JP2656088B2 - ポリペプチドの製造方法並びにその方法に用いる、組換えベクターおよび組換えウイルス - Google Patents

ポリペプチドの製造方法並びにその方法に用いる、組換えベクターおよび組換えウイルス

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、成人T細胞白血病(Adult Tcell leukemi
a;以下ATLと略記する)の病因である成人T細胞白血病
ウイルス(Human Tcell leukemia virus−I;以下HTLV−
Iと略記する)の、表存蛋白gp46の抗体に対して抗原性
を有するポリペプチドの新規な製造方法並びにその方法
に用いる、組換えベクターおよび組換えウイルスに関す
る。
〔従来の技術〕 ATLの病因は、HTLV−Iの感染であることが知られて
おり、該HTLV−Iのワクチン、診断薬等として有用な、
HTLV−Iの抗体に対して抗原性を有するポリペプチドを
生産するための方法の開発が望まれていた。
従来、HTLV−Iに対して抗原性を有するポリペプチド
を生産するために、HTLV−Iの外皮蛋白(enve−lope p
rotein;以下env蛋白と略記する)の遺伝子で組換えられ
た大腸菌を増殖させ、産生するポリペプチドを回収する
方法が試みられている。
しかしながら、上記方法によって得られるポリペプチ
ドは、HTLV−Iの抗体に対する抗原性が低いものであっ
た。これは大腸菌等の細胞類内では産生するポリペプチ
ドに対して、糖鎖付加反応等の修飾がないことによるも
のと推定される。
一方、有用物質である蛋白の構造遺伝子をカイコ核多
角体病ウイルスDNAの多角体蛋白構造遺伝子部分に組み
換えた組換えウイルスを、カイコ樹立細胞又はカイコ生
体中で増殖させるポリペプチドの製造方法が、特開昭62
−208276号及び特開昭61−9288号において知られてい
る。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところが、これらの公報には、前記したHTLV−Iの抗
原蛋白であるポリペプチドの製造に対して上記の方法を
適用することに関しては何の具体的な記載もない。かる
方法によるHTLV−Iの抗原蛋白であるポリペプチドを製
造するには、HTLV−Iの構造遺伝子のいかなる部分によ
ってカイコ核多角体病ウイルスDNAの多角体蛋白構造遺
伝子を組換えるか、または、これによりポリペプチドの
産生が可能であるか、更にはポリペプチドが得られた場
合、該ポリペプチドがHTLV−Iの抗体に対して抗原性を
有するかどうかについては、更に数多くの研究が必要で
あった。
一方、本発明者等は、既にHTLV−Iの多角体蛋白構造
遺伝子の一部が、HTLV−I env蛋白遺伝子に由来するDNA
のうち、p21をコードするDNAを含み且つ該DNAの5′末
端から上流の17塩基対以内で切断された断片で組換えら
れた組換えウイルスをカイコ樹立培養細胞又はカイコ幼
虫に感染させ、該組換えウイルスを増殖させることを特
徴とするポリペプチドの製造方法を提案した。該製造方
法で得られるポリペプチドは、HTLV−Iの膜中および膜
の内側に位置し、抗原性の高い蛋白である。p21を含む
ため、ATL診断薬の抗原として有用である。しかしなが
ら、ATLの診断は該抗原を用いた診断薬と検定血清との
反応性を判定しただけでは十分ではない。なぜならば、
HTLV−Iのenv蛋白は、上記p21の他に表存蛋白であるgp
46により構成されている。そして、該gp46は、蛋白自体
の抗原性はp21に比して低いものである。しかしなが
ら、ATL患者の血清の中には、いかなる理由からかgp46
を抗原として反応させた場合しか陽性を示さないものが
存在する。従って、ATLの診断をより完全に行うために
は、診断薬の抗原としてはp21だけでなくgp46も補足し
て用い、HTLV−I抗体陽性および陰性を総合的に判定し
なければならない。
そして、本発明者等は、上記gp46の抗体に対して抗原
性を有するポリペプチドの有効な製造方法を開発すべく
研究を重ねた。その結果、HTLV−I env蛋白遺伝子に由
来するDNAを、該DNAの5′末端から下流のある特定の範
囲内で切断して得られる断片で、カイコ核多角体病ウイ
ルス(Bombyx Nuclear Polyhedrosis Virus;以下、BmNP
Vと略記する)の多角体蛋白構造遺伝子の一部を組換え
た組換えウイルスを、カイコ樹立培養細胞又はカイコ幼
虫に感染することによって、かかる目的を達成し得るこ
とを見い出し、本発明を完成するに至った。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、HTLV−I env蛋白遺伝子に由来するDNAのう
ち、該DNAの5′末端から下流73塩基対以上493塩基対以
内で切断した、該切断部位から前記DNAの3′末端まで
の断片(以下、HTLV−I 5′−3′断片と略す)によ
り、BmNPVの多角体蛋白構造遺伝子の一部の組換えを行
い、次いで該組換えウイルスをカイコ樹立培養細胞又は
カイコ幼虫に感染させてポリペプチドを発現させること
を特徴とするポリペプチドの製造方法である。
本発明の製造方法に使用する上記組換えウイルスの製
造方法は特に制限されるものではない。代表的な製造方
法として、ATL患者末梢血からリンパ球を分離し、該リ
ンパ球から抽出したDNAよりHTLV−I 5′−3′断片を切
り出し、これをカイコ発現系ベクターのクローニング部
位に挿入して組換えベクターとし、次いで該ベクターを
用いてHTLV−I 5′−3′断片をBmNPVの多核体蛋白構造
遺伝子の一部と組換えることにより製造する方法が挙げ
られる。
従って、本発明は上記ポリペプチドの製造方法に使用
する、HTLV−I env蛋白遺伝子に由来するDNAのうち、該
DNAの5′末端から下流73塩基対以上493塩基対以内で切
断した、該切断部位から前記DNAの3′末端までの断片
により、カイコ発現系ベクターを組換えた組換えベクタ
ー、およびHTLV−I env蛋白遺伝子に由来するDNAのう
ち、該DNAの5′末端から下流73塩基対以上493塩基対以
内で切断した、該切断部位から前記DNAの3′末端まで
の断片により、BmNPVの多角体蛋白遺伝子の一部を組換
