JP2671091B2 - 滑走艇の船体構造 - Google Patents

滑走艇の船体構造

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は滑走艇の船体構造に関
し、詳しくは、該船体に設けられるフラップおよびスポ
ンソンの形状構造に関する。
【0002】
【従来の技術】滑走艇として、ハンドルを握って操縦し
ながら、主にレジャーあるいはスポーツのために沿岸近
くの水域で走り回るタイプのものが使用されている。こ
の種の滑走艇は高速(例えば50km/時)性を有しか
つ運動性にすぐれたものであり、一般に、船体内部のエ
ンジンルームに搭載されたエンジンにより船体後部に装
着された推進機を駆動したり、あるいは船外機により駆
動するとともに、該推進機の推力方向を変えながら操縦
するように構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記滑走艇
においては、航走時には船体を所定角度の滑走姿勢に保
つ必要があり、停船時においても船体を所定の静止姿勢
に保つことが要請される。しかし、従来の滑走艇では、
所定の滑走姿勢および静止姿勢を維持する方法として、
船体自体の幅寸法や形状を調節していたので、船体が大
きくなる傾向があり、小型軽量化にも限界がある。ま
た、航走時の揚力向上および姿勢調節を目的として、船
尾にフラップ(エクステンション)を設けたり、あるい
は船側にスポンソン(スタビライザー)を設けることも
行なわれている(例えば、実開昭62−157694号
に記載されている)が、従来の構造では、所定の揚力向
上および姿勢調節を得るのに、フラップやスポンソンの
形状が大きくなったり、構造が複雑になる傾向がある。
【0004】本発明はこのような従来技術に鑑みてなさ
れたものであり、本発明の目的は、簡単かつ小型軽量な
構造で、航走時における揚力発生機能および姿勢調節機
能を効果的に向上させることができ、同時に、停船時に
おける左右安定性および姿勢調節機能も効果的に向上さ
せることができる滑走艇の船体構造を提供することであ
る。
【0005】
【課題解決のための手段】請求項1の発明は、滑走艇の
船体構造において、船体の両側に、船尾の左右部分から
後方へ突出して設けられ航走時及び停船時とも水面下に
位置する左右のフラップ部と、船体両側の後部から左右
外向きに突出して設けられ航走時には後半部が水面下に
停船時には全体が水面下に没する左右のスポンソン部と
を、それぞれ、船体の左右の後端角隅部に設けられる左
右の揚力発生部を介して連続的な断面形状で一体的に接
続して成る左右の揚力調整部材を設ける構成とすること
により、上記目的を達成するものである。
【0006】請求項2の発明は、上記構成に加えて、前
記フラップ部を浮力体で形成する構成とすることによ
り、一層効率よく上記目的を達成するものである。請求
項3の発明は、上記構成に加えて、前記フラップ部の上
面先端部分を突出させることにより、該フラップの断面
形状を足かけに適した形状にする構成とすることによ
り、上記目的を達成するとともに、さらに、水中からデ
ッキ上へ乗り上がることが可能な滑走艇の船体構造を提
供するものである。
【0007】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明
する。図1は本発明を適用した船体構造を有する滑走艇
の一実施例を示す右側面図であり、図2は図1の滑走艇
の平面図であり、図3は図1中の線3−3から見た後面
図である。図1〜図3において、船体はデッキ1とハル
2とをそれぞれの周囲のフランジ部3、4で接合した中
空体で構成されている。このデッキ1およびハル2は通
常プラスチック成形品(強化繊維入りプラスチックを含
む)で作られている。船体内部に形成されたエンジンル
ーム内にエンジン6(図1)が搭載され、該エンジン6
により駆動軸7(図1)を介して船体後部に装着した推
進機8(図1)が駆動される。この推進機8は噴流ポン
プである。
【0008】デッキ1の後方の部分(デッキ後部)は操
縦者が搭乗する領域であり、該デッキ後部の中心部には
前後に延びる突出部9が形成され、該突出部9の上面に
は着座用のシート10が装着されている。この鞍形のシ
ート10は、運転者の他に1人または2人程度の同乗者
が前後に並んで搭乗できる構造になっている。デッキ1
の前記突出部9(シート10)の両側には、搭乗者が足
を載せるステップ13、13が形成されている。デッキ
1の後部に搭乗した操縦者は、デッキ1上に配設された
ハンドル11の両端グリップ部を握って操縦を行う。ま
た、前記突出部9の後端部には、同乗者が航走時に掴ま
