JP2672480B2 - 介護装置 - Google Patents

介護装置

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JP2672480B2
JP2672480B2 JP7137304A JP13730495A JP2672480B2 JP 2672480 B2 JP2672480 B2 JP 2672480B2 JP 7137304 A JP7137304 A JP 7137304A JP 13730495 A JP13730495 A JP 13730495A JP 2672480 B2 JP2672480 B2 JP 2672480B2
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谷 俊 雄 伯
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伯谷 俊雄
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は簡単な構成で安価に製作
でき、使用時には被介護者に簡便に装着できるととも
に、被介護者の体形に応じた楽な姿勢の吊り上げ移動を
実現し、しかも用便を迅速で安心かつ清潔に行なえるよ
うにした介護装置に関する。
【0002】
【従来の技術】高齢化社会を間近にして、寝たきり老人
等の介護は近時の重大な関心事であり、このための介護
装置も、従来より種々提案されている。例えば特公平3
ー8772号には、天井部にレールを敷設し、このレー
ルに沿って走行移動する介護装置を設け、該装置は操作
スイッチと、該スイッチによって駆動する走行電動機と
巻上機、および被介護者を保持可能な介護ベルトとを備
え、上記スイッチ操作によって被介護者を吊り上げ移動
する介護装置が示されている。
【0003】しかし、この介護装置は走行電動機を要し
て設備費が嵩み、また被介護者を吊り上げる場合、二本
の介護ベルトを被介護者の大腿部と脇腹部とに巻き掛け
るため、吊り上げ時に大腿部が介護ベルトに食い込んで
痛くなり、更には大腿部が体重移動して圧迫され、不自
然な吊り上げ姿勢を強いられたり、用便時に下着を速や
かに脱着できない、等の不具合があった。
【0004】一方、特公平3ー65985号には、天井
部にレールを敷設し、該レールを走行可能な台車に流体
圧シリンダを下向きに取付け、該シリンダのピストンロ
ッドの下端に門型部材を取付け、該部材の下端にクッシ
ョン材を取付けた横部材を平行に取り付け、該横部材に
脚スリングの両端を着脱可能に装着し、またクッション
部材に座スリングの両端を着脱可能に装着して、クッシ
ョン部材を被介護者の両脇の下に挿入し、脚スリングを
被介護者の大腿部に掛け渡して、被介護者を吊り上げ移
動する介護装置が示されている。
【0005】しかし、この介護装置はクッション材の間
隔よりも幅広なレールと流体圧シリンダを要して、広い
設置スペースと高額な設備費を要し、一般家庭の設置に
馴染難く、また被介護者を吊り上げる場合、吊り上げ時
に大腿部が脚スリングの中央に移動して圧迫され、不自
然な吊り上げ姿勢を強いられるとともに、用便時に下着
を速やか脱着できない、等の不具合があった。この場
合、座スリングを併用すると、該スリングが被介護者の
尻部に掛け渡されて、前述した用便時の不具合が一層深
刻になる。
【0006】しかも、横部材の間隔は剛性部材で一定幅
に構成されているから、これを被介護者に装着する場
合、その正確な位置付けと移動若しくは旋回スペースを
要し、また各スリングが一定長さに構成されているた
め、被介護者の体形、特に座高に応じた使用ができず、
不自然な吊り上げ姿勢を強いられる問題がある。更に、
上記介護装置は常時流体圧シリンダに取り付けられてい
るため、不使用時には室内スペースの有効利用を妨げ、
また視覚的にうっとうしくて気が滅入り療養生活に好ま
しくない等の問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような問
題を解決し、簡単な構成で安価に製作でき、使用時には
被介護者に簡便に装着できるとともに、被介護者の体形
に応じて楽な姿勢の吊り上げ移動を実現し、しかも用便
を迅速で安心かつ清潔に行なえるようにし介護装置を提
供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】このため、本発明の介護
