JP2706729B2 - 鉛蓄電池ガラスマツト用バインダーの製法 - Google Patents

鉛蓄電池ガラスマツト用バインダーの製法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、鉛蓄電池において電極のセパレーター用
のガラスマツトに対するバインダーの製法に関するもの
である。
〔従来の技術〕
一般に鉛蓄電池は、第2図および第3図に示すように
PbO2からなる陽極板3と、Pbからなる陰極板4とを交互
に所定間隔で配設し、上記両極板3,4の間にガラスペー
パー5とガラスマツト6とを重ね合わせたセパレーター
を配挿し、全体をH2SO4溶液からなる電解液に浸漬して
構成されている。7は、ポールである。この種のガラス
マツト6は、電解液に対する耐久性があることはもとよ
り、電解液の浸透性が良好であり、しかも機械的強度の
高いことが求められる。すなわち、上記鉛蓄電池の組み
立て工程においては、上記陽極板3および陽極板4の間
にガラスマツト6とガラスペーパー5とを重ね合わせた
セパレーターを打ち込むものであり、その打ち込み作業
に充分耐えて上記電極を保持するだけの強度が要求さ
れ、かつ電解液に侵されず、しかも電池電力の発生の見
地から電解液の流通性に富んでいることが要求される。
このような観点から、上記ガラスマツト6には、耐酸性
に優れたアクリル酸系重合体が上記ガラスマツト6の繊
維組織を結合し補強するためのバンイダーとして利用さ
れている。そして、上記アクリル酸系重合体の補強効果
をさらに高めるため、アクリル酸,メタクリル酸等の重
合性不飽和カルボン酸とともに、各種の熱架橋性単量体
を用い、これらを共重合させることが行われている。例
えば、上記熱架橋性単量体として、水酸基やグリシジル
基を有する単量体を併用する(特公昭57−26546号公
報)ことやグリシジル基やN−アルキロール基を有する
単量体を併用する(特開昭61−288370号公報)こと、な
らびに、有機珪素単量体を使用する(特開昭59−203738
号公報,特開昭61−155763号公報)ことがあげられる。
しかしながら、これらの熱架橋性単量体が共重合されて
いるアクリル酸共重合体バインダーにおいては、経日に
より、分子構造中の、熱架橋性単量体から誘導された部
分と、重合性不飽和カルボン酸から誘導された部分との
間に架橋反応が生起するものであり、ガラスマツト6に
対して施工する前にこのような現象が起こると、ガラス
マツト6に対する補強効果が小さくなるという問題があ
る。
〔発明が解決しようとする問題点〕
上記鉛蓄電池ガラスマツト用バインダーには、ガラス
マツトの機械的強度を補強させることはもとより、電解
液をよりよく流通させるためガラスマツトに対するバイ
ンダーの付着量を少なくすることが求められている。す
なわち、バインダーの付着量を少なくして、しかも機械
的強度を適正に発現させるためには、バインダーがガラ
スマツトの表面のみならず内部にまで均一に付着するこ
とが望ましい。この見地からバインダーの粘度を高くす
ることが考えられ、使用に際してアルカリを添加するこ
とにより、アルカリ酸共重合体系バンイダーの粘度を高
めることが提案されている(特公昭48−277093号公
報)。しかしながら、上記アルカリ増粘型のバインダー
においても、熱架橋性単量体と重合性不飽和カルボン酸
とが共重合しているアクリル酸共重合体を主成分として
使用している。このような製造の共重合体は、先に述べ
た共重合体と同様、熱架橋性単量体部分とカルボン酸部
分とが架橋反応し、経日によつて、アルカリ性物質を用
いて増粘させて得られる粘度の発現性(以下「アルカリ
増粘性」と略す)やガラス繊維に対する密着性のような
特性が大幅に低下する。したがつて、これを主成分とす
る上記バインダーでは、上記特性が経日によつて大幅に
低下する。また、上記バインダーに有機珪素単量体を含
有させ、ガラス繊維に対する密着性を強化したものも提
案されている(特開昭59−203738号公報)。このバイン
ダーは、上記有機珪素単量体によつてガラス繊維に対す
