JP3606923B2 - 窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法 - Google Patents

窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体基板等の電子部品や構造部品として使用される窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法に係り、特に窒化アルミニウム(AlN)焼結体本来の高熱伝導性に加えて、酸やアルカリに対する耐食性と強度とを改善した窒化アルミニウム焼結体および製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の金属材料と比較して強度、耐熱性、耐食性、耐摩耗性、軽量性などの諸特性に優れたセラミックス焼結体が、半導体基板、電子機器材料、エンジン用部材、高速切削工具用材料、ノズル、ベアリングなど、従来の金属材料の及ばない苛酷な温度、応力、摩耗条件下で使用される機械部品、機能部品、構造材や装飾品材料として広く利用されている。
【0003】
特に窒化アルミニウム(AlN)焼結体は高熱伝導性を有する絶縁体であり、シリコン(Si)に近い熱膨張係数を有することから高集積化した半導体装置の放熱板や基板として、その用途を拡大している。
【0004】
従来上記窒化アルミニウム焼結体は一般的に下記の製造方法によって量産されている。すなわち、窒化アルミニウム原料粉末に焼結助剤と、有機バインダと、必要に応じて各種添加剤や溶媒、分散剤とを添加して原料混合体を調製し、得られた原料混合体をドクターブレード法や泥漿鋳込み法によって成形し、薄板状ないしシート状の成形体としたり、原料混合体をプレス成形して厚板状ないし大型の成形体を形成する。次に得られた成形体は、空気または窒素ガス雰囲気において加熱され脱脂処理され、有機バインダとして使用された炭化水素成分等が成形体から排除脱脂される。そして脱脂された成形体は窒素ガス雰囲気等で高温度に加熱され緻密化焼結されて窒化アルミニウム焼結体が形成される。
【0005】
上記製造方法において、原料AlN粉末として平均粒径が0.5μm以下程度の超微細な原料粉末を使用する場合は、AlN粉末単独でもかなりの緻密な焼結体が得られる。しかしながら、原料粉末表面等に付着した多量の酸素等の不純物が焼結時に、AlN結晶格子中に固溶したり、格子振動の伝播を妨げるAl−O−N化合物等の複合酸化物を生成する結果、焼結助剤を使用しないAlN焼結体の熱伝導率は比較的に低かった。
【0006】
一方原料粉末として平均粒径1μm以上のAlN粉末を使用する場合は、その原料粉末単独では焼結性が良好でないため、ホットプレス法以外には助剤無添加では緻密な焼結体を得ることが困難であり、量産性が低い欠点があった。そこで常圧焼結法によって効率的に焼結体を製造しようとする場合には、焼結体の緻密化およびAlN原料粉末中の不純物酸素がAlN結晶粒子内へ固溶することを防止するために、焼結助剤として、酸化イットウリム(Y)などの希土類酸化物や酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属酸化物等を添加することが一般に行なわれている。
【0007】
これらの焼結助剤は、AlN原料粉末に含まれる不純物酸素やAlと反応して液相を形成し、焼結体の緻密化を達成するとともに、この不純物酸素を粒界相として固定し、高熱伝導率化も達成するものと考えられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の製造方法においては、本来、AlNと液相化合物との濡れ性が低く、また液相自体が偏析し易い性質を有することから、焼結後に液相が凝固する際に、液相はAlN粒子の間隙部に偏在するように残留し、凝固して粗大で脆弱な粒界相を形成する傾向がある。また、結晶粒の粒成長が進行し易く、平均粒径が5〜10μmと粗大な結晶粒が形成され易く、また微小な気孔が消滅せずに結晶粒内に残存し、焼結体の緻密化を阻害し、最終的に3点曲げ強度が350〜400MPa程度の低強度の窒化アルミニウム焼結体しか得られない問題点があった。
【0009】
