以下、実施形態について図面を参照しながら説明するが、この実施形態に限定されるものではない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。
<介護装置>
介護装置の実施形態について図1〜図19に基づいて詳細に説明する。
図1は、介護装置P1の使用状態を示す斜視図である。図2は、介護装置P1に用いられる搬送装置20を、図1とは反対側から見た斜視図である。図3及び図4は、搬送装置20の正面図及び側面図である。図5は、搬送装置20を格納した状態を示す斜視図である。図6〜図14は、搬送装置20による被介護者Pの介護動作を説明する図である。図15〜図18は、搬送装置20の座面部24の動作を説明するための概略図である。図19は、介護装置P1を集合施設などの建物1Aに設置した状態を示す図である。
なお、本明細書の説明において、前後及び左右並びに上下の方向とは、被介護者が搬送装置20に着座した被介護者を中心として、被介護者から見た方向を云うものとする。また、本明細書において被介護人が「横臥した状態」とは、ベッド等の上に体を横にして(水平に)寝ている状態だけでなく、例えば、ベッドの上半身側を起立させ、被介護者の上半身が起き上がって下半身と上半身とが屈曲した状態も含む意味で用いている。
介護装置P1は、図1に示すように、レール10と、搬送装置20と、を有する。
レール10は、建物1の住居空間の天井2(図5参照)に設けられる。レール10は、寝室70(図6参照)の他に、トイレ80(図13参照)、その他浴室や、食堂、リビングなど、被介護者Pの生活に必要な場所を移動できるように、廊下などの通路60(図13参照)を介して連続して配設されている。
レール10は、図1に示すように、下面の中央部分が開口された矩形状の断面を有しており、上面10aと、左右の側面10b、10bと、2つの下面10c、10cとを備えている。なお、レール10の構造は図1に示すものに限定されない。搬送装置20を吊り下げて移動させることを可能とする任意のレール形状を採用することができる。また、レール10は、部分ごとに標準化したユニット構造を採用可能であり、これにより組み立て作業ならびにコスト面で有利となる。また、レール10の材質は、特に限定するものではないが、例えば、軽金属や繊維強化プラスチックを用いることにより、天井2への重量負荷を軽減でき且つ強度的に優位である。
また、一般の住居では、部屋を区切るドアがあるが、レール10の配置に際してドアの一部を切り欠いて対応する。また、ドア構造としては、搬送装置20の通過に際して自動で開閉する構造や、搬送装置20が押し開く構造のいずれであってもよい。さらに、この介護装置P1の設置に際して、ドア等が撤去されてもよい。
レール10は、搬送装置20に対して電力を供給するための給電装置が設けられてもよい。給電装置としては、接触式または非接触式のいずれであってもよい。天井側に配置されたレール10から、搬送装置20への電力を供給することにより、床面からの給電と比較して被介護者が電力線と接触する可能性が低い。また、レール10には、必要に応じてレールカバーが取り付けられてもよい。また、レール10は、適当な間隔でダウンライトが設けられてもよい。このダウンライトは、搬送装置20の移動に伴って順次点灯するように点灯が制御されてもよい。これにより、搬送装置20の移動タイミングで効率よく付近を照明することができる。
搬送装置20は、レール10に吊り下げられかつレール10に沿って移動可能である。この搬送装置20は、被介護者Pを居住空間内において移動させることができる構造を備えている。搬送装置20は、その構造を大別すると、レール10に移動可能に保持された移動基台部21と、この移動基台部21の下部に取り付けられた昇降部22と、昇降部22に保持されて被介護者Pを保持する保持部23と、を有している。
移動基台部21は、例えば略直方形状の筺体21aを有している。この筐体21aには、レール10を移動するための複数のローラ21rが設けられている。複数のローラ21rは、筺体21aの外側に張り出すように配置されており、レール10の内壁面に適宜接触することで筐体21aがレール10内を移動可能となっている。すなわち、図1に示すように、筺体21aの左右側面に6個ずつの計12個のローラ21rが設けられ、レール10の上面10a、左右両側面10b、10b及び下面10c、10cのそれぞれに接触するように配置されている。また、複数のローラ21rのうち少なくとも1つ以上は、筺体21a内に設置された電気モータ等の駆動系21mによって回転駆動する。このローラ21rの回転駆動によって、移動基台部21は、レール10に沿った方向(図1における矢印A方向)に移動する。
移動基台部21は、予備電源として電池等の蓄電装置が設けられてもよい。例えば停電時などは蓄電装置から供給される電力により移動基台部21の移動等を確保することができる。なお、蓄電装置は、通常の使用時には充電状態となっている。
移動基台部21(筺体21a)の下部には、上下方向を軸方向として水平方向に回転(矢印B方向)する水平ターン部21bが設けられている。この水平ターン部21bは、上記した駆動系21mによって回転駆動する。
昇降部22は、水平ターン部21bに固定されて下方に向かって形成された揺動部22bと、揺動部22bに支持されて揺動可能(矢印C方向)であるとともに伸縮可能(矢印D方向)に構成された昇降伸縮部22cと、を備えている。なお、昇降伸縮部22cの揺動(矢印C方向)は、不図示のモータ等の駆動系によって行われる。揺動部22bは、水平ターン部21bから下方に向かって延びた、左右一対の円弧状の支持枠22bw、22bwを有している。昇降伸縮部22cの伸縮は、例えば電気モータや油圧シリンダ等が用いられる。昇降伸縮部22cは、その取付基部(図1において上部側)が、揺動部22bの支持枠22bw、22bwの間に保持された水平軸部22eに固定されている。また、昇降伸縮部22cの先端側(図1において下部側)には、被介護者Pを保持する保持部23が取り付けられている。
昇降部22は、被介護者Pが乗っている状態で電源が切れた場合には、保持部23をゆっくりと降下させるような、例えば、エアー系あるいは油圧系のダンパー構造が設けられてもよい。また、このダンパー構造は、そのダンパー強さを、被介護者Pの体重により調整できるように構成されてもよい。
このように構成された搬送装置20は、移動基台部21、昇降部22によって、保持部23を、水平方向の移動(矢印A方向の移動)と、水平方向の回転移動(矢印B方向の移動)と、上下方向の回転移動(矢印C方向の移動)と、上下方向の移動(矢印D方向の移動)と、を可能にしている。従って、搬送装置20は、被介護者Pをレール10に沿って搬送するだけでなく、上下移動、回転移動及び傾斜移動(揺動)を自在に行うことができる。また、本実施形態においては、介護装置P1の非使用時あるいは被介護者の搬送以外の移動時においては、後述するが図5に示すように、天井2側に搬送装置20を上昇させて折り畳んで格納しておくことができる。
保持部23は、図1〜図4に示すように、昇降伸縮部22cの先端に固定された固定基部23aと、固定基部23aの左右端から下方に延びたフレーム部23bとを有している。フレーム部23bは、固定基部23aから屈曲しながら下方に延びた左右一対のフレーム23bf、23bfを有している。このフレーム部23bには、後述する各種の部材が取り付けられている。また、左右のフレーム23bf、23bfには、その長手方向の中段の位置に、フレームから左右両側に張り出したグリップ部23g、23gが設けられている。このグリップ部23g、23gは、後述するが、被介護者Pが適宜握ることで、被介護者P自身が装置内で動きたいときに手に力を入れることができる等の補助機能を有している。
また、歩行が可能な被介護者Pまたは歩行訓練中の被介護者Pにおいては、搬送装置20の移動を利用して歩行補助または歩行訓練などが可能である。その際、被介護者Pは、搬送装置20に着座せず、グリップ部23g、23gを把持した状態で搬送装置20を移動させることにより、搬送装置20が歩行補助、歩行訓練などを行う。
保持部23は、図2に示すように、フレーム部23bの先端側に、座面部24と、前面部25と、伸縮部26と、背面部27と、ロボットハンド28と、が設けられている。座面部24は、被介護者Pが着座する部分として用いられる。前面部25は、座面部24の上方側に配置され、被介護者Pの胸部に対面するように設けられる。伸縮部26は、前面部25の左右側面から延びた状態で配置される。背面部27は、伸縮部26の先端に支持された状態で設けられる。ロボットハンド28は、座面部24の内側に支持された状態で配置されている。
以下、座面部24、前面部25、伸縮部26、背面部27、ロボットハンド28等の各部分の構造について説明する。
座面部24は、図1〜図4に示すように、左側の座面部の第1部材24aと、右側の座面部の第2部材24bとを有している。左側の座面部の第1部材24aは、座面部取付け部24sと、アーム支持部24t、プレートアーム24mと、座面プレート24pと、を備えている。また、右側の座面部の第2部材24bも、左側と同様に、座面部取付け部24sと、アーム支持部24t、プレートアーム24mと、座面プレート24pと、を備えている。
座面部取付け部24sは、左右のフレーム23bf、23bfの先端部23bt、23btにそれぞれ設けられる。アーム支持部24tは、座面部取付け部24sに設けられ、左右方向(矢印E方向)に伸縮するとともに、座面部取付け部24sに対して回転可能(矢印F方向)となっている。アーム支持部24tの伸縮(矢印E方向)や、回転(矢印F方向)は、図示しない電気モータ等の駆動系によって行われる。プレートアーム24mは、略三角形状のものが用いられ、アーム支持部24tから下方に延びた状態で取り付けられる。座面プレート24pは、略長方形状のものが用いられ、プレートアーム24mの下端部に、プレートアーム24mと直交する方向に延びた状態で設けられる。
アーム支持部24t、24tが左右方向(矢印E方向)に伸縮することにより、座面プレート24p、24pを開閉させることができる。この開閉動作により、被介護者Pを座面プレート24p、24pの上に移乗させることができる。座面プレート24p、24pの表面材質は、例えば、低摩擦の合成樹脂にて形成される。これにより、被介護者Pの移乗に際して滑りが良くなり、しかも汚れも着きにくく、付着した汚れを洗浄し易くなっている。
図3に示すように、座面部24の第1部材24aと第2部材24bが左右に開くことにより、後述するように、被介護者Pの左右両側からそれぞれ座面プレート24p、24pを臀部Ph側に差し込むことが可能となる。また、第1部材24aと第2部材24bは、被介護者Pを保持する際、被介護者Pの両側から挟み込むように動作するので、差し込み動作によって、被介護者Pを一方側へ押してしまうようなことがなく、被介護者Pを確実に座面部24に移乗させることができる。
アーム支持部24tは、回転移動(矢印F方向の回転移動)することができるので、被介護者Pを座面プレート24p、24p上に単に水平に乗せるだけでなく、臀部Phを適宜傾けた状態で支持することもできる。これにより、被介護者Pを保持する姿勢が多様となり、被介護者Pの要望にきめ細かく対応することができる。