装置は、天井に沿って移動可能な昇降装置を設け、該装
置に介護器を着脱可能に設け、該介護器に被介護者の両
脇下に挿入可能な一対の支持枠と、該支持枠に少なくと
も一端を着脱可能に連結し、かつ被介護者の大腿部を掛
け渡し可能な介護ベルトと、支持枠の端部間に架設さ
れ、かつ被介護者の背中を支持可能な背当板とを備えた
介護装置において、介護ベルトに被介護者の大腿部を載
置可能な支持板を移動可能に設け、該介護ベルトの少な
くとも一端を支持枠に対し取付け位置調整可能に設け、
支持枠の端部に一対の背当板の一端を固定し、該背当板
の他端を回動可能に連結して、簡単な構成で安価に製作
でき、使用時には被介護者に簡便に装着できるととも
に、被介護者の体形に応じて楽な姿勢の吊り上げ移動を
実現し、しかも用便を迅速で安心かつ清潔に行なえるよ
うにしている。また、本発明の装置は、一対の背当板の
枢着位置を、それらの中心から離心させ、僅かなスペー
スで介護器を被介護者に装着できるようにしている。更
に、本発明の装置は、支持板を移動可能に装着した二つ
の介護ベルトを備え、これらを一対の支持枠に取り付
け、一方の介護ベルトの一端を支持枠に固定し、他方の
介護ベルトの両端を支持枠に着脱可能に取付け、被介護
者の状況に応じて介護ベルトの使用数を選択でき、被介
護者に負担のない最適な移動姿勢を得られるようにして
いる。
【0009】
【作 用】請求項1の発明は、介護ベルトに被介護者の
大腿部を載置可能な支持板を設けて、被介護者の吊り上
げ移動時、大腿部の重心移動を防止し、大腿部の圧迫や
介護ベルトの食い込みを防止し、楽な姿勢で移動でき
る。大腿部の圧迫等による下着の挟み込みや密着を防止
し、これを速やかに脱着して、用便を迅速で安心かつ清
潔に行なえる。介護ベルトに支持板を移動可能に設け、
支持板の位置を調整可能にして、被介護者の体形に応じ
た調整の際、大腿部の載置位置の調整を実現する。介護
ベルトの少なくとも一端を支持枠に対し取付け位置調整
可能に設け、該ベルトの実質的な長さを可変にし、支持
板と支持枠との間隔を調整可能にする。したがって、被
介護者の体形、つまり大柄か小柄、または座高の高低に
応じて介護ベルトの取り付け位置を調整することで、被
介護者の体形に応じて楽な姿勢で吊り上げ移動を実現す
る。支持枠の端部に一対の背当板の一端を固定し、該背
当板の他端を回動可能に連結して、支持枠および背当板
の間隔を拡開可能にする。これにより、介護器を被介護
者の位置に正確に位置付ける煩雑を解消し得るととも
に、被介護者の体形、特に胴回りの大きな人に対する利
用と、その楽な姿勢の吊り上げ移動を実現する。請求項
2の発明は、一対の背当板の枢着位置を、それらの中心
から離心させ、一対の背当板と支持枠との旋回半径を互
いに相違させる。旋回半径の小さな背当板と支持枠とを
拡開操作し、僅かなスペースで介護器を被介護者に装着
できる。請求項3の発明は、支持板を移動可能に装着し
た二つの介護ベルトを備え、これらを一対の支持枠に取
り付け、一方の介護ベルトの一端を支持枠に固定し、他
方の介護ベルトの両端を支持枠に着脱可能に取付け、被
介護者の状況に応じて介護ベルトの使用数を選択でき
る。二つの介護ベルトの使用時には、被介護者に負担の
ない最適な移動姿勢を得られる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面により説明す
ると、図1乃至図5において1は介護室Rの天井板で、
その上方に梁2が架設され、該梁2の所定位置に取付ボ
ルト3,3を介して、固定金具4,4が取付けられてい
る。固定金具4,4には通しボルト5,5が下向きに接
続され、それらの下端に1本のレール6が取付けられて
いる。
【0011】レール6は天井板1の表面に敷設され、こ
れは断面略逆U字形状に形成されていて、該レール6に
台車7が走行車輪8を介して移動可能に設けられてい
る。台車7の下部には係止環9が突設され、該環9にフ
ック10を介して、昇降装置である電動ホイスト等の巻
上機11が吊下げられている。図中、12は巻上モー
タ、13は巻上ドラム(図示略)に捲回したチェーン
で、上記ドラムから繰り出したチェーン13を収納袋1
4に収容しており、15は巻上機11の操作スイッチで
ある。
【0012】16はチェーン13と同動可能に設けたス
トッパで、その上限位置到達時に巻上モータ12の駆動