る密着性は増しているものの、バインダーの主成分は、
熱架橋性単量体と重合性不飽和カルボン酸を共重合させ
たアクリル酸共重合体であり、やはり架橋反応の生起に
よりそのアルカリ増粘性やガラス繊維に対する密着性が
経日で大きく低下する。このような不都合を解消するた
め、有機珪素化合物の添加により、経日によるガラス繊
維へのバインダー密着性低下を回復する方法が提案され
ている(特開昭61−288370号公報)。しかし、この方法
では、バインダーを使用する直前に有機珪素単量体を添
加することが必要となり、操作が煩雑になるうえ、経日
によるアルカリ増粘性の低下は改善することができな
い。このように、従来では、バインダーの付着量を少な
くしながら充分な機械強度を発揮し、しかも経日によつ
てバインダー特性の低下しないガラスマツト用バインダ
ーは存在していないのが実情である。
この発明は、このような事情に鑑みなされたもので、
付着量を少なくしても充分な機械強度を発現し、しかも
経日によつてバインダー特性の低下することのない鉛蓄
電池ガラスマツト用バインダーの提供をその目的とす
る。
〔問題点を解決するための手段〕
上記の目的を達成するため、この発明の鉛蓄電池ガラ
スマツト用バインダーの製法は、下記の(A)成分と
(B)成分を混合し乳化重合させるという構成をとる。
(A)熱架橋性単量体(a)と、アクリル酸アルキル
エステルおよびメタクリル酸アルキルエステルの少なく
とも一方(b)とを必須成分とする混合原料を、乳化重
合工程を経由させることにより得られた水性分散液。
(B)重合性不飽和カルボン酸(c)と、アクリル酸ア
ルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルの
少なくとも一方(b)とを必須成分とする単量体混合
物。
〔作用〕
すなわち、本発明者らは、長期にわたつて保存してお
いた後でも、アルカリ物質(アミン等の塩基性物質も含
む)の添加により増粘させれば、常に所定の粘度が得ら
れると同時に、初期状態と同様の機械的強度等を発現し
うるバインダーの開発を目的として、一連の研究を重ね
た。この研究の過程で、本発明者らは、重合性不飽和カ
ルボン酸部分と熱架橋性単量体部分とが相互に接触しな
いようにすれば、上記両部分の架橋が生じなくなると想
起した。そして、これを中心にさらに研究を重ねた結
果、2段重合によつて、バインダー粒子をコア部とシエ
ル部を有する2層構造にし、コア部に熱架橋性単量体部
分を配設し、これの外周のシエル部に重合性不飽和カル
ボン酸部分を配設すると、保存中においては両部分が接
触しないため架橋反応が生起せず、使用に際してアルカ
リ物質を添加すると、シエル部に存在する重合性不飽和
カルボン酸部分でカルボキシル基の解離が生起して増粘
効果が得られ、またガラスマツトの付着段階でシエル部
とコア部との界面が崩れシエル部の重合性不飽和カルボ
ン酸部分とコア部の熱架橋性単量体部分とが接触し、両
部分による架橋反応の生起により充分な機械強度がガラ
スマツトに付与されるようになることを見出しこの発明
に到達した。
この発明に係るバインダー粒子は、第1図の模式図に
示すように、コア部2が熱架橋性単量体部分を有するア
クリル酸アルキルエステル重合体からなり、シエル部1
が重合性不飽和カルボン酸とアクリル酸アルキルエステ
ルとの共重合体によつて構成されている。
この発明は、先に述べたように、2段重合によつて、
上記構造のバインダー粒子を含むバインダーを得るもの
であり、1段目の乳化重合によつて、アクリル酸アルキ
ルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルの少な
くとも一方(以下「(メタ)アクリル酸アルキルエステ
ル」という)と、熱架橋性単量体との共重合体を形成
し、これを重合種(乳化重合の核になる粒子のこと)と
して、2段目の乳化重合を行わせる。これにより、上記
重合種の粒子の外周に、重合性不飽和カルボン酸と(メ
