JPH10140267A - 高強度で高電導性の高Cr含有銅合金材とその製造方法 - Google Patents

高強度で高電導性の高Cr含有銅合金材とその製造方法

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JPH10140267A
JPH10140267A JP29604996A JP29604996A JPH10140267A JP H10140267 A JPH10140267 A JP H10140267A JP 29604996 A JP29604996 A JP 29604996A JP 29604996 A JP29604996 A JP 29604996A JP H10140267 A JPH10140267 A JP H10140267A
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洋夫 鈴木
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理夫 宮内
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高強度及び高導電性を有する高Cr含有銅合金
材料を提供すること。 【解決手段】 Crを5〜30%(wt%、以下同じ)
含有する良導電性の銅合金に、更に凝固時ならびに固相
中でのCr相の晶出ないしは析出特性を制御するための
Zr、Tiの一種または二種を合計で0.05%以上
0.5%以下添加し、残部がCuと不回避不純物とから
なる銅合金であって、その金属組織において、凝固時に
晶出した針状のCrを加工によりファイバー状とし、且
つそのCrファイバーの厚さを5μm以下、若しくはC
rファイバー間のCuの厚さを5μm以下とした銅合金
材であり、引張強度が700MPa以上で導電率が65
%IACS以上の特性を有することを特徴とする高強度
で高電導性の高Cr含有銅合金材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発明者等が先に出
願した特許(特願平7−261670号、特願平8−5
9292号)の更なる高強度化を、高導電性を損なうこ
となく安価で効率よく達成するものである。本発明によ
りCu基合金の用途全般に渡って有用な高強度で高電導
性の高Cr含有銅合金を提供することができる。なお、
本明細書においては、銅合金の合金組成は全てwt%を
意味するものであるが、これを単に%と記すこととす
る。
【0002】
【従来の技術】Crを5%以上高含有する銅合金は、耐
摩耗性、耐蝕性向上のために、凝固時に過剰なCrを晶
出させているだけで、溶製時の晶出Crの形態制御およ
び加工によるファイバー状への成形を行っておらず、そ
のため晶出Crの引張強度への効果は少なく、いずれも
引張強度が700MPa未満の合金である。
【0003】図1は、先願特許である特願平7−261
670号に記載のCu−15%Cr合金の溶製材である
が、第2相であるCr晶が不均一に分布しており、また
その形状が等軸晶である。Crの等軸晶的形状は、冷間
加工を施してもファイバー状に成形し難く、この不均一
性はファイバーが均一分布を持つ複合材料となりにく
い。したがって、Cr晶の形態と分布が高強度化を阻害
していたため、前記先願特許は、CuとCrの二元合金
(Cu−Cr合金)であるがために最高強度で1000
MPaに達成しなかった。
【0004】先願特許である特願平7−261670号
(Cu−Cr合金)、特願平8−59292号(Cu−
Cr−C、N、B合金)では、加工のままの材料の強度
が最も高く、導電率回復のための熱処理を加えると加工
歪みが緩和され引張強度が低下し、析出による引張強度
への寄与は少なかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、高強
度で高電導性の高Cr含有銅合金材を見出すことであ
り、具体的には、引張強度≧700MPa望ましくは引
張強度≧1000MPa、導電率≧65%IACSを有
する高強度で高電導性の高Cr含有銅合金材を安定的に
提供することである。また、本発明の他の課題は、前記
の特性を有する高Cr含有銅合金材の製造方法を見出す
ことである。
【0006】
【課題を解決するための手段】Cu−Cr二相合金は、
Cuへの固溶度が小さい第二相であるCrを晶出させ
る。この二相分離合金の場合、強度増加と電気的特性に
着眼すると、第二相のCr晶を均一に分散させることが
好ましいが、本発明は、この第二相のCr晶の形態と分
布を制御して、前記の発明の課題を解決するものであ
る。