座面部24の位置は、搬送装置20の重心を考慮して配置されている。すなわち、被介護者Pが着座姿勢をとったときに、被介護者Pの重心が昇降部22の鉛直方向となるように、座面部24が設定されている。これにより、昇降部22に不要なモーメントが生じないようにすることができる。なお、被介護者Pが座面部24の前後にずれて着座した場合などでは被介護者Pの重心位置が異なってしまう。このような場合は、アーム支持部24t、24tを矢印F方向に回転させて、被介護者Pの重心位置を昇降部22の下方となるように調整してもよい。この調整は、手動で行うほかに、荷重センサの出力を用いて自動で行うように制御してもよい。
前面部25は、図1〜図4に示すように、フレーム23bf、23bfに取り付けられ、被介護者Pの胸部に略対面する位置に前面部正面25aが対応できるようになっている。前面部25は、フレーム23bf、23bfの先端に形成された前面部取付け部25r、25rに支持される。前面部取付け部25r、25rは、前面部25の下部を支持しており、座面部取付け部24s、24sと同一軸線に配置される。なお、前面部取付け部25rは、フレーム23bf、23bfに対して回転可能(矢印L方向)となっている。従って、前面部25は、フレーム23bf、23bfに対して回転可能となっており、被介護者Pの着座姿勢や体形に合わせて傾斜向きを調節することができる。なお、前面部取付け部25rの回転(矢印L方向)は、不図示の電気モータ等の駆動系によって行われる。前面部取付け部25rの回転は、座面部24の回転(矢印F方向)と同期して行ってもよい。従って前面部取付け部25rを回転させる駆動系は、アーム支持部24tを回転(矢印F方向)させる駆動系と兼用されてもよい。
また、前面部25は、所定の厚みを持ったクッション性を有する部材が用いられる。前面部25の上面部25cは、被介護者Pの顎部分に対応できるように適宜な凹み構造を備えている。なお、前面部25は、被介護者Pの顔面に対応する位置まで設けられてもよい。また、前面部25は、ヒータ等の加熱装置が内蔵されてもよい。
伸縮部26は、図1〜図4に示すように、前面部25の前面部側面25b、25bの左右から後方に向けて突出した状態でそれぞれ配置される。伸縮部26は、伸縮部取付部26sと、外筒部26aと、内筒部26bと、を備えている。伸縮部取付部26sは、前面部側面25b、25bからそれぞれ左右に突出した状態で設けられ、左右方向(矢印M方向)に伸縮可能であって、かつ、左右方向を軸としてその軸周りに回転可能(矢印Q方向)となっている。外筒部26aは、一端が伸縮部取付部26sに固定されている。内筒部26bは、外筒部26aの他端からその内側に差し込まれた状態で設けられ、外筒部26aに対してスライド可能(矢印N方向)となっている。なお、伸縮部取付部26sの伸縮(矢印M方向)や、回転(矢印Q方向)は、図示しない電気モータ等の駆動系によって行われる。また、外筒部26aに対する内筒部26bのスライド(矢印N方向)は、図示しない電気モータ等の駆動系によって行われる。
内筒部26bの先端には、背面部27を構成する左側の第1部材27aと、右側の第2部材27bとがそれぞれ設けられている。従って、伸縮部取付部26sを左右方向に伸縮(矢印M方向)させることにより、第1部材27aと第2部材27bとの間を開くまたは閉じることが可能である。また、伸縮部取付部26sを回転(矢印Q方向)させることにより、第1部材27a及び第2部材27bを回転させて第1部材27aの高さを調整することができる。また、内筒部26bをスライド(矢印N方向)させることにより、第1部材27a及び第2部材27bを前面部24に対して近接または離間させることができる。
背面部27は、図1〜図4に示すように、上記のように左側の第1部材27aと、右側の第2部材27bとを有している。これら第1部材27a及び第2部材27bは、前面部25に対向するように、それぞれ独立して内筒部26b、26bの先端に保持されている。
第1部材27aは、左側の背面プレート27pと、背面プレートアーム27mと、背面部取付部27sと、を有している。第2部材27bも同様に、右側の背面プレート27pと、背面プレートアーム27mと、背面部取付部27sと、を有している。背面部取付部27sは、内筒部26bの先端に取り付けられ、左右方向を軸としてその軸周りに回転可能(矢印R方向)となっている。なお、背面部取付部27sの回転(矢印R方向)は、図示しない電気モータ等の駆動系によって行われる。背面プレートアーム27mは、背面部取付部27sから内側に向けて突出した状態で設けられる。背面プレート27pは、背面プレートアーム27mのそれぞれに取り付けられる。
なお、背面プレート27pの表面材質は、座面プレート24pと同様に、例えば、低摩擦の合成樹脂にて形成される。これにより、被介護者Pの背面を保持するに際して滑りが良くなり、しかも汚れも着きにくく、付着した汚れを洗浄し易くなっている。
背面プレート27p、27pは、先に説明した伸縮部26の伸縮部取付部26sを左右方向に伸縮(矢印M方向)させることにより開閉することができる。この開閉動作により、被介護者Pの背面Pbを保持することができる。また、伸縮部取付部26sの回転(矢印Q方向)、及び内筒部26bのスライド(矢印N方向)によって、背面プレート27p、27pの高さや位置が変更され、被介護者Pの着座姿勢を変えることができる。その際、背面部取付部27sが回転(矢印R方向)することにより、被介護者Pの着座姿勢に合わせて、背もたれ(背面プレート27p、27p)の角度を変えることができる。
図3の想像線(二点鎖線)にて示すように、背面プレート27p、27pを開いた状態で、図4の想像線(二点鎖線)に示すように、伸縮部26を伸ばす(矢印N方向)ことによって、例えば、横臥している被介護者Pの近傍まで背面プレート27pを移動させることができる。また、座面部24と同様に、第1部材27aと第2部材27bとを閉じることにより、後述するように、被介護者Pの左右両側からそれぞれ背面プレート27p、27pを背面Pb側に差し込むことが可能となる。また、第1部材27aと第2部材27bは、被介護者Pを保持する際、被介護者Pの両側から挟み込むように動作するので、差し込み動作によって、被介護者Pを一方側へ押してしまうようなことがなく、被介護者Pの背面Pbを確実に保持することができる。また、伸縮部26を縮める(矢印N方向)ことによって、被介護者Pの上半身を起こすので、被介護者Pは、横臥した状態から座面部24に着座した状態(着座姿勢)まで容易に移行できる。
本実施形態の搬送装置20は、上述のように、被介護者Pの背中Pbに対応して動作する背面部27を有するだけでなく、被介護者Pの臀部Phに対応して動作する座面部24を有している。従って、被介護者Pの上半身側と下半身側とを別々に保持するので、被介護者Pが寝たままの状態から、上半身を起こした着座姿勢の状態まで、多様な姿勢に対応して搬送することができる。
また、被介護者Pは、ベッド上から直接搬送装置20に移乗できるため、介護者の補助がない場合でも移動可能となる。従って、被介護者Pの一人暮らしにおいて、日常生活において必要な部屋間の移動が容易となる。また、介護者が被介護者Pを起こしたり、ベッドの端に移動させたりする手間が不要であり、介護者の労力を大幅に低減することができる。
ロボットハンド28は、図1〜図4に示すように、座面部取付け部24s、24sにおいて、プレートアーム24m、24mの内側にそれぞれ設けられている。このロボットハンド28、28は、第1アーム28m、28mと、第2アーム28n、28nと、把持操作部28e、28eと、を有している。第1アーム28mは、座面部取付け部24sに対して回転可能(矢印G方向)に設けられた取付け基部28Sに固定される。第2アーム28nは、第1アーム28mの先端に、第1関節部28cを介して屈曲可能(矢印H方向:図4参照)に連結される。
把持操作部28eは、第2アーム28nの先端に、第2関節部28d及び第3関節部28qを介して連結される。第2関節部28dは、把持操作部28eを第2アーム28nに対して回転(矢印I方向:図4参照)させる構造である。第3関節部28qは、把持操作部28eを第2アーム28nに対して、矢印I方向と異なる方向に回転(矢印J方向:図4参照)させる構造である。従って、把持操作部28eは、第1アーム28m及び第2アーム28nを含む平面において、任意の位置に移動可能となっている。なお、第1アーム28mの回転(矢印G方向)や、第2アーム28nの屈曲(矢印H方向)、把持操作部28eの回転(矢印I方向及び矢印j方向)は、それぞれ不図示の電気モータ等の駆動系によって行われる。
把持操作部28eは、複数の関節部を有する一対の先端摘み部28f、28fが設けられており、人の指先のように把持動作(矢印K方向:図4参照)を行うことが可能な関節構造を有している。従って、先端摘み部28f、28fによって被介護者Pの衣類(例えば、ズボンや、下着、おむつ等)の一部を摘み、かつ第1アーム部28m、及び第2アーム部28n、把持操作部28eをそれぞれ動作させることにより、衣類の着脱作業あるいは着脱補助作業を行うことができる。また、把持操作部28eは、衣服の着脱作業だけでなく、床に落ちたものを拾い上げたり、高所のものを取ったりすることに用いることができる。なお、先端摘み部28fの把持動作(矢印K方向)は、不図示の電気モータ等の駆動系によって行われる。
ロボットハンド28は、図示の構成に限定されない。図示のものに対して、さらに複雑な動作を行うものや、図示のものに対して簡易的に構成されたものなど、各種構成が適用可能である。また、ロボットハンド28が設けられる位置も図示の形態に限定されない。例えば、保持部23の上部である固定基部23aなどに設けられてもよい。また、ロボットハンド28が設けられるか否かは任意である。
次に、搬送装置20を使用しない状態、または、被介護者Pを搬送しないで搬送装置20を移動させる状態(非使用時または非搬送移動時)では、搬送装置20がレール10に吊り下がったままの状態ではじゃまとなる。従って、本実施形態に係る介護装置P1では、搬送装置20を格納して待機させた状態(格納待機状態)とすることができる。すなわち、搬送装置20は、図1に示すように、被介護者Pが乗っていない状態(吊り下がった状態)から、図5に示すように、格納待機状態に移行することができる。
先ず、搬送装置20は、水平ターン部21bを矢印B方向に回転させて、揺動部22bを所定の向き(図1に示す向き)にする。すなわち、揺動部22bをレール10の走行方向に向ける。続いて、昇降伸縮部22cを短くするように縮めて(矢印D方向の移動)保持部23を上昇させる。続いて、昇降伸縮部22cを上方に回転(矢印C方向の移動)させる。昇降伸縮部22c並びに保持部23がレール10と略平行な状態になるまで回転させた後に停止させる。これにより、図5に示すように、搬送装置20は、保持部23をレール10に接近させた、折り畳んだ状態で天井側に保持される。
このような搬送装置20の格納待機状態への移行は、搬送装置20の一部に設けられた操作系(例えばスイッチなど)や、搬送装置20を駆動するためのリモートコントローラ等に設けられたボタン等によって行われる。なお、搬送装置20を格納待機状態とする際、昇降伸縮部22cの移動と同時または移動に先だって、座面部24や、前面部25、背面部27、ロボットアーム28が所定の収納状態となるように動作させるようにしてもよい。
