JP2623143B2 - 粗大結晶粒からなる高純度銅線の製造法 - Google Patents

粗大結晶粒からなる高純度銅線の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は,粗大結晶粒からなる高純度銅線の製造法に
関する。
〔背景技術〕
オーディオ機器やビジュアル機器に使用されるケーブ
ル線,リード線,コード部品,端子,コネクター等の導
電材料が音質に影響を与えることが知られている。例え
ば,これら配線に使用される銅線(AV線)の場合,その
純度と結晶粒が音質に影響を与え,純度が高く且つ結晶
粒界が少ないほど(すなわち結晶粒が粗大化しているほ
ど),音質を劣化させない。これは,音質を劣化させる
粒界並びに不純物の集積が少なくなることによる。した
がって,高音質化を指向している音響機器において,粗
大結晶粒をもつ高純度銅線の開発が強く望まれている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
純度が99.999%以上の高純度銅線を製造する場合に
は,熱間加工が適用できない。熱間加工では不純物の混
入が避けられないからである。したがって,鋳造法によ
って純度が99.999%以上の鋳造導線を作り,これを冷間
伸線して所望の線径まで加工することが必要となる。こ
の場合には,熱間加工を経る場合のように結晶粒を粗大
化することは困難となる。
すなわち,通常の方法に従って熱間加工の工程を経て
直径10mmφ程度の銅荒引線とし,以後冷間伸線により所
望の線径まで加工する場合には,単純に焼鈍操作を行え
ば結晶を粗大化することができる。例えば熱間加工によ
り得られた銅荒引線を90%以上の加工率により冷間伸線
し,直径1mm線とした場合,900℃前後の温度で焼鈍すれ
ば,平均結晶粒径0.3〜0.4mm程度の巨大結晶粒を得るこ
とができる。しかし鋳造法により得られた高純度銅鋳造
線を同様の方法で伸線,焼鈍を行っても平均結晶粒径が
0.02〜0.04mm程度にしかならないことがわかった。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は,銀と硫黄の合計含有量が1ppm以下で且つ純
度が99.999%以上の高純度銅からなる鋳造材料を熱間加
工を省略して冷間伸線することにより該高純度を保持し
た線材に加工するにさいし,該鋳造材料を加工率70%〜
95%で一次冷間伸線し,不活性ガス雰囲気下または真空
中で150℃〜600℃の温度範囲で中間焼鈍し,最終製品線
径まで二次冷間伸線したあと,不活性ガス雰囲気下また
は真空中で600℃〜950℃の温度範囲で最終焼鈍を行うこ
とを特徴とする粗大結晶粒からなる高純度銅線の製造法
を提供するものである。なお,中間焼鈍は焼鈍温度から
急冷するのが一層好ましい。
〔作用〕
AV線中に非金属介在物の硫黄が含有すると,また導電
率の高い銀が含有しても,音質を劣化させる。本発明に
よって得られる加工後の線材は,銀と硫黄の合計含有量
が1ppm以下で且つ純度が99.999%以上の高純度を保持し
ている。これは,かような高純度鋳造材を熱間加工する
ことなく適正雰囲気下での焼鈍と冷間伸線を採用したこ
とによる。
鋳造組織をもつ鋳造材(好ましくは連鋳材)に対して
熱間加工を省略して一次冷間伸線を行ないそして中間焼
鈍を実施することにより,鋳造組織を完全につぶし,特
定方位をもった微細な再結晶組織(一次再結晶)を得る
ことができる。この微細な一次再結晶を得ることによ
り,以後の工程で結晶方位の制御並びに粗大化がし易く
なる。得られた微細な一次結晶の焼鈍材を,最終製品線
径まで冷間伸線(二次冷間伸線)し,最終焼鈍すること
により,二次冷間伸線によって焼鈍材に適切な歪が付与
され,最終焼鈍では粗大化した二次再結晶粒が得られ
る。中間焼鈍および最終焼鈍は,不活性ガス雰囲気また
は真空下で実施することにより,鋳造材の純度が維持さ
れ,銀と硫黄の含有量が1ppm以下で純度が99.999%以上