えた組換えウイルスも提供する。
以下、上記について詳細に説明する。
I. 組換えウイルスの製造 I−1 BmNPV 本発明において、HTLV−I 5′−3′断片によって組
換えられるBmNPVは、養蚕業者に広く知られているもの
であり、前田,古沢らが単離した代表的な株としてT3株
があり、この株のウイルスDNAは、米国のATCC(America
n Type Culture Collection)にATCC No.40188として寄
託されており、容易に入手し得る。又、BmNPVに感染し
たカイコより公知の方法によって単離することもでき
る。
上記BmNPVのDNAは、第1図の制限酵素地図で表わすこ
とができる。
このBmNPV DNAのうち本発明において、HTLV−I 5′−
3′断片によって組換えられる部分は、第1図に示され
る多角体蛋白遺伝子のうちプロモーター部分を除いた多
角体蛋白構造遺伝子の一部分である。
I−2 HTLV−I 5′−3′断片の取得方法 HTLV−Iは遺伝子としてRNAを持つレトロウイルスで
あり、感染細胞内でこの遺伝子RNAに由来して合成され
るDNAのenv遺伝子を中心とする塩基配列としては、seik
iらが“Proc.Natl.Acad.Sci.USA80"(1983)第3621頁で
発表したものが知られている。
上記塩基配列のうち、HTLV−I env蛋白遺伝子に由来
するDNAとは、第3図に示す通り5180番目から6643番目
の配列をいう。即ち、この配列部分は、HTLV−Iの表存
蛋白であるgp46をコードする5180番目から6115番目まで
の配列と、HTLV−Iの膜中および膜の内側に位置する蛋
白であるp21をコードする6116番目から6643番目までの
配列によって構成されている。
本発明において、HTLV−I 5′−3′断片の取得方法
は得に制限されない。代表的な方法にはATL患者末梢血
中のリンパ球に所在するDNAから該HTLV−I 5′−3′断
片を取得する方法が挙げられる。
代表的な方法を例示すれば、まず、ATL患者末梢血か
らリンパ球を分離し、該リンパ球からDNAを抽出し、次
いで制限酵素EcoR Iで切断し、約20キロ塩基対断片を含
むDNAを得、該DNAをシャロン(charon)4AベクターのEc
oR I制限酵素切断部位に接続した後、HTLV−Iのプロウ
イルスを含むファージをスクリーニングで単離し、該プ
ロウイルスからpUCベクターに代表される大腸菌のベク
ター系を使用したサブ・クローニングおよび制限酵素に
よる切断によりHTLV−I 5′−3′断片を得る方法であ
る。
HTLV−I 5′−3′断片は、HTLV−I env蛋白遺伝子に
由来するDNAのうち、該DNAの5′末端から下流73塩基対
から493塩基対以内で切断した、該切断部位から前記DNA
の3′末端までの断片であればすべて適用できる。該HT
LV−I 5′−3′断片を、前記seikiらが発表しているHT
LV−I env蛋白遺伝子配列で説明すると5253番目から567
3番目以内で切断され、該切断部位から6643番目までの
断片に相当する。即ち、HTLV−I 5′−3′断片は、HTL
V−I env蛋白遺伝子のうち、gp46をコードするDNA配列
部分の特定の一部とp21をコードするDNA配列部分より構
成されている。
上記切断部位の好適なる部位を示せば、HTLV−I env
蛋白遺伝子に由来するDNAの5′末端から下流へ494塩基
対隔てた位置よりCGと配列しているAcc I制限酵素切断
部位、或いは上記DNAの5′末端から下流へ74塩基対隔
てた位置にCと配列しているPvu II制限酵素切断部位等
が挙げられる。
また、該HTLV−I 5′−3′断片は、後述するカイコ
発現系ベクターに挿入可能な大きさである限り、上記切
断部位、およびHTLV−I遺伝子に由来するDNAのうちenv
蛋白遺伝子の3′末端より下流に存在する任意の制限酵
素切断部位で切断した断片に含まれた形で採取して用い
るのが好適である。代表的なenv蛋白遺伝子の3′末端
より下流に存在する制限酵素切断部位としては、該3′
末端から下流へ87塩基対隔てた位置よりTGCAと配列して
いるPst I制限酵素切断部位等が挙げられる。
但し、本発明者等の知見によれば、組換えに用いる断
片は、上記HTLV−I 5′−3′断片を含んでいても、HTL
V−I env蛋白遺伝子に由来するDNAの5′末端の下流73
塩基対より、上流の塩基配列を含んでいる場合、後記す
る方法によりこの断片を用いて得られたBmNPVの組換え
ウイルスをカイコ樹立培養細胞又はカイコ幼虫に感染し
てポリペプチドを産生しようとしても、生産量が極度に
低下してしまう。例えば、HTLV−I env蛋白遺伝子に由
来するDNAの全配列を用いた場合、ポリペプチドの合成
はほとんど進行しない。
また、組換えに用いる断片が、HTLV−I env蛋白遺伝
子に由来するDNAの5′末端の下流493塩基対より、更に
下流で切断したものである場合、得られるポリペプチド
は、gp46の抗体に対して抗原性を有しなくなる。
従って、本願発明のHTLV−I 5′−3′断片はHTLV−I
env蛋白遺伝子に由来するDNAのうち、該DNAの5′末端
から下流73塩基対以上493塩基対以内で切断したもので
あることが極めて重要である。
本発明において、前記HTLV−I 5′−3′断片は、カ
イコ発現系ベクターに組換えられた後、該組換えベクタ
ーによりBmNPVの多角体蛋白構造遺伝子の一部と組換え
て組換えウイルスとされる。組換えウイルス取得のため
に使用するカイコ発現系ベクターとしては、pBFベクタ
ーが挙げられる。pBFベクターは、第2図の制限酵素地
図により特徴づけられるものである。即ちpBFベクター
は、BmNPV DNAの多角体蛋白遺伝子のプロモーター領域
と多角体蛋白構造遺伝子前後付近及び大腸菌のベクター
であるpUCベクターの遺伝子とを含むベクターである。
上記pBFベクターは、Xba I,EcoR I,Stu I制限酵素切
断部位のクローニング部位がある。
かかるpBFベクターは、そのクローニング部位の上流
に塩基配列ATGから始まる多角体蛋白構造遺伝子をどの
部位まで含んでいるかで種類があり、第4図に示すよう
なpBF4〜pBF133が存在している。
組換えベクターの製造においては、上記ベクターのう
