JP2678771B2 - 窒化アルミニウム被膜の製造方法 - Google Patents

窒化アルミニウム被膜の製造方法

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は窒化アルミニウム被膜の形成方法に関わり、
特に複雑形状または大型の基体の表面にもクラック・ピ
ンホールのない窒化アルミニウムの被膜を低コストで効
率的に形成できる方法に関する。
(従来の技術) 従来、無機基体の表面の被膜には、耐熱性があり、ま
た昇華するまで溶融しないため、炭素、炭化珪素、窒化
珪素、窒化硼素、窒化アルミニウム等の材料が用いられ
た。
又、無機基体の材料としては、鉄、又は耐酸化性に優
れ、溶融金属と反応しないセラミックス等が用いられ
た。
そしてその無機基体の表面に皮膜を形成する方法は化
学蒸着法や物理蒸着法が用いられた。
(発明が解決しようとする課題) 無機基体表面の被膜に用いられた、炭素、炭化珪素、
窒化珪素は、鉄、ニッケル、コバルト、シリコン、アル
ミニウム等の溶融金属と反応するため、その優れた耐熱
性にもかかわらず、これらの溶融金属と接触する用途に
は使用することができなかった。
無機基体にセラミックス、被膜に窒化硼素や窒化アル
ミニウムが使用された場合、薄膜を基体表面に形成する
方法には、化学蒸着法、もしくは物理蒸着法が使用され
たが、形状が複雑であったり、あるいは大型の成型体に
は適用することが困難であり、しかも処理方法複雑でコ
ストが高いという問題があった。
そこで、この発明は、上記のような従来技術の欠点を
除去するため、被膜の材料を工夫し、生成法として、浸
漬法、塗布法により、窒化アルミニウムの被膜の製造方
法を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段) 上記の目的を達成するため、本発明は、 (1)炭素を含むアルミニウム化合物及び又は (2)アルミニウム化合物と炭素源物質 と融点又は昇華点が1200℃以上の無機粉体を基体表面に
膜状に付着させ、その後窒素を含む雰囲気中で加熱し、
アルミニウム化合物を窒化反応させることにより基体表
面に窒化アルミニウムの被膜を形成することにより解決
した。
本発明においては先ず使用する基体の表面に (1)炭素を含むアルミニウム化合物及び又は (2)アルミニウム化合物と炭素源物質 と融点又は昇華点が1200℃以上の無機粉体を基体表面に
膜状に付着させる。
(1)炭素を含むアルミニウム化合物としては、アルミ
ニウムのアルコキシド、アルミニウムの低級、高級脂肪
酸のカルボン酸塩等が挙げられる。
具体的にはアルミニウムのアルコキシド等の有機化合
物、具体的には、アルミニウムのアルコシドとしては、
アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、ア
ルミニウムプロキシド、アルミニウムブトキシド等が挙
げられる。
アルミニウムの低級、高級脂肪酸のカルボン酸塩とし
ては、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、
蓚酸アルミニウム、吉草酸アルミニウム、カプロン酸ア
ルミニウム、乳酸アルミニウム、2−エチルヘキサン酸
アルミニウム、ラウリル酸アルミニウム、ステアリン酸
アルミニウム等が挙げられる。
(2)アルミニウム化合物と炭素源物質としては、アル
ミニウムの無機塩とアミノ基、アミド基、又は水酸基を
有する有機化合物、そのほか加熱により炭素を生成する
化合物との混合物が挙げられる。
この場合のアルミニウムの無機塩としては、塩化アル
ミニウム、臭化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸
アルミニウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
アミノ基を有する有機化合物としては、脂肪族第1級
アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、プロピル
アミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミ
ン、第2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチル
アミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジベンチ
ルアミン、ジヘキシルアミン、第3級アミンとしては、
トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルア
ミン、トリブチルアミン、トリベンチルアミン、トリヘ
キシルアミンが挙げられる。
脂環状アミンとしては、シクロヘキシルアミン、ジシ
クロヘキシルアミン、モルホリン、ピペラジン、不飽和
脂肪族アミンとしては、エチレンジアミン、ヘサメチレ
ンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテト
ラミン、ヘキサジエチルトリアミン、トリエチレンジア
ミン、その他のアミノ基と水酸基を有する有機化合物と
しては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリ
エタノールアミン、1.8−ジアザビシクロ{5.4.0}ウン
デセン−6(以下「DBU」という)、DBUのフェノール塩
類またはDBUのカルボン酸塩等を挙げることができる。
又、水酸基を有する有機化合物としては、ポリビニー
ルアルコール、1、4−ブタンジオール等のジオール
類、グリセリン等のトリオール類、フェノール、置換フ
ェノール等が挙げられる。
加熱により炭素を生成する化合物としては、フェノー
ル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン、
ポリアクリロニトル、ポリビニールアルコール、ポリ酢
酸ビニール、セリロース、庶糖等が挙げられる。
基体表面上に前記(1)炭素を含むアルミニウム化合
物及び又は(2)アルミニウム化合物と炭素源物質を膜
状に付着させるには、例えば前記(1)及び又は(2)
溶液中に、基体を浸漬して含浸させる方法がある。
この場合の前記(1)及び又は(2)の化合物若しく
は混合物の均一溶液を作るために必要に応じて各種溶剤
を用いることができる。
溶剤としては、水、メチルアルコール、エチルアルコ
ール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンチ
ルアルコール、ヘキシルアルコール、ジエチルエーテ
ル、テトラヒドラフンジ、ジオキサン、アセトン、メチ
ルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホル
ムアミド、ジメチルスルホキシド、アクリル酸、メタク
リル酸、クロトン酸、酢酸メチル、酢酸エチル、エチレ
ングリコールアセテート、アセトニトリル、ベンゼン、
トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の溶媒が挙げら
れるが、これらは溶解度に応じて2種以上の溶剤を混合
して用いることができる。
本発明において、(2)アルミニウム化合物と炭素物
質から窒素ガス雰囲気下で窒化アルミニウム膜が生成す
る反応は、次の式で表わされる。
N2 Al2O3+3C⇒2AIN+3CO 上記反応式において、アルミナを還元する働きをする
炭素は、出発原料として用いる炭素源物質である有機化
合物等が熱分解して生じる炭素が主であるが、基体とし
て炭素成型体を用いた場合には、一部炭素成形体からの
炭素もある。
従って、(2)アルミニウム化合物と炭素源物質との
混合物を調整する截の原料の混合は、炭素源物質が非酸
化雰囲気中で800℃にて30分加熱することにより残存す
る炭素量とアルミニウムとの比で決定される。
通常、アルミナと炭素から理想的に反応が進行したな
らばAl/C比は2/3となる、この化学量論比付近で反応を
行なうことが経済上望ましいが、AI/C比は0.2<AI/C<
0.8の範囲内で選ばれる。特に脱炭処理をしない場合に
は0.6<AI/C<0.8が好ましい。しかし、これらの比に関
しては、生成するAINの性能を損なわない限りにおい
て、任意に選択することが可能であり、本発明において
は特に制限を加えるものではない。
(1)及び又は(2)は配合する融点又は昇華点が12
00℃以上の無機粉体は、前記混合物より生成する窒化ア
ルミニウム被膜の生成時に生じる基体との熱収縮差、及
び収縮差のために生じるクラック、ピンホールの緩和、