このように、搬送装置20を昇降させる昇降部22が設けられることにより、被介護者Pの昇降だけでなく、搬送装置20をレール10に接近させた状態で天井2側に退避させることができる。これにより、搬送装置20が居住空間のじゃまにならず、介護者の介護行為の支障となることがない。また、非搬送時の移動においても天井側で移動するだけなので、搬送装置20を円滑に移動させることができる。
なお、搬送装置20において、格納待機状態へ移行させる構成を採用するかは任意である。例えば、搬送装置20の退避スペースがある場合は、搬送装置20の非使用時に、吊り下げた状態のまま(図1の状態まま)待避スペースへ移動させてもよい。
次に、介護装置P1を用いて、ベッド71上に横臥している被介護者Pを搬送する際の使用状態について図6〜図15を参照して説明する。
先に説明したが、この介護装置P1においては、図6に示すように、ベッド71上を含めて天井2にレール10が設けられている。このレール10は、廊下などの通路60(図13参照)の天井2を通って他の生活空間にわたって設置されている。従って、搬送装置20は、ベッド71上の被介護者Pの上方まで移動可能となっている。図6に示す状態では、搬送装置20は、被介護者Pの上方まで移動した後、格納待機状態から保持部23を下げた状態である。なお、搬送装置20がこの位置まで移動するときは、図5に示すように天井2側に畳まれた状態で移動する。
搬送装置20は、図6に示すように、被介護者Pの上方において保持部23下げた後、水平ターン部21bを回転させて搬送装置20の向きを変える。図7に示す状態は、搬送装置20の向きを、被介護者Pを保持可能な向きに合わせた状態である。すなわち、搬送装置20は、座面部24、前面部25、及び背面部27等が被介護者Pと正対する向きに回転される。
続いて、座面部24は、第1部材24aの座面プレート24pと第2部材24bの座面プレート24pとが間隔を開けるように動作した後、これら左右の座面プレート24p、24pをベッド71の表面71aの近傍まで(または表面71aと接触するように)搬送装置20を降下させる。座面プレート24p、24pの間隔は、被介護者Pの臀部Phの幅より大きく拡げられている。なお、搬送装置20の降下に先だって、座面プレート24p、24pの間隔を開ける動作とともに、背面部27は、第1部材27aの背面プレート27pと第2部材27bの背面プレート27pとの間隔を開けるように動作する。背面プレート27p、27pの間隔は、被介護者Pの背中Pbの幅より大きく拡げられている。
続いて、座面部24は、座面プレート24pと座面プレート24pとの間隔を閉じるように動作して、座面プレート24p、24pをそれぞれ被介護者Pの臀部Phと、ベッド71の表面71aとの間に差し込む。図15は、座面プレート24p、24pの動作を示している。図15に示すように、座面プレート24p、24pがベッド71の表面71a近傍に位置した状態から、両者の間隔が狭まるように移動(矢印X方向の移動)させる。この移動は、座面プレート24p、24p同士が略接触する位置まで行う(図15における二点鎖線にて示す位置まで移動させる)。これにより、座面プレート24p、24pは、被介護者Pの臀部Phを保持する。
なお、図8では、座面プレート24p、24pが、臀部Phのやや前方に差し込まれた状態を示しているが、被介護者Pの臀部Phに差し込まれてもよい。図8のように、座面プレート24p、24pが、臀部Phのやや前方に差し込まれた場合、座面プレート24p、24pが臀部Phの下方に入るように、保持部23のフレーム部23bを若干揺動させて、座面プレート24p、24pを滑らせることにより、被介護者Pの臀部Phの下側に差し込むようにしてもよい。図9では、保持部23のフレーム部23bを若干揺動させた状態を示している。
臀部Phを保持した後、図9に示すように、伸縮部26、26の外筒部26aを回転させるとともに、内筒部26b、26bを伸ばして、背面プレート27p、27pをベッド71の表面71aの近傍まで(または表面71と接触するように)移動させる。なお、背面プレート27p、27pは、被介護者Pの左右両腕の外側に位置した状態となっている。
続いて、背面プレート27p、27pを、両者の間隔を狭めるように動作させる。これにより、背面プレート27p、27pは、ベッド71の表面71aと被介護者Pの背中Pbの間に差し込まれる。被介護者Pは、背中Pb並びに臀部Phの双方がそれぞれ保持される。なお、保持部23から被介護者Pの背中Phまでの距離が大きい場合には、内筒部26b、26bを伸ばすだけではなく、例えば、前面部25を回転(図4における矢印L方向)させて、背面プレート27p、27pの移動距離を大きくしてもよい。
続いて、図10に示すように、伸縮部26、26の内筒部26b、26bを縮めることにより被介護者Pの上半身を前面部25に向けて起こすように動作させる。これにより、被介護者Pは、座面部24に着座した状態となる。なお、被介護者Pを起こす角度は、内筒部26b、26bを縮める量によって任意に設定可能である。また、被介護者Pの上半身を起こることに伴って、背面プレート27p、27pを適宜回転させる。これにより、被介護者Pの姿勢に合わせて、背面プレート27pを背もたれとして機能させることができる。
続いて、図11に示すように、保持部23を若干上昇させるとともに、水平ターン部21bを回転させることにより、被介護者Pの向きをベッド71上で変更させる。被介護者Pの向きは、例えば、搬送装置20の進行方向に合わせられるが、進行方向と異なる向き、例えば横向きとしてもよい。なお、図11では、搬送装置20の進行方向は、ベッド71の横から降りる方向に設定されている。
続いて、図12に示すように、搬送装置20は、被介護者Pを着座姿勢で保持したまま、移動目的位置に向けて移動する。なお、搬送装置20は、移動位置が指定されることにより、予め設定された動作に基づいて自動で移動する。また、搬送装置20は、被介護者Pの操作によって手動で移動または停止するものでもよい。搬送装置20の移動中は、被介護者Pの操作によって背面部27を動作させ、着座姿勢を調整することも可能である。また、被介護者Pの操作によって水平ターン部21bを回転させ、搬送装置20の向きを変えることも可能である。
次に、搬送装置20の移動目的場所が、例えば、トイレ80であった場合について、図13及び図14を参照して説明する。
搬送装置20は、トイレ80に到着した際、トイレ80の便座81の手前もしくはトイレ80手前の位置において、その向きを180度反転して後ろ向きにしてから所定位置(便座81の直前位置)まで移動する。
続いて、図13に示すように、座面部24の保持角度を水平位置から若干臀部Phを持ち上げる角度に傾斜させると共に背面部27も座面部24の角度に合わせて上方に移動させた状態にする。この結果、被介護者Pは、便座81に座る準備姿勢が整う。ここで、図13に示すように、被介護者Pは、例えば両手でグリップ部23g、23gを握ることで、この姿勢を維持しやすくできる。
続いて、図14に示すように、便座81に座る準備姿勢が整った状態から、そのまま便座81に座れる位置であれば、座面部24の座面プレート24p、24pを開いて便座81への着座準備をする。なお、座る位置がずれているような場合には、例えば搬送装置20を少しずつ移動させて位置の微調整を行う。さらに、座面プレート24p、24pを開いた後、座面部24を前方へ回転させて、被介護者Pが座る動作のじゃまにならないように待機させる。
座面部24が前方へ移動した後、被介護者Pの準備ができたら、ロボットハンド28を動作させる。ロボットハンド28は、その把持操作部28e、28eによって、被介護者Pの衣類Wの一部を摘み、第1アーム部28a、第2アーム部28b、及び把持操作部28eをそれぞれ動作させることによって、衣類Wを下方に下げることができる。その後、保持部23の位置を、被介護者Pが便座81に着座するまで降下させる。なお、保持部23を降下させることに限定されない。例えば、保持部23の位置をそのままとして、被介護者Pは、グリップ部23gを掴んで便座81に着座するものでもよい。また、例えば、被介護者Pが伸縮部26を脇に挟んでいる場合は、伸縮部26を回転させることにより、便座81に着座させてもよい。
続いて、トイレ80から出るときは、便座81に着座するまでと逆の動作が行われる。搬送装置20は、ロボットハンド28により衣類Wを引き上げる動作や、座面部24を臀部Phの下に位置させる動作を行った後、再度、被介護者Pを着座姿勢で保持し、ベッド71や他の部屋に向けて移動する。
先に説明したが、この搬送装置20は、被介護者Pの歩行支援や歩行訓練にも使用可能である。その歩行支援等では、図14に示すような状態で行うことも可能である。被介護者Pは、グリップ部23gを握るとともに、伸縮部26を脇に挟み、前面部25を抱きかかえるような体勢となっている。この体勢は、両脚を自由に動かすことができるので、歩行支援や歩行訓練に利用可能となる。
次に、図1に示すように、搬送装置20は制御装置110を有している。制御装置110は、上記した搬送装置20の各部材の動作を制御する。制御装置110は、搬送装置20内あるいは搬送装置20の外部に設けられる。制御装置110は、移動基台部21の駆動系21mを含めて、各部分の駆動系を制御する。また、制御装置110は、ネットワーク用の通信機能も備えており、インターネット等を介して外部とのデータの送受信が可能となっている。御装置101の通信機能としては、無線あるいは有線のいずれであってもよい。
搬送装置20は、図1に示すように、被介護者Pの前方側に、液晶表示装置等のタッチパネル(ディスプレイ)202が設けられる。タッチパネル202は、各種情報を表示して、被介護者Pが情報を見ることができるようにしたものである。また、タッチパネル202は、搬送装置20の各種動作を実行するためのコントローラとして機能させてもよい。また、タッチパネル202は、地上デジタルテレビや、ビデオ映像等を視聴可能として用いてもよい。
タッチパネル202の両側には、ビデオカメラ203、204が設けられる。このビデオカメラ203、204のそれぞれには、スピーカー及びマイクロフォンが設けられる。これらスピーカー及びマイクロフォンは、被介護者Pが外部とのコミュニケーションをとる際に用いられる、例えば医療機関との音声による問診などに利用可能である。また、2台のビデオカメラ203、204は、搬送装置20に着座している被介護者Pを立体視して、被介護者Pの様子をモニターする。ただし、被介護者Pを立体視するか否かは任意であり、また、2台のビデオカメラ203、204が用いられることに限定されず、1台のビデオカメラであってもよい。また、スピーカー及びマイクロフォンは、ビデオカメラ203、204に設けられることに限定されず、他の部署に設けられてもよい。これら、タッチパネル202、ビデオカメラ203、204は、それぞれ制御装置110に接続されている。また、搬送装置20の一部に電話が設けられてもよい。ビデオカメラ203、204のスピーカー及びマイクロフォンは、電話機能の一部として用いられてもよい。なお、電話の相手先のダイヤルはタッチパネル202で操作可能としてもよい。