近年、半導体素子の高集積化、高出力化に伴って増加する発熱量に対応するために、高熱伝導性(高放熱性)を有する上記窒化アルミニウム材料が普及しつつあり、その放熱性については大体満足する結果が得られている。しかしながら上記のように構造部材としての強度が不足するため、例えば窒化アルミニウム焼結体で形成した半導体基板を実装ボードに装着する際に作用する僅かな曲げ応力や取扱時に作用する衝撃力にって半導体基板が損傷し、半導体回路基板の製造歩留りが大幅に低下してしまう問題点があった。
【0010】
また上記AlN焼結体は酸やアルカリに対する耐食性が未だ不充分であり、半導体装置材料として加工する場合にアルカリ性のエッチング液を使用した回路形成処理や酸洗浄処理においてダメージを受け易い欠点があった。また構造材料として使用した場合においても、使用環境によっては薬品等の化学物質による酸化やアルカリ脆化が進行し易く、充分な耐久性や信頼性が得られないという問題点があった。
【0011】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、AlN焼結体本来の高熱伝導性を維持するとともに酸やアルカリ対する耐食性と機械的強度とを改善したAlN焼結体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は上記目的を達成するため、原料窒化アルミニウム粉末に添加する焼結助剤や添加物の種類や添加量を種々変えて、それらが焼結体の耐食性、強度特性および伝熱特性に及ぼす影響について実験検討を進めた。
【0013】
その結果、所定の焼結助剤の他に添加剤としてのガラスフリットを複合的に微量添加したときに、AlN焼結体を構成するAlN結晶粒子表面にガラスフリット成分から成る保護皮膜が形成されAlN焼結体の耐食性が大幅に改善されるとともに、上記皮膜によりAlN結晶粒子同士の界面接合強度が高まり、機械的強度特性が優れたAlN焼結体が得られた。本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
【0014】
すなわち本発明に係る第1の窒化アルミニウム焼結体は、周期律表IIIa族元素から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を1〜10重量%と、ガラスフリットを0.1〜1重量%と、残部を構成する窒化アルミニウムとから成る混合体を焼結した焼結体から成り、焼結体の3点曲げ強度が450MPa以上であることを特徴とする。
【0015】
また本発明に係る第2の窒化アルミニウム焼結体は、周期律表IIIa族元素から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を1〜10重量%と、Ca,SrおよびBaから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を0.1〜1重量%と、ガラスフリットを0.1〜1重量%と、残部を構成する窒化アルミニウムとから成る混合体を焼結した焼結体から成り、焼結体の3点曲げ強度が450MPa以上であることを特徴とする。
【0016】
さらに上記各窒化アルミニウム焼結体において、Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,Wから選択される少なくとも1種の金属元素を酸化物換算で0.05〜1重量%含有させるとよい。
【0017】
またガラスフリットは、ホウケイ酸ガラス,アルミノホウケイ酸ガラス,96%石英ガラス,ソーダ石灰ガラス,鉛ガラス,アルミノケイ酸塩ガラス,および特殊ガラスから選択される少なくとも1種である。特殊ガラスとしては結晶化ガラスや耐アルカリ性ガラス等が好適である。
【0018】
またFe,Mg等の不純物陽イオンの含有量は0.2重量%以下にするとよい。さらに焼結体の平均結晶粒径は1〜4μmの範囲が好適である。そして上記組成から成るAlN焼結体は、熱伝導率が120W/(m・K)以上であり、また焼結体を10%濃度の塩酸(HCl)溶液中に常温(25℃)で24時間浸漬した場合に、浸漬前後における焼結体の重量減少が1.5mg/cm以下であるとともに、焼結体を10%濃度の苛性ソーダ(NaOH)溶液中に常温(25℃)で24時間浸漬した場合に、浸漬前後における焼結体の重量減少が50mg/cm以下となる。