【0007】即ち、前記課題を解決するための請求項1
の発明は、Crを5〜30%含有する良導電性の銅合金
に、更に凝固時ならびに固相中でのCr相の晶出ない
し、析出特性を制御するためのZr、Tiの一種または
二種を合計で0.05%以上0.5%以下添加し、残部
がCuと不回避不純物とからなる銅合金であって、その
金属組織において、凝固時に晶出した針状のCrを加工
によりファイバー状とし、且つそのCrファイバーの厚
さを5μm以下、若しくはCrファイバー間のCuの厚
さを5μm以下とした銅合金材であり、引張強度が70
0MPa以上で導電率が65%IACS以上の性能を有
することを特徴とする高強度で高電導性の高Cr含有銅
合金材であり、
【0008】請求項2の発明は、前記金属組織におい
て、凝固時に晶出した針状のCrを加工によりファイバ
ー状とし、且つそのCrファイバーの厚さを2μm以
下、若しくはCrファイバー間のCuの厚さを2μm以
下とした銅合金材であり、引張強度が1000MPa以
上で導電率が65%IACS以上の特性を有することを
特徴とする請求項1に記載の高強度で高電導性の高Cr
含有銅合金材である。
【0009】また、請求項3の発明は、前記請求項1な
いし2に記載の特性を有する銅合金材の製造方法とし
て、Crを5〜30%含有する良導電性の銅合金に、更
に凝固時ならびに固相中でのCr相の晶出ないしは析出
特性を制御するためのZr、Tiの一種または二種を合
計で0.05%以上0.5%以下添加し、残部がCuと
不回避不純物とからなる銅合金鋳塊を用いて、凝固時に
晶出した針状のCrをファイバー状にするための加工、
及び固溶CrならびにZr、Tiの析出のための熱処理
として、400℃以上600℃以下で0.5時間以上の
熱処理を行うことを特徴とする高強度で高電導性の高C
r含有銅合金材の製造方法であり、
【0010】請求項4の発明は、前記請求項3に記載の
加工および熱処理は、加工を行った後に熱処理を行う場
合、熱処理を行った後に加工を行う場合、また、2以上
の加工若しくは熱処理を組み合わせて行う場合を含むこ
とを特徴とする高強度で高電導性の高Cr含有銅合金材
の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、前記各発明について、詳細
に説明する。 (1)請求項1及び2の発明について 請求項1の発明は、Crを5〜30%含有する良導電性
の銅合金に、更に凝固時ならびに固相中でのCr相の晶
出ないし、析出特性を制御するためのZr、Tiの一種
または二種を0.05%以上0.5%以下添加し、残部
がCuと不回避不純物とからなる組成の銅合金であっ
て、凝固時に晶出した針状で微細なCrを加工によりフ
ァイバー状とし、且つそのCrファイバーの厚さを5μ
m以下、若しくはCrファイバー間のCuの厚さを5μ
m以下とした銅合金材であり、このようにすることによ
って、引張強度が700MPa以上で導電率が65%I
ACS以上の特性を有する高強度で高電導性の高Cr含
有銅合金材が得られるものである。
【0012】本発明をこのように限定するのは、以下の
理由によるものである。即ち銅合金におけるCrは、凝
固時に晶出したCrを加工によりファイバー状にするこ
とにより、導電性を低下させることなく、強度(引張強
度)を向上させる元素であり、その含有量を5〜30%
と限定したのは、5%未満では晶出してくるCrが少な
く高強度が達成できないためであり、30%を越えると
実用上溶解が困難であることと、加工でCrをファイバ
ー状に成形する時にCr同士が接触し加工が困難となる
ためである。
【0013】また、Zr、Tiの一種または二種を合計
で0.05%以上0.5%以下添加するのは、凝固時な
らびに固相中でのCr相の晶出ないし、析出特性を制御
して材料の高強度化を達成するためである。このことに
ついて更に詳細に説明すると、Cu−Cr合金は、Cu
相とCr相との融点差が大きく凝固時においては、第二
相のCr晶を制御することが必要であるが、この手段と
してZr、Tiを用いて行うものである。これらの元素
を用いることで、Cu溶湯中に均一分散し、図2(Cu
−15%Cr−0.15%Zr合金溶製材)に示すごと
く、後の加工が容易な針状のCr晶を有する微細で良好
な鋳造組織を得ることができる。また、添加したZr、
Tiは、母相への固溶状態においては、比抵抗増加に大
きく寄与する。従って最適温度と時間で熱処理を行うこ
とで、添加したZr、Tiを単独ないしはCuと金属間
化合物として析出させて強度増加とともに導電率回復を
行うものである。Zr、Tiの一種または二種の添加量
を合計で0.05%以上0.5%以下と限定したのは、