ち挿入するHTLV−I 5′−3′断片部分とpBFベクター上
流部分とのリーディング・フレームが合うものであれ
ば、どのベクターを使用してもよい。しかし、5′−
3′断片をカイコ樹立培養細胞およびカイコ幼虫で効率
よく発現できる組換えウイルスを作成するためには、塩
基配列ATGから開始されるBmNPV DNA由来の多角体蛋白構
造遺伝子の一部をコードした遺伝子部分を多く含んでい
るpBFベクター、例えばpBF124,pBF129,pBF133等のpBFベ
クターを使用するのが望ましい。
I−3−(1) pBFベクターへのHTLV−I 5′−3′断
片の導入方法 上記pBFベクターへのHTLV−I 5′−3′断片の挿入
は、pBFベクターのクローニング部位に存在するEcoR I,
Xba I,Stu I制限酵素切断部位を利用して行なえばよ
い。pBFベクタークローニング部位にHTLV−I 5′−3′
断片を挿入するには、DNA合成又は大腸菌のベクター系
であるpUCベクターへの挿入,切断等の公知の手段によ
り、該断片の両端にEcoR I,Xba I或いはStu I制限酵素
切断部位を接続するか、該断片の5′端にEcoR I、3′
端にStu I制限酵素切断部位を接続するか、更には該断
片の5′端にXba I、3′端にStu I制限酵素切断部位を
接続するかのいずれかの操作が一般に行われる。以上の
うちでも、HTLV−I 5′−3′断片の両端にEcoR I或い
はXba I制限酵素切断部位を接続する方法が好ましい。
そして5′−3′断片の両端にEcoR I制限酵素切断部
位を接続する場合、該断片はpBFベクターをEcoR I制限
酵素で切断したものと接続する。又、HTLV−I 5′−
3′断片の両端にXba I制限酵素切断部位を接続した場
合も同様に、該断片はpBFベクターをXba Iで切断したも
のと接続する。この場合接続に際しては、予め制限酵素
で切断したpBFベクターに対し、アルカリフォスファタ
ーゼ処理を行ない、pBFベクターのセルフライゲーショ
ン(selfligation)を避けることが好ましい。
又、HTLV−I 5′−3′断片の5′端にEcoR I、3′
端にStu I制限酵素切断部位を接続する場合、該断片
は、pBFベクターをEcoR I,Stu Iで切断したものと接続
し、HTLV−I 5′−3′断片の5′端にXba I、3′端に
Stu I制限酵素切断部位を接続する場合、該断片は、pBF
ベクターをXba I,Stu Iで切断したものと接続すればよ
い。
かかる接続方法は、リガーゼを用いて公知の方法によ
り行うことができる。例えば制限酵素で切断されたpBF
ベクターのDNAの量に対して、挿入すべき5′−3′断
片のDNA量が3〜8倍量になるように調整し、例えばT4D
NAリガーゼを用いて接続する方法である。
上記のHTLV−I 5′−3′断片を挿入したpBFベクター
の分離及び確認は、下記の方法により行うことができ
る。
即ち、分離は前記の接続反応液をJM109株(宝酒造
(株)製 No.9052)、MV1184株(宝酒造(株)製)で
代表される大腸菌のコンピテントセルに加え、公知の方
法で大腸菌の形質転換を行ない、pBFベクターがアンピ
シリン耐性遺伝子を含んでいることから、形質転換後の
液をアンピシリンを含んだLB寒天培地に接種し、室温以
上の適当な温度、例えば37℃で12時間〜20時間培養して
出現するシングル・コロニーを形質転換株として取得す
ることによって行うことができる。
また、HTLV−I 5′−3′断片を挿入したpBFベクター
の確認は、形質転換株に存在する組換えベクターボイリ
ング法(boiling法)或いはアルカリ・リシス法(alkal
i lysis法)を用いてミニ・プレパレーション(mini pr
eparation)し、組換えベクター懸濁液を取得し、この
ようにして調製した組換えベクター懸濁液をHTLV−I
5′−3′断片が挿入されていることが確認できる任意
の制限酵素、例えばEcoR I,Xba Iで切断し、切断物をア
ガロースゲル電気泳動し、エチジウム・ブロマイドによ
る染色後、予想できる位置にバンドが存在するか否かを
確認することによって行うことができる。尚、5′−
3′断片の両端をEcoR I或いはXba I制限酵素切断部位
にしたものをpBFベクターのEcoR I,Xba I制限酵素切断
部位に挿入した組換えベクターの場合は、pBFベクター
の上流部分と挿入する5′−3′断片が正しい方向に結
合しているかどうか確認できる制限酵素、例えば、BamH
I,Xho I等で切断し、その切断物を同様にアガロースゲ
ル電気泳動し、エチジウム・ブロマイドによる染色後、
予想できる位置にバンドが存在するか否かも同時に確認
するとよい。
上記方法で形質転換株として分離した組換えベクター
は、該形質転換株を増殖させることにより、その量を増
加させて使用することが好ましい。例えば該組換えベク
ターを所有する形質転換株をアンピシリンを含んだLB液
体培地に接種し、室温以上の適当な温度、例えば37℃で
12時間〜20時間振盪培養し、該培養物からアルカリ・リ
シス法(alkali lysis法)を用いてミディアム・プレパ
レーション(midiurm preparation)し、組換えベクタ
ー懸濁液を取得することによって行うことができる。
取得した組換えベクターも前記した方法と同様な方法
で再度目的の組換えベクターであるか否かを確認するこ
とが好ましい。
得られた組換えベクター懸濁液は、アールエヌエース
処理(RNase処理)して組換えウイルス取得用の組換え
ベクター懸濁液として使用することが好ましい。
I−3−(2) 組換えウイルスの取得 本発明において、HTLV−I 5′−3′断片によって、
多角体蛋白構造遺伝子の一部が組換えられた組換えBmNP
Vは、BmNPV DNAと前記組換えベクターとをカイコ樹立培
養細胞にカルシウム沈澱法を用いて、同時にトランスフ
ェクション(コ・トランスフェクション)し、組換えベ
クターとBmNPV DNA間の対立遺伝子を置き換えることに
より取得することができる。
上記のコ・トランスフェクションは、具体的には0.25
M塩化カルシウムおよびキャリヤDNAの存在下でBmNPV DN
Aと組換えベクターDNAをモル比1:100になる様に混ぜ、
その後、該混合液に、0.28M塩化ナトリウムを含むHEPES