【0019】
また本発明に係る第1の窒化アルミニウム焼結体の製造方法は、窒化アルミニウム原料粉末に、周期律表IIIa族元素から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を1〜10重量%と、ガラスフリットを0.1〜1重量%とを添加した原料混合体を成形し、得られた成形体を非酸化性雰囲気中で焼結せしめることを特徴とする。
【0020】
また本発明に係る第2の窒化アルミニウム焼結体の製造方法は、窒化アルミニウム原料粉末に、周期律表IIIa族元素から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を1〜10重量%と、Ca,SrおよびBaから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を0.1〜1重量%と、ガラスフリットを0.1〜1重量%とを添加した原料混合体を成形し、得られた成形体を非酸化性雰囲気中で焼結せしめることを特徴とする。
【0021】
本発明方法において使用され、焼結体の主成分となる窒化アルミニウム(AlN) 原料粉末としては、焼結性および熱伝導性を考慮して不純物酸素含有量が1.3重量%以下に抑制し、平均粒径が0.5〜2μm程度、好ましくは1.5μm以下の微細なAlN粉末を使用するとよい。
【0022】
周期律表(長周期型)のIIIa族元素の酸化物は、焼結助剤として作用し、
AlN焼結体を緻密化するために、AlN原料粉末に対して1〜10重量%の範囲で添加される。上記焼結助剤の具体例としては希土類元素(Y,Sc,Ce,Dyなど)の酸化物、もしくは焼結操作によりこれらの化合物となる物質が使用され、特に酸化イットリウム(Y)が好ましい。上記焼結助剤の添加量が1重量%未満の場合は、焼結性の改善効果が充分に発揮されず、焼結体が緻密化されず低強度の焼結体が形成されたり、AlN結晶中に酸素が固溶し、高い熱伝導率を有する焼結体が形成できない。一方添加量が10重量%を超える過量となると、焼結助剤としての効果は飽和状態に達して無意味となるばかりでなく、却って焼結して得られるAlN焼結体の熱伝導率が低下する一方、粒界相が焼結体中に多量に残存したり、熱処理により除去される粒界相の体積が大きいため、焼結体中に空孔が残ったりして収縮率が増大し、変形を生じ易くなる。また高密度の焼結体とするためには、焼結温度を高く設定する必要があり、焼成炉の構成部品の耐熱仕様を高度化したり、連続焼成操作が困難になり、いずれも焼結体の製造コストおよび量産性が低下してしまう。
【0023】
ガラスフリットは、焼結温度を下げて焼結性を改善する一方、AlN焼結体を構成するAlN結晶粒子表面に保護皮膜を形成し、AlN焼結体の耐食性を大幅に改善すると同時に、AlN結晶粒子同士の界面接合強度を高め機械的強度を増加させるのに有効な成分である。
【0024】
上記ガラスフリットの具体例としては、下記表1に記号A〜Iで示すような化学組成を有する合成ガラス粉末が好適である。
【0025】
【表1】
Figure 0003606923
【0026】
上記各ガラスフリットは、それぞれ所定の化学組成に調整した混合粉を空気中で約1500℃の温度で溶融し、次に冷却凝固した固化体を微粉砕して合成製造される。ガラスフリットの粒径は1μm前後に調整するとよい。
【0027】
上記ガラスフリットは、AlN焼結体中に0.1〜1重量%の範囲で添加される。ガラスフリットの添加量が0.1重量%未満の場合には、焼結温度の低減効果,耐食性および強度の改善効果が不充分となる。一方、添加量が1重量%超と過大にした場合には、AlN焼結体の熱伝導率が低下してしまうため、添加量は上記範囲に設定されるが、0.2〜0.5重量%の範囲がより好ましい。
【0028】
