JP2609205B2 - 金属管の曲げ加工方法 - Google Patents

金属管の曲げ加工方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、角パイプや小径管や多
重管等の金属管の曲げ加工方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】自動２輪車のエキゾーストパイプは、外
観向上の為、表面処理が施されており、排気熱により表
面処理層の変色を防ぐために２重管となっている。
【０００３】従来、このような多重管を曲げ加工する際
には、内外の金属管の座屈を防止し且つ各金属管の間隔
を所定寸法に保持するために、各金属管間の隙間に低融
点金属や砂等の粒体から成る各種の充填剤を封入して曲
げ加工を行っている。
【０００４】しかしながら、充填剤として低融点金属を
用いたものは加工後の排出が難しく、後処理が面倒にな
って加工コストが高くなり、砂等の粒体を用いた場合も
曲げ加工時の圧力で部分的に固塊化して排出が難しく、
また加工後、金属管表面に凹凸が残り外観を損なうこと
もある。
【０００５】このため曲げ加工後の排出が容易なワック
ス等も用いられているが硬度が充分でないので金属管が
偏平化したり、内管が偏心しやすくなる。また、各金属
管間の隙間に水を封入して氷結させた状態にて曲げ加工
を行う方法も提案されているが、この方法では水を氷結
するための冷凍装置や氷結状態を維持して曲げ加工を行
う低温作業場が必要で設備が大規模なものにならざるを
得ず、しかもそのような低温状態では低温脆性のため曲
げ加工が難しくなるという問題点もある。
【０００６】また、単層の金属管の曲げ加工に際して
は、一般に金属管内に数珠型の芯金を挿入して管の偏平
化を防止している。然し、この方法では芯金の調整に手
間がかかり、また、小径管では芯金を挿入できないた
め、上記した低融点金属や砂等の粒体から成る充填剤を
金属管内に充填して金属管の曲げ加工を行う場合もある
が、加工後の充填剤の排出が困難になるといった上記と
同様の問題を生じている。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の点に
鑑み、金属管の偏平化や多重管における内管の偏心を生
ずることなく常温で金属管の曲げ加工を行い得られ且つ
後処理も容易に行い得られるようにした金属管の曲げ加
工方法を提供することをその目的としている。
【０００８】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、
請求項１の発明は、金属管内に脂肪酸を主成分とする充
填剤を溶融した状態で充填し、金属管を常温で充填剤を
固形化した状態で曲げ加工し、その後充填剤を溶融排出
することを特徴とし、また、請求項２の発明は、径の異
なる複数の金属管を隙間を存して内外多重に配した多重
管から成る金属管の曲げ加工方法であって、脂肪酸を主
成分とする充填剤を溶融した状態で少なくとも各金属管
間の隙間に充填し、多重管を常温で充填剤を固形化した
状態で曲げ加工し、その後充填剤を溶融排出することを
特徴とする。
【０００９】この場合、曲げ加工する金属管の種類や加
工条件によっては、前記充填剤を脂肪酸に粉末添加剤を
混入したものとしても良く、更に、充填剤を複数の脂肪
酸を混合した複合脂肪酸を主成分とするものとしても良
い。この場合、複合脂肪酸はステアリン酸とパルミチン
酸とを８０：２０乃至１０：９０の重量比で混合したも
のとすることが望ましい。
【００１０】
【作用】脂肪酸は常温で固形化し、且つ固形化したとき
の硬度がワックス等よりも高いため、金属管の偏平化や
多重管における内管の偏心を抑制して金属管の常温での
曲げ加工を行い得られる。脂肪酸に粉末添加剤を混入す
れば固形化したときの硬度が上り、金属管の偏平化や内
管の偏心を最小限に抑えられる。また、脂肪酸は４０〜
８０℃で溶融するため、曲げ加工後に脂肪酸を簡単に排
出でき後処理が容易になる。
【００１１】尚、脂肪酸としては、パルミチン酸、ステ
アリン酸、ベヘニン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ア