また、搬送装置20は、図1に示すように、被介護者Pの状態を計測する管理ボックス40を有している。管理ボックス40は、フレーム部23bに固定されている。管理ボックス40は、図1において一部拡大図にて示すように、デジタルカメラ201、血圧計205、心拍計206、体温計207、体脂肪計208、体重計209、光学センサ210を有している。
デジタルカメラ201は、搬送装置20の周辺をモニターする。例えば、デジタルカメラ201によって、搬送装置20の進行方向にある障害物の存在を監視させてもよい。また、デジタルカメラ201は、ビデオカメラ203、204と同様に被介護者Pの様子をモニターしてもよい。血圧計205、心拍計206、体温計207、体脂肪計208、体重計209は、搬送装置20に着座している被介護者Pの健康状態を常時計測する。これら血圧計205等は、被介護者Pが、管理ボックス40から適宜取り出して用いる。また、血圧計205等の計測結果は、計測日時とともに制御装置110に備えた不図示の記憶装置に記憶させてもよい。
光学センサ210は、被介護者Pの搬送時において、被介護者Pの手足が搬送装置20の外に著しくはみ出しているか否かを計測する。なお、被介護者Pの手足が搬送装置20から著しくはみ出している場合、制御装置110は、例えば、搬送装置20を停止させてもよい。これにより、搬送時において、被介護者Pの手足が障害物に接触するトラブルが回避される。なお、デジタルカメラ201で取得した映像によっても被介護者Pの手足の状態を確認可能である。
また、昇降部22の一部に複数の圧力センサ等を配置させ、搬送装置20の重心位置をモニターしてもよい。被介護者Pの乗り方や着座姿勢に問題が有る場合は、搬送装置20の重心位置の異常として現れる可能性がある。重心位置の異常と判断された場合は、例えば、ビデオカメラ203、204のスピーカー等から警告音を発するか、搬送装置20を停止させてもよい。これにより、被介護者Pが搬送装置20から脱落する等のトラブルを未然に回避ができる。
また、搬送装置20は、各種動作を実行させるためのリモートコントローラを備えてもよい。このリモートコントローラには、各種家電を操作する機能が付加されてもよい。これにより、被介護者Pは、リモートコントローラを用いることにより、搬送装置20の動作だけでなく、各種家電の操作を行うことができる。また、リモートコントローラには、風呂の操作や、窓の開閉操作、ドアの開閉操作の機能を付加させてもよい。これにより、被介護者Pの日常生活で必要な作業の多くを、搬送装置20のリモートコントローラによって集中的に行うことができる。
また、搬送装置20は、例えば、緊急連絡ボタンが設けられてもよい。被介護者Pの体調が急変した場合など、緊急を要する事態が生じた場合、被介護者Pまたはその周囲にいる者が緊急連絡ボタンを押すことで、外部の施設等への通報または外部の施設との連絡が可能となるようにしてもよい。外部の施設等としては、病院や、消防署、警察、家族の家などである。
また、制御装置110は、搬送装置20がレール10を走行する際、直線部分とカーブ部分とで速度を変えるように制御してもよい。例えば、制御装置110は、直線からカーブに差し掛かる前に搬送装置20を減速させ、カーブを低速で走行させるとともに、カーブを抜けた段階で加速するような制御を行ってもよい。
また、制御装置110は、被介護者Pの搬送中において、不都合な操作をキャンセルする機能が設けられてもよい。例えば、被介護者Pの搬送中において、座面部24や背面部27を開くような操作が行われても、これをキャンセルさせる機能が設けられてもよい。
また、制御装置110は、駆動系21mや、その他、各部材を動作させるための駆動系に過大なトルクが生じた場合に、搬送装置20の動作を停止させるように制御してもよい。制御装置110は、過大なトルクを検出した場合、上記した緊急連絡ボタンと同様に、外部の施設等への通報または外部の施設との連絡が可能となるようにしてもよい。
<座面部の変形例1>
次に、座面部の変形例1について、図16を参照して説明する。なお、図16は、図15の座面部24に対応するものであり、座面部34の構造及び動作を説明する概略図である。なお、この座面部34が適用される搬送装置は、図1に示す搬送装置20と同様である。
図16に示すように、座面部34は、左側の第1部材34aと右側の第2部材34bとを有している。第1部材34a及び第2部材34bのそれぞれは、上側の複数のローラにベルトが掛け渡され、下側の複数のローラにベルトが掛け渡された構造を有している。第1部材34aと第2部材34bとは、左右対称の構造であるため、第1部材34aについて説明する。第1部材34aは、支持フレーム34fに回転可能に設けられた上部ローラ34c、34d、34e及び下部ローラ34j、34kを有する。上部ローラ34c等には上面側ベルト34vuが掛け渡される。下部ローラ34j等には下面側ベルト34vdが掛け渡される。また、上面側ベルト34vuの内側(臀部Ph側)の先端上部は、テーパ部34tが形成されている。
上面側ベルト34vuは、臀部Phを持ち上げる方向に回転(矢印Z方向の回転)する。上面側ベルト34vuの上面部分は、臀部Phから離れる方向に移動する。一方、下面側ベルト34vdは、その上面部分が上面側ベルト34vuの下面部分と接触した状態となっている。従って、下面側ベルト34vdは、上面側ベルト34vuの移動と同期して移動する。下面側ベルト34vdの下面部分は、臀部Phから離れる方向に移動する。上面側ベルト34vu及び下面側ベルト34vdの移動速度は、第1部材34aまたは第2部材34bの矢印X方向への移動速度とほぼ同一に設定される。上面側ベルト34vu及び下面側ベルト34vdの一方または双方の駆動は、図示しない電気モータ等の駆動系によって行われる。
座面部34の動作について説明する。
第1部材34a及び第2部材34bを、それぞれ矢印X方向に移動させるとともに、上面側ベルト34vu及び下面側ベルト34vdを駆動する。上面側ベルト34vu、34vuは、臀部Phをそれぞれ持ち上げるように作用する。これにより、第1部材34a及び第2部材34bは、被介護者Pの臀部Phの下側に差し込み易く、臀部Phを容易に乗せることができる。また、テーパ部34t、34tの構造により、臀部Phの持ち上げを容易に行うことができる。
一方、下面側ベルト34vd、34vdは、第1部材34a及び第2部材34bの差し込みと同期して、ベッド71の表面71aを進行した状態となる。これにより、第1部材34aがシーツ等を巻き込むことを回避できる。また、上面側ベルト34vu、34vuは、第1部材34a及び第2部材34bの差し込みと同期して、臀部Phの表面を進行した状態となる。これにより、上面側ベルト34vuと臀部Phとの間で摩擦が生じないため、第1部材34aが衣服を巻き込むことを回避できる。
なお、図16では座面部34について説明したが、背面部27においても同一の構成を適用することができる。
<座面部の変形例2>
次に、座面部の変形例2について、図17を参照して説明する。なお、図17は、図16と同様、図15の座面部24に対応するものであり、座面部44の構造及び動作を説明する概略図である。なお、この座面部44が適用される搬送装置は、図1に示す搬送装置20と同様である。
図17に示すように、座面部44は、左側の第1部材44aと右側の第2部材44bとを有している。第1部材44aと第2部材44bのそれぞれは、上側面44s、内側面44t、下側面44u、外側面44vを備えて、断面が台形状に形成されている。また、図17に示すように、内側面44tと下側面44uとの角部44pが最も内側(臀部Ph側)に突出しており、内側面44tが上向きのテーパ面に形成されている。なお、第1部材44aと第2部材44bとは、左右対称の構造である。
座面部44の動作について説明する。
左右一対の第1部材44a及び第2部材44bは、基本的な動作として、被介護者Pの臀部Phとベッド71の表面71aとの間に入り込むような差し込み方向に動作(矢印X方向の動作)する。この差し込み方向の動作と同時に、左右水平方向の動作(略水平方向の矢印X1及びX2方向の左右動作)と、上下垂直方向の動作(矢印Y1及びY2方向の上下動作)とを連続的に動く小刻みな動作(振動ともいえる)を行う。
この小刻みな動作は、水平方向と垂直方向とが同時に動くのではなく、臀部Phに対して、近づく動作(矢印X1方向)、上昇する動作(矢印Y1方向)、遠ざかる動作(矢印X2方向)、降下する動作(矢印Y2方向)の順で回転するような連続動作である。したがって、この小刻みな動作を伴って差し込み方向(矢印X方向)へ移動する。この結果、第1部材44a及び第2部材44bが、臀部Phを持ち上げるような振動によって、被介護者Pの臀部Phの下に容易に入り込むことができる。
なお、第1部材44a及び第2部材44bの小刻みな動作(振動動作)は、差し込み方向の動作(矢印X方向)の速度や差し込み最終位置等に応じて設定される。その他、例えば、被介護者Pの体重、被介護者Pの衣類の材質、被介護者Pの身体的特徴、ベッド71の硬さ、表面71aの材質などの各種要素を顧慮して、第1部材44a等の小刻みな動作(振動動作)が設定されてもよい。
なお、図17では座面部44について説明したが、背面部27においても同一の構成を適用することができる。
<座面部の変形例3>
次に、座面部の変形例3について、図18を参照して説明する。なお、図18は、図16及び図17と同様、図15の座面部24に対応するものであり、座面部54の構造及び動作を説明する概略図である。なお、この座面部54が適用される搬送装置は、図1に示す搬送装置20と同様である。
図17に示すように、座面部54は、左側の第1部材54aと右側の第2部材54bとを有している。第1部材54a及び第2部材54bのそれぞれは、例えば、ステンレス等の薄い板状の金属部材54mの間に、柔軟で摩擦係数の低い例えば合成樹脂製の絶縁部材54pを挟み込むように積層させた構造を有する。図18では、3枚の金属部材54mの間に2枚の絶縁部材54pを挟み込んだ積層構造が採用されている。金属部材54mは、電源が接続されており、所定の電圧を印加することができる。外側の2枚の金属部材54mはプラスの電圧が印加され、内側の金属部材54mはマイナスの電圧が印加される。なお、第1部材54aと第2部材54bとは、左右対称の構造である。
第1部材54aは、金属部材54mに電圧を印加しない状態においては、金属部材54mと絶縁部材54pとの間の摩擦係数は低いままに維持されるので、両者間には滑りが生じて比較的容易に曲がる柔軟性を有している。一方、図18の一部拡大図Tにて示すように、外側の金属部材54mにはプラスの電圧を印加し、また、内側の金属部材54mにマイナスの電圧が印加されると、金属部材54mと絶縁部材54pとの間の摩擦係数は高くなる。これにより、金属部材54mと絶縁部材54pとの間の滑りが減少し、全体としての剛性が高くなることで第1部材54aは硬くなる。
座面部54の動作について説明する。
