JP2670325B2 - カカオマスの処理法 - Google Patents

カカオマスの処理法

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JP2670325B2 JP63303420A JP30342088A JP2670325B2 JP 2670325 B2 JP2670325 B2 JP 2670325B2 JP 63303420 A JP63303420 A JP 63303420A JP 30342088 A JP30342088 A JP 30342088A JP 2670325 B2 JP2670325 B2 JP 2670325B2
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【発明の詳細な説明】 (産業上の技術分野) この発明はカカオマスの処理法に関し、詳しくはカカ
オマスにバニリンを添加し均一に混合することにより風
味の優れたチョコレート類を得ることのできる、カカオ
マスの処理法に関する。
(従来の技術) 通常、チョコレートは以下の処理工程を経て製造され
る。カカオ豆から金属類、石片、砂、糸屑、紙屑、木
屑等の異物を除去する、「選別工程」、カカオ豆中の
特定物質をフレーバーに変化させ、苦味を軽減して味を
調製し、さらにカカオ豆の外皮を剥脱しやすくする、
「焙炒工程」、焙炒カカオ豆を粗砕して、外皮(セ
ル)と胚乳(ニブ)および胚芽(ジャーム)等に分離す
る、「分離工程」、各地産カカオ豆の特徴を生かし
て、ベースになる豆と香りづけの豆とを巧みに配合す
る、「配合工程」、カカオニブをグラインディングミ
ル或いはロールミル等で挽潰してペースト状物とする、
「磨砕工程」、このペースト状物をカカオペースト、カ
カオリカー、またはカカオマス等と呼び、一般取引では
ビターチョコレートと称されている。カカオマスに砂
糖、或いはさらにココアバター、粉乳等を適切に混ぜ合
わせる、「混合工程」、混合物をさらにロールに掛け
て粒子を細かくする「微粒化工程」、微粒化したチョ
コレートをコンチェという機械で良く練り上げて、風味
を調整する「精練(コンチング)工程」、コンチング
を終えたチョコレートを冷却・成形して製品とするに際
し、チョコレート表面の光沢、外観、その他内部組織を
調整して風味、口ざわりを良好ならしめる、「温調(テ
ンパリング)工程」、この工程によりココアバターの安
定な結晶形を生成させる。テンパリングを終えた液状
のチョコレート生地を板状、棒状、丸形、角形等種々の
形状の型に流して成形し、クーリングトンネルの中を通
して冷却する、「成形・冷却工程」、型から取り出
し、包装する、「包装工程」、ココアバターの結晶形
を安定にさせるため、一定期間、一定温度で熟成する、
「熟成工程」、の各工程を経て製造される。以上の各工
程に先立ち、現地ではカカオ樹からカカオの果実(ポッ
ド)を収穫し、果実を割って中の種子(カカオ豆)を取
り出し、木箱に入れて4〜7日間均一に醗酵させ、乾
燥、袋詰して各地に船積、出荷される。
一般に、チョコレートは上掲の如き工程を経て製造さ
れるが、各工程においては何れもチョコレートの風味、
物性が良好となるべく最適の条件で処理される。
最近、チョコレートの風味を改良する方法として、例
えば生カカオマスのカカオ脂の一部または全部をカカオ
脂代用脂で置換した生混合カカオマスを加熱焙炒する
か、または上記の方法においてカカオ脂代用脂と共に界
面活性剤を添加するか、あるいは所定のカカオ脂含量ま
で脱脂した脱脂生カカオマス、または脱脂生カカオマス
に所定の油脂含量までカカオ脂代用脂を添加した生混合
カカオマスを加熱焙炒したのち調整量のカカオ脂代用脂
を添加して、在来の製法によるカカオ脂代用脂を使用し
ない焙炒カカオマスと同等ないし同等以上の香味を有し
てカカオマスを得る、焙炒混合カカオマスの調製方法が
提案されている(特開昭56−8645号)。また、アルカリ
処理したカカオマス又はココアパウダーに熱水を加え均
一に混合し、或いはカカオマスをアルカリ処理を行いな
がら水可溶性部及び微粒子部とを分離するか及び/又は
カカオバターを抽出分離して、呈味と香りの濃厚なココ
アパウダーを得る為の、およびアルカリ臭が無く、かつ
収率効率の良い、カカオ豆の処理方法も提案されている
(特開昭59−169452号)。
しかしながら、これらの方法は処理が煩雑であり、ま
た風味も未だ充分な改善には到っていない。さらに、従
来よりチョコレートを製造する際、カカオマスにココア
バター、粉糖、或いは粉乳等を適切に混ぜ合わせる、前
記するの「混合工程」において、適当な香料が同時に
添加配合される場合があるが、かかる香料の添加でも充
分な効果は得られていない。
(発明が解決しようとする課題) 上述する如く、従来より風味良好なチョコレートを製
造するためにカカオ豆の煩雑な処理、あるいはチョコレ
ート生地への香料添加等の手段が試みられているが、何
