JP2660785B2 - ブロー成形用金型及びブロー成形体 - Google Patents

ブロー成形用金型及びブロー成形体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、隠しリブを内部に有す
るブロー成形体とそれを製造するための金型に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】ブロー成形は、図7(a)に示すよう
に、まず所定の内部形状を有し対向して配置された二つ
のブロー成形用金型1及び2の間に、ヘッド3から加熱
軟化した合成樹脂製の筒状パリソン4を所定量降下さ
せ、次いで、両金型1及び2を閉じる方向に動かすとと
もに、ブローノズル5を上昇させ、図7(b)に示すよ
うに、両金型1及び2よりブローノズル5及びパリソン
4の両端部を挟持し、この状態で、ブローノズル5から
高圧空気を吹き込むことにより、両金型1及び2の内部
形状(キャビティ)をかたどった外形状を有する成形体
を製造するというものである。
【0003】ところで、最近、かかるブロー成形を利用
して、図8に示すような内部構造、すなわち、一方の壁
部6aと対向する壁部6bを連結し長手方向に連続する
補強用リブ7を有する成形体6が製造されるようになっ
た(米国特許第4951986号明細書参照)。この補
強用リブ7は成形体6の外部形状からはその存在が認め
られないので、隠しリブと呼ばれている。
【0004】さて、この成形体6は、図9に示す装置1
0を使用することにより製造される。すなわち、この装
置10は、ブロー成形用キャビティを構成する2つの金
型11及び12と、金型11及び12内部にそれぞれ突
出可能とされるリブ成形用スライド板13及び14を備
える。スライド板13及び14は、図9(b)に示す突
出位置と図9(c)に示す退避位置の間で、金型11又
は12に対し相対的に可動であり、上記退避位置にある
ときは、その先端15及び16は、上記ブロー成形用キ
ャビティの一部を構成する。
【0005】この装置10を使用して成形体6を製造す
る手順は、スライド板13及び14の作動を伴う以外
は、図7で説明したものと変わらない。まず、スライド
板13及び14を突出位置に固定し、パリソン4が所定
位置に降下したとき金型11及び12を閉鎖する。金型
11及び12が閉鎖されたとき、スライド板の先端15
と16の間に挟まれた部分は互いに押し付けられ溶着す
る。次ぎに、パリソン4内に空気を吹き込むとほぼ同時
に(正確には若干のタイムラグをおいて)スライド板1
3及び14を抜き出し、退避位置、すなわち、その先端
15及び16が金型11及び12のキャビティ面と連な
る位置で固定する。
【0006】図9(b)、(c)を参照して、パリソン
4の変形の様子を説明すると、図9(b)はパリソン4
内に空気圧がかかり始めた状態を示し、パリソン4が金
型11及び12とスライド板13及び14に沿い始めて
いる。この時点で、スライド板13及び14の引き抜き
を開始し、一方リブ7の先端は溶着一体化されているの
でそのまま離れず残留し、最終的にはパリソン4は図9
(c)に示すようなリブ7を有する成形体とされる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、隠し
リブを形成する方法として、当該分野の注目を集めつつ
あるものだが、次のような欠点があった。
【0008】リブ7が連なる位置の外側壁部に、スラ
イド板13又は14に沿った痕跡T(図8参照)が直線
的に残り易い。図10(a)及び(b)に、図9(c)
のスライド板13の先端15の部分の拡大図を示すが、
スライド板13が抜けて二重になった部分の小さい曲率
4aを解消し難いこと(図10(a))、あるいは、金
型11とスライド板13の先端15の位置又は形状不整
合(図10(b))等が、その理由である。
【0009】従来技術では、金型のキャビティ形状が
限定される。すなわち、スライド板13および14は、
その先端15及び16がキャビティの一部を構成すると
同時に、両スライド板13及び14が突出位置にあると
きの両先端15及び16の間隔がほぼ同一であるという
限定条件を必然的に有する。そのため、従来技術の適用
範囲は、図9(a)に示すように、対向する金型11及
び12の壁面が平行な場合か、図11に示すように、対
向する金型11a及び12aの曲率がほぼ同一な場合に
限られ、たとえば、図12に示すように、対向する金型
11b及び12bの壁面間距離が次第に変化するときは
適用が困難である。
【0010】したがって、本発明の第1の目的は、外見