左右一対の第1部材54a及び第2部材54bは、被介護者Pの臀部Phとベッド71の表面71aとの間に入り込むような差し込み方向に動作(矢印X方向)する。この差し込み方向の動作に際しては、金属部材54mに電圧は印加されない。従って、第1部材54a及び第2部材54bは、剛性が低く、柔軟性を有した状態となっている。これにより、第1部材54aは柔軟に曲がりながら、被介護者Pの臀部Phとベッド71の表面71aとの間にスムーズに入り込むことができる。また、第1部材54aは剛性が低いので、被介護者Pの臀部Phに対してソフトに接触し、被介護者Pの負担を軽減させることができる。
第1部材54a及び第2部材54bの差し込みが終了すると、金属部材54mに電圧を印加する。これにより、第1部材54a及び第2部材54bは、剛性が高くなり、被介護者Pを保持することができる。なお、被介護者Pの搬送中は、金属部材54mへの電圧の印加を継続する。
なお、図18では座面部54について説明したが、背面部27においても同一の構成を適用することができる。
<集合施設への設置例>
次に、介護装置P1が集合施設などの建物1Aに設置された場合の具体例について、図19を参照して説明する。図19に示す建物1Aは、1つの部屋に複数のベッド71が配置された介護施設や病院等の集合施設の一例を示している。なお、本実施形態においては、先に説明した部材と同一のものには同じ符号を付して説明を省略または簡略化する。
図19に示すように、建物1Aは、廊下等の通路60に対して複数の部屋91、92、93が並んで配置されている。各部屋91等には、それぞれドアを介して通路60から出入りする。各部屋91等には、それぞれ6床のベッド71が設置されている。ベッド71は、それぞれ被介護者Pが割り当てられている。
介護装置P1を構成するレール10は、通路60の天井2に設けられている。なお、図19において、レール10は、二点鎖線で表している。レール10は、通路60のレール10から分岐するように、各部屋91等の天井2まで引き込まれている。各部屋91等に引き込まれたレール10は、さらに各ベッド71の上方または近傍までそれぞれ延びるように形成される。なお、図示しないが、通路60に延びるレール10は、さらに診察室や、浴室、トイレなどに引き延ばされる。さらにレール10は、階段やエレベータ内、エスカレータ、車両への乗り降りのための玄関先など、まで引き延ばされてもよい。
搬送装置20は、レール10に沿って移動する。搬送装置20は、複数台配置されてもよい。搬送装置20を複数台用いる場合、各搬送装置20は、それぞれ自由に移動可能であるが、他の搬送装置20との干渉を避ける必要がある。例えば、各搬送装置20は、現在の位置を他の搬送装置20に通知し、搬送装置20の互いの位置を確認しながら走行させてもよい。また、レール10の一部に退避用のレールを設置し、搬送装置20の一方が走行する際には他方を退避させてもよい。また、各搬送装置20は、移動先のルートを他の搬送装置20に通知し、他の搬送装置20は受け取ったルートと干渉しないルートを選択させるようにしてもよい。
搬送装置20は、先に説明したように、被介護者Pの移乗を容易に行うことができる。従って、介護施設等で勤務する介護者が少ない場合であっても、被介護者Pの移動を行うことができる。介護者にとっては、被介護者Pを抱きかかえるといった重労働から解放されるので、介護者の負担を軽減することができる。また、介護施設等では、1名ごとに1台の搬送装置20を配置する必要はないため、1台の搬送装置20で複数人の被介護者Pに対応することができ、設置コストを軽減できる。
複数台の搬送装置20が配置される場合、同一の搬送装置20が用いられることに代えて、異なるタイプの搬送装置20が用いられてもよい。例えば、体格の大小によって着座面積の異なる搬送装置20が配置されてもよい。また、男性用と女性用に一部形態を変更した搬送装置20が配置されてもよい。
<介護支援システム>
次に、介護装置を用いた介護支援システムについて説明する。この介護支援システム100は、図1に示す介護装置P1を用いた場合の一例を示している。図20は、実施形態に係る介護支援システム100の利用環境の一例を示す図である。介護支援システム100は、被介護者Pに対する介護を支援するシステムである。
介護支援システム100は、制御装置110及び遠隔制御装置(管理装置)130を備える。制御装置110と遠隔制御装置130とは、通信回線Nを介して通信接続される。なお、通信回線Nは、インターネット等のコンピュータネットワーク、通信事業者のコアネットワーク、及び種々のローカルネットワークを含む。
制御装置110は、介護装置P1を制御する装置である。例えば、制御装置110は、介護装置P1の搬送装置20に設けられている(図1参照)。制御装置110は、搬送装置20に搭載されている各種駆動系200、デジタルカメラ201、タッチパネル202、ビデオカメラ(スピーカー及びマイクロフォン内蔵)203、204、血圧計205、心拍計206、体温計207、体脂肪計208及び体重計209と電気的に接続されている。各種駆動系200は、図1に示す駆動系21mや、その他、各部材を動作させるための駆動系を総称して示している。具体的には、各駆動系がそれぞれ制御装置110と接続される。
デジタルカメラ201は、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の光に反応する半導体素子を使って映像を電気信号に変換し、デジタルデータとしてフラッシュメモリ等の記憶媒体に記憶する装置である。例えば、デジタルカメラ201は、被介護者Pまたは介護装置P1の搬送装置20の周囲を撮像するように、搬送装置20の一部(図1では管理ボックス40内)に設置される。ただし、デジタルカメラ201は、搬送装置20と異なる場所、例えば居室の一部に配置され、その位置から映像を取得するものでもよい。
タッチパネル202は、各種情報を表示するとともに、指先や専用のペンで画面に触れることで入力を行う装置である。タッチパネル202は、例えば、被介護者Pが搬送中に見やすく、また手で操作できる位置に設けられている。図1に示す搬送装置20では、被介護者Pの前方に配置される。
ビデオカメラ203、204は、視差をもって被介護者Pを撮像し、これを合成することにより被介護者Pを立体視した動画を生成する。ビデオカメラ203、204に内蔵するスピーカーは、電気信号を物理振動に変えて、音楽や音声等の音を生み出す装置である。なお、このスピーカーは、上述したようにビデオカメラ203等に内蔵させることに代えて、搬送装置20の一部に設けられてもよい。なお、被介護者Pが音声を聞き取りにくい場合は、イヤホンなどが用いられてもよい。
ビデオカメラ203、204に内蔵するマイクロフォンは、音を電気信号に変換する装置である。このマイクロフォンは、上述したようにビデオカメラ203等に内蔵させることに代えて、例えば、搬送装置20の一部に設けられてもよい。
血圧計205は、被介護者Pの血圧を測定する装置である。心拍計206は、被介護者Pの心拍数を測定する装置である。体温計207は、被介護者Pの体温を測定する装置である。体脂肪計208は、被介護者Pの体脂肪率を測定する装置である。体重計209は、被介護者Pの重量を測定する装置である。これら血圧計205等は、例えば、搬送装置20の一部(図1では管理ボックス40内)に設置される。被介護者Pは、必要に応じて血圧計205や、心拍計206、体温計207を装着する。
体脂肪計208は、例えば、搬送装置20の一部(例えばグリップ部23gなど)に設置され、被介護者Pが握ることにより計測を行うようにしてもよい。なお、グリップ部23gを被介護者Pが握ることにより、同時に心拍計206によって心拍数を計測するようにしてもよい。このように、グリップ部23gを被介護者Pが握るといった接触式で心拍数を計測することにより、測定結果の信頼性を向上できる。ただし、心拍計206として、非接触で頸動脈を観察するなどして心拍数を測定するものが用いられてもよい。体重計209は、例えば搬送装置20の一部(例えば昇降部22など)にロードセル等を設置し、被介護者Pの体重を搬送時に計測するものでもよい。
遠隔制御装置130は、介護装置P1を遠隔操作するための装置である。例えば、遠隔制御装置130は、オペレーションセンターP2に設けられている。遠隔制御装置130は、ディスプレイ101、ジョイスティック102、マイクロフォン103、及びスピーカー104と電気的に接続されている。図示しないが、入力装置としてキーボードやマウスが用いられてもよい。また、遠隔制御装置130には、ビデオカメラ203、204からの画像を立体視する機能を有している。なお、使用される立体カメラ(ステレオカメラ)しては、眼鏡方式または裸眼方式のいずれであっても対応可能としている。
ディスプレイ101は、文字や図形を表示する装置である。ジョイスティック102は、入力装置の一つである。マイクロフォン103は、音を電気信号に変換する装置である。スピーカー104は、電気信号を物理振動に変えて、音楽や音声等の音を生み出す装置である。マイクロフォン103やスピーカー104は、介護装置P1に用いられるスピーカー203やマイクロフォン204と同様である。
なお、本実施形態では、介護支援システム100が、それぞれ1つの制御装置110、遠隔制御装置130、各種駆動系200、デジタルカメラ201、タッチパネル202、ビデオカメラ203、204、血圧計205、心拍計206、体温計207、体脂肪計208、体重計209、ディスプレイ101、ジョイスティック102、マイクロフォン103及びスピーカー104を備える構成について説明する。ただし、介護支援システム100は、それぞれ複数の制御装置110等を備えてもよい。また、介護支援システム100は、複数の介護装置P1(搬送装置20)を備えてもよい。
図21は、制御装置110のブロック構成の一例を示す図である。制御装置110は、操作入力受付部111、クエリデータ送信部112、レスポンスデータ受信部113、表示データ出力部114、介護装置制御部115、画像データ入力受付部116、画像データ送信部117、生態データ入力受付部118、生体データ送信部119、制御データ受信部120、音声データ受信部121、音声データ出力部122、音声データ入力受付部123及び音声データ送信部124を有する。以下の説明においては、各構成要素の機能及び動作について詳述する。
操作入力受付部111は、タッチパネル202に表示された搬送装置20の操作メニューの一覧のうち、介護者または被介護者Pによって選択された操作メニューの入力を受け付ける。クエリデータ送信部112は、介護装置P1の利用料金が支払われているか否かを問い合わせる旨のクエリデータを、遠隔制御装置130へ送信する。レスポンスデータ受信部113は、介護装置P1の利用料金が支払われているか否かの問い合わせに対する返信であるレスポンスデータを、遠隔制御装置130から受信する。
表示データ出力部114は、介護装置P1の操作メニューの一覧等の情報を表示させる表示データを、タッチパネル202へ出力する。介護装置制御部115は、介護者または被介護者Pによって選択された操作メニューの内容に従って、介護装置P1の搬送装置20を制御する。また、介護装置制御部115は、遠隔制御装置130から受信した制御データの内容に従って、介護装置P1を制御する。画像データ入力受付部116は、デジタルカメラ201によって撮像された画像の画像データの入力を受け付ける。画像データ送信部117は、画像データを、介護装置P1の搬送装置20へ送信する。