Ca,Sr,Baの酸化物(CaO,SrO,BaO)は、特にIIIa族元素の酸化物やWOと複合添加した場合に、より効果的に焼結温度を下げ焼結性も改善できる成分であり、本発明では0.1〜1.0重量%の範囲で添加される。添加量が0.1重量%未満と過少な場合には、焼結性の改善効果が少ない。一方、添加量が1重量%を超えると酸やアルカリに対する焼結体の耐食性が低下するとともに、熱伝導率が低下し、ある所定の密度を得るためには焼結温度を高く設定する必要が生じる。したがって添加量は上記範囲に設定されるが、0.2〜0.5重量%の範囲がより好ましい。
【0029】
Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,Wの酸化物も、焼結温度を下げて焼結性を向上させる一方、着色して不透明な焼結体を形成する等、AlN焼結体の特性を改善するために有効であり、酸化物換算で0.05〜1.0重量%の範囲で添加してもよい。添加量が0.05重量%未満の場合は、上記特性改善効果が不充分となる一方、添加量が1.0重量%を超える過量となると、他の不純物と同様にAlN焼結体の熱伝導率を低下させる。
【0030】
またFe,Mg等の不純物陽イオンはAlN焼結体の熱伝導を阻害する化合物を形成し易いため、AlN焼結体中の含有量は0.2重量%以下に設定される。
【0031】
上記AlN原料粉末、各種焼結助剤およびガラスフリット成分は、例えばボールミル等の粉砕混合機に投入され、所定時間混合されることによって均一な原料混合体となる。次に得られた原料混合体を所定形状の金型に充填し加圧成形して成形体が形成される。このとき予め原料混合体にパラフィン、ステアリン酸等の有機バインダを5〜10重量%添加しておくことにより、成形操作を円滑に実施することができる。
【0032】
成形法としては、汎用の金型プレス法、泥漿鋳込み法、静水圧プレス法、あるいはドクターブレード法のようなシート成形法などが適用できる。
【0033】
上記成形操作に引き続いて、成形体を空気中で400〜550℃に加熱したり、または非酸化性雰囲気中、例えば窒素ガス雰囲気中で温度400〜800℃に加熱して、予め添加していた有機バインダを充分に脱脂除去する。
【0034】
次に脱脂処理された複数のシート状の成形体は、例えばセラミックス焼結粉から成るしき粉を介して焼成炉内において多段に積層され、この配置状態で複数の成形体は一括して所定温度で焼結される。焼結操作は、窒素ガスなどの非酸化性雰囲気で成形体を温度1650〜1900℃で2〜10時間程度加熱して実施される。特にガラスフリット成分を添加することにより、1650〜1780℃程度と従来より低い温度で焼結することが可能となる。
【0035】
焼結雰囲気は、AlNと反応しない非酸化性雰囲気あればよいが、通常は窒素ガス、または窒素ガスを含む還元性雰囲気で行なう。還元性ガスとしてはHガス、COガスを使用してもよい。なお、焼結は真空(僅かな還元雰囲気を含む)、減圧、加圧および常圧を含む種々の圧力条件の雰囲気で行なってもよい。
【0036】
焼結温度が1650℃未満であるような低温状態で焼成すると、原料粉末の粒径、含有酸素量によって異なるが、緻密化が困難であり、強度および熱伝導性などの特性に難点が生じ易い一方、1900℃より高温度で焼成すると、焼成炉内におけるAlN自体の蒸気圧が高くなり緻密化が困難になるとともに熱伝導率が急激に低下するおそれがあるため、焼結温度は上記範囲に設定される。
【0037】
そして上記AlN原料粉末に焼結助剤およびガラスフリットを添加した所定の組成を有する原料混合体を成形、脱脂、焼結することにより、耐食性に優れた緻密な結晶組織を有し、熱伝導率が120W/(m・K)以上であり、かつ3点曲げ強度が450MPa以上である高強度のAlN焼結体が得られる。
【0038】
【作用】
上記構成に係る窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法によれば、周期律表IIIa族元素の酸化物から成る焼結助剤とともに所定量のガラスフリットを複合添加してAlN焼結体としているため、AlN焼結体を構成するAlN結晶粒子表面にガラスフリット成分から成る保護皮膜が形成され、酸やアルカリに対するAlN焼結体の耐食性が大幅に改善される。また上記皮膜によりAlN結晶粒子同士の界面接合強度が高まり、高強度で緻密な結晶組織が得られる。したがって、窒化アルミニウム焼結体本来の高熱伝導性を有し、さらに耐食性および強度特性に優れた窒化アルミニウム焼結体が得られる。