タ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体からなる
シエルが形成される。これについてより詳しく説明する
と、この発明は、上記1段目の乳化重合によつて得られ
た、上記重合種を含む水性分散液を(A)成分とし、2
段目の乳化重合を行うために使用する重合性不飽和カル
ボン酸と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの単
量体混合物を(B)成分とし、両者を混合し乳化重合さ
せるものである。
上記(A)成分の水性分散液は、熱架橋性単量体
(a)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)と
を必須成分とする混合原料を使用し、これを乳化重合工
程を経由させることによつて得られるものである。
上記熱架橋性単量体(a)としては、(メタ)アクリ
ル酸グリシジルやアリルグリシジルのようなエポキシ基
を有する単量体や、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチ
ル,(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルのような水
酸基を有する単量体があげられる。また、水酸基を有す
る単量体としては、これ以外にアクリル酸もしくはメタ
クリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステルや
ジエステルがあげられ、さらにアクリル酸もしくはメタ
クリル酸とエチレングリコールまたは1,3−ブチレング
リコールのような二価アルコールとのジエステルがあげ
られる。また、上記のような単量体の他、N−メチロー
ル(メタ)アクリルアミド,N−メトキシメチル(メタ)
アクリルアミドのようなN−アルキロール基を有する単
量体もあげられる。さらに、ビニルトリメトキシシラ
ン,ビニルトリエトキシシラン,アリルエトキシシラ
ン,γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシ
ラン,γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメト
キシララン,γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリス
(β−メトキシエトキシ)シラン,2−スチリルエチルト
リメトキシシランのような加水分解性シリル基を有する
単量体も使用することができる。熱架橋性単量体(a)
としては、上記の単量体を適宜に選択し、単独でもしく
は併用することが行われる。
上記熱架橋性単量体(a)の混合原料(1段目の乳化
重合の原料)中に占める割合は、1〜30重量%(以下
「%」と略す)の範囲に設定することが好適である。す
なわち、これが1%未満になると、架橋反応によるバイ
ンダー被膜強度の向上効果が不充分となり、ガラスマツ
トの機械的強度の向上が充分に実現しなくなる。逆に、
30%を越えると、乳化重合の不安定化現象や、バインダ
ーの造膜不良が生ずる傾向が見られるからである。
上記熱架橋性単量体(a)と共重合させる(メタ)ア
クリル酸アルキルエステル(b)としては、通常、炭素
数1〜18の直鎖状もしくは分枝状脂肪族アルキルエステ
ルまたは脂環式アルキルアルコールと、(メタ)アクリ
ル酸とのエステル化合物が使用される。例えば、アクリ
ル酸もしくはメタクリル酸のメチル,エチル,ブチル,2
−エチルヘキシル,ステアリルあるいはシクロヘキシル
エステルなどがあげられる。これらのエステルは、単独
で使用してもよいし併用しても差支えはない。このよう
なエステル(b)の混合原料中に占める割合は、30〜99
%に設定することが好適である。すなわち、30%を下回
ると、バインダーの耐水性,耐酸性が不充分となる傾向
が見られるからである。
上記混合原料は、熱架橋性単量体(a)と(メタ)ア
クリル酸アルキルエステル(b)とを必須成分とするも
のであり、場合によつてはその他の重合性単量体(d)
