JP2679939B2 - 珪素鋼表面の平滑化方法 - Google Patents
珪素鋼表面の平滑化方法Info
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Description
る方法に関するものである。特にその表面にフォルステ
ライト(以下、グラスと云う)被膜を形成させずに二次
再結晶工程(仕上げ焼鈍工程)を完了させ、表面を平滑
化することで鉄損特性の改善を図ろうとするものであ
る。
として多用され、エネルギーロスを少なくすべく、改善
が繰り返されてきた。方向性電磁鋼板の鉄損を低減する
手段として、仕上焼鈍後の材料表面にレーザービームを
照射し局部歪を与え、それによって磁区を細分化して鉄
損を低下させる方法が例えば特開昭58−26405号
公報に開示されている。また、応力除去焼鈍しても磁区
細分化効果が消失しない手段が、例えば特開昭62−8
617号公報に開示されている。
好なものとなってきたが、更に鉄損値の低減を図るため
には鋼板表面近傍の磁区の動きを阻害する地鉄表面の凹
凸を取り除くこと(平滑化)が重要であるとの認識が生
まれてきた。しかしながら、珪素鋼板を通常の製造工程
で処理した場合、仕上焼鈍後の鋼板表面にはグラス被膜
が生成されており、表面平滑化のためにはグラス被膜を
除去する必要がある。
の技術が古くからあり、その後表面平滑化する方法とし
て特開昭64−83620号公報に開示されている化学
研磨、電解研磨等がある。平滑な表面を得るために、一
度生成されたグラス被膜を除去し更に化学研磨・機械研
磨等を行うことは種々の困難を伴う。グラス被膜は地鉄
中にその根を深くおろしているため、酸洗によって除去
しなければならない量は鋼板板厚1μm以上もあり生産
性が極めて悪い。更に酸洗設備設置に伴い、例えば薬剤
濃度管理、排水処理等の環境問題等もある。
るのでなく仕上焼鈍時にグラス被膜を生成させない方法
として米国特許第3785882号に開示されるAl2
O3、特公昭56−3414号公報に開示される含水珪
酸塩鉱物粉末等、SiO2と反応しない焼鈍分離剤を用
いる方法がある。この方法は、生成したグラス被膜を酸
洗除去する方法よりも優れている。しかしながら、この
方法においても脱炭焼鈍時に形成されたSiO2等の酸
化物が表面に残存するため、表面を平滑化するために化
学研磨・機械研磨等の処理が必要である。化学的方法に
おいては、前述の酸洗と同じく薬剤濃度管理、排水処理
等の環境問題があり、また機械研磨等物理的方法におい
ては工業的に大きな面積を持つ表面を同一基準で平滑化
することに困難がある。
平2−228481号公報に開示される、塩化物を焼鈍
分離剤中に添加し仕上焼鈍時にMgOとSiO2との反
応を抑制する方法がある。この方法は現在のところ最も
工業的に優れているが、薄い酸化膜が残存する点、得ら
れる表面粗度が化学研磨を用いた場合よりも粗い点が鉄
損低減の妨げとなっていた。
る上記問題を解消した、電磁鋼板の表面を平滑化し低鉄
損を得るための工業的手段を提供することを目的とし、
珪素鋼の脱炭焼鈍時に形成された酸化被膜を仕上焼鈍に
おいて除去し、かつ鋼板表面を平滑化する工業的な方法
を提供するものである。
素を含む化合物を焼鈍分離剤中に添加し、仕上焼鈍時の
雰囲気を変更した場合の鋼板表面の酸化膜が除去される
過程を詳細に調査した。その結果、添加される塩化物の
熱物理的性質すなわち塩化物の平衡解離塩素分圧が鋼板
表面の平滑化と密接な関係を持つこと、また表面平滑化
に雰囲気中の水素分圧が影響することを見いだした。平
滑化が充分に行われた鋼板の鉄損特性は、酸洗してグラ
ス被膜を除去したもの、特開昭64−62417号公
報,特開平2−228481号公報に開示される塩化物
を用いて酸化膜を除去したものに比べて低くなることを
見いだし本発明を完成させた。
〜7%のSiを含有する珪素鋼スラブを熱延し、必要に
応じて焼鈍を施し、1回の冷延または中間焼鈍を挟む2
回以上の冷延を行い、脱炭焼鈍後焼鈍分離剤を塗布、乾
燥し仕上焼鈍を行う方向性電磁鋼板の製造方法におい
て、焼鈍分離剤100重量部に対して、900℃におけ
る平衡解離塩素分圧の常用対数(以下Keと略す)が−
22以上の塩化物を塩素重量部で0.2部以上15部以
下添加し、かつ塩化物のKe値に応じて仕上焼鈍時の水
素分圧を変えることを特徴とする珪素鋼表面の平滑化方