の純銅からなり且つ結晶粒が粗大化した音響機器用の新
規且つ優れた材料が得られる。
〔発明の好ましい態様の説明〕
鋳造材では銀と硫黄の合計含有量が1ppm以下で且つ純
度が99.999%以上の高純度銅を得る技術がほぼ完成され
た。本発明によればかような高純度銅の鋳造材を,その
高純度を維持したまま粗大結晶粒をもつ線材に加工する
点に特徴があり,このためには,通常行われている熱間
加工を省略する。
一般に,熱間加工を採用すれば鋳組織がつぶされ,ま
た再結晶温度以上での熱間での加工を繰り返すので,比
較的微細な結晶粒が集合した材料となり,またその後の
冷間加工において均一な歪を与えられるような適当な加
工率をもって冷間加工し,高温で焼鈍を施せば十分な結
晶成長を得ることができる。しかし熱間加工を採用すれ
ば不純物混入は避けられず本発明が対象とするような高
純度材は製造できない。しかし,鋳造材を直接冷間加工
する場合には,結晶方位の異なる比較的大きな鋳造組織
を再結晶温度以下の温度で加工することになるので,各
結晶粒に対し均一な加工歪を与えることができない。従
って,これを高温焼鈍しても各結晶粒における再結晶の
挙動が相互に異なり,粗大結晶粒だけの組織とすること
は困難となる。
本発明は,鋳造により得られた高純度銅材料を低温で
中間焼鈍工程を入れることにより,熱間加工を省略した
冷間加工だけでも,最終焼鈍時に結晶粒を粗大化させる
ことを特徴とする。
先ず,本発明においては鋳造組織をもつ鋳造材(好ま
しくは連鋳材)に対して熱間加工を省略して一次冷間新
鮮を行なったうえ中間焼鈍を実行することにより鋳造組
織を完全につぶし,特定方位をもった微細な再結晶組織
(一次再結晶)とする。この一次再結晶は,微細であれ
ばあるほど,以後の工程で結晶方位の制御がし易くなり
また粗大化にも有利である。したがって一次冷間伸線の
加工率は充分に高くする必要がある。すなわち一次冷間
伸線の加工率が70%未満では中間焼鈍での再結晶温度が
高くなり,また微細な再結晶粒を十分に得ることができ
ない。しかし,95%を超える加工率では,再結晶温度は
低下するが断線の危険性が増し生産性が低下するので,7
0〜95%の加工率とするのがよい。中間焼鈍における焼
鈍温度は150℃程度が高純度銅の再結晶温度の下限とな
り,これ以上の焼鈍温度を必要とする。しかし,600℃を
超えると結晶粒が急激に増大してこの段階で二次再結晶
が形成されてしまう。したがって,150〜600℃の範囲の
焼鈍温度とするのがよく,この温度範囲で10分以上保持
すればよい。10分以内では十分な再結晶粒は得られな
い。この保持時間は焼鈍温度とも関係するがあまり長い
と結晶粒が粗大化するので180分以内とするのがよい。
また焼鈍温度からの冷却過程での結晶粒の成長を抑える
目的で焼鈍温度から急冷するのがよい。なお,この中間
焼鈍は,酸化や不純物の混入を回避するために不活性ガ
ス雰囲気下または真空中で実施する必要がある。
このようにして得られた微細な一次再結晶の焼鈍材
を,本発明によれば最終製品線径まで冷間伸線(二次冷
間伸線)し,最終焼鈍するのであるが,この二次冷間伸
線によって焼鈍材に適切な歪が付与され,最終焼鈍では
粗大化した二次再結晶粒が得られる。二次冷間伸線の加
工率は最終線径とも関係するが,80%以上であれば十分
である。なお一次および二次の二回の冷間伸線で最終製
品線径まで線径を減少するのに無理がある場合には,二
回目の冷間伸線のあと更に前記同様の中間焼鈍を挟んだ
うえ最終の冷間伸線を行ってから最終焼鈍を実施すれば
よい。最終焼鈍においては600℃以上の温度に1分以上
加熱することによって,十分に粗大化した二次再結晶が
得られる。しかし950℃を超える温度で焼鈍すると線材
が軟化して相互に接着するような事態も生ずるので950
℃以下とするのがよい。なお,この最終焼鈍も中間焼鈍
と同様に不活性ガス雰囲気下または真空中で実施する必
要がある。
以上のようにして,本発明によると銀と硫黄の含有量
が1ppm以下で純度が99.999%以上の純銅からなり結晶粒