生体データ入力受付部118は、被介護者Pの生体情報を示す生体データの入力を受け付ける。生体データ入力受付部118は、例えば、血圧計205によって測定された被介護者Pの血圧を示す生体データの入力を受け付ける。また、生体データ入力受付部118は、心拍計206によって測定された被介護者Pの心拍数を示す生体データの入力を受け付ける。また、生体データ入力受付部118は、体温計207によって測定された被介護者Pの体温を示す生体データの入力を受け付ける。また、生体データ入力受付部118は、体脂肪計208によって測定された被介護者Pの体脂肪率を示す生体データの入力を受け付ける。また、生体データ入力受付部118は、体重計209によって測定された被介護者Pの重量を示す生体データの入力を受け付ける。
生体データ送信部119は、生体データを、遠隔制御装置130へ送信する。制御データ受信部120は、介護装置P1の搬送装置20を制御するための制御データを、遠隔制御装置130から受信する。音声データ受信部121は、オペレーションセンターP2のオペレーターの音声を示す音声データを、遠隔制御装置130から受信する。
音声データ出力部122は、オペレーションセンターP2のオペレーターの音声を示す音声データを、ビデオカメラ203、204のスピーカーへ出力する。音声データ入力受付部123は、介護者または被介護者Pの音声を示す音声データの入力を、ビデオカメラ203、204のマイクロフォンから受け付ける。音声データ送信部124は、介護者または被介護者Pの音声を示す音声データを、遠隔制御装置130へ送信する。
図22は、遠隔制御装置130のブロック構成の一例を示す図である。遠隔制御装置130は、クエリデータ受信部131、支払状況判定部132、レスポンスデータ送信部133、画像データ受信部134、生体データ受信部135、表示データ出力部136、操作入力受付部137、制御データ送信部138、音声データ入力受付部139、音声データ送信部140、音声データ受信部141、音声データ出力部142及び支払情報格納部143を有する。
クエリデータ受信部131は、介護装置P1の利用料金が支払われているか否かを問い合わせる旨のクエリデータを、制御装置110から受信する。支払状況判定部132は、介護装置P1の利用料金が支払われているか否かを判定する。レスポンスデータ送信部133は、介護装置P1の利用料金が支払われているか否かの判定結果を示すレスポンスデータを、制御装置110へ送信する。
画像データ受信部134は、デジタルカメラ201によって撮像された画像の画像データを、制御装置110から受信する。表示データ出力部136は、デジタルカメラ201によって撮像された画像や、生体データによって示される被介護者Pの生体情報を表示させるための表示データを、ディスプレイ101へ出力する。操作入力受付部137は、ジョイスティック102を用いた操作の入力を受け付ける。なお、入力装置としてキーボードやマウスが用いられる場合は、それぞれを用いた操作の入力を受け付ける。
制御データ送信部138は、ジョイスティック102を用いた操作内容に従って介護装置P1を制御させる制御データを、制御装置110へ送信する。音声データ入力受付部139は、オペレーションセンターP2のオペレーターの音声を示す音声データ入力を、マイクロフォン103から受け付ける。
音声データ送信部140は、オペレーションセンターP2のオペレーターの音声を示す音声データを、制御装置110へ送信する。音声データ受信部141は、介護者または被介護者Pの音声を示す音声データを、制御装置110から受信する。音声データ出力部142は、介護者または被介護者Pの音声を示す音声データを、スピーカー104へ出力する。
支払情報格納部143には、介護装置P1の利用料金の支払状況の情報が格納される。図23は、支払情報格納部143に格納される情報の一例をテーブル形式で示す図である。支払情報格納部143には、契約者ID(identifier)及び支払状況の情報が対応付けられて格納される。
契約者IDの情報は、介護装置P1の利用契約をしている複数の契約者の中で、各契約者を一意に識別するための識別符号である。支払状況の情報は、契約者IDによって識別される契約者が、介護装置P1を利用するための料金を支払っているか否かを示す情報である。例えば、この例においては、契約者ID「C0001」によって識別される契約者が、介護装置P1を利用するための料金を支払っていることを示している。
<介護装置の駆動方法>
(利用確認モード)
次に、介護装置P1の駆動方法の実施形態について、制御装置110及び遠隔制御装置130の動作シーケンスを参照して説明する。
図24は、制御装置110及び遠隔制御装置130の動作シーケンスの一例を示す図である。この動作シーケンスは、介護装置P1を利用可能か否か確認する利用確認モードである。この動作シーケンスの説明においては、介護者または被介護者Pが介護装置P1の操作を行い、オペレーターによる観察(監視)及び介護装置P1の遠隔操作を行わない場合について説明する。なお、この動作シーケンスの説明においては、図20〜図23を参照する。
被介護者Pまたは介護者は、介護装置P1を操作するに際して、例えば、タッチパネル202に表示される起動メニューを操作して、介護操作P1の起動操作を行う。制御装置110の操作入力受付部111は、起動操作の入力を受け付けると(ステップS101)、その旨を示すデータを、クエリデータ送信部112へ送る。
制御装置110のクエリデータ送信部112は、操作入力受付部111からデータを受け取ると、介護装置P1の利用料金が支払われているか否かを問い合わせる旨のクエリデータを、遠隔制御装置130へ送信する(ステップS102)。例えば、クエリデータ送信部112は、介護装置P1の契約者の契約者IDの情報を含むデータを、クエリデータとして送信する。クエリデータ受信部131は、制御装置110からクエリデータを受信すると、そのクエリデータを、支払状況判定部132へ送る。
遠隔制御装置130の支払状況判定部132は、クエリデータ受信部131からクエリデータを受け取ると、介護装置P1の利用料金が支払われているか否かを判定する(ステップS103)。例えば、支払状況判定部132は、支払情報格納部143に格納されている情報のうち、クエリデータに含まれる契約者IDの情報に対応付けられている支払状況の情報を参照して、介護装置P1の利用料金が支払われているか否かを判定する。そして、支払状況判定部132は、その判定結果を示すレスポンスデータを、レスポンスデータ送信部133へ送る。
遠隔制御装置130のレスポンスデータ送信部133は、支払状況判定部132からレスポンスデータを受け取ると、そのレスポンスデータを、クエリデータの送信元の制御装置110へ送信する(ステップS104)。制御装置110のレスポンスデータ受信部113は、遠隔制御装置130からレスポンスデータを受信すると、そのレスポンスデータを、表示データ出力部114へ送る。
制御装置110の表示データ出力部114は、レスポンスデータ受信部113からレスポンスデータを受け取ると、そのレスポンスデータによって示される判定結果に応じた情報を表示させる表示データを、タッチパネル202へ出力する(ステップS105)。例えば、介護装置P1の利用料金が支払われていないとの判定結果の場合、表示データ出力部114は、介護装置P1を使用することができない旨を通知する情報を表示させる表示データを、タッチパネル202へ出力する。また、例えば、介護装置P1の利用料金が支払われているとの判定結果の場合、表示データ出力部114は、介護装置P1の操作メニューの一覧を表示させる表示データを、タッチパネル202へ出力する。
介護装置P1の利用料金が支払われていない旨の情報がタッチパネル202に表示された場合、被介護者Pまたは介護者は、所定の手続きを経て、介護装置P1の利用料金を支払った後に、再度、介護装置P1の起動操作を行う。一方、介護装置P1の操作メニューの一覧がタッチパネル202に表示された場合、被介護者Pまたは介護者は、その操作メニューの一覧の中から、所望の操作メニューを選択して、介護装置P1を操作する。
制御装置110の操作入力受付部111は、タッチパネル202に表示された搬送装置20の操作メニューの一覧のうち、介護者または被介護者Pによって選択された操作メニューの入力を受け付けると(ステップS106)、その選択された操作メニューを示すデータを、介護装置制御部115へ送る。介護装置制御部115は、操作入力受付部111からデータを受け取ると、そのデータによって示される操作メニューの内容に従って、介護装置P1の搬送装置20に搭載された各種駆動系200を制御する(ステップS107)。
このように、利用確認モードでは、介護装置P1の利用料金の支払いの有無によって、搬送装置20の動作が可能か否かを判断している。従って、例えば、介護装置P1をレンタルしている場合に、レンタル料金の支払い確認を容易に行うことができる。なお、ステップS103において、介護装置P1の利用料金が支払われていない場合であっても、所定の事情(例えば他の機関等からの要請など)がある場合は、介護装置P1を利用可能としてもよい。
なお、利用確認モードにおいて、被介護者Pは、必要に応じてオペレーターセンターP2のオペレーターを呼び出すことができるようにしてもよい。例えば、搬送装置20の一部に呼び出しボタン等が設けられ、被介護者Pが呼び出しボタンを押すことによりオペレーターに接続されるようにしてもよい。オペレーターは、被介護者Pに対して音声により応答することが可能である。また、搬送装置2に設けられた緊急連絡ボタンが押された場合や、搬送装置20の制御装置110が異常を検知した場合などは、オペレーターセンターP2に通報するものでもよい。オペレーターセンターP2への通報や、オペレーターからの呼びかけ等は、制御装置110が制御する。
(観察モード)
次に、介護装置P1の駆動方法の他の実施形態について、制御装置110及び遠隔制御装置130の動作シーケンスを参照して説明する。
図25は、制御装置110及び遠隔制御装置130の動作シーケンスの他の一例を示す図である。この動作シーケンスは、オペレーターが観察(監視)を行う観察モードである。この動作シーケンスの説明においては、介護者または被介護者Pが介護装置P1の操作を行い、オペレーターが観察(監視)を行う場合について説明する。なお、この動作シーケンスの説明においては、図20〜図24を共に参照する。また、図25に示す動作シーケンスの動作のうち、図24に示す動作シーケンスと同じ符号を付している動作は同様の動作を示している。ステップS101〜ステップS107については、図24に示す動作シーケンスの動作と同様である。
被介護者Pの生体情報は、血圧計205、心拍計206、体温計207、体脂肪計208及び体重計209等の測定装置によって測定される。これらの測定装置は、測定結果を示す生体データを、制御装置110へ出力する。また、被介護者P及び介護装置P1の様子は、デジタルカメラ201やビデオカメラ203、204によって撮影される。そして、デジタルカメラ201等は、撮影して得られた画像データを、制御装置110へ出力する。