法にある。この技術による仕上焼鈍後の鋼板表面は、グ
ラス被膜を酸洗除去し更に化学研磨を行った鋼板表面と
同等の平滑度を示す。磁壁の移動に対して障害となるよ
うな表面の凹凸がない、磁気的に理想的な表面になる。
素鋼中の珪素は極めて酸化されやすく、通常の仕上焼鈍
では鋼板表面にグラス被膜が形成される。グラス被膜と
地鉄の界面には凹凸が存在し磁壁の移動の妨げとなって
いる。発明者等は、仕上焼鈍中にグラス被膜を形成させ
ない方法の中でまず特開昭64−62417号公報、特
開平2−228481号公報に開示される、塩化物を焼
鈍分離剤中に添加し仕上焼鈍時にMgOとSiO2との
反応を抑制する方法を検討した。しかしながらこの技術
は、鋼板表面のグラス被膜除去による打抜性改善を目的
としていたため、グラス被膜を酸洗した場合と同等の表
面平滑度しか得られず、化学研磨を施した場合に比べて
鉄損は大きくなるものであった。
離剤中に添加し、仕上焼鈍中の鋼板表面を詳細に調査し
た。その結果、塩化物のKeが−22以上である場合
で、添加量が塩素重量部で0.2部以上15部以下であ
り、かつ仕上焼鈍時の雰囲気中の水素分圧を、塩化物の
Ke値に応じて設定した場合に限って、酸化膜はその根
ごと除去されること、引き続く高温焼鈍中に表面が平滑
化されることを見いだした。
量部で0.8部添加した場合の仕上焼鈍後の鋼板表面を
示している。仕上焼鈍時の水素分圧は0%(窒素100
%)である。黒い部分は、鋼板表面が鏡のように平滑化
され光の反射率が高くなっている部分であり、白い部分
は、薄い酸化膜が形成されている部分である。
l3を添加して得られた鋼板表面の黒く見える領域、C
aCl2を添加して得られた白く見える領域、及び通常
の珪素鋼仕上焼鈍板のグラス被膜を酸洗・除去した鋼板
表面の表面粗度を示している。CaCl2を添加して得
られる鋼板表面の粗度は、酸洗した仕上焼鈍板表面の粗
度とほぼ同じであり、AlCl3を添加して得られる鋼
板表面は、これらの鋼板表面よりも平滑であることがわ
かる。
での塩化物を添加した場合は、従来技術である酸洗によ
ってグラス被膜を除去した場合よりも、極めて平滑な表
面を有する鋼板を得ることができると言える。図7(各
種塩化物の平衡解離塩素分圧の温度依存性)の900℃
におけるlog(PCl2)の値から、これらの塩化物
のKe値を読み取れば、−22以上となっている。
物を塩素重量部で0.8部添加し、水素分圧を25%
(窒素分圧75%)で仕上焼鈍した場合の鋼板表面を示
す。図7におけるKeが−15以上である塩化物(F
e,Co塩化物)を添加した場合には、平滑化された鏡
面状態の領域(黒く見える領域)が存在するが、Keが
−15未満である(Al,Mg,Ca塩化物)塩化物を
添加した場合には鏡面状態である領域が存在しない。
eが−15以上である場合には、仕上焼鈍雰囲気中の水
素分圧を25%以下とすれば鏡面状態の傾域が部分的に
でも得られ、−15未満である場合には、仕上焼鈍雰囲
気中の水素分圧を0%としなければ鏡面状態の領域を得
ることができない。図5は、MgOにBiCl3(Ke
≧−7.5)を塩素重量部で0.8部添加し、仕上焼鈍
時の雰囲気水素分圧を25%(a)、75%(b)、1
00%(c)に変えた場合の鋼板表面を示している。塩
化物のKeが−7.5以上であれば、仕上焼鈍雰囲気中
の水素分圧に関わらず鏡面状態が得られることがわか
る。
が、図7に示さなかった塩化物も含めて言えば、Keが
−22以上、−15未満である塩化物とは、例えばAl
Cl3,MnCl2,MgCl2等である。Keが−1
5以上,−7.5未満である塩化物には、例えばCoC
l2,CrCl2,FeCl2,KCl,PbCl2等
がある。Keが−7.5以上である塩化物には、例えば
BiCl3,BiOCl,BiCl等が含まれる。
機構についてはまだ明らかではないが、我々は次のよう
に考えている。分離剤中に添加された塩化物は、沸点が
低ければ仕上焼鈍中に気体となって蒸発し、沸点が高い
ものは液体となって鋼板表面に付着する。MgCl2の
例をとれば、下記数式,の反応が平衡にありCl2
ガスがコイル板間に充満する。仕上焼鈍中に容易に気化
するBiCl3では、下記数式の反応が平衡にあり、
やはりCl2ガスがコイル板間に充満する。
分圧は、塩化物の平衡解離塩素分圧によって支配され
る。図7は、各種塩化物の平衡解離塩素分圧を温度の関