ラキジン酸等の飽和脂肪酸や、オレイン酸、エルカ酸等
の不飽和脂肪酸を単独若しくは混合して使用でき、ま
た、粉末添加剤としては、炭酸カルシウム、タルク、酸
化チタン、珪藻土、カオリン、炭酸マグネシウム、活性
白土、シリカ、ベントナイト等の無機物粉末や、ポリエ
チレン、ポリプロピレン、ナイロン、テトロン等の有機
物粉末を使用できる。粉末添加剤を脂肪酸に５０重量％
以上混入すると溶融時の流動性が悪くなり、混入量は０
〜５０重量％、好ましくは２０〜４５重量％の範囲で金
属管の種類や加工条件に応じて調整する。
【００１２】また、上記の如くステアリン酸とパルミチ
ン酸とを８０：２０乃至１０：９０の重量比で混合した
複合脂肪酸は、低融点で且つ固形化したときの硬度が高
くなり、充填剤として好適である。
【００１３】
【実施例】図１は、外管Ｐ1と内管Ｐ2とから成る２重金
属管Ｐをロールベンダで曲げ加工する状態を示してい
る。
【００１４】ロールベンダは外周部に断面半円状の型溝
１ａとこれに連続して接線方向にのびる型溝を持つクラ
ンプ部１ｂとを有するロール型１と、前記クランプ部１
ｂとの間に２重金属管Ｐの端部を把持してロール型１と
一体に矢示Ａ方向に回動するクランプ型２と、曲げ加工
時に２重金属管Ｐの曲げ部分と直線部のつなぎ目に発生
するシワを防止するシワ防止型３と、前記シワ防止型３
に対向して設けられ所定圧力で２重金属管Ｐの直管部分
を保持しながら矢示Ｂの如くロール型１の接線方向にス
ライドするスライド圧力型４と、２重金属管Ｐ内部へ挿
入し直管部から曲げ加工部への変化点付近に位置させて
曲げ加工部の変形を防止する芯金５とにより構成されて
いる。
【００１５】図１（ａ）で示すようにシワ防止型３とス
ライド圧力型４とで保持した２重金属管Ｐの端部をロー
ル型１のクランプ部１ｂとクランプ型２とにより把持し
て、ロール型１及びクランプ型２をＡ方向に回動させる
と、２重金属管Ｐは図１（ｂ）に示す如くロール型１の
型溝１ａに沿って引張られながら曲げ加工される。この
際、２重金属管Ｐの曲げ加工外周部では引張り応力が生
じ内周部では圧縮応力が生じるため、曲げ加工部断面が
図２で示すように偏平形状に変形する。
【００１６】このような変形を最小限に防ぐために２重
金属管Ｐの外管Ｐ1と内管Ｐ2の隙間に充填剤Ｓを封入す
るが、この充填剤Ｓとして融点が４０〜８０℃で曲げ加
工後の排出が容易な脂肪酸を用い、以下の実験をおこな
った。
【００１７】まず、外径３５ｍｍ、肉厚１．２ｍｍのＳ
ＴＡＭ２９０Ｇ鋼管よりなる外管Ｐ1と、外径２５．４
ｍｍ、肉厚１．２ｍｍのＳＴＡＭ２９０Ｇ鋼管よりなる
内管Ｐ2とを３．６ｍｍの間隙をもって同心的に配し、
その一端を鋼板Ｐ3で封止して成る２重金属管Ｐの他方
の開放端より外管Ｐ1と内管Ｐ2の間隙に加熱溶融した各
種脂肪酸、各種脂肪酸に炭酸カルシウムを混入したもの
等を充填剤Ｓとして封入し、これを固形化した状態で、
常温で２重金属管Ｐを上記ロールベンダを用いて曲げ半
径８０ｍｍ、曲げ角度９５°に曲げ加工した。また、比
較例としてパラフィン、ワックス、水を充填剤として同
様の実験を行った。その結果は表１に示すようになっ
た。
【００１８】
【表１】
【００１９】比較例１の１４５°Ｆパラフィンは加熱溶
融した場合の流動性は良いものの固形状態での硬度が充
分でなく変形しやすい。また比較例２のように炭酸カル
シウム等の粉末添加剤を混入した１４５°Ｆパラフィン
は硬度は向上するものの混和性が劣りすぐに分離してし
まうため均一に溶融して充填することができない。比較
例３のワックスも融点が８０℃程度以下のものは固形化
状態での硬度が充分ではなく、融点が高くなると常温で
の固形化が早すぎて充填しづらい、また価格も脂肪酸と
比較して高い。比較例４の水も従来例で示した不具合の
他に、曲げ加工時に氷が割れて金属管Ｐの表面に凹凸が
出来るという問題点がある。
【００２０】これに対して、充填剤として、パルミチン
酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸を用いたもの
は偏平率が若干劣るが加熱溶融した場合の流動性が非常
に良く曲げ加工後の排出が容易である。また、これらの