が任意成分として含まれる。上記単量体(d)の使用量
は、例えば、上記混合原料の0〜69%を占めるように設
定される。ここで、上記その他の重合性単量体(d)と
しては、上記(a),(b)と共重合可能な公知の単量
体が用いられ、とりわけスチレンを使用することが好ま
しい。しかしながら、スチレン以外に、酢酸ビニル,ア
クリロニトリル,塩化ビニル,塩化ビニリデン,フツ化
ビニル,フツ化ビニリデン,エチレン,プロピレン,ブ
タジエン,イソプレン,ジビニルベンゼン,ジアリルフ
タレートなどが好適な例としてあげられ、単独でもしく
は併せて使用される。なお、少量(上記混合原料中0.1
〜4%程度)であれば、後記の重合性不飽和カルボン酸
(c)を任意成分として上記混合原料に使用することは
可能である。
上記(A)成分の水性分散液は、上記(a),(b)
ならびに必要性に応じて用いられる(d)成分からなる
混合原料を乳化重合工程を経由させることにより得られ
るものである。この乳化重合は、特に限定するものでは
なく、公知の方法が行われる。これにより、上記各
(a),(b),(d)成分を共重合成分とするアクリ
ル酸アルキルエステル共重合体が得られ、これが2段目
の乳化重合における重合種となる。
上記(A)成分の水性分散液と乳化重合させる(B)
成分の単量体混合物は、重合性不飽和カルボン酸(c)
と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)とを必須
成分とするものである。
上記重合性不飽和カルボン酸(c)としては、分子中
にカルボキシルキを1個以上有するものが用いられ、例
えば、アクリル酸,メタクリル酸,クロトン酸のような
不飽和一塩基酸や、マレイン酸,フマル酸,イタコン酸
のような不飽和二塩基酸が用いられる。さらに、これ以
外に、炭素数1〜17のアルキルアルコールと不飽和二塩
基酸とのモノエステル化合物や、二価アルコールと低級
一価アルコールとのモノエーテルと不飽和二塩基酸との
モノエステル化合物等があげられる。これらの化合物
は、単独でもしくは併せて使用される。
上記重合性不飽和カルボン酸(c)は、上記(B)成
分の単量体重合体中に5〜35%の割合で含有されるよう
にすることが好適である。すなわち、これの含有量が5
%未満になると、バインダー付着量およびマイグレーシ
ョン防止に影響するアルカリ増粘性や、ガラス繊維に対
するバインダーの密着性が不充分となり、ガラスマツト
に対する機械的強度の向上効果が不充分になる傾向がみ
られるからである。逆に、35%を越えると、バインダー
の耐水性,耐酸性が不充分となりまた乳化重合の不安定
化が生じるからである。
上記重合性不飽和カルボン酸(c)とともに使用され
る(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)は、上記
(A)成分の水性分散液に用いられらと同様のものが使
用される。この場合、(A)成分で使用したエステルと
(B)成分で使用するものとは同一であつてもよいし、
異なつていても差し支えはない。
このような(メタ)アクリル酸アルキルエステル
(b)は、単量体重合物中に30〜95%の割合で含有され
るように設定されることが好適である。すなわち、この
含有量が30%未満になると、バインダーの耐水性,耐酸
性が不良になつたり、ガラス繊維に対する密着性が悪く
なる傾向が見られるからである。
上記重合性不飽和カルボン酸(c)と(メタ)アクリ
ル酸アルキルエステル(b)とは、(B)成分の単量体
混合物の必須成分となるものであるが、場合によつては
その他の重合性単量体(d)が任意成分として用いられ
る。上記その他の重合性単量体(d)は、前記水性分散
液(A)成分に用いられるものと同じであり、(A)成
分に用いたものと同一のものもしくは異なつたものが適
宜に使用される。
この単量体混合物〔(B)成分〕において、上記
(c)と(b),(d)との合計量は、100%に設定さ
れる。したがつて、必要に応じて用いられる上記その他
の重合性単量体(d)は0〜65%の範囲内で選ばれる。