を停止可能にしており、その下端にはフック17が設け
られ、該フック17に介護器18が吊下げられている。
【0013】介護器18は上端部に堅牢な支持杆19を
有し、該杆19の中央に前記フック17に掛け止め可能
な係止環20を突設している。支持杆19の両端部には
通孔(図示略)が設けられ、該孔にワイヤケーブル、紐
等の吊条体として吊紐21が挿通され、その両端に円柱
状の支持枠22,22を固定している。
【0014】支持枠22,22は常時は互いに平行に配
置され、その間隔は被介護者23の両脇下に挿入可能な
寸法に形成されていて、その前端部22a,22aを上
向きに湾曲形成している。前端部22a,22aには、
両端部を下向きにして定着ベルト24a,24bが固定
され、この一方の定着ベルト24a,24aに介護ベル
ト25の一端が取付けられ、この他端が他方の定着ベル
ト24b,24bに、着脱かつ取付け位置調整可能に取
付けられている。
【0015】すなわち、定着ベルト24b,24bの内
面には、細長の押圧式ファスナ布26,26が取付けら
れ、また介護ベルト25の他端には、押圧ファスナ布
(図示略)を逢着されていて、該ファスナ布を前記ファ
スナ布26,26の所望位置に取付け可能にしている。
この場合、介護ベルト25の両端を着脱可能にし、この
両端で上記ベルト25の取付け位置を調整可能にしても
よく、そのようにすることで介護ベルト25の取換え
や、取付け位置調整範囲の拡大を図れる。
【0016】介護ベルト25の中央には、それよりも幅
広な細長の支持板27が取付けられ、該板27は堅牢な
アルミニウム板やステンレス板で構成され、その長さは
被介護者23の大腿部23a,23aの幅Lよりも幅広
に形成され、大腿部23a,23aを十分な裕度で収容
可能に形成されている。支持板27の両端は舌片状に形
成され、その内側位置に切欠孔28,28が形成され、
該孔28,28に介護ベルト25が掛け渡されていて、
支持板27を介護ベルト25の長さ方向に移動可能に取
り付けている。
【0017】支持枠22,22の後端部には背当板29
a,29bの一端が固定され、このうち一方の背当板2
9aは背当板29bよりも大形に形成され、かつこれら
は他端に向かって高さを漸増する湾曲板で構成されてい
て、これらの他端部を蝶番30を介して回動可能に連結
している。
【0018】図中、31は介護室Rに設置した便器で、
介護器18の移動域に設けられ、32は介護室Rに設置
した寝具またはベッドで、同じく介護器18の移動域に
設けられている。
【0019】図6および図7は本発明の他の実施例を示
し、前述の構成と対応する部分には同一の符号を用いて
いる。この実施例は、支持枠22,22の前端に定着ベ
ルト24b,24bを固定し、該ベルト24b,24b
の内面に押圧式ファスナ布26,26を取付け、該布2
6,26に押圧式ファスナ布(図示略)を縫着した介護
ベルト25の両端を、着脱かつ取付け位置調整可能に取
付けている。
【0020】すなわち、この実施例は病院等で真直に起
き上がれない被介護者23を、ベッド32からストレッ
チャへ乗せる際、介護器18をフック17に吊り下げ、
左右の吊り紐21の前後長さを調整し、つまり図7のよ
うに後側の吊り紐21の長さを前側の吊り紐21よりも
長く調整して、支持枠22,22を前上りに設定し、か
つ背当板29a,29bの傾斜角度を被介護者23の起
き上がり角度と略等角度に調整する。
【0021】このような準備作業後、介護器18を被介
護者23の背後に近付け、その背当板29a,29bを
被介護者23の背中に当てがい、既設の介護ベルト25
を大腿部23aの基部側に掛け渡し、当該部を支持板2
7で支持するとともに、上記ベルト25の自由端部を押
圧式ファスナ布26に取付け、そのベルト長さを調整す
る。
【0022】次に取付け自在な介護ベルト25を大腿部
23aの先端部側に掛け渡し、当該部を支持板27で支
持するとともに、該ベルト25の両端を押圧式ファスナ
布26,26を介して定着ベルト24b,24bに取付
け、同時にそれらのベルト長さを調整する。
【0023】この後、巻上機11を駆動し介護器18を
介して被介護者23を吊り上げ、これを手押ししてスト
レッチャ側に移動する。その際、被介護者23は背中を
背当板29a,29bで支持され、また二つの支持板2
7,27で大腿部23aと尻部を支持されるから、足の