0.05%未満では前記の効果がなく、0.5%を越え
ると加工初期にて材料表面から割れが発生し、加工を続
けると材料が破断し加工することが困難となるからであ
る。
【0014】本発明に係わる銅合金材は、前記組成のC
u−Cr−Zr、Ti合金であるが、この金属組織は、
凝固時に晶出した微細な針状のCrが加工によりファイ
バー状となっっている。凝固時に晶出した微細な針状の
Crを加工によりファイバー状とすることによって、強
度(引張強度)と電気的特性を大幅に向上することがで
きる。図3は、本発明に係わる銅合金材断面を研磨し、
その断面の光学顕微鏡による金属組織であり、晶出した
Crが延びていることがわかる。また図4は、上記試料
について、硝酸でCu部を除去した後の走査電子顕微鏡
による金属組織であり、Crがファイバー状になってい
ることがわかる。
【0015】本発明の銅合金材は、加工によって、前記
のCrファイバーの厚さを5μm以下、若しくはCrフ
ァイバー間のCuの厚さを5μm以下とした金属組織と
することを特徴とするものである。このようにすること
によって、引張強度が700MPa以上で導電率が65
%IACS以上の特性を得ることが可能となる。
【0016】次に、請求項2の発明は、前記請求項1の
発明の好ましい実施態様であり、加工後のCrファイバ
ーの厚さを2μm以下、若しくはCrファイバー間のC
uの厚さを2μm以下と、更に小さくした銅合金材であ
り、引張強度が1000MPa以上で導電率が65%I
ACS以上の特性を有するものである。このように加工
により、Crファイバーの厚さ若しくはCrファイバー
間隔を、更に小さくすることによって、高導電率を維持
しながら引張強度が1000MPa以上の材料を得るこ
とができる。
【0017】(2)請求項3及び4の発明について 請求項3、4の発明は、前記請求項1、2の発明に係わ
る高Cr含有銅合金材の製造方法に関するものである。
まず、請求項3の発明は、Crを5〜30%を含有する
良導電性の銅合金に、更に凝固時ならびに固相中でのC
r相の晶出ないしは析出特性を制御するためのZr、T
iの一種または二種を合計で0.05%以上0.5%以
下添加し、残部がCuと不回避不純物とからなる銅合金
鋳塊を用いて、凝固時に晶出した針状のCrをファイバ
ー状にするための加工、及び固溶CrならびにZr、T
iの析出のための熱処理として、400℃以上600℃
以下で0.5時間以上の熱処理を行うことを特徴とする
高強度で高電導性の高Cr含有銅合金材の製造方法であ
る。
【0018】本発明は、所定の合金組成に配合して溶解
鋳造して鋳塊とし、これを熱間加工、続いて冷間加工
(必要に応じて中間焼鈍)して所定の形状の材料(線
材、板材等)とされるが、冷間加工工程の適当なところ
で、固溶CrならびにZr、Tiの析出処理として40
0℃以上600℃以下で0.5時間以上の熱処理(析出
処理若しくは時効処理)を行うものである。本発明にお
ける加工は、熱間加工及び冷間加工を意味し、圧延加
工、伸線加工、押出加工等が含まれ、また、その加工後
の材料は、線材、板材、棒材等となる。また、本発明に
おいて、この加工を行うのは、当然のことながら材料を
所定の形状寸法とするためであり、鋳造時に晶出するC
r晶を前記加工によって、ファイバー状にするためであ
る。
【0019】本発明において、前記の熱処理(析出処理
若しくは時効処理)を行うのは、強度の向上と導電率の
回復のためである。温度が400℃未満、処理時間が
0.5時間未満では、所定の特性を得ることができな
い。また、温度が600℃を越えると、過時効(析出過
多)により、強度が低下する。従って熱処理条件は、4
00℃以上600℃以下で0.5時間以上とする。
【0020】図5は、本発明に係わる銅合金材(冷間圧
延材)を用いて、種々の温度で1hrの時効処理後に、
硬度調査を行った結果である。従来材(Cu−15%C
r合金、Cu−15%Cr−C、N合金)は、500℃
で硬度がAs-rolled (冷間圧延材のまま)を下回る傾向
を示すが、本発明に係わるCu−15%Cr−Zr合金
材ならびにCu−15%Cr−Ti合金材は、600℃
以上の温度で時効しなければAs-rolled の硬度を下回ら
ず、従来材に比べ強度が優れていることを示している。
【0021】また、図6は、本発明に係わる銅合金材
(冷間圧延材)を用いて、種々の温度で1hrの時効処
理後に引張試験を行った結果である。従来のCu−15
%Cr合金、Cu−15%Cr−0.01%C合金は、
いずれの温度で時効してもAs-rolled を越える強度を得
ることは出来なかったが、本発明に係わるCu−15%
Cr−0.15%Zr合金材、Cu−15%Cr−0.