すなわち、上記その他の重合性単量体(d)の割合が65
%を越えると、バインダーの耐水性,耐酸性が悪くなつ
たり、ガラス繊維に対する密着性が悪くなるという現象
がみられるようになるからである。
この発明においては、上記(A)成分である水酸分散
液と、(B)成分である単量体重合物を混合し、乳化重
合させる。この場合、水酸分散液(A)と単量体重合物
(B)との使用割合は、上記水性分散液(A)における
熱架橋性単量体(a),(メタ)アクリル酸アルキルエ
ステル(b),その他の重合性単量体(d)からなる固
形分が、全単量体〔上記(A)成分および(B)成分に
おける全単量体〕に対して、30〜70%の範囲内になるよ
うに設定される。すなわち、上記使用割合が30%未満に
なると、熱架橋性単量体(a),(メタ)アクリル酸ア
ルキルエステル(b),その他の単量体(d)との共重
合体によるバインダー被膜強度向上効果が少なくなり、
ガラスマツトの機械強度が不充分となる傾向がみられ
る。逆に、70%を越えると、(B)成分の単量体混合物
量が相対的に少なくなり、単量体混合物によるガラス繊
維密着性が不充分となる傾向がみられるからである。
なお、上記水性分散液(A)成分と単量体混合物
(B)成分との乳化重合では、上記水性分散液(A)成
分に対して、単量体混合物(B)成分を一括して添加し
てもよいし、分割して添加してもよい。また、連続添加
しても差支えはない。この場合において、上記水性分散
液(A)成分および単量体混合物(B)成分をそれぞれ
二組以上に分割する多段階重合法を採用することができ
るが、製造工程の簡略化,所要時間の短縮化の点からそ
れぞれ一段階で重合することが好ましい。
上記2段目の乳化重合ならびに前記1段目の乳化重合
で使用する乳化剤としては、従来公知のアニオン性,カ
チオン性,ノニオン性の乳化剤あるいは高分子乳化剤を
使用することができる。例えば、ナトリウムドデシルサ
ルフエート,アンモニウムドデシルサルフエート,ナト
リウムドデシルポリグリコールエーテルサルフエート,
スルホン化パラフインのアルカリ金属塩あるいはアンモ
ニア塩、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート,ナ
トリウムラウレート,高アルキルナフタレンスルホン酸
塩,ジアルキルスルホコハク酸塩,ポリオキシエチレン
アルキルサルフエート,ポリオキシエチレンアルキルエ
アリールサルフエート,ポリオキシエチレンアルキルエ
ーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテ
ル,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソ
ルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシプロピレン重合
体,ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド,アル
キルベンジルメチルアンモニウムクロライド,ポリビニ
ルアルコール,ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム,ポ
リ(メタ)アクリル酸アンモニウム,ポリヒドロキシエ
チル(メタ)アクリレート等があげられ、単独でもしく
は併せて使用される。乳化剤は、余り多量に使用する
と、バインダーの耐水性が劣化する傾向があるため、水
性分散液(A)および単量体混合物(B)それぞれに対
し、10%以下、好ましくは5%以下の量を用いるのがよ
い。
上記各乳化重合で用いられる重合用触媒としては、乳
化重合において通常使用されるもの、例えば、過硫酸ア
ンモニウム,過硫酸カリウム,過硫酸ナトリウム,過酸
化水素,過酸化ベンゾイル,ジクミルパーオキサイド,
ジ−t−ブチルパーオキサイド,2,2′−アゾビスイソブ
チロニトリル等を使用することができ、その使用量は、
混合原料,単量体混合物に対して0.01〜3%の範囲とす
ることが好適である。また、重合速度を増大させたり、