起き上がりや尻部の落ち込みが防止され、前述の起き上
がり姿勢のまま体に負担を掛けることなく、吊り上げ移
動できる。したがって、この実施例は体の姿勢を拘束さ
れる被介護者23の搬送に好適である。
【0024】このように構成した介護装置は、不使用時
には係止環17をフック17から取り外して、介護器1
8を取外せるから、当該スペースの有効利用を図れると
ともに、その分被介護者23の視野が開放され、うっと
うしさや気の滅入り状態から開放され、療養生活に好適
である。
【0025】しかも、取り外した介護器18は、吊り紐
21や介護ベルト25が折曲可能であるから、その取り
扱いや保管に至便で、これをコンパクトに折り畳んで介
護室Rの適所に保管することができる。なお、被介護者
23の病気治癒時には、フック10を係止環9から掛け
外して巻上機11を取り外せるから、介護室Rの有効利
用が一層増進する。
【0026】次に介護器18を利用して被介護者23を
所定位置に移動する場合は、介護器18を保持し、その
係止環20をフック17に引掛けて吊下げ、これをレー
ル6を介して被介護者23の直上位置に移動するととも
に、操作スイッチ15をONして巻上機11を逆転駆動
し、これを適宜位置に位置付ける。
【0027】一方、これと前後して被介護者23を寝具
32上に抱き起こし、その背後に介護器18を位置付け
るとともに、押圧式ファスナ布26,26を介護ベルト
25の端部から引き剥し、該ベルト25の一端を定着ベ
ルト24bから取り外して置く。
【0028】このような状況の下で、背当板29a,2
9bの一方または両方を蝶番30を中心に外側へ回動
し、背当板29a,29bと、これと一体の支持枠2
2,22とを拡開して、背当板29a,29bの内面を
被介護者23の背中の下部に押し当て、同時に支持枠2
2,22を被介護者23の両脇下に差し込む。この後、
背当板29a,29bの一方または両方を蝶番30を中
心に内側へ回動し、背当板29a,29bの原状を回復
させて、支持枠22,22を被介護者23の両脇下に位
置付ける。
【0029】このように本発明は、背当板29a,29
bと支持枠22,22とを拡開可能にしているから、被
介護者23の移動や位置修正を要することなく、被介護
者23の現状の位置を許容して、それらを被介護者23
の背中や脇下に容易に位置付けることができ、従来のよ
うに介護器18を被介護者23の位置に正確に位置付け
る面倒がなく、またその際の装着スペースのコンパクト
化を図れる。
【0030】しかも、背当板29a,29bは大小異形
に形成されているから、小形の背当板29bを回動すれ
ば、その回動半径が小さい分、これを同形に形成したも
のに比べて僅かな回動スペースで足り、装着スペースの
確保が難しい寝具32やベッド上での装着に好適とな
る。
【0031】こうして、背当板29a,29bと支持枠
22,22とを被介護者23に装着し、前記介護ベルト
25を大腿部23aと寝具32との間に差し込み、支持
板27を大腿部23a,23aの直下に位置付け後、介
護ベルト25の端部を押圧式ファスナ布26,26を介
して、定着ベルト24b,24bに接続する。この場
合、支持板27は扁平で、その両端は舌片状をしている
から、これを円滑に差し込めるとともに、該板27が被
介護者23の着衣や寝具32を損傷する惧れがない。
【0032】この後、被介護者23の体形に応じて、押
圧式ファスナ布26,26に対する介護ベルト25の取
付け位置を調整する。すなわち、被介護者23が大柄で
あったり座高が高い場合は、介護ベルト25の端部を押
圧式ファスナ布26,26の下側に接続し、被介護者2
3が小柄であったり座高が低い場合は、介護ベルト25
の端部を押圧式ファスナ布26,26の上側に接続す
る。このようにすると、介護ベルト25の長さに押圧式
ファスナ布26の長さが相加され、最大で上記ファスナ
布26の長さ分長くなり、支持板27と支持枠22との
距離を加減できることで、被介護者23の体形に応じた
調整が可能になり、吊り上げ移動時の窮屈な姿勢を回避
できる。
【0033】そして、上記調整後、支持板27を介護ベ
ルト25の長さ方向に沿って移動し、介護ベルト25の
実際上の長さの中央に位置付ける。このようにすること
で、吊り上げ後における支持板27の水平姿勢が保た
れ、吊り上げ移動時に被介護者23が左右に体重移動す
る窮屈な姿勢を回避できる。