又は防止の役割をするものである。
(1)及び又は(2)は配合する融点又は昇華点が12
00℃以上の無機粉体としては、ジルコニア、アルミナ、
チタニア、ムライト、スピネル、炭化珪素、窒化珪素、
窒化硼素、炭化チタン、窒化アルミニウム等があり、こ
れらの中でも窒化アルミニウムが特に好ましい。
これらの無機粉体の用いられる粒度としては、0.1〜
5μmの粒度が用いられるが、好ましくは0.3〜1μm
の粒度の範囲が良い。0.1μmより小さいと粉体同志の
凝集を生じ、その結果分散性が悪くなり、均一被膜が得
られない。又5μmより大きいと前記混合物中で沈降し
やすく基体上に均一に分散しない。
無機粉体の配合量としては、生成した窒化アルミニウ
ム被膜に対して40〜95Wt%内で選べられる。40Wt%より
小さいとクロックに対して防止効果が小さく、95%より
多いと基体との密着性に劣る。
なお、本発明においては、窒化アルミニウムの焼結を
促進するために、前記混合物に予め焼結助剤を添加する
ことができる。焼結助剤としては、カルシウム、又はイ
ットリウムの酸化物、塩化物、硝酸塩、水酸化物、およ
び有機カルボン酸塩が用いられる。これらの焼結助剤は
前記混合物の溶液中に均一に混合するなどして添加され
る。
このように必要に応じて焼結助剤を添加した前記混合
物の溶液中に基体を浸漬するなどして、これらを含浸さ
せ、乾燥することにより基体表面に前記混合物を膜状に
付着させたものは、次いで窒素を含む不活性ガス雰囲気
下で好ましくは1000℃以下の温度にて炭化を行なった
後、引続き1200〜2100℃、好ましくは1400〜1900℃にて
還元窒化を行なわせる。この処理により、基体表面には
強固に接合した厚さ数μm以上の窒化アルミニウム膜を
形成することができる。
なお、本発明において、窒化アルミニウム被膜を形成
する基体としては炭素(C)、炭化珪素(SiC)、窒化
硼素(BN)、マグネシア(MgO)、カルシア(CaO)等の
成形体が用いられるが、還元作用を有し反応が容易な点
から炭素成形体が好ましく用いられる。
また本発明の方法によれば、微細空孔を有する基体の
場合は真空ポンプ等の吸引装置により前記混合物の溶液
を強制的に含浸し、微細空孔中に、前記混合物の溶液を
封入することによっても、その基体の耐蝕性を向上させ
ることができる。
(実施例) 以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明
するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではな
い。
実施例1 重合度500のポリビニールアルコール3.52gを水50ml、
エタノール20mlの混合溶媒に溶解させた後、硝酸アルミ
ニウム20gを加え、十分に溶解させた。次いで、中心粒
径0.5μmの窒化アルミニウム粉体1.2gを分散させた。
この調整溶液中に予め、エタノールで洗浄した炭素基板
(50×1.7×1.2mm)を浸漬して、一定速度(0.5cm/se
c)で引き上げて乾燥することにより薄膜を形成した。
この操作を適量の厚みが得られるまで繰り返した。
次いで窒素雰囲気下で20℃/minで500゜に昇温加熱し
た。この時の残炭率は4.2%であった。この操作を適量
の厚みが得られまで繰り返した。
次いで、このものを窒素雰囲気下5℃/minで1700℃に
昇温加熱した。この操作により、約7μmの薄い被膜が
形成された。被膜中の窒化アルミニウム粉体の割合は窒
化アルミニウム膜に対して59.2Wt%であった。この薄膜
はx線回析分析の結果、窒化アルミニウムのピークが検
出さてれてこのプロフィールはJCPDSカード25−1133に
記載されている窒化アルミニウムの回析線の位置、強度
とともに良い一致が見られた。また、100倍での顕微鏡
観察結果、薄膜にクラック、ピンホールはなかった。
このようにして得られた炭素基板上の窒化アルミニウ
ム被膜を基盤目テスト(2mm四方にナイフで傷を入れた
被膜に対して、粘着テープを張り付けた後、一気にテー
プを剥す方法により被膜の密着強さをテストする。この
テストでは49コの基盤目を作り評価した。剥離後テープ
に1コも付着してなかったら、密着強さは100%、全部
テープに付着したら0%とした)により、密着強さを評
