JP2646689B2 - 非水電解液二次電池およびそれに用いる正極活物質の製造方法 - Google Patents

非水電解液二次電池およびそれに用いる正極活物質の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、負極にリチウムあるいはリチウム合金、電
解液に有機電解液を使用した非水電解液二次電池に関す
るものであり、化学合成二酸化マンガンを改良した正極
活物質を使用することにより、放電電圧が高く、エネル
ギー密度が大きく、充放電サイクル寿命の長い二次電池
を提供するものである。
従来の技術 負極にリチウムあるいはリチウム合金、電解液に有機
電解液を使用した充放電可能な、いわゆる非水電解液二
次電池を得る試みは、さかんにおこなわれており、正極
活物質としては、主に二硫化チタンや二硫化モリブデン
等のカルコゲン化合物が使用されてきた。[竹原 化学
37 168(1982)] しかし、正極にカルコゲン化合物を使用した場合、放
電電圧が低く、したがってエネルギー密度は小さくな
る。また、多くのカルコゲン化合物は合成が困難で高価
である。
これらの欠点を克服するために、正極活物質として各
種酸化物を使用することが検討され、その中でも電解二
酸化マンガンが、リチウムと組み合わせた場合、平均放
電電圧が2.8Vと高いことや、工業的生産が可能で安価な
ことから、二次電池への応用が期待されている。
ところが、有機電解液中の電解二酸化マンガンを充放
電する場合の反応は、二酸化マンガン結晶中へのリチウ
ムイオンの出入りであるため、充放電によって二酸化マ
ンガンの体積は膨張と収縮を繰り返し、次第に結晶構造
が崩壊することや、二酸化マンガンの結晶と導電材との
接触が悪くなって、サイクル数の増大と共に放電容量が
減少するという問題点を有していた。[G.Pistoia J.El
ectrochem.Soc.,129 1861(1982)] この問題点を解決するために、二酸化マンガンに各種
化合物を添加して充放電特性を改良する試みがなされて
いる。その中には水酸化リチウムを使用する方法とし
て、電解二酸化マンガンを水酸化リチウム水溶液中に入
れてマイクロ波を照射して二酸化マンガン中へリチウム
をドープし、350〜430℃で加熱する方法[特開昭62−10
8455号公報]や、LiOH−MnO2焼成体が可逆性に優れてい
ること[第28開電池討論会予稿集、3B09,P203,1987.11.
18〜20]等が報告されている。
発明が解決しようとする課題 以上述べたように二酸化マンガンを使用した非水電解
液二次電池において、サイクル数の増大に伴い放電容量
が減少するという欠点を取り除くことにより、放電電圧
が高く、放電容量が大きく、エネルギー密度の大きい二
次電池を得ることが課題とされていた。
課題を解決するための手段 本発明は、負極にリチウムあるいはリチウム合金を用
いた非水電解液二次電池において、正極活物質として化
学合成二酸化マンガンの結晶中に水酸化リチウムを含有
したものを用いたことを特徴とする。また、前記正極活
物質の製造方法として化学合成二酸化マンガンに30重量
%以下の水酸化リチウム−水塩を加え350℃以下の温度
で加熱することを特徴とする。
作用 化学合成二酸化マンガンを非水電解液電池の活物質に
使用する場合、結晶中に含まれている水分をある程度除
去するために、一定の温度で加熱脱水する方法がとられ
ている。本発明は化学合成二酸化マンガンを加熱脱水す
る際、あらかじめ化学合成二酸化マンガンに一定量の水
酸化リチウム一水塩(LiOH−H2O)を添加しておき、加
熱によって水酸化リチウム一水塩が分解して生成した水
酸化リチウムが二酸化マンガン結晶中にはいることを利
用するものである。
ただし、電解二酸化マンガンは室温では含水のγ−型
結晶構造であり、加熱によって脱水するが、250℃以上
ではγ−型とβ−型の結晶構造の混合物、350℃以上で
はβ−型結晶構造となる。電池の充放電を行なう場合は
β−型よりもγ−型結晶構造の方が望ましいため、加熱
温度は350℃以下とする必要がある。
本発明による正極活物質は、化学合成二酸化マンガン
からの水分の離脱と、水酸化リチウム一水塩の分解が同
時に起こる条件で合成される。したがって、生成物は二
酸化マンガン結晶中に水酸化リチウムがはいった状態と
なっているものと考えられる。そのため、二酸化マンガ
ンが充放電を行う場合、電気化学的なリチウムイオンの
出入りを伴うが、あらかじめ水酸化リチウムが二酸化マ
ンガン結晶中に入って、二酸化マンガンの結晶を充放電
しない状態においても、あらかじめ膨脹させておくの
で、充放電におけるリチウムの出入りに伴う体積変化を
化学合成二酸化マンガン単独の場合よりも小さくし、そ
の結果充放電による二酸化マンガンの膨脹収縮が非常に
小さくなり、結晶間や導電材との接触が良好な状態に保
たれ、ほとんどの二酸化マンガンが反応に使われる。
また、加熱温度を350℃以下とすることによって、二
酸化マンガンの結晶がβ−型へと変化せず、γ−型ある
いはγ−型とβ−型の混合物という電池の充放電に有利
な結晶構造が保持されるものである。
実施例 以下に本発明を好適な実施例を用いて説明する。
[1.正極活物質の合成方法] 化学合成二酸化マンガン(γ−型結晶構造,国際共通
資料I.C.No.12)粉末と、水酸化リチウム一水塩粉末と