【0034】しかも、前述のように背当板29a,29
bと支持枠22,22とが拡開し、それらの対向間隔を
補正し得るから、胴回りの大きな大柄な被介護者23の
使用にも対応でき、前述と相俟って種々の体形の被介護
者23の使用に応じられる。
【0035】こうして、介護器18を被介護者23に装
着後、介護者または被介護者23が操作スイッチ15を
ONし、巻上機11を正転駆動して介護器18を吊り上
げるこの場合、巻上機11の吊り上げ高さは、被介護者
23が例えばトイレに向かう場合、便器31の便座の高
さより若干高く、パンツまたはオムツを脱がせられる適
当な高さに設定される。
【0036】介護器18を吊り上げると、被介護者23
は支持枠22,22によって両脇下を支持され、また背
当板29a,29bで背中の中高部を支持して、背筋の
負担を軽減し、更に大腿部23a,23aの中間部を支
持板27で支持することで、従来のように介護ベルトが
大腿部の前部に掛け渡された場合の尻部の落ち込みや、
介護ベルトが大腿部の後部に掛け渡された場合の前のめ
り姿勢を防止し、安定した着座姿勢を促す。この場合、
支持枠22,22は被介護者23を支持する介護ベルト
25の張力によって、拡開作動を規制され、被介護者2
3の安定した吊り上げ姿勢を促す。
【0037】その際、被介護者23の体重の一部は支持
板27に掛かり、これを該板27の剛性で水平に支持し
て、大腿部23a,23aの重心移動を防止する。ま
た、大腿部23a,23aの重量は介護ベルト25,2
5に作用し、その一端を押圧式ファスナ布26,26か
ら引き剥そうとするが、介護ベルト25の両面に作用す
る上記ファスナ布26,26の接続力がこれに対抗し、
上記剥離を阻止する。
【0038】この場合、介護器18が被介護者23を載
せて吊り上げられると、介護ベルト25,25の張力に
よって支持枠22,22の拡開動作が拘束され、被介護
者23の安定した吊り上げ姿勢を促す。
【0039】しかも、大腿部23a,23aが支持板2
7で水平に支持されているから、介護器18が吊り上げ
られても被介護者23は当初の姿勢を維持し、場合によ
っては支持板27上を移動して着座姿勢を変えられる。
したがって、従来のように介護ベルトで大腿部23a,
23aを支持する際の介護ベルトの食い込みや、大腿部
23a,23aの重心移動、およびこれに伴う大腿部2
3a,23a相互の圧迫等の窮屈な姿勢から解消され
る。
【0040】こうして、介護器18を吊り上げ、これを
手押して便器31の直上に移動し、被介護者23の向き
を調整するとともに、被介護者23のパンツまたはオム
ツを所定量または全部脱がせたところで、巻上機11を
逆転駆動し、被介護者23を降下して便座上に着座さ
せ、用便させる。
【0041】この場合、本発明は被介護者23の尻部が
開放され、また従来のような大腿部23a,23aの圧
迫がないから、被介護者23の下着、つまりパンツまた
はオムツが大腿部23a,23aに挟まれたり密着する
ことがなく、場合によって大腿部23a,23aを移動
する等して、速やかにパンツまたはオムツを脱がせるこ
とができる。したがって、男性の場合、大腿部23a,
23aによって性器が圧迫されることがないから、無理
なく安心かつ速やかに用便できるとともに、被介護者2
3の着衣や便器31周辺の汚損を防止できる。
【0042】用便後、巻上機11を正転駆動して介護器
18を吊り上げ、着衣を整え後、介護器18を手押して
寝具32の直上に移動し、巻上機11を逆転駆動して介
護器18を降下し、これを寝具32上に着地して、被介
護者23を寝具32上に着座させる。
【0043】この後、押圧式ファスナ布26,26を介
護ベルト25から引き剥し、該ベルト25の一端を取り
外して被介護者23の足を解放し、更に背当板29a,
29bと支持枠22,22とを外側へ回動し、これらを
被介護者23から取り外して、被介護者23を寝具32
上に横臥させる。そして、介護器18を手押して寝具3
2上から移動し、または係止環20をフック17から取
り外して、介護器18を介護室の適宜位置に保管する。
【0044】なお、この実施例は被介護者23を寝具3
2と便器31との間で移動させているが、これに限らず
車椅子やストレッチャ、椅子、ベッド、浴室等の間を相
互に移動させ、被介護者23の搬送や入浴、オムツの取
換え等に応じられる。
【0045】
【発明の効果】本発明の介護装置は以上のように、介護