21%Ti合金材については、最適温度領域で、時効す
ることにより、As-rolled の強度を上廻っていることを
示している。
【0022】次に、請求項4の発明は、前記請求項3に
記載の加工および熱処理は、加工を行った後に熱処理を
行う場合、熱処理を行ってから加工を行う場合、また、
2以上の加工若しくは熱処理を組み合わせて行う場合を
含むことを特徴とする高強度で高電導性の高Cr含有銅
合金材の製造方法である。即ち、本発明の製造方法は、
前記熱処理を、加工工程、主として冷間加工工程のどの
時点でおこなってもかまわない。また、前記加工若しく
は熱処理が二回以上の組み合わせからなる工程で製造し
てもよい。この製造工程の具体例は、後に示す実施例で
説明する。
【0023】
【実施例】次に、本発明の実施例(本発明例)を比較例
とともに、具体的に説明する。 〔実施例1〕本発明の実施に当たっては、まず改良され
た金属組織を有する鋳塊を得る必要がある。即ち、凝固
時にCr晶を針状で微細に晶出させた鋳塊を得ることで
ある。表1に示す合金元素を配合し、これを高周波真空
溶解炉で溶解鋳造して45mm×45mm×130mm
の鋳塊を得た。
【0024】この鋳塊組織の状態について、Cr晶の針
状化、Cr晶の均一化、Cr晶の凝集程度の観点から、
評価した。評価方法は、以下のとおりである。 (1)Cr晶の針状化 鋳造組織における個々のCr晶のアスペクト比(長さ/
厚さ)を算出し、以下の評価基準で決めた。 ◎=8以上、○=6以上8未満、△=4以上6未満、×
=2以上4未満 (2)Cr晶の均一化 鋳造組織における個々のCr晶の面積を求め、その分散
を逸脱する個数の割合を以下の評価基準で決めた。 ◎=10%未満、○=20%未満、△=20%以上 (3)Cr晶の凝集程度 鋳造組織における個々のCr晶の単位面積当たりの数
(密度)を求め、その分散を用いて以下の評価基準で決
めた。 ○=おおむね分散内、△=中間、×=あきらかに分散外
【0025】次にこの鋳塊を、900℃で外径22.5
mmの角材に熱間鍛造した。続いてこれを冷間で圧延及
び伸線して、外径1mmの線材とした。なお、必要に応
じて冷間加工の途中で中間焼鈍を入れた。上記の伸線加
工における材料の加工性(従って、材料中のCrのファ
イバーへの加工性)について、以下の基準で評価した。 ◎=冷間加工率99%以上可能、○=冷間加工率90%
以上可能 △=冷間加工率50%以上可能、×=可能な冷間加工率
50%未満 これらの結果を、表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】表1から明らかなごとく、本発明の合金組
成の銅合金は、鋳塊組織において優れ、この鋳塊の減面
加工性、Crファイバーへの加工性に優れていることが
わかる。
【0028】〔実施例2〕表2に示す合金組成の鋳塊
(45mm×45mm×130mm)を作製した。次に
この鋳塊を、900℃で外径22.5mmの角材に熱間
鍛造した。続いてこれを溝ロールで冷間圧延して、外径
3mmの線材とした。次にこの材料について、更に圧延
し、最小外径1mmまでダイス等を用いて、冷間で線引
きした。これを500℃で1時間の析出時効処理を行っ
た後、試験材とした。この試験材について、長手方向断
面のCrファイバーの厚さ及びCrファイバーの間隔を
顕微鏡で測定した。なお測定は、約100点測定し、そ
の最大値(μm)を求めた。また、この試験材につい
て、引張強度(MPa)を測定した。これらの結果を、
表2に併記した。
【0029】
【表2】
【0030】表2から明らかなごとく、本発明に係わる
銅合金材は、いずれも引張強度が700MPa以上であ
り、高強度であることがわかる。
【0031】〔実施例3〕表2のNo.1−1、2−1
の合金について、実施例2と同様な製造方法で、外径1
mmの線材を製作した。この線材のCrファイバーの厚
さ及びCrファイバーの間隔は、表3に示すごとく、い
ずれも1μm以下である。この線材について、表3に示
す各種の温度、時間で析出熱処理を行って試験材とし
た。この試験材について、引張強度と導電率を測定し、
この結果を表3に併記した。
【0032】
【表3】
【0033】表3から明らかなごとく、Crファイバー
の厚さ及び間隔が小さくなると、引張強度が1000M
Pa以上で導電率が65%IACS以上の銅合金材が得
られることがわかる。また、所定の加工と熱処理条件に
より、高強度で高導電率の材料が得られることもわか
る。
【0034】〔実施例4〕表2のNo.1−1の合金に
ついて、実施例2と同様に、溶解鋳造、熱間加工して外
径22.5mmの角材の材料を作製した。そして、溝ロ
ール圧延機、及びダイス等を用いて、中間に以下のよう
な冷間加工(CR:Cold Roll)と500℃×1時間の析出熱