上、隠しリブの存在を示す痕跡がないか又は少ないブロ
ー成形体を得ることであり、また別の目的は、隠しリブ
を各種形状を持つブロー成形体に適用できるようにする
ことである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
【0012】 本発明(請求項1)は、対向する2つの
金型の内側形状により成形用キャビティを構成するブロ
ー成形用金型において、一方の金型に、先端が該一方の
金型の内側形状の一部をなすスライド棒を成形用キャビ
ティ内に突出可能に設置することを特徴とする。その実
施態様として、該スライド棒を成形用キャビティ内の他
方の金型近傍まで突出可能に設置し、好ましくは、スラ
イド棒を複数本設置することとし、また、各スライド棒
の突出長さが、それぞれ別個に調節可能であることとす
る。このときは、スライド棒の先端と他方の金型の内側
でパリソンを挟み溶着することになる。
【0013】 本発明(請求項)の別の実施態様とし
て、他方の金型にも、先端が該他方の金型の内側形状の
一部をなすスライド棒を成形用キャビティ内に突出可能
に設置する。好ましい具体例では、該他方の金型のスラ
イド棒を一方の金型のスライド棒に対向する位置に配置
し、さらに、各スライド棒を複数本設置することとし、
また、各スライド棒の突出長さが、それぞれ別個に調節
可能であることとする。この具体例では、両スライド棒
の先端でパリソンを挟み溶着することになる。
【0014】 また、本発明(請求項)の別の実施態
様として、他方の金型に、先端が該他方の金型の内側形
状の一部をなすスライド板を成形用キャビティ内に突出
可能に設置する。好ましい具体例では、他方の金型のス
ライド板を一方の金型のスライド棒に対向する位置に配
置し、さらに、各スライド棒を複数本設置することと
し、また、各スライド棒の突出長さが、それぞれ別個に
調節可能であることとする。この具体例では、両者の先
端でパリソンを挟み溶着することになる。
【0015】 上記ブロー成形用金型を使用して成形さ
れるブロー成形体は、いずれも一方の壁部と対向する壁
部を連結する隠しリブを内蔵し、該隠しリブは、使用さ
れる金型の違いにより、一方の壁部から連続して他方の
壁部に向かって伸び、その先端の一部のみが他方の壁部
の内側に溶着したもの(請求項12)、あるいは、双方
の壁部から連続して対向する壁部に向かって伸び、両先
端の一部が成形体内の適所において溶着したもの、など
の特徴的構造を備えている。
【0016】 次に、本発明の実施例を具体的に説明す
る前に、図1に示す参考例について説明する。
【0017】 図1(a)〜(c)は、成形用キャビテ
ィを構成する金型21、22の片側にのみスライド板2
3を設置した参考例を示す図である。金型21側に設置
されたスライド板23は、他方の金型22の近傍まで突
出可能とされ、その先端と金型22の内面間に挟まれた
部分のパリソン4を溶着し、図1(c)に示す隠しリブ
7を形成するもので、その他の成形手順は図9に示した
従来例と同様に行われる。
【0018】 しかして、さきに述べたように、従来の
隠しリブ成形用金型に依るときは、スライド板を金型の
両側に設置するため、スライド板に沿った痕跡Tがブロ
ー成形体の外側両面に直線的に残り、特に装飾的要素の
要求される物品(たとえば、自動車用スポイラー)の場
合、人目にふれやすい表側の研磨仕上げを欠かすことが
できなかった。しかし、本参考例のごとく金型の片側に
のみスライド板23を設置するときは、ブロー成形体の
一方の面にスライド板の痕跡Tが直線的に残されるとし
ても、他方の面にはスライド板の痕跡が残らず、金型内
面の仕上げの程度に応じた成形表面を得ることができる
ので、ブロー成形後の研磨仕上げを省略することができ
る。しかも、金型の製作が従来に比べて容易となるとい
う利点もある。
【0019】
【実施例】 次に、図2〜図6を参照して、本発明をより
具体的に説明する。 図2は、成形用キャビティを構成す
る金型41、42の片側に複数のスライド棒43を突出
可能に設置した実施例1を示す図である。一方の金型4
1側に設置したスライド棒43の先端は成形用キャビテ
ィの一部を構成し、他方の金型42の近傍まで突出可能
とされ、その先端と金型42の内面間に挟まれた部分の
パリソン4を溶着し、図2(c)に示す隠しリブ7を形
成するもので、その成形手順は前記参考例と同様に行わ
れる。
【0020】かかるスライド棒43を用いたときは、溶
着部分の形状がスライド棒43の先端形状に応じたもの
となり、詳しくは図3に示す通り、溶着部分ではスライ
ド棒43の形状に応じた棒状のリブ7aが形成され、棒