制御装置110の生体データ入力受付部118は、被介護者Pの生体情報を示す生体データの入力を受け付けると(ステップS208)、その生体データを、生体データ送信部119へ送る。一方、制御装置110の画像データ入力受付部116は、デジタルカメラ201等によって撮像された画像の画像データの入力を受け付けると(ステップS208)、その画像データを、画像データ送信部117へ送る。
制御装置110の生体データ送信部119は、生体データ入力受付部118から生体データを受け取ると、その生体データを、遠隔制御装置130へ送信する(ステップS209)。一方、制御装置110の画像データ送信部117は、画像データ入力受付部116から画像データを受け取ると、その画像データを、遠隔制御装置130へ送信する(ステップS209)。
遠隔制御装置130の生体データ受信部135は、制御装置110から生体データを受信すると、その生体データを、表示データ出力部136へ送る。一方、遠隔制御装置130の画像データ受信部134は、制御装置110から画像データを受信すると、その画像データを、表示データ出力部136へ送る。
遠隔制御装置130の表示データ出力部136は、生体データ受信部135から生体データを受け取ると、その生体データによって示される被介護者Pの生体情報を表示させる表示データを、ディスプレイ101へ出力する(ステップS210)。また、表示データ出力部136は、画像データ受信部134から画像データを受け取ると、その画像データの画像を表示させる表示データを、ディスプレイ101へ出力する(ステップS210)。
オペレーターは、ディスプレイ101に表示された生体情報や画像から、被介護者Pの様子を観察する。被介護者Pの容態に異変等があった場合または連絡が必要と感じた場合、オペレーターは、マイクロフォン103とスピーカー104を用いて、被介護者Pまたは介護者との通話を行う。なお、被介護者Pまたは介護者は、オペレーターとの通話の際、ビデオカメラ203、204のスピーカー及びマイクロフォンを用いる。また、被介護者Pの容態については、オペレーターの観察だけでなく、取得した生体データや画像データを処理することにより判断してもよい。生体データの処理や判断は、遠隔制御装置130が行ってもよく、また、外部の処理装置が行ってもよい。
遠隔制御装置130の音声データ入力受付部139は、オペレーションセンターP2のオペレーターの音声を示す音声データ入力を、マイクロフォン103から受け付けると(ステップS211)、その音声データを、音声データ送信部140へ送る。音声データ送信部140は、音声データ入力受付部139から音声データを受け取ると、その音声データを、制御装置110へ送信する(ステップS212)。
制御装置110の音声データ受信部121は、遠隔制御装置130から音声データを受信すると、その音声データを、音声データ出力部122へ送る。音声データ出力部122は、音声データ受信部121から音声データを受け取ると、その音声データを、ビデオカメラ203、204のスピーカーへ出力する(ステップS213)。これにより、被介護者Pまたは介護者は、オペレーターの音声を聞くことができる。なお、オペレーターの音声とともに、オペレーターのライブ画像を搬送装置20のタッチパネル202に表示させてもよい。これにより、被介護者Pは、誰と話しているかを容易に認識可能となる。
被介護者Pまたは介護者は、オペレーターの呼びかけに応じて、会話を行う。制御装置110の音声データ入力受付部123は、介護者または被介護者Pの音声を示す音声データの入力を、ビデオカメラ203、204のマイクロフォンから受け付けると(ステップS214)、その音声データを、音声データ送信部124へ送る。音声データ送信部124は、音声データ入力受付部123から音声データを受け取ると、その音声データを、遠隔制御装置130へ送信する(ステップS215)。
遠隔制御装置130の音声データ受信部141は、制御装置110から音声データを受信すると、その音声データを、音声データ出力部142へ送る。音声データ出力部142は、音声データ受信部141から音声データを受け取ると、その音声データを、スピーカー104へ出力する(ステップS216)。これにより、オペレーターは、被介護者Pまたは介護者の音声を聞くことができる。
このように、観察モードでは、被介護者Pが介護装置P1を使用する際に、被介護者Pを観察している。従って、被介護者Pの容態の変化に対して迅速な対応が可能である。例えば、オペレーターは、被介護者Pに適宜呼びかけを行うが、被介護者Pの様子がおかしい場合は、直ちに病院や消防署への連絡を行うことができる。
また、被介護者Pの様子がおかしい場合は、被介護者Pによる搬送装置20の操作から、遠隔制御装置130を用いたオペレーターによる搬送装置20の操作(遠隔操作モード:図26に示す動作シーケンス)に強制的に切り替えるようにしてもよい。また、被介護者Pからの要請で、被介護者Pによる搬送装置20の操作から、遠隔制御装置130を用いたオペレーターによる搬送装置20の操作に適宜変更するものでもよい。この場合、被介護者Pからの要請で、再度、被介護者Pによる搬送装置20の操作に戻すようにしてもよい。
観察モードにおいて、一時的にオペレーターによる搬送装置20の操作を行った場合は、その利用時間が記録されて、次回の利用料金の支払い時に加算されて利用者に請求するようにしてもよい。また、被介護者Pが、常時オペレーターによる搬送装置20の操作を希望する場合は、利用料金の変化をオペレーターが連絡し、被介護者Pの了承を得て、次回からオペレーターによる搬送装置20の操作(遠隔操作モード)を実施する。なお、このオペレーターによる確認の連絡等は、録画または録音されてもよい。また、観察モードにおいても、搬送装置2に設けられた緊急連絡ボタンが押された場合や、搬送装置20の制御装置110が異常を検知した場合などは、オペレーターセンターP2に通報される。
また、観察モードにおいて、トイレや浴室など、プライバシーを損なうおそれがある場所では、デジタルカメラ201やビデオカメラ203、204の画像及びマイクロフォンの音声の一方または双方をオペレーターセンターP2に送信させないようにしてもよい。オペレーターセンターP2への送信の可否は、制御装置110が行う。制御装置110は、搬送位置を認識し、予め登録された位置ではデジタルカメラ201やビデオカメラ203、204の画像及びマイクロフォンの音声の一方または双方を送信しないように制御する。
(遠隔操作モード)
次に、介護装置P1の駆動方法の他の実施形態について、制御装置110及び遠隔制御装置130の動作シーケンスを参照して説明する。
図26は、制御装置110及び遠隔制御装置130の動作シーケンスの他の一例を示す図である。この動作シーケンスは、オペレーターが介護装置P1(搬送装置20)の遠隔操作を行う遠隔操作モードである。この動作シーケンスの説明においては、介護者及び被介護者Pが介護装置P1の操作を行わず、オペレーターが観察(監視)及び介護装置P1の遠隔操作を行う場合について詳述する。なお、この動作シーケンスの説明においては、図20〜図25を共に参照する。また、図26に示す動作シーケンスの動作のうち、図24及び図25に示す動作シーケンスと同じ符号を付している動作は同様の動作を示している。
被介護者Pまたは介護者は、介護装置Pを使用したい旨をオペレーターセンターP2へ連絡する。オペレーターセンターP2への連絡は、例えば、被介護者Pの手元に設置されるリモートコントローラによる操作や、搬送装置20のビデオカメラ203、204のマイクロフォンに向かってオペレーターを呼び出すことにより行う。
オペレーターは、被介護者Pまたは介護者による搬送要請を受けて、介護装置P1を遠隔制御するにあたり、ジョイスティック102や、その他の入力装置を用いて、使用対象となる介護装置P1の起動操作を行う。遠隔制御装置110の操作入力受付部137は、起動操作の入力を受け付けると(ステップS317)、その旨を示すデータを、支払状況判定部132へ送る。支払状況判定部132は、介護装置P1の利用料金が支払われているか否かを判定する(ステップS303)。そして、支払状況判定部132は、その判定結果を示すデータを、表示データ出力部136へ送る。
表示データ出力部136は、支払状況判定部132からデータを受け取ると、そのデータによって示される判定結果の情報を表示させる表示データを、ディスプレイ101へ出力する(ステップS318)。例えば、介護装置P1の利用料金が支払われていないとの判定結果の場合、表示データ出力部136は、介護装置P1を使用することができない旨を通知する情報を表示させる表示データを、ディスプレイ101へ出力する。この場合、オペレーターは、介護装置P1を使用することができない旨を搬送装置20のビデオカメラ203、204のスピーカーから被介護者Pに連絡することも可能である。また、オペレーターは、所定の手続きを経て、介護装置P1の利用料金を支払うよう、被介護者Pまたは介護装置P1の契約者に連絡してもよい。
また、介護装置P1の利用料金が支払われているとの判定結果の場合、表示データ出力部136は、介護装置P1を使用することができる旨を通知する情報を表示させる表示データを、ディスプレイ101へ出力する。
オペレーターは、ディスプレイ101の表示画面を確認して、介護装置P1の操作を開始する。搬送装置20は、起動されることにより、デジタルカメラ201やビデオカメラ203、204によって被介護者P及び介護装置P1の周囲の様子を撮影する。なお、デジタルカメラ201及びビデオカメラ203、204は、撮影して得られた画像データを、制御装置110へ出力する。制御装置110の画像データ入力受付部116は、デジタルカメラ201等によって撮像された画像の画像データの入力を受け付けると(ステップS208)、その画像データを、画像データ送信部117へ送る。制御装置110の画像データ送信部117は、画像データ入力受付部116から画像データを受け取ると、その画像データを、遠隔制御装置130へ送信する(ステップS209)。
遠隔制御装置130の画像データ受信部134は、制御装置110から画像データを受信すると、その画像データを、表示データ出力部136へ送る。表示データ出力部136は、画像データ受信部134から画像データを受け取る。そして、表示データ出力部136は、画像データ受信部134から画像データを受け取ると、そのデータによって示される画像を表示させる画像データを、ディスプレイ101へ出力する(ステップS310)。また、ビデオカメラ203、204からの画像データに基づいて、被介護者Pを立体視した画像がディスプレイ101に表示される。
オペレーターは、ディスプレイ101の画像により被介護者Pの状況を確認し、ジョイスティック102によって搬送装置20を操作する。なお、ビデオカメラ203、204からの画像データによって、ディスプレイ101では被介護者Pを立体的に表示しているため、オペレーターは、搬送装置20の操作に際して被介護者Pの位置や状態が確認しやすくなっている。また、オペレーターは、搬送装置20を操作する際に、適宜被介護者Pに声掛け等を行ってもよい。また、搬送装置20のタッチパネル202に、オペレーターのライブ画像を表示させてもよい。
オペレーターの操作により、被介護者Pを搬送装置20に移乗させた後、被介護者Pの生体情報は、血圧計205、心拍計206、体温計207、体脂肪計208及び体重計209等の測定装置によって測定される。これらの測定装置は、測定結果を示す生体データを、制御装置110へ出力する。また、被介護者Pの移乗後においても、被介護者P及び介護装置P1の周囲の様子は、デジタルカメラ201によって撮影される。デジタルカメラ201は、撮影して得られた画像データを、制御装置110へ出力する。