【0039】
【実施例】
次に下記の実施例を参照して本発明に係る窒化アルミニウム焼結体をより具体的に説明する。
【0040】
実施例1〜35
不純物として酸素を0.8重量%含有し、平均粒径1μmの窒化アルミニウム粉末に対して、表2および表3に示すようにガラスフリット成分および焼結助剤としてのY,CeO,WO,TiO,ZrO,HfO
Nb,Ta,MoO,CaO,BaO,SrO,Ndをそれぞれ所定量ずつ添加し、エチルアルコールを溶媒としてボールミルで20時間混合して原料混合体を調製した。なおガラスフリットの種類は表1に示す記号A〜Iで示す組成のものを使用した。次にこの原料混合体に有機バインダとしてのパラフィンを5.5重量%添加して造粒粉を調製した。
【0041】
次に得られた造粒粉をプレス成形機の成形用金型内に充填して1200kg/cmの加圧力にて一軸方向に圧縮成形して、縦50mm×横50mm×厚さ5mmの角板状成形体を多数調製した。引き続き各成形体を空気雰囲気中で450℃で1時間加熱して脱脂処理した。
【0042】
次に脱脂処理した各成形体をAlN製焼成容器内に収容し、焼成炉において表2に示す焼結温度1650〜1800℃で4時間緻密化焼結を実施し、その後、冷却速度200℃/hrで冷却してそれぞれ実施例1〜35に係るAlN焼結体製造した。
【0043】
比較例1〜2
一方、表3に示すようにガラスフリットを全く添加せず、従来の焼結助剤(Y)のみを添加し、それぞれ1820℃または1800℃で焼結した以外は実施例4または1と同一条件で原料調整、成形、脱脂、焼結処理して同一寸法を有する比較例1および2に係るAlN焼結体を製造した。
【0044】
比較例3
また、ガラスフリットを過剰量(2重量%)添加し、1680℃で焼結した以外は実施例1と同一条件で処理して比較例3に係るAlN焼結体を製造した。
【0045】
比較例4
焼結助剤としてのYを過剰量(15重量%)添加し、かつ1840℃で焼結した以外は実施例2と同様に処理して比較例4に係るAlN焼結体を製造した。
【0046】
比較例5
焼結助剤として5重量%のYに加えてCaOを過剰量(2重量%)添加し、かつ1650℃で焼結した以外は実施例8と同様に処理して比較例5に係るAlN焼結体を製造した。
【0047】
比較例6
焼結助剤としてのIIIa族元素酸化物を全く添加しない一方で、CaOを過剰量(3重量%)添加した以外は実施例6と同様に処理して比較例6に係るAlN焼結体を製造した。
【0048】
比較例7
焼結助剤として5重量%のYに加えてTiOを過剰量(2重量%)添加し、かつ1720℃で焼結した以外は、実施例18と同様に処理して比較例7に係るAlN焼結体を製造した。
【0049】
こうして得られた実施例1〜35および比較例1〜7に係る各AlN焼結体の強度特性,放熱特性および薬品耐性を評価するために、各試料の3点曲げ強度、熱伝導率および耐食性を測定し、下記表2および表3に示す結果を得た。
【0050】
なお、各焼結体における耐食性を耐酸性と耐アルカリ性との2面から評価するために、次のような浸漬試験を実施した。すなわち各焼結体を10%濃度の塩酸(HCl)水溶液に常温(25℃)で24時間浸漬して、その浸漬前後における焼結体の酸化腐食による単位面積当りの重量減少を測定した。また焼結体を10%濃度の苛性ソーダ(NaOH)水溶液中に常温(25℃)で24時間浸漬して、その浸漬前後における焼結体のアルカリ腐食による単位面積当りの重量減少を測定した。測定結果を下記表2および表3に示す。
【0051】
【表2】
Figure 0003606923
【0052】
【表3】
Figure 0003606923
【0053】
上記表2および表3に示す結果から明らかなように、Y,CaO等の焼結助剤に加えてガラスフリット成分を微量ずつ複合添加した実施例1〜35に係るAlN焼結体においては、結晶組織が緻密で微細であり、曲げ強度および熱伝導率および酸やアルカリに対する耐食性が共に優れていることが判明した。ちなみに3点曲げ強度は490〜570MPaと大きく、また熱伝導率は122〜173W/(m・K)と優れており、酸に対する重量減少は0.4 〜1.4mg /cm,アルカリに対する重量減少は7〜45mg/cmと極めて高い耐食性を有することが確認できた。