緩衝液(pH7.1)とリン酸緩衝液の混合液を添加し、混
和後、該混和液をBm培養細胞中に添加するという前田,
古沢らの方法(特公昭61−9297号)に従って行なうこと
が望ましい。
コ・トランスフェクションした後、組換えウイルスを
含む反応液を室温付近の温度、例えは27℃で5〜6日間
培養し、培養後、培地を回収、遠心後、上清を組換えウ
イルスのクローニングに使用する。コ・トランスフェク
ションで得られた反応液の上清からの組換えウイルスの
クローニングは、プラークアッセイ法〔J.Seric Sci.Jp
n.53 547(1984)〕やリミッティング・ダイリューショ
ン法により組換えウイルスを単離することによって行え
ばよい。どちらの方法を使用しても良いが、操作法の容
易さ、分離回数の少なくて済む点から、リミッティング
・ダイリューション法を使用する方が良好である。
上記リミッティング・ダイリューション法を使用して
の組換えウイルスのクローニングは、コ・トランスフェ
クションで得られたウイルス液を希釈し、該ウイルス希
釈液と1×105〜1×106カイコ細胞数/mlカイコ培養培
地、好ましくはTC−10培地(第2表参照)の濃度で調整
してあるカイコ樹立細胞液とを1:1で混合することによ
り感染させ、この混合液をマイクロタイタートレー中の
ウェルへ注入し、室温付近の温度、例えば27℃で培養
し、培養2〜7日後、マイクロタイタートレー中のウェ
ルを検鏡し、ウェル中で見られるカイコ細胞の形状、形
態で組換えウイルス存在の有無を安定する。検鏡するこ
とで見い出されるカイコ細胞の形態には、第5図に示す
ように3種類確認できる。
第5図におけるウイルスが感染した形態を示している
カイコ細胞で且つ該細胞内に多角体蛋白が検出されない
細胞のみが存在しているウェル中の培地を回収、遠心
し、その上清を回収することにより組換えウイルス液が
得られる。ウェル中に野生株であるBmNPVと組換えウイ
ルスとが混在している場合は、該ウェル中の培地を回収
し、リミッティング・ダイリューションを繰り返し行な
い、組換えウイルスを分離することが好ましい。
II. ポリペプチドの製造 II−1 カイコ樹立培養細胞 本発明において組換えウイルスを感染させるカイコ樹
立培養細胞としては、BmNPVが増殖できるカイコ樹立培
養細胞であれば、どの細胞でも良い。
BmNPVが増殖可能なカイコ樹立培養細胞には、Volkma
n.L.E.,and Goldsmith,P.A.(1982):Appl.Environ.Mic
robiol.,44,227−233に示されているBm・N,(ATCC No.C
RL−8910)および前田らがBm・Nよりクローニングした
Bm・N2,Bm・N4のようなセルラインが知られている。BmN
PVの増殖の良さ、扱いやすさの点で、Bm・N4カイコ樹立
培養細胞を使用するのが適当である。又、感染に用いる
カイコ樹立培養細胞は、公知の培養条件、例えば、10%
小牛胎児血清を含むTC−10培地で27℃,4日間の条件で、
培養したものを使用するのが適当である。
II−2 組換えウイルスを上記細胞及びカイコ幼虫に感
染させる方法及び増殖方法 本発明において、目的とするポリペプチドは、前記組
換えウイルスをカイコ樹立培養細胞又はカイコ幼虫に感
染させ、増殖させることによって発現される。該組換え
ウイルスのカイコ樹立培養細胞への感染方法は、公知の
方法が特に制限なく使用される。例えば、準備したカイ
コ樹立培養細胞の培養液を容器に入れ、該細胞を容器の
底面に沈着させた後、該容器の底面に付着しているカイ
コ樹立培養細胞がはがれないように古い培養液を抜き取
り、安定剤としての牛胎児血清をカイコ培養培地を添加
し、該培養物に組換えウイルスを滴下する方法を用いる
のが一般的である。組換えウイルスの増殖は、組換えウ
イルスを感染させた後、室温付近の温度、例えば、27℃
で数日間培養することによって行うことができる。
培養後、感染したカイコ樹立培養細胞培養物は、遠心
分離した後、沈澱した細胞は、後記するHTLV−I env蛋
白の発現確認およびHTLV−I env蛋白の精製に使用し、
また、上清はカイコ幼虫に感染させる組換えウイルス液
として使用してもよい。
また、組換えウイルスをカイコ幼虫に感染させる方法
も特に制限されない。一般に、感染させるカイコ幼虫
は、カイコ5令幼虫を使用するのが好ましい。カイコ幼
虫への感染は、前記のカイコ樹立培養細胞への感染で上
清として得られるウイルス力価を高めた組換えウイルス
液又は該操作を行なわない組換えウイルス液を経皮的に
10〜100μ程注入することで行なうことができる。組
換えウイルスを感染させた後、感染カイコを飼育するこ
とで、組換えウイルスを増殖させ、多角体蛋白とHTLV−
I env蛋白の特定部の融合蛋白がカイコ幼虫の脂肪体内
に蓄積される。
カイコの飼育方法は、特に制限されないが、桑の葉或
いは桑の葉をホモジェネートし、滅菌後凍結乾燥したペ
ースト様試料(協同試料(株)社製等)に蒸留水を浸し
たものいずれかを与え、室温付近の温度、例えば、27℃
で培養する一般的な方法を採用すればよい。
飼育期間は、カイコ幼虫が死亡する直前まで行なうこ
とが好ましい。感染させる組換えウイルス液のウイルス
の力価で飼育期間は多少異なるが、感染して3日〜5日
後を飼育期間の目的とすることができる。
上記のカイコ幼虫から、脂肪体を取り出し、該脂肪体
を特定のHTLV−I env蛋白発現の確認および該HTLV−I e
nv蛋白の精製に用いる。
上記脂肪体の取得方法は、組換えウイルスを感染した
カイコ幼虫を中腸を切らないように注意深く表皮を切る
ことで解剖し、中腸等の器官を除去後、スパチュラ等で
下腹部に蓄積している脂肪体をかき取ることにより取得
する方法が推奨される。
本発明において、前記方法で得られた組換えウイルス
感染カイコ樹立培養細胞および組換えウイルス感染カイ
コ幼虫の脂肪体からポリペプチドを分離する方法は特に
制限されないが、例えば、PBS緩衝液等の中性緩衝液に
該カイコ樹立細胞又は脂肪体を顕濁し、ソニケーション
による分散後、尿素水溶液を添加して再度ソニケーショ
ンした後、遠心分離し、沈澱物を回収する方法が好適で
ある。
また、上記のポリペプチドはpBFベクターの有す多角
体蛋白遺伝子部分を発現による多角体蛋白の一部とHTLV