制御装置110の生体データ入力受付部118は、被介護者Pの生体情報を示す生体データの入力を受け付けると(ステップS208)、その生体データを、生体データ送信部119へ送る。生体データ送信部119は、生体データ入力受付部118から生体データを受け取ると、その生体データを、遠隔制御装置130へ送信する(ステップS209)。
遠隔制御装置130の生体データ受信部135は、制御装置110から生体データを受信すると、その生体データを、表示データ出力部136へ送る。表示データ出力部136は、生体データ受信部135から生体データを受け取る。表示データ出力部136は、生体データによって示される被介護者Pの生体情報を、ディスプレイ101へ出力する(ステップS310)。
オペレーターは、ディスプレイ101の画面を見て、被介護者Pの状況に変化がないか確認する。また、オペレーターは、被介護者Pに対して移動先を尋ねる。なお、オペレーターが移動先を尋ねるタイミングは、搬送装置20への移乗前であってもよい。オペレーターは、被介護者Pから移動先を取得すると、ジョイスティック102等を用いて搬送装置20を遠隔操作する。オペレーターは、デジタルカメラ201で取得した搬送装置20の周囲の画像を見ながら遠隔操作を行う。
遠隔制御装置130の操作入力受付部137は、ジョイスティック102を用いた操作の入力を受け付けると(ステップS319)、その操作内容を示すデータを、制御データ送信部138へ送る。制御データ送信部138は、操作入力受付部137から送られたデータを受け取ると、そのデータによって示される操作内容に従って介護装置P1(搬送装置20)を制御させる制御データを、制御装置110へ送信する(ステップS320)。
制御装置110の制御データ受信部120は、遠隔制御装置130から制御データを受信すると、その制御データを、介護装置制御部115へ送る。介護装置制御部115は、制御データ受信部120から制御データを受け取ると、その制御データの内容に従って、介護装置P1(搬送装置20)を制御する(ステップS307)。
搬送装置20による被介護者Pの搬送中において、オペレーターから被介護者Pへの連絡については、ステップS211、S212、S213の動作が行われる。なお、ステップS211、S212、S213については、図25に示す動作シーケンスと同様である。また、被介護者Pからオペレーターへの連絡については、ステップS214、S215、S216の動作が行われる。なお、ステップS214、S215、S216については、図25に示す動作シーケンスと同様である。
このように、遠隔操作モードでは、被介護者Pが操作せず、オペレーターが搬送装置20を操作するので、被介護者Pの操作ミス等を回避できる。また、被介護者Pが操作することなく、目的の場所まで移動できるので、被介護者Pの負担を軽減できる。また、オペレーターは、被介護者Pを観察できるので、被介護者Pの容態変化に対して迅速な対応が可能である。例えば、オペレーターは、被介護者Pの様子がおかしい場合は、直ちに病院や消防署等への連絡を行うことができる。
また、上記した「利用確認モード」「観察モード」「遠隔操作モード」の各モードで駆動する前に、そのモードに適合した認知試験を行うようにしてもよい。この認知試験の実施により安全性を高めることができる。
認知試験としては、例えば、次に示すものが行われる。認知試験の一例として、あるレベル以上の声量で声を上げることができるかを確認する。これは、搬送装置20等に異常が生じた際、オペレーター等に知らせることができるか否かを確認するものである。また、認知試験の一例として、所定のボタン(例えば確認専用のボタン)を押すことができるかを確認する。これも、同じく異常時等を知らせることができるか否か、または搬送装置20を正しく操作できるか否かを確認するものである。また、認知試験の一例として、きちんと話すことができるかを確認する。これは、被介護者Pが一定の滑舌で話すことを確認して、オペレーターや装置等からの音声を理解できるか否か、または被介護者Pの理解の程度を確認するものである。また、認知試験の一例として、簡単な計算問題や、パズルを解けるかを確認する。これはタッチパネル201等に問題等を表示させ、これを解かせることで基本的な認知能力を確認するものである。なお、認知試験としては、上記したものに限定されず、被介護者Pが搬送装置20を利用可能か否かを確認するための各種試験を実施可能である。
これらの認知試験は、オペレーター等が判断せず、遠隔制御装置130または制御装置110が判断する。これは、判断する人間の心情などが入り込まないような明確な合格ラインの線引きを決めることにより、これをクリアしない限り搬送装置20を動かさない、または動かせない、として誤操作の発生を防止するためである。
また、オペレーターは、被介護者Pからの要請により、搬送装置20のビデオカメラ203、204のスピーカーから音楽を流すことや、タッチパネル202にビデオ映像を表示させてもよい。また、上記したスピーカーからバック演奏を流し、タッチパネル202にその演奏の歌詞を同期して表示させてもよい。なお、これらエンターテイメントの利用は、その利用時間等が記録され、利用形態に応じて料金が加算されるものでもよい。
また、遠隔操作モードにおいても、搬送装置2に設けられた緊急連絡ボタンが押された場合や、搬送装置20の制御装置110が異常を検知した場合などは、オペレーターセンターP2に通報される。
また、遠隔操作モードにおいて、トイレや浴室など、プライバシーを損なうおそれがある場所では、デジタルカメラ201やビデオカメラ203、204の画像及びマイクロフォンの音声の一方または双方をオペレーターセンターP2に送信させないようにしてもよい。オペレーターセンターP2への送信の可否は、制御装置110が行う。制御装置110は、搬送位置を認識し、予め登録された位置ではデジタルカメラ201やビデオカメラ203、204の画像及びマイクロフォンの音声の一方または双方を送信しないように制御する。
図27は、制御装置110及び遠隔制御装置130を構成するコンピュータ800のハードウェア構成の一例を示す図である。本実施形態に係るコンピュータ800は、ホストコントローラ801により相互に接続されるCPU(Central Processing Unit)802、RAM(Random Access Memory)803、グラフィックコントローラ804及びディスプレイ805を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ806により相互に接続される通信インターフェース807、ハードディスクドライブ808及びCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ809を有する入出力部と、入出力コントローラ806に接続されるROM(Read Only Memory)810、フレキシブルディスクドライブ811及び入出力チップ812を有するレガシー入出力部と、を備える。
CPU802は、ROM810及びRAM803に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。RAM803を介してハードディスクドライブ808に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク893、CD−ROM892またはIC(Integrated Circuit)カード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM803を介してコンピュータ800内のハードディスクドライブ808にインストールされ、CPU802において実行される。
記憶媒体としては、DVD(Digital Versatile Disk)またはCD(Compact Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto−Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスクまたはRAM等の記憶媒体を記録媒体として使用して、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ800に提供してもよい。
プログラムに記述された情報処理は、コンピュータ800に読み込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である操作入力受付部111、クエリデータ送信部112、レスポンスデータ受信部113、表示データ出力部114、介護装置制御部115、画像データ入力受付部116、画像データ送信部117、生態データ入力受付部118、生体データ送信部119、制御データ受信部120、音声データ受信部121、音声データ出力部122、音声データ入力受付部123及び音声データ送信部124として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ800の使用目的に応じた情報の演算または加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の制御装置110が構築される。
また、プログラムに記述された情報処理は、コンピュータ800に読み込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段であるクエリデータ受信部131、支払状況判定部132、レスポンスデータ送信部133、画像データ受信部134、生体データ受信部135、表示データ出力部136、操作入力受付部137、制御データ送信部138、音声データ入力受付部139、音声データ送信部140、音声データ受信部141、音声データ出力部142及び支払情報格納部143として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ800の使用目的に応じた情報の演算または加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の遠隔制御装置130が構築される。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能である。また、上記の実施形態で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。そのような変更または改良、省略した形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
本明細書において示したシステム、方法、装置、プログラム及び記録媒体における動作、手順、ステップ及び段階等の各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いない限り、任意の順序で実現可能である。本明細書において「まず、」、「次に、」、「続いて」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。