【0054】
一方、ガラスフリットを全く添加しない比較例1〜2に係るAlN焼結体は、熱伝導率においては比較的に良好である反面、曲げ強度および耐食性が低く、耐久性および取扱性において難点がある。またガラスフリットを過量に添加した比較例3の試料では、熱伝導率が不充分となり、また従来の焼結助剤としての
を過量に添加した比較例4の試料では、ガラスフリットを添加したにも拘らず、耐アルカリ腐食性および強度が共に低下することが確認された。
【0055】
さらに焼結助剤としてのCaOを過剰に添加した比較例5に係るAlN焼結体は、耐アルカリ腐食性が低下することが判明した。またIIIa族元素酸化物を全く添加しない比較例6に係るAlN焼結体においては、CaOを過剰量添加し、かつガラスフリットを添加したにも拘らず、曲げ強度の低下が顕著であり、また
CaOの過剰添加に起因する腐食が急増することが判明した。同様にTiOを過剰量添加した比較例7に係るAlN焼結体においては、曲げ強度は良好である反面、熱伝導率およびアルカリ耐食性が低下することが確認できた。
【0056】
一方、各実施例に係るAlN焼結体の製造方法によれば、原料粉末中にガラスフリットを配合しているため、1650〜1800℃程度の低温度焼結の場合であっても、緻密で高強度,高熱伝導性および高耐食性を有するAlN焼結体が得られた。したがって高温度用の焼成炉を用いることなく、通常の安価な耐熱部品で構成した焼成炉を使用して連続運転が可能であり、AlN焼結体の製造コストおよび量産性を大幅に改善することが可能となった。
【0057】
また表2および表3において実施例9,15,26,27に示す結果から明らかなように、焼結助剤としてのIIIa族元素酸化物およびガラスフリットに加えて、CaO,BaO,SrO,WO,TiOなどを複合添加することにより、焼結温度を1650〜1680℃程度まで下げることが可能となり、低温焼結による製造条件の緩和がより効果的に実現することが実証された。
【0058】
また実施例1〜35に係る各AlN焼結体表面部を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、いずれも微細なAlN結晶粒子の周辺に粒界相が均一に分散形成されており、またAlN結晶粒子の表面にはガラスフリット成分から成る保護皮膜が形成されていることが確認された。一方、比較例1〜2に係る焼結体においては、ガラスフリットの添加による焼結性改善効果が少ないため、
AlN粒子自体も粗大であり、隣接するAlN粒子の周辺に粗大な粒界相が凝集されるように形成されていた。
【0059】
【発明の効果】
以上説明の通り本発明に係る窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法によれば、周期律表IIIa族元素の酸化物から成る焼結助剤とともに所定量のガラスフリットを複合添加してAlN焼結体としているため、AlN焼結体を構成する
AlN結晶粒子表面にガラスフリット成分から成る保護皮膜が形成され、酸やアルカリに対するAlN焼結体の耐食性が大幅に改善される。また上記皮膜によりAlN結晶粒子同士の界面接合強度が高まり、高強度で緻密な結晶組織が得られる。したがって、窒化アルミニウム焼結体本来の高熱伝導性を有し、さらに耐食性および強度特性に優れた窒化アルミニウム焼結体が得られる。

Claims (8)

  1. 周期律表IIIa族元素から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を1〜10重量%と、ガラスフリットを0.1〜1重量%と、残部を構成する窒化アルミニウムとから成る混合体を焼結した焼結体から成り、焼結体の3点曲げ強度が450MPa以上であり、この焼結体を10%濃度の塩酸(HCl)溶液中に常温(25℃)で24時間浸漬した場合に、浸漬前後における焼結体の重量減少が1.5 mg cm 以下であるとともに、焼結体を10%濃度の苛性ソーダ(NaOH)溶液中に常温(25℃)で24時間浸漬した場合に、浸漬前後における焼結体の重量減少が50 mg cm 以下であることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体。