−I 5′−3′断片部分の発現によるHTLV−I env蛋白の
特定部の融合蛋白である。そして、HTLV−I 5′−3′
断片は、前述した通りgp46の特定の一部をコードするDN
A配列部分とp21をコードするDNA配列部分により構成さ
れている。しかしながら、上記ポリペプチドの分子量
は、15〜35kdであり、上記DNA配列から予測されるもの
よりp21の分子量分だけ小さいものである。そして、後
述する実施例から明らかな様に、本発明で得られるポリ
ペプチドは、抗多角体蛋白抗体およびHTLV−I患者血清
とは良好に抗原−抗体反応をおこすが、正常人血清およ
びp21に対するモノクローナル抗体とは抗原−抗体反応
をおこさない。即ち、該ポリペプチドにおいて含有され
るHTLV−I env蛋白は、HTLV−I 5′−3′断片のうち、
上記gp46に関するDNA配列部分のみの発現物で、gp46の
抗体に対して良好な抗原性を有するものである。
尚、得られた該ポリペプチドは場合によっては、化学
的あるいは酵素的方法を組合わせて多角体蛋白部分を除
くことにより、更に精製して使用することができる。
多角体蛋白を除く方法を具体的に示せば、多角体蛋白
とHTLV−I env蛋白部分の接合部付近のアミノ酸配列を
確認する蛋白質分解酵素を使用してその部分を切断後、
ゲル濾過等の分子量の違いを利用した精製手段で精製す
るのが良好である。
〔発明の効果〕
本発明の方法は、HTLV−Iの表存蛋白であるgp46の抗
体に対して良好な抗原性を示すポリペプチドを効率良く
産生することが可能であり、産業上の価値は極めて大き
いものである。また、得られたポリペプチドは、ATLに
対するワクチンの作成およびATL診断薬の抗原として有
用である。例えば、ATL診断薬への応用例として、ラテ
ックス粒子に、抗原として該ポリペプチドを付着させ、
この粒子にマイコロタイタープレート中で検定血清を反
応せしめ、該粒子の凝集および非凝集により、gp46抗体
陽性および陰性を判定する。ATL患者の血清の中には、g
p46を抗原として反応させた場合しか陽性を示さないの
が存在するから、上記結果をp21の抗体に対して抗原性
を有するポリペプチドを抗原に用いた場合の判定結果に
補足させることにより、より確実なATLの診断を行うこ
とが可能である。
〔実施例〕
実施例1 (HTLV−I env蛋白遺伝子由来のDNAの取得) ATL患者末梢血10mlから公知の方法に従いリンパ球を
分離し、該リンパ球をプロテインナーゼK(シグマ社製
P0390)で処理した後、フェノール・クロロホルム抽出
エタノール沈澱を行いATL患者由来のリンパ球のDNA1mg
を得た。
該DNA10μgを第4表No.1に示す組成の溶液中でEcoR
I制限酵素(宝酒造(株)製 No.1040)により切断し、
エタノール沈澱後、TE緩衝液200μに溶解した。
そして該溶液を、ショ糖密度勾配遠心(ショ糖10〜40
%wt/vol,26000rpm,18時間)にかけ、アガロースゲル電
気泳動による確認で20キロ塩基対に相当するDNA断片を
得た。次にこのDNA断片1.0μgをシャロン4Aベクター
(ベクターDNA、榊佳之 講談社1986参照)のEcoR I制
限酵素切断部位への接続を行い、シャロン4Aベクターに
存在するEcoR I切断部位に該DNA断片を挿入した。この
接続は、T4DNAリガーゼ(宝酒造(株)製 No.2011)を
用い、接続反応は、第5表に示すような組成の溶液中
で、15℃,12時間行なった。次いで、得られたDNAについ
てイン・ビトロ・パッケージングを行なった後、処理液
を遠心分離(7000rpm,2時間)し、上清をプラークハイ
ブリダイゼーション用の組換えファージ液とした。該組
換えファージ液を指示菌LE392(宝酒造(株)製)に感
染し、プラークを形成した後、32PでラベルしたHTLV−I
polDNA含有断片をプローブにプラークハイブリダイゼ
ーションを行ない、HTLV−I遺伝子由来のDNAを含むフ
ァージを単離した。得られた組換えファージを、第4表
No.1に示す組成の溶液中で、Hind III(宝酒造(株)
製)、EcoR I(宝酒造(株)製 No.1040)制限酵素に
より切断し、HTLV−I遺伝子由来のDNAのうちenv−px−
LTR領域に相当し、且つHTLV−I env蛋白をコードするDN
Aを含む約3.9キロ塩基対のDNA断片を400μg得た。そし
て、大腸菌用ベクターpUC19(宝酒造(株)製 No.321
9)を同様な条件下でHind III,EcoR I制限酵素により切
断し、切断部位への上記DNA断片の接続反応を行なっ
た。得られた接続反応液は、後述する、HTLV−I 5′−
3′断片を含むAcc I−Xba I断片DNAと、pUC118の接続
反応液と同様に、大腸菌JM109(宝酒造(株)製 No.90
52)の形質転換、ミニ・プレパレーション、そしてミデ
ィアム・プレパレーションへと続く一連の操作に使用し
た。以上の操作の結果、HTLV−I env−px−LTR領域遺伝
子に由来するDNA断片がpUC19に正しい方向で挿入してい
る組換えベクターPHT3.9Kb/pUC19を400μg得た。
上記組換えベクターPHT3.9Kb/pUC19 200μgを、第4
表No.3に示す組成の溶液中で、Pst I(宝酒造(株)製
No.1073),Hind III(宝酒造(株)製No.1060)を使
用して、切断し、Hind III−Pst I断片(約1700塩基
対)を得る。
一方、大腸菌ベクターpUC19を第4表No.1に示す組成
の溶液中でSal I(宝酒造(株)製 No.1080)を使用し
て切断し、マングビーン・ヌクレアーゼ(宝酒造(株)
製 No.2420)処理後、接続し、Acc I,Sal I,Hinc II制
限酵素切断部位のないpUC19を得た。次に、該pUC19を第
4表No.2に示す組成溶液中でHind III,Pst Iを使用して
切断し、該ベクターのHind III,Pst I切断部位に上記Hi
nd III−Pst I断片を接続した。
次いで、接続反応液を大腸菌JM109の形質転換、ミニ
プレパレーションと続く一連の操作に使用し、Hind III
−Pst I断片が上記pUC19ベクターに正しい方向で挿入し
ている組換えpUC19ベクターを400μg得た。更に、第4
表No.2に示す組成の溶液中で、組換えpUC19ベクターをA