脂肪酸に炭酸カルシウムの粉末を添加剤として重量比４
０％で混入したものは偏平率が３．５％前後と非常にす
ばらしく、加熱溶融した場合の流動性は脂肪酸のみの充
填剤に比較して若干劣るものの充分実用の範囲であっ
た。
【００２１】また、充填剤として上記実施例の如く複数
の脂肪酸を混合して成る複合脂肪酸を用いれば、１種類
の脂肪酸を用いる場合よりも充填剤の融点を下げ且つ固
形化時の硬度を上げることができる。例えば、ステアリ
ン酸とパルミチン酸とを混合した場合、ステアリン酸と
パルミチン酸との重量比に応じて融点は図３（ａ）に示
す如く変化し、硬度は図３（ｂ）に示す如く変化する。
従って、ステアリン酸とパルミチン酸とを８０：２０乃
至１０：９０の重量比で混合すればショアー硬度が約４
０以上で融点が比較的低い、良好な充填剤を得られる。
特に、ステアリン酸とパルミチン酸との混合重量比を４
０：６０乃至２０：８０にすれば、ショアー硬度が約６
０以上で融点が約５５℃以下になり、充填剤として最適
である。
【００２２】尚、本実施例では脂肪酸、または脂肪酸に
粉末添加剤を混入させたものを、２重金属管の各金属管
の間隙に充填した例を示したが、本発明は、これに限定
されるものではなく、３重金属管や４重金属管等の多重
金属管にも適用できることはいうまでもない。また、角
パイプや小径管等の単層の金属管の曲げ加工に際して
も、金属管内に上記の如き充填剤を充填することで良好
な結果が得られる。
【００２３】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、曲げ
加工部の偏平化や多重管における内管の偏心を最小限に
防いで常温で金属管の曲げ加工を行うことができ、水を
氷結させて曲げ加工を行う場合のような大規模な装置を
必要とせず、而も加工後の後処理も容易になり、加工コ
ストの大幅な削減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 （ａ）（ｂ）本発明曲げ加工方法の１実施例
を示した図
【図２】 図１（ｂ）のII−II線断面図
【図３】 （ａ）（ｂ）ステアリン酸とパルミチン酸と
の混合重量比に対する融点と硬度の変化を示す図
【符号の説明】
Ｐ ２重金属管 Ｐ1 外管 Ｐ2 内管 Ｓ 充填剤
フロントページの続き (72)発明者 中島 眞吾 大阪府大阪市都島区毛馬町５丁目４−10 −101 (56)参考文献 特開 昭56−111526（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−56116（ＪＰ，Ａ) 特開 昭54−28767（ＪＰ，Ａ)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 金属管内に脂肪酸を主成分とする充填剤
    を溶融した状態で充填し、金属管を常温で充填剤を固形
    化した状態で曲げ加工し、その後充填剤を溶融排出する
    ことを特徴とする金属管の曲げ加工方法。
  2. 【請求項２】 径の異なる複数の金属管を隙間を存して
    内外多重に配した多重管から成る金属管の曲げ加工方法
    であって、脂肪酸を主成分とする充填剤を溶融した状態
    で少なくとも各金属管間の隙間に充填し、多重管を常温
    で充填剤を固形化した状態で曲げ加工し、その後充填剤
    を溶融排出することを特徴とする金属管の曲げ加工方
    法。
  3. 【請求項３】 前記充填剤は脂肪酸に粉末添加剤を混入
    したものであることを特徴とする請求項１又は２に記載
    の金属管の曲げ加工方法。
  4. 【請求項４】 前記充填剤は複数の脂肪酸を混合した複
    合脂肪酸を主成分とすることを特徴とする請求項１乃至
    ３の何れか１項に記載の金属管の曲げ加工方法。
  5. 【請求項５】 前記複合脂肪酸はステアリン酸とパルミ
    チン酸とを８０：２０乃至１０：９０の重量比で混合し
    たものであることを特徴とする請求項４に記載の金属管
    の曲げ加工方法。
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