ったり、水中からデッキ上に乗り上がる時に掴まったり
することができるグリップ26が設けられている。な
お、図示の例では、ハンドル11の中央部がハンドルカ
バー12によって覆われている。
【0009】図1中の一点鎖線Wは停船時の水面を例示
し、図1中の一点鎖線Xは航走時(滑走時)の水線(水
面)を例示する。搭乗者は、両側の前記ステップ13、
13に足を置き、立ち姿勢またはシート10に着座した
姿勢で乗船し、運転者は前記ハンドル11のグリップ部
を握って操縦する。推進装置は、前記エンジン6で駆動
される噴流ポンプ8により、船底14に形成された吸い
込み口15(図1)から水を吸い込み、この水を船尾1
6から(推進機8のダクトから)後方へ噴出して推力を
得る構造になっている。
【0010】図4は図1〜図3の滑走艇の船体の底面図
である。図1〜図4において、船体の後部両側には揚力
調整部材20、20が設けられている。各揚力調整部材
20は、船尾16に配置されるフラップ部(エクステン
ション部)21と船側17後部に配置されるスポンソン
部(スタビライザー部)22とを揚力発生部23により
連続的に一体化した形状構造を有している。なお、滑走
艇の船体は一般にプラスチック(FRPを含む)成形体
で形成され、前記揚力調整部材20も通常プラスチック
成形体で形成される。また、前記揚力調整部材20は、
別部材で形成したものを船体にボルト等で締結してもよ
く、あるいは船体と一体成形で形成してもよい。
【0011】図5は図4中の線5−5に沿ったフラップ
部21の断面図であり、図6は図4中の線6−6に沿っ
たスポンソン部22の断面図であり、図7は図4中の線
7−7に沿った揚力発生部23の断面図である。滑走艇
の船体は、例えば、全長が約2000〜3200mm程
度、全幅が約600〜1200mm程度、全高が約60
0〜1000mm程度である。そして、前記揚力発生部
材20の寸法は、例えば、船側17に沿った長さAが約
300〜700mm程度、船尾16に沿った長さBが約
150〜300mm程度に選定され、フラップ部21の
幅C(図5)が約100〜250mm程度、スポンソン
部22の幅D(図6)が約20〜100mm程度に選定
される。また、前記揚力発生部23は、船体の後端両側
の外隅を含む領域に配置されて前記フラップ部21と前
記スポンソン部22を連続的に(滑らかに)接続するこ
とから、通常、その幅寸法は該フラップ部21と該スポ
ンソン部22の中間の値を取ることになる。
【0012】前記揚力調整部材20の高さ位置は、停船
時には水中にあるが、航走時(滑走時)には水線上近く
になるように設定される。図4中の一点鎖線Yは航走時
の前記水線X(図1)と船底面との境界の平面形状(水
線面の形状)を示す。なお、図1に示すように揚力調整
部材20の下面と水線Xとの間に若干の隙間Sがある
が、この隙間Sは船体と水面との相対速度により水膜
(飛沫)で満たされる場合が多く、したがって航走時に
はこの隙間Sの有無に関わらず前記揚力調整部材20に
揚力(浮力を含む)が作用することになる。
【0013】以上説明した実施例によれば、船尾16の
フラップ部21と船側17のスポンソン部22とを後端
外隅を含む揚力発生部23で連続的に接続して一体化し
た揚力調整部材20を設けたので、滑走艇の重心から最
も離れた後端外隅の位置に前記揚力発生部23が設けら
れることになり、極めて効果的に揚力を発生させること
が可能となる。したがって、船体の寸法を増大させるこ
となく、簡単かつ小型軽量な構造で揚力調整を行うこと
が可能となり、航走時の船体姿勢を適正な状態に容易に
調整することが可能になる。また、揚力調整部材20を
浮力発生可能な軽量部材で形成することにより、静止時
(停船時)の船体の姿勢を調整することも可能である。
【0014】図8は図4中の線5−5に沿って前記フラ
ップ部21の第2実施例を示す断面図である。本実施例
では、前記揚力調整部材20のフラップ部21が中空の
浮力体で形成されている。この場合、フラップ部21内
の空洞24は単なる密閉空間のままでもよく、あるいは
密閉空間内に樹脂発泡体などの浮力部材を充填した構造
にしてもよい。本実施例によれば、前述の実施例と同様
の作用効果が得られる他に、船尾16近傍の浮力が増大
するので、特に静止時における船体の姿勢保持性を向上
させることが可能になった。
【0015】図9は図4中の線5−5に沿って前記フラ
ップ部21の第3実施例を示す断面図である。本実施例
では、前記揚力調整部材20のフラップ部21の上面先
端部分に突起25を形成することにより、その断面形状
が足かけに適した形状になっている。この場合、前記突
起25はフラップ部21の外縁に沿って連続して形成し