価したところ100%であった。
更に、炭素基板状上の窒化アルミニウム被膜にシリコ
ン粉末60mgを付着させ、アルゴン雰囲気下5℃/minで14
50℃に昇華加熱した。次いで、該サンプル表面を顕微鏡
で観察するとシリコン粉末は凝集して液滴状になり、被
膜表面に対して濡れていなかった。
実施例2 アルミニウムイソプロキシド20.4gにPH2に調整した水
200mlを加えて加水分解し、次いで1N塩酸50mlを加え
た。この溶液が透明になるまで加温下で撹拌した。この
調整溶液に中心粒径0.5μmの窒化アルミニウム粉体1.0
2gを添加し、十分に分散させた。この混合溶液より、実
施例1と同様な方法で被膜を形成した。そして、実施例
1と同様にして評価テストを行なった。結果を表−1に
示す。
実施例3 ステアリン酸アルミニウム8.76gをトルエンエタノー
ル107.2mlに60℃の加温下で溶解させた後、ジエタノー
ルアミン3.15gを添加した。室温に冷却後、中心粒径0.5
μmの窒化アルミニウム粉体06gを分散させた。次いで
実施例1と同様な方法で薄膜を形成した。得られた薄膜
の厚さは8μmであった。表面観察、密着強さ、耐蝕テ
ストを実施例1と同様の方法で行なった。結果を表−1
に示す。
実施例4、5 表1に示すように、ステアリン酸アルミニウムとジエ
タノールアミンの配合比は実施例3と同様に調整し、中
心粒径0.5μmの窒化アルミニウム粉体を0.89g、1.19g
に変えて同様なテストをした。結果を表−1に示す。
実施例6、7 エタノール20g、水50gの混合溶媒に酢酸アルミニウム
24.0gを添加し、80℃加温下で溶解させた後、次いで、
中心粒径0.8μmの窒化硼素粉体をそれぞれ1.2g、2.4g
添加して、実施例1と同様な薄膜を形成させた。
実施例1と同様な評価テストを行なったところ、表−
1に示す結果が得られた。
比較例1 窒化アルミニウム粉体の添加を除いたほかは、実施例
1と同様の方法で被膜を形成した。被膜表面の顕微鏡観
察では、ヘアークラックが観察された。基板表面が溶融
シリコンにより密着強さでは、96%であったが、溶融シ
リコンテストでは問題なかった。
比較例2 中心粒径0.5μmの窒化アルミニウム粉体を10gをトル
エン90mlに分散させ、実施例3と同様に被膜形成、被膜
テストを行なった。表−1に示したように密着強さが劣
っていた。
比較例3 薄膜を形成していない炭素基板に付いて、実地例1と
同様な方法で溶融シリコンに対する耐蝕テストを行なっ
た。顕微鏡による観察の結果、炭素基板表面が溶融シリ
コンにより劇しく侵されていた。
(発明の効果) 以上詳述した通り本発明の窒化アルミニウム被膜の形
成方法は基体表面上にアルミニウム化合物を窒化反応さ
せることにより直接窒化アルミニウム被膜を形成すると
ともに、窒化アルミニウム粉体を添加することにより、
クラック、ボアの発生を抑制する方法であって、従来よ
り、その高温安定性から電子工業等で金属溶解等に用い
られる炭素等の表面により不活性かつ高純度で耐酸化
性、溶融金属に対する耐蝕性、濡れ性に優れた窒化アル
ミニウムを効率的に形成することにより高寿命、高特性
な部材を提供する。
本発明の方法は、スパッター、蒸着法の様に、複雑か
つ高価で制約の多い方法とは全く異なり、安価で容易に
実施でき、しかも大型、複雑形状にも適用することが可
能であるという利点を有し、その工業的価値は極めて大
きい。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−252786(JP,A) 特開 平2−51407(JP,A) 特開 昭55−38907(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】窒化アルミニウム被膜の形成方法において (1)炭素を含むアルミニウム化合物及び又は (2)アルミニウム化合物と炭素源物質 と融点又は昇華点が1200℃以上の無機粉体を基体表面に
    膜状に付着させ、その後窒素を含む雰囲気中で加熱し、
    アルミニウム化合物を窒化反応させることにより基体表
    面に窒化アルミニウムの被膜を形成することを特徴とす
    る窒化アルミニウム被膜の製造方法。
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