cc I(宝酒造(株)製 No.1001),Xba I(宝酒造
(株)製 No.1093)を使用して切断し、HTLV−I env蛋
白遺伝子に由来するDNAのうち後半部分に相当するAcc I
−Xba I断片(約1060塩基対)取得した。
一方、組換えベクターPHT3.9Kb/pUC19、200μgを、
第4表No.5に示す組成の溶液中でNco I制限酵素(宝酒
造(株)製 No.1160)を使用して切断し、Nco I−Nco
I断片(約610塩基対)を得た。一方、大腸菌ベクターpU
C18(宝酒造(株)製 No.3218)を第4表No.3に示す組
成の溶液中でHinc II制限酵素(宝酒造(株)製 No.10
49)で切断し、該ベクターのHinc II制限酵素部位に上
記Nco I−Nco I断片をフィルイン・ライゲーションによ
って、接続した。次いで、接続反応液を、大腸菌JM109
の形質転換、ミニ・プレパレーション、そしてミディア
ム・プレパーションと続く一連の操作に使用し、Ncol I
−Ncol I断片が上記pUC18ベクターに正しい方向で挿入
している組換えpUC18ベクターを400μg得た。該ベクタ
ーを第4表No.6に示す組成の溶液中で、Xba I,Acc I制
限酵素で切断し、HTLV−I env蛋白遺伝子に由来するDNA
の前半部分に相当するXba I−Acc I断片(約500塩基
対)を得た。
次いで、大腸菌ベクターであるpUC119(宝酒造(株)
製 No.3319)を第4表No.6に示した組成の溶液中でXba
I制限酵素(宝酒造(株)製 No.1093)により切断
し、得られたベクターと上記Acc I−Xba I断片及びXba
I−Acc I断片との接続を行なった。そして、接続反応液
を大腸菌JM109の形質転換、ミニ・プレパレーション、
そして、ミディアム・プレパレーションへと続く一連の
操作に使用し、HTLV−I env蛋白遺伝子由来のDNAがpUC1
19ベクターに正しい方向で挿入している組換えベクター
env/pUC119,200μgを得た。以上の工程を第6図に示
す。
(組換えベクターの製造) 前記の方法で得られた組換えベクターenv/pUC119、20
0gを第4表No.6に示す組成の溶液に溶解し、次いでXba
I制限酵素を断続的に9時間添加していき、切断反応を
行なった。アガロースゲル電気泳動により該切断反応の
終了を確認後、更にこの反応液にAcc I制限酵素を断続
的に4時間添加していき、切断反応を行なった。
切断後、フェノール抽出、エタノール沈澱を順次行な
った後、沈澱したDNAをTE緩衝液(pH8.0)に溶解し、該
DNA溶解液をアガロースゲル電気泳動した。そしてHTLV
−I 5′−3断片を含むAcc I−xba I断片に相当するバ
ンド部分の寒天片を切り出し、電気泳動による溶出によ
って診断片を抽出した。次いで、抽出液を更にフェノー
ル抽出し、エタノール沈澱してHTLV−I 5′−3′断片
を含むAcc I−xba I断片を得た。
ここで、該Acc I−xba I断片に含有されるHTLV−I
5′−3′断片は、HTLV−I env蛋白遺伝子に由来するDN
Aのうち、該DNAの5′末端から下流493塩基対で切断し
た、該切断部位から前記DNAの3′末端までのものであ
る。
一方、大腸菌用ベクターpUC118(宝酒造(株)製 N
o.3318)10μgを第4表No.1に示す組成の溶液に溶解
し、次いでEcoR I制限酵素を断続的に9時間添加してい
き、切断反応を行なった。
次いで得られた反応液をアルカリフォスファターゼ懸
濁液(宝酒造(株)製 No.2120)1μにより、60℃
で30分間反応させた。アルカリフォスファターゼ反応停
止後、該反応液をフェノール抽出、エタノール沈澱し、
EcoR I制限酵素で切断されたpUC118を得た。
そして、該ベクター0.2μgと前記HTLV−I 5′−3′
断片を含むAcc I−xba I断片0.25μgを、第5表に示す
溶液中で混合し、T4DNAリガーゼを用いて、16℃,3時間
以上、フィルインライゲーションを行なった。
そして該操作により得られた接続反応液25μを大腸
菌JM109のコンピテントセル懸濁液200μに添加し、氷
上で30分放置した。その後、42℃で2分間ヒート・ショ
ックし、更に、室温に戻した後、LB液体培地800μを
添加し、37℃で1時間おだやかに振盪培養した。
該液体培地100μを、アンピシリン100μg/mlを含む
LB寒天培地15ml/プレートに接種後、37℃で12時間培養
した。培養後出現したシングルコロニー20個を取り出
し、それぞれをアンピシリン30μg/ml含むLB液体培地15
mlに接種し、37℃で8時間培養した。それぞれの液体培
地から1mlずつ採取し、各採取培地中の大腸菌内に所在
するプラスミドをミニ・プレパレーション法により抽出
した。得られた各プラスミドのそれぞれを、EcoR I制限
酵素およびBamH I制限酵素(宝酒造(株)製 No.101
0)により切断反応を行った。反応後、核反応液をアガ
ロースゲル電気泳動し、HTLV−I 5′−3′断片を含むA
cc I−xba I断片ばpUC118に正しい方向で挿入している
プラスミドを確認した。
この確認したプラスミドを所有している大腸菌が存在
する前記液体培地から0.2mlを採取し、アンピシリン100
μg/mlを含むLB液体培地50mlに接種後、37℃で12時間培
養した。
得られた液体培地中の大腸菌内に所在するプラスミド
をミディアム・プレパレーション法により抽出し、組換
えベクターAcc I Env(1000)/pUC118 400μgを得た。
該組換えベクターAcc I Env(1000)/pUC118 200μg
をEcoR I制限酵素により、前記と同様の切断条件で切断
した。得られた切断物を前記アガロースゲル電気泳動す
ることで、HTLV−I 5′−3′断片を含むEcoR I−EcoR
I断片(約1000bp)0.15μgを得た。
又、カイコの発現系ベクターpBF124、10μgをEcoR I
制限酵素により、前記と同様な切断条件で切断し、次い
でアルカリフォスファターゼ処理した。
上記HTLV−I 5′−3′断片を含むEcoR I−EcoR I DN
A断片1.25μgとEcoR I制限酵素で切断されたpBF124 0.