てもよく、あるいは所定間隔ごとに形成してもよい。本
実施例によれば、前述の実施例と同様の作用効果が得ら
れる他に、水中からデッキ上に乗り上がる際に、手でグ
リップ26などの他の部分に掴まるとともに、足を前記
突起25に掛けることができ、したがって、水中からの
乗り上がりが容易になるという効果が得られる。
【0016】なお、図示の実施例では、デッキ1の後部
中央部に鞍型のシート10を有する滑走艇の場合を例に
挙げて説明したが、本発明による船体構造は、デッキの
後部両側に上方へ突出したフィン部を設け、これらの間
に搭乗者が乗り込むライディングフロアーを形成するタ
イプの滑走艇、あるいはデッキの後部を単なるフラット
な搭乗面で形成するタイプの滑走艇に対しても同様に適
用することができ、同様の作用効果が得られるものであ
る。
【0017】
【発明の効果】以上の説明から明らかなごとく、請求項
1の発明によれば、滑走艇の船体の両側に、船尾の左右
部分から後方へ突出して設けられ航走時及び停船時とも
水面下に位置する左右のフラップ部と、船体両側の後部
から左右外向きに突出して設けられ航走時には後半部が
水面下に停船時には全体が水面下に没する左右のスポン
ソン部とを、それぞれ、船体の左右の後端角隅部に設け
られる左右の揚力発生部を介して連続的な断面形状で一
体的に接続して成る左右の揚力調整部材を設ける構成と
したので、簡単かつ小型軽量な構造で、滑走艇の重心か
ら最も離れた左右の後端角隅部に揚力発生部を追加する
ことから航走時における揚力発生機能および姿勢調節機
能を効果的に向上させることができ、同時に、停船時に
おける左右安定性および姿勢調節機能も効果的に向上さ
せることができる滑走艇の船体構造が提供される。
【0018】請求項2の発明によれば、上記構成に加え
て、前記フラップ部を浮力体で形成する構成としたの
で、一層効率よく上記効果を達成し得る滑走艇の船体構
造が提供される。請求項3の発明によれば、上記構成に
加えて、前記フラップ部の上面先端部分を突出させるこ
とにより、該フラップの断面形状を足かけに適した形状
にする構成としたので、上記効果に加えて、さらに、水
中からデッキ上へ乗り上がることが可能な滑走艇の船体
構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した船体構造を有する滑走艇の一
実施例の右側面図である。
【図2】図1の滑走艇の平面図である。
【図3】図1中の線3−3から見た後面図である。
【図4】図1の滑走艇の船体を船底から見た底面図であ
る。
【図5】図4中の線5−5に沿って揚力調整部材のフラ
ップ部を示す断面図である。
【図6】図4中の線6−6に沿って揚力調整部材のスポ
ンソン部を示す断面図である。
【図7】図4中の線7−7に沿って揚力調整部材の外隅
揚力発生部を示す断面図である。
【図8】本発明を適用した揚力調整部材のフラップ部の
第2実施例を示す断面図である。
【図9】本発明を適用した揚力調整部材のフラップ部の
第3実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 デッキ 2 ハル 3 フランジ部 4 フランジ部 6 エンジン 7 駆動軸 8 推進機 9 突出部 10 シート 11 ハンドル 13 ステップ 14 船底 15 吸い込み口 16 船尾 17 船側 20 揚力調整部材 21 フラップ部 22 スポンソン部 23 揚力発生部 24 空洞 25 突起 26 グリップ

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 滑走艇の船体構造において、船体の両
    側に、船尾の左右部分から後方へ突出して設けられ航走
    時及び停船時とも水面下に位置する左右のフラップ部
    と、船体両側の後部から左右外向きに突出して設けられ
    航走時には後半部が水面下に停船時には全体が水面下に
    没する左右のスポンソン部とを、それぞれ、船体の左右
    の後端角隅部に設けられる左右の揚力発生部を介して連
    続的な断面形状で一体的に接続して成る左右の揚力調整
    部材を設けることを特徴とする滑走艇の船体構造。
  2. 【請求項2】 前記フラップ部を浮力体で形成するこ
    とを特徴とする請求項1に記載の滑走艇の船体構造。
  3. 【請求項3】 前記フラップ部の上面先端部分を突出
    させることにより、該フラップ部の断面形状を足かけに
    適した形状にすることを特徴とする請求項1又は2に記
    載の滑走艇の船体構造。
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