れも未だ満足すべき良好な風味は得られていないのが現
状である。
このような状況下において、この発明は、風味良好な
カカオマスを極めて簡単に且つ有効に得ることを目的と
するものである。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは、如上の点に鑑み鋭意研究した結果、カ
カオマスにバニリンを添加して均一に混合した後、この
カカオマスに砂糖、ココアバター、レシチン等を混合し
て常法どおり製造して得たチョコレートは、その風味が
極めて良好であるとの知見を得た。
この発明は、以上の知見を基にして完成したものであ
って、磨砕工程後であって砂糖等を混ぜ合わせる混合工
程前のカカオマスにバニリンを添加し均一に混合するこ
とを特徴とする、カカオマスの処理法である。
この発明でカカオマスは、前記した如く、チョコレー
ト製造工程中の、カカオニブをグラインディングミル
或いはロールミル等で挽潰してペースト状物とする「磨
砕工程」で調製されるペースト状物であって、未だ砂
糖、脱脂粉乳等が配合されていない状態のものである。
なお、カカオ豆は前記するの「焙炒工程」において、
焙炒の度合いが浅焼または深焼であっても差し支えな
く、またアルカリ処理の有無に影響されるものでもな
い。
バニリンは、キュアリングしたワニラ豆に約2%程度
含まれる芳香成分であるが、クローブ中のオイゲノー
ル、グアイヤコール、カテコールおよびパルプ廃液中の
リグニンを原料として合成され、特有の甘い芳香を有す
る白色ないし淡黄色の針状結晶を呈する。また、上記の
ように、ワニラ豆を醗酵させ乾燥させて得られるバニラ
には、その芳香成分の主体であるバニリンが含まれ、そ
の他にピペロナール、ワニリン酸、安息香酸なども含ま
れている。この発明においては、合成のバニリンであっ
てもよく、またバニラないしはワニラ豆から抽出ないし
濃縮して得られるバニラ濃縮物であってもよい。従っ
て、バニラ自体を使用してもよいことはいうまでもな
い。
カカオマスに対するバニリンの添加量は、0.01〜5重
量%で有効であり、下限未満では効果を得難く、上限を
越えて添加してもそれ程の効果は期待できず経済的に不
利である。バニリンはカカオマス全体に均一に分散され
るように混合すればよく、従って添加後の温度は、カカ
オマスが融解している状態であればよいが、バニリン自
体の効果は温度によって影響されないので、カカオマス
自体の風味の変化を考慮して所望の温度を設定して行え
ばよい。概ね80℃を境にしてカカオマス自体の風味が変
化するので、例えばカカオ豆がの焙炒工程において浅
焼の場合には80℃以上の高温で、また当該焙炒工程にお
いて深焼の場合には80℃以下で実施するのが良いようで
ある。
また、カカオマスを殺菌処理する場合は、カカオマス
にバニリンを添加した後殺菌処理するのがよい。即ち、
冒頭で述べた一連のチョコレート製造工程にいおいて、
の「磨砕工程」と、この磨砕工程で得られるカカオマ
スに砂糖、ココアバター、粉乳等を適宜混ぜ合わせる
「混合工程」との間に、カカオマスを殺菌処理する「殺
菌工程」を組み入れる場合がある。この場合、殺菌処理
の前後においてカカオマスの風味は変化し、従来より殺
菌処理後のカカオマスの風味劣化は避けられなかったの
であるが、殺菌処理前にバニリンを添加することによっ
て、当該風味劣化を抑制することができ、その効果に著
しいものがある。殺菌方法としては、例えばカカオマス
の総水分量が約3%になるように水を添加後、120℃〜1
40℃に3分〜5分間撹拌して殺菌処理する方法が一般的
であり、殺菌処理装置としてはスーパーペッツマット
(ペッツホールト社)、PDAT(カールモンタナリー
社)、あるいは本出願人の出願に係る特開昭63−164840
号公報に開示の方法ないし装置等が例示できる。
かくして、カカオマス自体の風味を比較した場合、従
来のカカオマスは渋味、青臭みなどの不快臭味を感ずる
が、この発明において処理されたカカオマスはこのよう
な不快臭味が消失する。
因みに、何故、カカオマスにバニリンを均一に添加混
合するだけで風味が改善されるのかについて正確には説
明できないが、恐らくカカオマスに含まれるタンニン等
の特定成分にバニリンが有効に作用するからであろうと
考えられる。従って、従来よりチョコレートの製造には
香料としてバニリンが添加されることがあるが、このバ
ニリンは、前記するの「混合工程」において添加され
るのが通常であるから、この混合物には砂糖等が含まれ
ているため、カカオマス中の特定成分へバニリンが有効
に作用しないからであろうと思料される。また、カカオ
マスの状態での殺菌処理に際し、水分の添加によりカカ
オマスの風味に劣化が起こり、この原因として水可溶性
物質が加熱により分解し風味を阻害する物質を生成する
ためと考えられるが、バニリンの添加により当該風味阻
害物質の生成が抑制されるものと思料される。何れにし