を一定の割合で均一に混合し、ルツボに入れて電気炉で
5時間加熱し、正極活物質No.1〜No.10を合成した。混
合比および加熱温度は第1表に示す通りである。
[2.正極板の製法] 上記の正極活物質とアセチレンブラック(導電材)と
ディスパージョンテフロンとを重量比で90:8:2となるよ
うに混合し、ペースト状とし、ニッケルリード線を取り
付けた10mm×10mmのエキスパンドニッケルグリッド上に
塗布した。正極混合物の塗布量は極板1枚当り約50mgと
した。これを加圧して均一な表面とした後、200℃で20
時間真空乾燥して余分の水を脱水した。
[3.電池の試作と試験条件] 電池は正極板1枚と負極板1枚とで構成されている。
負極板は10mm×10mmのリチウム板にニッケルリード線を
圧着で取り付けたものである。セパレータとしては微細
孔を備えたポリプロピレンシートを使用し、電解液とし
ては2−メチルテトラヒドロフランに六フッ化砒酸リチ
ウム(LiAsF6)を1.5mol/溶解させた非水電解液を使
用した。
この極板群をテフロンケースに入れ、全体をセパルブ
ルフラスコ中、アルゴン雰囲気に密閉して、充放電試験
を行なった。充放電試験条件は以下の通りである。
温度:25℃±2℃ 電流:充放電とも1.0mA/cell定電流 終始電圧:(充電)3.50V,(放電)2.00V [4.充放電試験結果] 活物質No.1〜No.6を用いた電池について、正極活物質
合成時の水酸化リチウム一水塩の添加量と、正極活物質
1kg当りの放電容量との関係を第1図に示す。ただし、
放電容量はサイクル数で変化するので、以下全て10サイ
クル目の値を比較する。放電容量は水酸化リチウム一水
塩添加量が10wt%〜20wt%のとき最大となり、これより
添加量を増すと減少する。水酸化リチウム一水塩の添加
量が30wt%以下であれば、無添加の場合に比べて放電容
量は大きくなる。
活物質No.3とNo.7〜No.10を用いた電池について、水
酸化リチウム一水塩を10wt%添加した場合の加熱温度と
放電容量との関係を第2図に示す。放電容量は250℃〜3
00℃加熱の場合に最大となり、加熱温度がこれより低く
なっても高くなっても小さくなる。これは二酸化マンガ
ンは室温ではγ−型結晶構造であるが、加熱によって脱
水されて250〜350℃の範囲ではγ/β−型結晶構造に、
350〜450℃の範囲ではβ−型結晶構造となって350℃以
上での加熱では、充放電に適さない結晶構造となってし
まうためであると考えられる。したがって、正極活物質
の加熱温度は、350℃以下が適している。
次に活物質No.1(無添加)を用いた電池とNo.3(水酸
化リチウム一水塩10wt%添加)を用いた電池の充放電サ
イクル数による放電容量の変化を第3図に示す。同図よ
り水酸化リチウム一水塩を添加しないと放電容量のサイ
クル数による減少は激しいが、水酸化リチウム一水塩を
添加した場合の放電容量変化は非常に小さいことがわか
る。
発明の効果 本発明による正極活物質を使用すれば、充放電反応に
おいて極板中に含まれる大部分の二酸化マンガンが反応
に関与するため、同じ重量の化学合成二酸化マンガンを
単独で使用した場合よりも放電容量は大きくなる。しか
も放電電圧は二酸化マンガン単独の場合同様、平均2.8V
であるため、電池の放電エネルギー密度は極めて大き
い。
また、水酸化リチウムが二酸化マンガンの結晶中に入
るために、充放電に伴う二酸化マンガン結晶の体積変化
が小さく、結晶間の接触も良好な状態に保たれることに
よって、サイクル数に伴う放電容量の減少は小さく、サ
イクル寿命の極めて長い二次電池が得られる。
なお、実施例においては負極にリチウム、電解液に2
−メチルテトラヒドロフン−六フッ化砒酸リチウムを使
用したが、負極はリチウムを含む合金、例えばリチウム
−アルミニウム合金等も使用でき、また、電解液もリチ
ウムと直接反応しない各種有機電解液の使用も可能であ
り、いずれの場合においても本発明の効果を得ることが
できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、正極活物質合成時の水酸化リチウム一水塩含
有量と、その活物質を使った電池の放電容量との関係を
示す図。第2図は、正極活物質合成時の加熱温度と、電
池の放電容量との関係を示す図。第3図は、本発明によ
る電池および従来の電池の充放電サイクル数と放電容量
の関係を示した図。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】負極にリチウムあるいはリチウム合金を用
    いた非水電解液二次電池において、正極活物質として化
    学合成二酸化マンガン結晶中に水酸化リチウムを含有し
    たものを用いたことを特徴とする非水電解液二次電池。
  2. 【請求項2】請求項1記載の非水電解液二次電池に用い
    る正極活物質の製造方法であって、化学合成二酸化マン
    ガンに30重量%以下の水酸化リチウム一水塩(LiOH・H2
    O)を加え350℃以下の温度で加熱することを特徴とする
    非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法。
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