処理(Aging) を含む製造工程で、外径2mm以下の各種
の試験線材を得た。 No.8−1 90%CR →Aging No.8−2 Aging →90%CR No.8−3 90%CR →Aging →10%CR No.8−4 90%CR →Aging →10%CR →Aging このようにして得られた線材について、Crファイバー
の厚さ及び間隔、引張強度、導電率を測定し、その結果
を表4に記した。
【0035】
【表4】
【0036】表4から明らかなように、本発明に係わる
銅合金材の製造工程において、加工と熱処理がどのよう
な組み合わせであっても、所定の引張強度と導電率が得
られることがわかる。
【0037】
【発明の効果】以上詳述したごとく、本発明は、引張強
度≧700MPa、導電率≧65%IACSを有する高
強度で高電導性の高Cr含有銅合金を安定的に提供する
ことが可能である。更にCrファイバーとCrファイバ
ーの間にあるCuの厚さが共に2μm以下になった場合
に1000MPa以上を発現し、Cu基合金の用途全般
に渡って有用な高強度で高電導性の高Cr含有銅合金を
安定的に提供することができる等、工業上顕著な効果を
奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】先願特許(特願平7−261670号)のCu
−15%Cr合金溶製材の光学顕微鏡による組織
【図2】本発明に係わるCu−15%Cr−0.15%
Zr合金溶製材の光学顕微鏡による組織
【図3】本発明に係わる銅合金材の光学顕微鏡による組
【図4】図3の銅合金材について、硝酸を用いてCu部
を除去した後の走査型電子顕微鏡による像
【図5】時効熱処理後に硬度調査を行った結果
【図6】時効熱処理後に引張強度を行った結果
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 洋夫 茨城県つくば市千現1−2−1 科学技術 庁金属材料技術研究所内 (72)発明者 宮内 理夫 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古 河電気工業株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Crを5〜30%(wt%、以下同じ)
    含有する良導電性の銅合金に、更に凝固時ならびに固相
    中でのCr相の晶出ないしは析出特性を制御するための
    Zr、Tiの一種または二種を合計で0.05%以上
    0.5%以下添加し、残部がCuと不回避不純物とから
    なる銅合金であって、その金属組織において、凝固時に
    晶出した針状のCrを加工によりファイバー状とし、且
    つそのCrファイバーの厚さを5μm以下、若しくはC
    rファイバー間のCuの厚さを5μm以下とした銅合金
    材であり、引張強度が700MPa以上で導電率が65
    %IACS以上の特性を有することを特徴とする高強度
    で高電導性の高Cr含有銅合金材。
  2. 【請求項2】 前記金属組織において、凝固時に晶出し
    た針状のCrを加工によりファイバー状とし、且つその
    Crファイバーの厚さを2μm以下、若しくはCrファ
    イバー間のCuの厚さを2μm以下とした銅合金材であ
    り、引張強度が1000MPa以上で導電率が65%I
    ACS以上の特性を有することを特徴とする請求項1に
    記載の高強度で高電導性の高Cr含有銅合金材。
  3. 【請求項3】 請求項1ないし2に記載の特性を有する
    銅合金材の製造方法として、Crを5〜30%含有する
    良導電性の銅合金に、更に凝固時ならびに固相中でのC
    r相の晶出ないしは析出特性を制御するためのZr、T
    iの一種または二種を合計で0.05%以上0.5%以
    下添加し、残部がCuと不回避不純物とからなる銅合金
    鋳塊を用いて、凝固時に晶出した針状のCrをファイバ
    ー状にするための加工、及び固溶CrならびにZr、T
    iの析出のための熱処理として、400℃以上600℃
    以下で0.5時間以上の熱処理を行うことを特徴とする
    高強度で高電導性の高Cr含有銅合金材の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の加工および熱処理は、
    加工を行った後に熱処理を行う場合、熱処理を行った後
    に加工を行う場合、また、2以上の加工若しくは熱処理
    を組み合わせて行う場合を含むことを特徴とする高強度
    で高電導性の高Cr含有銅合金材の製造方法。
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