ても、カカオマス単独へのバニリンの作用効果と砂糖等
が混合されたカカオマス混合物、或いは殺菌処理後のカ
カオマスへのバニリンの作用効果とは両者の間に明確な
差異が見られる。
以上の如く、この発明によって処理されたカカオマス
は、従来にない良好な風味を呈しており、通常のチョコ
レート類への使用は勿論のこと、カカオマスを使用する
他の各種食品類に良好なチョコレート風味を付与するこ
とができる。
(実施例) 以下に実施例を例示して本発明効果をより一層明瞭に
するが、これらは例示であって本発明の精神がこれらの
例に限定されるものでないことはいうまでもない。な
お、例中、部および%は重量基準を意味する。
実施例1 〔スィートチョコレート〕 カカオマス100部にバニリン0.125部を加え、60℃で1
時間撹拌した。しかる後、このカカオマス40部に砂糖50
部、レシチン0.1部を加え、ニーダーで練り、ロールリ
ファイナーで微細化し、次いでコンチェにて10時間コン
チングした後、ココアバター10部を添加し、さらに10時
間コンチングを続け、その後レシチン0.4部を加え、さ
らに1時間コンチングしたチョコレート生地をテンパリ
ング処理し、成形してチョコレートを得た。
比較のため、従来法として、カカオマス40部に砂糖50
部、レシチン0.1部およびバニリン0.05部を加え、後は
実施例1と全く同様にしてチョコレートを得た。
以上の結果、実施例1で得たチョコレートは従来法で
得たチョコレートに比し、渋味が弱くチョコレート風味
が強く感じられ、すっきりとした呈味を有し、これらの
チョコレートを30名のパネラーにより官能評価したとこ
ろ、実施例1で得たチョコレートを好むという者が27
名、これに対し従来法で得たチョコレートを好むとした
者は3名であった。この官能評価結果は、1%の危険率
で実施例1の方が好ましい風味を呈しているといえる。
実施例2 〔カカオマス入りスポンジケーキ〕 カカオマス100部にバニリン0.2部を加え、30分間撹拌
してバニリンをカカオマスに均一に分散させた。一方、
砂糖100部と卵120部をホイップし、これに小麦粉100
部、牛乳50部および上で調製したカカオマス10部を混合
した生地を18号の型に入れ190℃のオーブンにて30分間
焼成して、カカオマス入りスポンジケーキ(B)を得
た。
比較のため、バニリンを添加処理しない従来のカカオ
マスを使用し、同様に焼成してスポンジケーキ(A)を
得た。また、バニリンを添加処理しない従来のカカオマ
スを使用し、同様にして得た生地にバニリン0.02部を添
加混合した後、同様に焼成してスポンジケーキ(C)を
得た。
以上の各(A)(B)(C)のスポンジケーキを15名
のパネラーにより、順位付けによる官能評価をした結
果、以下の評価結果を得た。
以上の結果、(B)の実施例2で得たスポンジケーキ
を最も好ましいと評価した者が圧倒的に多かった。
実施例3 磨砕工程後であって、砂糖等を混ぜ合わせる混合工程
前のカカオマスにバニリンを0.1%添加して均一に分散
させたカカオマスに、連続的に総水分含量が3%となる
ように水を添加し、特開昭63−164840号公報に開示の連
続カカオマス殺菌装置を使用して殺菌処理した。対照と
して、バニリンを添加しないカカオマスを同様に殺菌処
理した。
以上の各々のカカオマスを使用し、以下のチョコレー
ト配合にて常法に従い、それぞれチョコレートを製造し
た。
以上の結果、スィートチョコレートおよびミルクチョ
コレート共にバニリンを添加後殺菌したカカオマスを使
用して製造した本発明実施例品が、バニリンを添加せず
に殺菌処理したカカオマスを使用して製造した対照品に
比べて、異臭味がなく、チョコレート風味が強くて美味
であった。
(効果) 以上の如く、カカオマスにバニリンを添加混合し均一
に分散させることによって、カカオマスの風味を著しく
改良することができるようになったのであり、また従来
より避けることのできなかったカカオマスの殺菌処理に
よる風味劣化を、バニリンを添加後殺菌処理することに
よって著しく改善することができるようになったのであ
って、この発明によりカカオマスを使用してチョコレー
ト風味の優れた各種食品を世に提供することが可能とな
ったのである。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】磨砕工程後であって、砂糖等を混ぜ合わせ
    る混合工程前のカカオマスにバニリンを添加し均一に混
    合することを特徴とする、カカオマスの処理法。
  2. 【請求項2】バニリンの添加量が、カカオマスに対し0.
    01〜5重量%である、請求項(1)記載の処理法。
  3. 【請求項3】カカオマスにバニリンを添加した後、当該
    カカオマスを殺菌処理することを特徴とする、カカオマ
    スの処理法。
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