2μgを混合し、T4DNAリガーゼにより前述と同様な方法
で接続反応を行なった。
そして、前記と同様な方法により、この接続反応液を
用いた大腸菌JM109の形質転換及び、該形質転換菌の分
離を行なった。次いで、分離された各培養物ごとで一連
のミニ・プレパレーション操作を実施し、それぞれの液
体培地の一部からプラスミドを抽出した。
次いで、各プラスミドに対して、EcoR I制限酵素およ
びBamH I制限酵素による切断反応を行い、アガロースゲ
ル電気泳動により、HTLV−I 5′−3′断片を含むEcoR
I−EcoR I DNAがpBF124に正しい方向に挿入されている
プラスミドを確認した。
この確認したプラスミを所有している大腸菌が存在す
る液体培地から0.2mlを採取し、アンピシリン30μg/ml
を含むLB液体培地50mlに接種後、37℃で12時間培養し
た。
該液体培地中の大腸菌内に存在するプラスミドをミデ
ィアム・プレパレーション法により抽出し、組換えベク
ターAcc I Env(1000)/pBF124 200μgを得た。この組
換えベクターAcc I Env(1000)/pBF124はE.coliに導入
し、得られる微生物をE.coli Acc I Env(1000)/pBF12
4として工業技術院微生物工業技術研究所に寄託した。
寄託番号は微工研菌寄第10292号(FERM−p10292)であ
る。以上の工程を第7図に示す。
(組換えウイルスの製造) BmNPV T3株のウイルスDNAと前記組換えベクターAcc I
Env(1000)/pBF124とが1:100のモル比に調合された第
1表の組成液I 245μを、第1表の組成液II 255μ
と混合した。
生じた懸濁液0.5mlをTC−10(第2表)の培地のカイ
コ樹立培養細胞Bm・N4液(4×105Bmcells/ml)5mlに加
え、27℃,20時間の培養により、Acc I Env(1000)/pBF
124とBmNPV DNAのカイコ樹立細胞への導入を行った。得
られた培養物は、更にTC−10培地の交換を行った後、27
℃で6日間培養した。次いでこの培養物を遠心分離(15
00rpm,10分間)し、得られた上清を組換えウイルスのク
ローニング用反応液とした。
該クローニング用反応液をTC−10培地で10-6,10-7,10
-8に希釈し、それぞれ10mlの希釈反応液とした。該希釈
反応液に対して、それぞれカイコ樹立培養細胞Bm・N4
(105Bmcells/ml)10mlを混合し、該混合液を200μず
つ96穴のマイクロタイター・トレーの中に分注し、27℃
で4日間培養した。4日間培養後、マイクロタイター・
トレーを検鏡し、細胞表面が粗く変形しウイルスが感染
した形態を示しているカイコ樹立培養細胞で且つ該細胞
内に多角体蛋白が検出されないウェルを見い出し、そこ
から培養物を回収した。得られた培養物を遠心分離(15
00rpm,10分)し、上清150μを組換えウイルスのポリ
ペプチド発現用反応液とした。該ポリペプチド発現用反
応液は、プラーク検定で1×107PFU/mlの力価を示す組
換えウイルス液であった。尚、このポリペプチド発現用
反応液を用い、組換えウイルスのカイコ樹立培養細胞Bm
・N4への感染、培養を行い、該組換えウイルスを増殖さ
せた。この組換えウイルスの増殖操作は、培養物の遠心
分離(1500rpm,10分)による上清液40mlが、プラーク検
定で3×108PFU/mlの力価を有するまでくり返し起っ
た。以上により得られた上清液40mlを、35%(w/w)シ
ョ糖水溶液5mlに静かに重層した状態で超遠心分離(250
00rpm,15℃,2時間)し、組換えウイルスをウイルス粒子
として沈澱させた。そして、該ウィルス粒子を蒸留水で
洗浄後、TE緩衝液(pH7.5)200μに溶解し、ウイルス
粒子の懸濁液をえた。該懸濁液を更に、SDS存在下での
プロテアーゼK処理、フェノール処理、フェノール・ク
ロホルム処理、クロロホルム・イソアミルアルコール
(50:1)処理し、ウイルスDNAを50μgを得た。
上記TC−10の培地は第2表の培地900mlをpH6.30〜6.3
5に調整し、濾過滅菌後、牛胎児血清100mlを添加するこ
とにより調製される。
(ポリペプチドの製造) 上記ポリペプチド発現用反応液100μをカイコ樹立
培養細胞Bm・N4液(105Bmcells/ml)30mlに添加し、27
℃,5日間培養した。5日間培養後、培養物を回収し、遠
心分離(1500rpm,15分)した。
沈澱物(ウイルス成熟細胞)をPBS緩衝液で洗浄し50m
M Tris−HCl(pH7.4)400μに懸濁、ソニケーション
後、遠心分離(8000rpm,20分)した。沈澱物として得ら
れたポリペプチド90μgにレムリ緩衝液200μを添
加、懸濁したものを、煮沸し、遠心した上清をSDSゲル
電気泳動の試料とした。
SDSゲル電気泳動の結果、この試料は、約20kdの位置
にバンドが検出された。(第8図に図示)この分子量
は、予測される、pBF124の有する多角体蛋白遺伝子部分
がコードする多角体蛋白部分(約4.5kd)とHTLV−I 5′
−3′断片がコードするHTLV−I env蛋白部分(約35.5k
d)の合計分子量よりも、p21の分子量分(約20kd)だけ
小さいものである。なお、第8図は、Bm細胞内でのHTLV
−I env蛋白発現をSDSゲル電気泳動で確認したものであ
る。第8図においてlane1はサイズマーカー、lane2は非
感染カイコ細胞の蛋白lane3はAcc I Env(1000)/pBF12
4を使用した組換えウイルスを感染したカイコ細胞の蛋
白を電気泳動したものである。
一次抗体として、正常人血清、抗多角体蛋白抗体、HT
LV−I p21に対するモノクロナール抗体、及び患者血清
を使用したウエスタン・ブロット実験の結果、該20kdの
ポリペプチドが抗多角体蛋白抗体、患者血清に対しては
陽性で、正常人血清、HTLV−I p21に対するモノクロー
ナル抗体に対しては陰性であることを確認した(第9図
に図示)。この結果は該ポリペプチドが、多角体蛋白部
分と、HTLV−I gp46の抗体に対して抗原性を有する部分
の融合蛋白であることを示している。尚、第9図はBm細
胞内でのHTLV−I env蛋白発現をウエスタン・ブロット