数として示したものである。解離塩素分圧が高いBiC
l3,CoCl2,FeCl2等を添加すれば、仕上焼
鈍雰囲気中のCl2分圧が高くなることが予想される。
鋼板表面の酸化層を充分拡散し、酸化層/地鉄界面に到
達する。地鉄にClが到達すると Fe+2Cl→FeCl2↑ ……………………………… の反応によってFeCl2が形成される。FeCl2の
沸点は低いので酸化層/地鉄界面で気化し、酸化層を地
鉄から剥離させる。この反応の支配因子は、Cl濃度及
び温度である。
には、温度が高くなるとより大きいCl2分圧を必要と
する。BiCl3を添加した場合の実験では、900℃
で酸化膜と地鉄界面の剥離が生じ、その後引き続く高温
焼鈍で表面が平滑化されていた。BiCl3のKe値は
約−6.5である。このKe値よりも更に小さいKe値
を持つ塩化物を添加した場合は、900℃で酸化膜を拡
散し地鉄と反応するCl濃度がBiCl3を添加した場
合より少なくなるため、この温度では酸化膜の剥離は生
じない。酸化膜の剥離が生じる温度はより高温側にシフ
トする。
l2を添加した場合、酸化膜の剥離が更に高温側にずれ
るため、1200℃までの仕上焼鈍温度域では、もはや
表面が平滑化されないものと考えている。鏡面化に及ぼ
す仕上焼鈍時の水素分圧の効果について次のように考え
ている。板間にH2ガスが流入すると、 H2+Cl2→2HCl の反応が生じ、板間のCl2ガス量は減りHClガス量
は増加する。HClはCl2と比べて原子の結合エネル
ギーが大きく分解しにくいため、酸化層を拡散するCl
原子数が減ると考えている。
層剥離の効率が下がると考えている。もともとCl2ガ
スを多く発生するBiCl3は、仕上焼鈍雰囲気をH2
ガス100%としても鏡面状態が得られるが、Cl2ガ
ス発生量が少ないMgCl2等はH2ガスを25%含め
ただけでも鏡面状態が得られなかった実験結果はこの考
えを支持している。
い場合には、コイル幅方向全域に渡って酸化膜を除去す
ることができない。添加量を多くしても板間に存在しう
るClガスの体積は一定であるので、余分に添加された
塩化物より発生するCl2ガスはコイル板間より流出
し、効果を持たない。また、仕上焼鈍中に鋼板焼き付き
が発生しないためには、塩化物が蒸発した後に分離剤が
ある程度残存していることも必要である。従って、塩化
物の添加量の上限は塩素重量部で15部とした。
な光沢を保ち、従来のグラス被膜を酸洗した鋼板に比べ
て、表面の平滑度が良くなり鉄損が低減される。本技術
は低鉄損を得ることを目的とするものであるが、それ以
外の目的で、例えば二次再結晶を安定化する等の目的で
塩化物以外の化合物すなわち窒化物、硫化物等を鏡面化
を妨げない範囲で焼鈍分離剤中に添加することは許され
る。分離剤の塗布方法は公知の方法で良く、特に限定し
ない。水へ添加・攪拌して塗っても、静電塗布しても良
い。
の方法によって鋳造、熱延、冷延、焼鈍を施される電磁
鋼板である。低鉄損を得る目的でSiを2%以上7%以
下添加したスラブを用いる。上限は工業的に圧延が可能
なSi量であり、下限は鏡面化を生じさせ得る高温仕上
焼鈍で変態を生じさせないSi量である。
n:0.15%、S:0.007%、Al:0.027
%、N:0.007%を含むスラブを、1150℃で加
熱後熱延し1.8mmの熱延板とした。1120℃で熱
延板を焼鈍後0.16mmまで冷延し、830℃で脱炭
焼鈍を行った。表1に示す組成の焼鈍分離剤をスラリー
状で塗布し、1200℃で20時間の仕上焼鈍を行っ
た。塩化物の添加量は塩素重量部で0.8重量部、仕上
焼鈍の雰囲気は窒素100%である。焼鈍後鋼板表面を
水洗し、グラス被膜が形成されたものはこれを酸洗除去
し歪取焼鈍後、5mm間隔でレーザー照射し、1.5k
g/mm2の張力をかけて磁気測定を行った。
仕上焼鈍後酸洗で酸化膜を除去するよりも低い鉄損が得
られることがわかる。これは前述したように表面が平滑
になったことによって、磁壁移動が容易になったためと
考えている。
鈍までを行い、塩素重量部にして表2に示す量のBiC
l3を焼鈍分離剤中に添加し、脱炭板表面に塗布・乾燥
後仕上焼鈍を行った。仕上焼鈍の雰囲気は窒素75%、
水素25%である。仕上焼鈍後鋼板表面を水洗し、実施
例上と同様にして磁気測定を行った。
塩素重量部で0.2部以上とすれば、低い鉄損が得られ
ることがわかる。