状リブ7aの両側に連なりやや垂れ下がった形状の板状
リブ7bが形成される。棒状リブ7aの両側にこのよう
な板状リブ7bが形成される理由は、スライド棒43の
先端がパリソン4を前方に押すとき、スライド棒43の
両側の部分も同時に前方に引きずられ、そこが2重とな
り、パリソン内に空気圧がかけられたとき互いに溶着す
るためである。
【0021】 さて、前記参考例で述べたように、金型
の一方にのみスライド板23を設置するときは、ブロー
成形体の一方の面にはスライド板23の痕跡が残らない
という利点があるが、樹脂の加熱温度が低いときなど、
隠しリブ7が溶着した部分に微かに溶着の痕跡(溶着マ
ーク)が出ることがある。溶着マークは、たとえば樹脂
の加熱温度を高くし流動性を高めることにより消すこと
が可能であるが、樹脂の特性により加熱温度を高くでき
ないときなど、溶着マークが直線的に残留し、これは装
飾的見地からすると望ましくない。
【0022】 本実施例1のようにスライド棒43を用
いたときでも、条件によっては同様に溶着マークが発生
することがあるが、本実施例1では溶着部分が飛び飛び
の点であるため、溶着マークが目立たなくなるという意
外な効果がある。つまり、直線状に付いた溶着マーク
は、他の模様(たとえば、梨地模様)に紛れにくく傷と
して認識されやすいが、飛び飛びにある点状の溶着マー
クは他の模様に紛れやすく、場合によっては研磨仕上げ
を省略することができる。
【0023】 図4は、突出長さを個別に調整可能とし
た複数のスライド棒53を、一方の金型51に設置した
実施例2を示す図である。実施例1と同様にスライド棒
53の先端は退避位置にあるとき成形用キャビティの一
部を構成し、他方の金型52の近傍まで突出可能とされ
るが、突出長さを個別に調整できるため、成形用キャビ
ティを構成する金型51、52の壁面間距離が変化して
いるようなときでも、隠しリブを支障なく成形すること
ができる。なお、複数のスライド棒53の全てを個別に
調整可能とするのが好ましいが、いくつかのグループ毎
に調整可能としてもよい。
【0024】 図5は、実施例1又は2と同様のスライ
ド棒により、成形体6内にカーブした隠しリブ7を形成
した実施例3を示す図である。これは、金型に一連のス
ライド棒をカーブ配置することにより容易に形成可能で
ある。無論、前記参考例においても、カーブ形状をした
スライド板を金型に設置することで、このようなカーブ
した隠しリブを形成することはできるが、金型等の製造
上の容易性から、スライド棒の方が適している。
【0025】 以上の実施例1〜3では、スライド棒
を、成形用キャビティを構成する金型の片側にのみ設置
したが、図6に示すように、両側の金型61、62にス
ライド棒63、64を対向配置し、該キャビティ内の適
宜位置まで突出可能としてもよい(実施例4)。本実施
例4においては、金型61、62の中央付近でスライド
棒63、64の先端に挟まれた部分が押し付けられて溶
着し、実施例1と同様に溶着部分では棒状のリブ7aが
形成され、棒状リブ7aの両側に連なりやや垂れ下がっ
た形状の板状リブ7bが形成される。実施例2、3と同
様に、スライド棒の突出長さを個別に調整可能とするこ
と、スライド棒をカーブ配置すること等は必要に応じて
適宜行うことができる。
【0026】 実施例4では、スライド棒の痕跡が成形
体の両面に残り、装飾的意味合いからいえば問題がない
訳ではないが、スライド棒の痕跡は成形体表面に飛び飛
びにしか現れず、スライド板の直線的痕跡Tと比較する
と目立たず、また、スライド棒の痕跡は小さいため研磨
するにしても簡単であることから、実施例4も、やはり
本発明の前記目的にかなうものということができる。
【0027】 図示は省略したが、実施例4のスライド
棒64に代えて、成形用キャビティの一部を構成するス
ライド板(前記参考例と同様のスライド板)を使用する
こともできる(実施例5)。このときは、成形用キャビ
ティの中央付近でスライド棒とスライド板の先端に挟ま
れた部分が押し付けられて溶着し、実施例4と同様の隠
しリブを形成することができる。本実施例では、ブロー
成形体の片面にスライド棒の痕跡が、他の片面にスライ
ド板の痕跡が現れるが、実施例4で述べたようにスライ
ド棒の痕跡は目立たず研磨も容易である。
【0028】 なお、本発明を実施する上で、上記実施
例1〜5に示した隠しリブ形成手段(スライド棒、スラ
イド板)を複数組み合わせることも可能であるし、これ
らを図1に示す参考例や図9に示す従来の形成手段と組
み合わせることも可能である。
【0029】
【発明の効果】以上述べた通り、本発明によれば、外見