反応温度を低下させる必要があるときには、過酸化物と
アスコスビン酸塩,可溶性亜硫酸塩,ハイドロサルフア
イトチオ硫酸塩等とを組み合わせて用い、レドツクス系
で重合することができる。重合温度は30〜90℃の範囲と
するのが好ましい。
このようにして乳化重合を行うことにより、第1図の
模式図に示すような二重構造のバインダー粒子を有する
バインダーが得られる。
このバンイダーは、その粒子が上記のような二重構
造、すなわち、コア,シエル構造となつているため、バ
インダーの放置安定性が向上し、長期にわたり保存して
おいた後でも、アルカリ性物質により増粘させれば常に
一定の粘度が得られる。したがつて、経日によるガラス
繊維へのバインダー密着性の低下現象を招くことがな
い。通常、pHが5以上になるようアルカリ性物質を加え
るのが好ましい。アルカリ性物質としては、例えば、ア
ンモニア,メチルアミン,エチルアミン,ジエチルアミ
ン,トリエチルアミン,エタノールアミン,トリエタノ
ールアミン等ガラスマツト製造時の乾燥工程で揮発する
ものが、ガラスマツト中に残存して耐水性,耐酸性を低
下させない点で好ましい。また、この発明に係るバイン
ダーによれば、ガラスマツトに付着後において、架橋現
象が生起し三次元網状構造をとるため、保管中の取り扱
い性に優れ(粘度等が低い)、しかも少量の付着量で充
分な機械強度をガラスマツトに付与することができる。
なお、上記のようにして得られた蓄電池用ガラスマツ
トのバンイダーは、公知の粘度調節剤,カツプリング
剤,架橋剤等を加えることもできる。
〔発明の効果〕
この発明の鉛蓄電池ガラスマツト用バインダーの製法
によれば、バインダーの付着量やマイグレーシヨンの防
止に影響するアルカリ増粘性、ならびにガラス繊維に対
する密着性が経日により劣化しないバインダーを容易に
得ることができる。そして、得られたバインダーは、経
日安定性に優れ、しかも常時高い機械的強度をガラスマ
ツトに付与することができる。したがつて、それによつ
て処理されたガラスマツトは、鉛蓄電池製造の際におい
て、強い力の打ち込み力に充分耐え得るだけの強度を有
するようになる。そのうえ、使用するアルカリ物質の使
用量の調節により、粘度の調節が可能となるため、最小
のバインダーの使用量で充分な機械的強度が得られるよ
うな均一付着をなしうる粘度に容易に調節することが可
能になる。
つぎに、実施例について説明する。
〔実施例1〕 スチレン21.5重量部(以下「部」と略す),アクリル
酸メチル19.5部,N−メチロールアクリルアミド2部を乳
化重合させることによつて得られた濃度28%の水性分散
液〔(A)成分〕を準備した。つぎに、この水性分散液
を撹拌器付きの反応容器内に194部仕込み、内部を窒素
置換した後、過硫酸カリウム0.16部を仕込んだ。そし
て、窒素ガスを吹き込みながら75℃に加熱して均一水溶
液とした。つぎに、そこへ滴下ロートから予め調整して
おいたメタクリル酸メチル25.8部,アクリル酸メチル1
7.5部,メタクリル酸6.5部,ナトリウムノニルフエニル
ポリオキシエチレンスルホネート1.5部からなる単量体
混合物〔(B)成分〕を2時間かけて滴下した。この滴
下後、温度を75℃に保持し、さらに2時間撹拌して乳化
重合させた後、30℃に冷却した。つぎに、濃度1%のア
ンモニア水を加えて、pHを6.5に調整し、不揮発分33.5
%の水性分散液からなる鉛蓄電池ガラスマツト用バイン
ダーを得た。このバインダーを(1)とする。
〔実施例2〜5〕 単量体混合物,乳化剤,重合触媒,重合温度および水
を第1表に示した通りとする他は、実施例1と同様の操
作を行いバインダー(2)〜(5)を得た。
〔比較例〕 実施例1で使用したのと同じ反応器に水152部,ナト
リウムノニルフエニルポリオキシエチレンスルホネート
1部,過硫酸ナトリウム0.3部を仕込み、窒素ガスを吹
き込みながら75℃に加熱し、均一水溶液とした。つい
で、滴下ロートから、予め調整しておいたメタクリル酸
54部,アクリル酸ブチル26部,メタクリル酸グリシジル