被膜を酸洗する必要がなくかつグラス被膜を酸洗したも
のよりも表面が平滑化され、低い鉄損値が得られるので
工業的価値は極めて大きい。
Cl2を塩素重量部で0.8部添加した場合の水素分圧
0%で仕上焼鈍後の鋼板表面を示す写真である。
l2、MgCl2、CaCl2を塩素重量部で0.8部
添加した場合の水素分圧0%で仕上焼鈍後の鋼板表面を
示す写真である。
l2を塩素重量部で0.8部添加した場合の水素分圧2
5%で仕上焼鈍後の鋼板表面を示す写真である。
l3、MgCl2、CaCl2を塩素重量部で0.8部
添加した場合の水素分圧25%で仕上焼鈍後の鋼板表面
を示す写真である。
を塩素重量部で0.8部添加し、仕上焼鈍時の雰囲気水
素分圧を25%から100%まで変えた場合の鋼板表面
を示す写真である。
度プロフィルを示すものである。
して示した図表である。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で2%〜7%のSiを含有する珪
素鋼スラブを熱延し、焼鈍した後あるいは焼鈍を行わず
に、1回の冷延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷延を
行い、脱炭焼鈍後焼鈍分離剤を塗布、乾燥し仕上焼鈍を
行う方向性珪素鋼板の製造において、焼鈍分離剤100
重量部に対して、塩化物を塩素重量部で0.2部以上1
5部以下含有せしめ、かつ塩化物の平衡解離塩素分圧に
応じて仕上焼鈍時の水素分圧を変えることを特徴とする
珪素鋼表面の平滑化方法。 - 【請求項2】 焼鈍分離剤100重量部に対して、塩化
物を塩素重量部で0.2部以上15部以下含有せしめ、
かつ900℃における塩化物の平衡解離塩素分圧の常用
対数値が、−22以上、−15未満である場合には水素
分圧が0%に、−15以上、−7.5未満である場合に
は水素分圧が25%以下に、−7.5以上である場合に
は水素分圧が0〜100%となるように、仕上焼鈍雰囲
気中の水素分圧を変えることを特徴とする請求項1記載
の珪素鋼表面の平滑化方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20439393A JP2679939B2 (ja) | 1993-06-25 | 1993-06-25 | 珪素鋼表面の平滑化方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20439393A JP2679939B2 (ja) | 1993-06-25 | 1993-06-25 | 珪素鋼表面の平滑化方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0711334A JPH0711334A (ja) | 1995-01-13 |
JP2679939B2 true JP2679939B2 (ja) | 1997-11-19 |
Family
ID=16489804
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP20439393A Expired - Lifetime JP2679939B2 (ja) | 1993-06-25 | 1993-06-25 | 珪素鋼表面の平滑化方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2679939B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100479994B1 (ko) * | 1999-12-02 | 2005-03-30 | 주식회사 포스코 | 타발특성이 우수한 저온재가열 방향성전기강판의 제조방법 |
CN113286906B (zh) * | 2019-01-16 | 2023-12-08 | 日本制铁株式会社 | 方向性电磁钢板及成为方向性电磁钢板原板的钢板 |
-
1993
- 1993-06-25 JP JP20439393A patent/JP2679939B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0711334A (ja) | 1995-01-13 |
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