法で確認したものである。lane1はサイズマーカー、lan
e2〜lane5は抗原としてAcc I Env(1000)/pBF124を使
用した組換えウイルスを感染したカイコ細胞の蛋白を電
気泳動したものである。
ウエスタン・ブロッティングは、第3表に示した一次
抗体及び二次抗体を使用して、アビジン、ビオチンを基
質としたパーオキシダーゼによる呈色反応で行なった。
実施例2 実施例1で得たポリペプチド発現用反応液100μを
カイコ樹立培養細胞液(105Bmcells/ml)30mlに添加
し、27℃、5日間培養した。5日間培養後、培養物を回
収し遠心分離(1500rpm,15分)した。上清を0.1mlずつ
5令1日目のカイコ100匹にそれぞれ経皮的に注入し、2
5℃で5日間、桑葉のペースト片を与えて飼育後、解剖
し、脂肪体を集めた。該脂肪体にPBS緩衝液10mlを加え
懸濁し、ソニケーション後、遠心分離(8000rpm,20分)
し、沈澱物5mlを取得した。該沈澱物を再度ソニケーシ
ョンし、Bio−RADプロティン・アッセイにより、ポリペ
プチド量を測定した結果7.5mgであった。
ポリペプチド量測定後、50μをレムリ緩衝液50μ
に懸濁し、煮沸し、遠心した上清をSDSゲル電気泳動の
試料とした。
SDS電気泳動の結果、分子量約20kdの位置にバンドが
検出された。実施例1と同じウエスタン・ブロット実験
を行い、この20kdのポリペプチドが多角体蛋白部分とHT
LV−I gp46の抗体に対して抗原性を有する部分とを含む
融合蛋白であることを確認した。
実施例3 実施例1の(組換えベクターの製造)において、組換
えベクターenv/pUC119のxba I制限酵素による切断後の
更なる切断を、Pvu II制限酵素(宝酒造(株)製No.107
6B)により行ないHTLV−I 5′−3′断片を含むPvu II
−xba I断片を得た以外は、実施例1と同様の方法を実
施した。ここで、該Pvu II−xba I断片に含有されるHTL
V−I 5′−3′断片は、HTLV−I env蛋白遺伝子に由来
するDNAのうち、該DNAの5′末端から下流73塩基対で切
断され、該切断部位から上記DNAの3′末端までのもの
である。尚、Pvu II制限酵素の切断反応は、第4表No.4
に示す組成の溶液中で行なった。また、上記操作で得ら
れるカイコの発現系ベクターpBF124にHTLV−I 5′−
3′断片が挿入された組換えベクターPvu II Env(150
0)/pBF124は、該ベクターをE.coliに導入し、得られる
微生物をE.coli Pvu II Env(1500)/pBF124として工業
技術院微生物工業技術研究所に寄託した。寄託番号は、
微工研菌寄第10293号(FERM−P10293)である。
上記操作の結果、1μgのポリペプチドを得た。SDS
電気泳動の結果、このポリペプチドは、分子量約32.3kd
の位置にバンドが検出された。また、実施例1と同じウ
エスタン・ブロット実験を行いこのポリペプチドが、多
角体蛋白部分とHTLV−I gp46の抗体に対して抗原性を有
する部分の融合蛋白であることを確認した(第10図に図
示)。
実施例4 実施例3に於いて得られるポリペプチド発現用反応液
を用い、実施例2と同様な方法によりポリペプチドを取
得した。得られたポリペプチドは75μgで、SDS電気泳
動の結果、このポリペプチドは、分子量約32.5kdの位置
にバンドが検出された。また、実施例1と同じウエスタ
ン・ブロット実験を行い、このポリペプチドが、多核体
蛋白部分とHTLV−I gp46の抗体に対して抗原性を有する
部分の融合蛋白であることを確認した。
第 5 表 50mM Tris−HCl(pH7.4) 10mM MgCl2 10mM dithiothreitol(DTT) 1mM ATP
【図面の簡単な説明】
第1図はカイコ核多角体病ウイルスのDNAの制限酵素地
図、第2図はpBFベクターの制限酵素地図、第3図はHTL
V−I env蛋白の遺伝子およびアミノ酸配列図、第4図は
pBFベクターの種類、第5図はカイコ核多核体病ウイル
スおよび組換えウイルスが感染したカイコ細胞、第6図
はHTLV−I env蛋白遺伝子由来のDNAの調整法、第7図は
組換えベクターの調整法、第8図はカイコ樹立培養細胞
内で発現したポリペプチドをSDSゲル電気泳動で確認し
た写真、第9図および第10図はカイコ樹立培養細胞内で
のHTLV−I env蛋白発現をウエスタン・ブロット法で確
認した写真をそれぞれ示す。 Hd III……Hind III、N……Nco I、Ac……Acc I、Ec…
…EccR I、Sp……Sph I、Sa……Sal I、Hi II……Hinc
II、B……BamH I、x……xba I、Pv……Pvu II

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】成人T細胞白血病ウイルス外皮蛋白遺伝子
    に由来するDNAのうち、該DNAの5′末端から下流73塩基
    対以上493塩基対以内で切断した、該切断部位から前記D
    NAの3′末端までの断片により、カイコ該多角体病ウイ
    ルスの多角体蛋白構造遺伝子の一部の組換えを行い、次
    いで該組換えウイルスをカイコ樹立培養細胞又はカイコ
    幼虫に感染させてポリペプチドを発現させることを特徴
    とするポリペプチドの製造方法。
  2. 【請求項2】成人T細胞白血病ウイルス外皮蛋白遺伝子
    に由来するDNAのうち、該DNAの5′末端から下流73塩基
    対以上493塩基対以内で切断した、該切断部位から前記D
    NAの3′末端までの断片により、カイコ発現系ベクター
    を組換えた組換えベクター。
  3. 【請求項3】成人T細胞白血病ウイルス外皮蛋白遺伝子
    に由来するDNAのうち、該DNAの5′末端から下流73塩基
    対以上493塩基対以内で切断した、該切断部位から前記D
    NAの3′末端までの断片により、カイコ該多角体病ウイ
    ルスの多角体蛋白遺伝子の一部を組換えた組換えウイル
    ス。
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