ベルトに被介護者の大腿部を載置可能な支持板を設けた
から、被介護者の吊り上げ移動時、大腿部の重心移動を
防止し、大腿部の圧迫や介護ベルトの食い込みを防止し
て、楽な姿勢で移動することができる。したがって、大
腿部の圧迫等による下着の挟み込みや密着を防止できる
から、これを速やかに脱着でき、用便を迅速で安心かつ
清潔に行なえる効果がある。また、介護ベルトに支持板
を移動可能に設けたから、該ベルト上における支持板の
位置を調整することができ、被介護者の体形に応じた調
整の際、大腿部の載置位置を調整することができる。し
かも、介護ベルトの少なくとも一端を支持枠に対し取付
け位置調整可能に設け、該ベルトの実質的な長さを可変
にしたから、支持板と支持枠との間隔を調整可能にする
ことができる。したがって、被介護者の体形、つまり大
柄か小柄、または座高の高低に応じて介護ベルトの取り
付け位置を調整することで、被介護者の体形に応じて楽
な姿勢での吊り上げ移動を実現することができる。しか
も、支持枠の端部に一対の背当板の一端を固定し、該背
当板の他端を回動可能に連結したから、支持枠および背
当板の間隔を拡開調整することができ、従来のように介
護器を被介護者の位置に正確に位置付ける煩雑を解消し
得るとともに、被介護者の体形、特に胴回りの大きな人
に対する利用と、その楽な姿勢での吊り上げ移動を実現
することができる。本発明は、一対の背当板の枢着位置
を、それらの中心から離心させたから、一対の背当板と
支持枠との旋回半径を互いに相違させ、このうち旋回半
径の小さな背当板と支持枠とを拡開操作することで、僅
かなスペースで介護器を被介護者に装着できる効果があ
る。本発明は、支持板を移動可能に装着した二つの介護
ベルトを備え、これらを一対の支持枠に取り付け、一方
の介護ベルトの一端を支持枠に固定し、他方の介護ベル
トの両端を支持枠に着脱可能に取付けたから、被介護者
の状況に応じて介護ベルトの使用数を選択でき、例えば
二つの介護ベルト使用時には被介護者に負担のない最適
な移動姿勢を得ることができ、起き上がり姿勢を拘束さ
れた被介護者の移動に好適な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す正面図で、被介護者の
吊り上げ移動状態を示している
【図2】本発明に適用した介護器の一例を示す斜視図で
ある。
【図3】本発明に適用した介護器の要部を示す平面図で
ある。
【図4】図3のAーA線に沿う断面図で、若干拡大して
図示している。
【図5】本発明に適用した介護ベルトと支持板との取付
け状況を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施例を示す斜視図である。
【図7】上記第2実施例の使用状態を示す正面図であ
る。
【符号の説明】
11 昇降装置(巻上機) 18 介護器 22 支持枠 23 被介護者 23a 大腿部 25 介護ベルト 27 支持板 29a,29b 背当板

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 天井に沿って移動可能な昇降装置を設
    け、該装置に介護器を着脱可能に設け、該介護器に被介
    護者の両脇下に挿入可能な一対の支持枠と、該支持枠に
    少なくとも一端を着脱可能に連結し、かつ被介護者の大
    腿部を掛け渡し可能な介護ベルトと、支持枠の端部間に
    架設され、かつ被介護者の背中を支持可能な背当板とを
    備えた介護装置において、介護ベルトに被介護者の大腿
    部を載置可能な支持板を移動可能に設け、該介護ベルト
    の少なくとも一端を支持枠に対し取付け位置調整可能に
    設け、支持枠の端部に一対の背当板の一端を固定し、該
    背当板の他端を回動可能に連結したことを特徴とする介
    護装置。
  2. 【請求項2】 一対の背当板の枢着位置を、それらの中
    心から離心させた請求項1記載の介護装置。
  3. 【請求項3】 支持板を移動可能に装着した二つの介護
    ベルトを備え、これらを一対の支持枠に取り付け、一方
    の介護ベルトの一端を支持枠に固定し、他方の介護ベル
    トの両端を支持枠に着脱可能に取付けた請求項1記載の
    介護装置。
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