1部,N−メチロールアクリルアミド3部,メタクリル酸
16部,ナトリウムノニルフエニルポリオキシエチレンス
ルホネート4部からなる単量体混合物を4時間かけ滴下
した。そして、その後、温度を75℃に保持し、さらに2
時間撹拌して乳化重合させた後30℃に冷却した。つい
で、濃度1%のアンモニア水を加えてpH6.5に調整し、
不揮発物32.5%の水性分散液を得た。この水性分散液に
おいては、バインダー粒子は単一構造となつている。こ
れを比較バインダーとする。
〈評価方法および評価結果〉 実施例1〜5および比較例で得られた各バインダーに
ついて下記の性能試験を行つた。その結果を後記の第2
表に示す。
(アルカリ増粘性の経日安定性) 50℃雰囲気で所定時間加熱促進したサンプルを固形分
7%に希釈し、ついで25%アンモニア水によりpH9.5付
近に調整し、20時間後粘度を測定した。
(ガラスペーパー強度試験) アルカリ増粘させた上記バインダーを固形分2%に希
釈し、市販のガラスペーパー(目付78g/m2,ガラス繊維
長800μ)に含浸し、規定付着量になるよう調整したの
ち、105℃で15分乾燥し、付着量13%のガラスペーパー
を得た。
このガラスペーパーより作製した縦100mm横15mmの試
験片を縦方向に引つ張つたときの強度を測定した。
上記の表から明らかなように、実施例で得られたバイ
ンダー(1)〜(5)は、比較例のバインダーに比べて
バインダー製造直後から製造3カ月後のアルカリ増粘性
ならびにガラスペーパー強度試験の結果が優れているこ
のがわかる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の一実施例で得られたバインダーにお
けるエマルジヨン粒子の構造を示す模式図、第2図は鉛
蓄電池の構造を示す断面図、第3図は第2図の丸で囲わ
れた部分Aの拡大図である。 2……コア部、1……シエル部

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の(A)成分と(B)成分を混合し乳
    化重合させることを特徴とする鉛蓄電池ガラスマツト用
    バインダーの製法。 (A)熱架橋性単量体(a)と、アクリル酸アルキルエ
    ステルおよびメタクリル酸アルキルエステルの少なくと
    も一方(b)とを必須成分とする混合原料を、乳化重合
    工程を経由させることにより得られた水性分散液。 (B)重合性不飽和カルボン酸(c)と、アクリル酸ア
    ルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルの
    少なくとも一方(b)とを必須成分とする単量体混合
    物。
  2. 【請求項2】上記(A)成分における混合原料に、さら
    にその他の重合性単量体(d)が含有されており、各原
    料(a),(b)、(d)の割合が、(a)+(b)+
    (d)=100重量%で、(a)が1〜30重量%,(b)
    が30〜99重量%,(d)が0〜69重量%に設定されてい
    る請求項(1)記載の鉛蓄電池ガラスマツト用バインダ
    ーの製法。
  3. 【請求項3】上記(B)成分の単量体混合物において、
    さらにその他の重合性単量体(d)が含有されており、
    各原料(c),(b),(d)の割合が、(c)+
    (b)+(d)=100重量%で、(c)が5〜35重量
    %,(b)が30〜95重量%,(d)が0〜65重量%に設
    定されている請求項(1)記載の鉛蓄電池ガラスマツト
    用バインダーの製法。
  4. 【請求項4】乳化重合時における(A)成分と(B)成
    分との混合割合が、(A)成分と(B)成分の全単量体
    に対して、(A)成分の固形分が30〜70重量%になるよ
    うに設定されている請求項(1)記載の鉛蓄電池ガラス
    マツト用バインダーの製法。
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