含んでおり、熱処理を施すことにより合金の
強度及び導電率が著しく上昇する。特に冷間加工過程で
中間熱処理を数回施すことが強度及び導電率の向上に効
果的である。この場合の熱処理としては、一般的には3
00〜600℃程度、より好ましくは300〜50℃
程度の温度において行うこととする。冷間加工は、圧延
等の手段によって適宜に実施される。以下、実施例を示
し、さらに詳しくこの発明の合金板材について説明す
る。
【実施例】Cuに6〜24wt%のAgを添加し、真空
または不活性ガス雰囲気中で溶解、鋳造した後、冷間圧
延加工を行った。加工度10%において、450℃、2
hの熱処理を施した後、引き続き冷間圧延を行い、加工
度35%で、450℃、1hさらに、加工度60%で、
400℃、1hの中間熱処理を施した後、最終96%ま
での冷間圧延加工を行った。この場合の加工度はH0
H/H0 ×100(H0 :鋳造材の厚さ、H:加工材の
厚さ)で表わしている。図1は、Cu−6〜24wt%
Ag合金板材の強度と加工度の関係を示したものであ
る。加工度80%では、6wt%Agで650MPa、
8wt%Agで、700MPa、12wt%Agで、7
25MPa、24wt%Agでは760MPaの引張強
さとなる。加工度96%では、それぞれ、912MP
a、947MPa、989MPa、1050MPaの引
張強さが得られる。また、導電率はいずれの組成のCu
−Ag合金板材も、強度に対して一様の関係を有してい
る。図2は、この強度と導電率の関係を示したものであ
る。引張強さ520MPaでは、導電率90%IACS
が得られる。800MPaでは80%IACS、そして
1050MPaでは、75%IACSの導電率となる。
そして、Cu−Ag合金は圧延加工により、圧延方向に
組織が引き延ばされた、繊維複合材の組織を形成する
が、前述の通り、一般にこのような繊維複合組織材料の
強度は加工方向に対して直角方向で著しく低下すると考
えられている。しかしこの発明のCu−Ag合金板材で
は、図3に示すように、逆に圧延方向に対し直角方向の
強度がより高いという全く予想外の優れた特性が得られ
た。このことは、この発明の合金板材の大きな特徴であ
る。直角方向の強度と圧延方向の強度の差は96%の加
工度で100MPa程度である。また図4に示すよう
に、方向による強度の差は、低加工度では小さくなる。
なお、導電率の異方性については顕著な差異は認められ
なかった。図5は、参考としてのCu−Nb合金の板材
及び線材の強度と導電率の関係を示したものである。C
u−Nb合金はCu−Ag合金と同様な加工組織を持つ
繊維強化複合材である。Cu−Nb合金の板材と線材の
強度及び導電率を比較すると板材では導電率の低下が大
きい。一方、この発明のCu−Ag合金板材では図2に
示したように強度と導電率の関係は、線材と同様の傾向
を示し、これまでの技術常識とは異なる結果が得られて
いる。このことは、この発明の板材の実用的有意性を明
示していると言える。
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によ
って、高強度・高導電率特性を充分満足し、従来の常識
に反して加工方向よりも直角方向の引張強度の大きな合
金板材が提供される。このCu−Ag合金板材は容易に
溶解、圧延加工によって製造され、加工途中で熱処理を
行う、簡単な作業手順で高強度・高導電率が実現でき、
また6wt%と少ないAg濃度でも優れた特性を有する
ことから、経済的にも有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Cu−6〜24wt%Ag合金板材の加工度の
変化に対する最大引張強さを示した相関図である。
【図2】Cu−Ag合金板材及び線材の最大引張強さと
導電率の関係を示した相関図である。
【図3】加工度95%でのCu−6〜24wt%Ag合
金板材の強度の異方性を示した相関図である。
【図4】Cu−12wt%合金板材の加工度の変化によ
る強度の異方性を示した相関図である。
【図5】参考例としてのCu−Nb合金の板材及び線材
の最大引張強さと導電率の関係を示した相関図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−120227(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ag:6〜24wt%を含有し、残りが
    Cuおよび不可避不純物からなる組成で、Cu固溶体及
    びAg固溶体が熱処理され、冷間加工により繊維状に引
    き延ばされた板材組織を有する板材であって、1回以上
    の、冷間加工と300〜550℃の温度で0.5〜40
    時間の熱処理とが行われ、かつ、冷間加工の少なくとも
    1回は加工度80%以上で行われており、加工方向の引
    張強度よりも直角方向の引張強度が大きいことを特徴と
    する高強度・高導電率銅合金板材。
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