  2. 周期律表IIIa族元素から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を1〜10重量%と、Ca,SrおよびBaから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を0.1〜1重量%と、ガラスフリットを0.1〜1重量%と、残部を構成する窒化アルミニウムとから成る混合体を焼結した焼結体から成り、焼結体の3点曲げ強度が450MPa以上であり、この焼結体を10%濃度の塩酸(HCl)溶液中に常温(25℃)で24時間浸漬した場合に、浸漬前後における焼結体の重量減少が1.5 mg cm 以下であるとともに、焼結体を10%濃度の苛性ソーダ(NaOH)溶液中に常温(25℃)で24時間浸漬した場合に、浸漬前後における焼結体の重量減少が50 mg cm 以下であることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体。
  3. Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,MoおよびWから選択される少なくとも1種の金属元素を酸化物換算で0.05〜1重量%含有することを特徴とする請求項1または2記載の窒化アルミニウム焼結体。
  4. 熱伝導率が120W/(m・K)以上であることを特徴とする請求項1または2記載の窒化アルミニウム焼結体。
  5. ガラスフリットが、ホウケイ酸ガラス,アルミノホウケイ酸ガラス,96%石英ガラス,ソーダ石灰ガラス,鉛ガラス,アルミノケイ酸塩ガラスおよび特殊ガラスから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載の窒化アルミニウム焼結体。
  6. 窒化アルミニウム焼結体を10%濃度の塩酸(HCl)溶液中に常温(25℃)で24時間浸漬した場合に、浸漬前後における焼結体の重量減少が1.5 mg cm 以下であるとともに、焼結体を10%濃度の苛性ソーダ(NaOH)溶液中に常温(25℃)で24時間浸漬した場合に、浸漬前後における焼結体の重量減少が50 mg cm 以下である窒化アルミニウム焼結体の製造方法において、窒化アルミニウム原料粉末に、周期律表IIIa族元素から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を1〜10重量%と、ガラスフリットを0.1〜1重量%とを添加した原料混合体を成形し、得られた成形体を非酸化性雰囲気中で焼結せしめることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
  7. 窒化アルミニウム焼結体を10%濃度の塩酸(HCl)溶液中に常温(25℃)で24時間浸漬した場合に、浸漬前後における焼結体の重量減少が1.5 mg cm 以下であるとともに、焼結体を10%濃度の苛性ソーダ(NaOH)溶液中に常温(25℃)で24時間浸漬した場合に、浸漬前後における焼結体の重量減少が50 mg cm 以下である窒化アルミニウム焼結体の製造方法において、窒化アルミニウム原料粉末に、周期律表IIIa族元素から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を1〜10重量%と、Ca,SrおよびBaから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を0.1〜1重量%と、ガラスフリットを0.1〜1重量%とを添加した原料混合体を成形し、得られた成形体を非酸化性雰囲気中で焼結せしめることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
  8. 窒化アルミニウム原料粉末の酸素含有量を1.3重量%以下に設定したことを特徴とする請求項6または7記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
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