上、隠しリブの存在を示す痕跡が少ないブロー成形体を
得ることができ、また、隠しリブを各種形状を持つブロ
ー成形体に適用できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】スライド板を金型の一方にのみ設置した参考例
を示し、(a)は金型の縦方向断面図、(b)及び
(c)は(a)のB−B矢視断面図である。ただし、
(c)はスライド板が退避位置にあるときの図である。
【図2】金型の一方にスライド棒を備えた本発明の実施
例を示し、(a)は金型の縦方向断面図、(b)及び
(c)は(a)のD−D矢視断面図である。ただし、
(c)はスライド棒が退避位置にあるときの図である。
【図3】(a)は図2(c)のE−E矢視断面図、
(b)は図2(c)のF−F矢視断面図である。
【図4】個別に調整可能なスライド棒を備えた本発明の
実施例であり、金型の縦方向断面図を示す。
【図5】(a)はカーブした隠しリブを有するブロー成
形体の断面図であり、(b)は(a)のG−G矢視断面
図である。
【図6】金型の両側にスライド棒を備えた本発明の実施
例を示し、図3と同視点の断面図である。
【図7】従来のブロー成形方法を説明する図であり、
(a)は金型閉鎖前、(b)はブロー成形時の状態を示
す。
【図8】隠しリブを有するブロー成形体の一部を切欠い
た斜視図である。
【図9】従来の隠しリブ成形金型であり、(a)は縦方
向断面図、(b)及び(c)は(a)のA−A矢視断面
図である。ただし、(c)はスライド板が退避位置にあ
るときの図である。
【図10】スライド板の先端部分を説明するための図
で、図9(c)の一部拡大図である。
【図11】従来の隠しリブ成形用金型の断面図である。
【図12】対向壁面間距離が次第に変化する金型の断面
図である。
【符号の説明】
4 パリソン 6 ブロー成形体 7 隠しリブ 21、22、41、42、51、52、61、62 ブ
ロー成形用金型 23、スライド板 43、53、63、64 スライド棒

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 対向する2つの金型の内側形状により成
    形用キャビティを構成するブロー成形用金型において、
    一方の金型に、先端が該一方の金型の内側形状の一部を
    なすスライド棒を成形用キャビティ内に突出可能に設置
    することを特徴とするブロー成形用金型。
  2. 【請求項2】 スライド棒が、成形用キャビティ内の他
    方の金型近傍まで突出可能であることを特徴とする請求
    に記載のブロー成形用金型。
  3. 【請求項3】 スライド棒が複数本設置されることを特
    徴とする請求項1又は2に記載のブロー成形用金型。
  4. 【請求項4】 各スライド棒の突出長さが、それぞれ別
    個に調節可能であることを特徴とする請求項に記載の
    ブロー成形用金型。
  5. 【請求項5】 他方の金型に、先端が該他方の金型の内
    側形状の一部をなすスライド棒を成形用キャビティ内に
    突出可能に設置することを特徴とする請求項に記載の
    ブロー成形用金型。
  6. 【請求項6】 複数対のスライド棒が対向配置されるこ
    とを特徴とする請求項に記載のブロー成形用金型。
  7. 【請求項7】 各スライド棒の突出長さが、それぞれ別
    個に調節可能であることを特徴とする請求項に記載の
    ブロー成形用金型。
  8. 【請求項8】 他方の金型に、先端が該他方の金型の内
    側形状の一部をなすスライド板を成形用キャビティ内に
    突出可能に設置することを特徴とする請求項に記載の
    ブロー成形用金型。
  9. 【請求項9】 スライド棒とスライド板が対向配置され
    ることを特徴とする請求項に記載のブロー成形用金
    型。
  10. 【請求項10】 スライド棒が複数本設置されることを
    特徴とする請求項に記載のブロー成形用金型。
  11. 【請求項11】 各スライド棒の突出長さが、それぞれ
    別個に調節可能であることを特徴とする請求項10に記
    載のブロー成形用金型。
  12. 【請求項12】 一方の壁部と対向する壁部を連結する
    隠しリブを内蔵するブロー成形体において、該隠しリブ
    が、一方の壁部から連続して対向する壁部に向かって伸
    び、その先端の一部のみが対向する壁部の内側に溶着し
    たものであることを特徴とするブロー成形体。
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