が粗大化して,細線の場合にはその結晶の最大径が線径
を超えるような銅線材を得ることもでき,音響機器用の
新規且つ優れた材料を提供できる。
〔実施例1〕 連続鋳造により製造された純度が99.9999%以上で,
銀と硫黄の合計含有量が1ppm以下の高純度銅鋳造線を直
径5mmまで加工率約79%で冷間伸線加工(一次冷間伸
線)し,窒素ガス雰囲気下で300℃×1時間の焼鈍(中
間焼鈍)を行った。焼鈍温度からは徐冷した。次いでこ
の焼鈍材を直径1mmまで加工率約99%で冷間伸線加工
(二次冷間伸線)し,窒素ガス雰囲気下で900℃×1時
間の最終焼鈍を行った。得られた線材の結晶組織を調べ
たところ平均結晶粒径0.4mmの巨大結晶粒を有するもの
であった。第1図は,該線材の軸と直角方向の断面の顕
微鏡写真を筆写したものである。
〔比較例1〕 最終焼鈍を500℃×1時間とした以外は,実施例1を
繰り返した。この場合は結晶粒の成長が少なく,得られ
た線材の平均結晶粒径は0.08mmでかつ混粒であった。
〔比較例2〕 中間焼鈍を100℃×1時間とした以外は,実施例1を
繰り返した。得られた最終焼鈍後の線材は平均結晶粒径
が0.02mmの微細な結晶粒であった。
〔比較例3〕 一次冷間伸線の加工率を約65%として6.5mmまで一次
冷間伸線した以外は,実施例1を繰り返した。得られた
最終焼鈍後の線材は平均結晶粒径が0.03〜0.04mmの微細
な結晶粒であった。
〔実施例2〕 中間焼鈍において焼鈍温度から水冷した以外は実施例
1を繰り返した。得られた最終焼鈍後の線材は平均結晶
粒径が0.5mmの巨大結晶粒を有するものであった。第2
図はその顕微鏡写真を筆写したものである。
〔比較例4〕 中間焼鈍を行わずに,実施例1と同様に一次冷間伸線
および二次冷間伸線し,最終焼鈍した。得られた線材は
平均結晶粒径が0.02mmであった。第3図はその顕微鏡写
真を筆写したものである。
以上の実施例にも見られるように,本発明法によれ
ば,熱間加工を省略しても,一次結晶粒に対して20〜25
倍にも巨大化した二次結晶粒をもつ線材を得ることがで
き,音響機器用に適した高音質線材を提供することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明によって得られた高純度銅線の線軸に直
角な断面の結晶構造を示す図,第2図は同じく本発明に
よって得られた他の高純度銅線の線軸に直角な断面の結
晶構造を示す図,第3図は比較例によって得られた高純
度銅線の線軸に直角な断面の結晶構造を示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 倉持 周志 東京都千代田区丸の内1丁目8番2号 同和鉱業株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−134143(JP,A) 特開 昭62−202065(JP,A) 特開 昭60−248873(JP,A) 特開 昭62−89853(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】銀と硫黄の合計含有量が1ppm以下で且つ純
    度が99.999%以上の高純度銅からなる鋳造材料を熱間加
    工を省略して冷間伸線することにより該高純度を保持し
    た線材に加工するにさいし,該鋳造材料を加工率70%〜
    95%で一次冷間伸線し,不活性ガス雰囲気下または真空
    中で150℃〜600℃の温度範囲で中間焼鈍し,最終製品線
    径まで二次冷間伸線したあと,不活性ガス雰囲気下また
    は真空中で600℃〜950℃の温度範囲で最終焼鈍を行うこ
    とを特徴とする粗大結晶粒からなる高純度銅線の製造
    法。
  2. 【請求項2】中間焼鈍は,焼鈍温度から急冷する請求項
    1に記載の高純度銅線の製造法。
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