JP2607927B2 - 感圧複写材料 - Google Patents

感圧複写材料

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は安価である発色速度の優れた感圧複写材料に
関する。
[従来の技術] 従来から、無色の電子供与性発色剤(以下「発色剤」
と呼称)を溶液状態でマイクロカプセル皮膜内に内蔵さ
せて紙の一面に塗布し、他の紙の一面に前記発色剤と反
応して発色させる性質を有する酸性の無機材料、カルボ
ン酸のような電子受容性物質(以下「顕色剤」と呼称)
を塗布し、使用に際しこれらの各面を対向させて重ね合
わせ、加圧することにより複写記録をとる形式の記録材
料、すなわち感圧複写材料は公知である。
この種の記録材料の複写記録機構は、筆圧、タイプ圧
等の圧力によりマイクロカプセル皮膜を破壊し、発色剤
溶液を放出し、発色剤が対向し配置された紙の表面に塗
布された顕色剤と接触して発色するものである。
この種の発色機能を有するマイクロカプセルや顕色剤
などの各塗布材料を、1枚の紙の片面に塗布した記録材
料も知られている。
これらの記録材料に使用される発色剤溶液は、電子供
与性発色材料を1種または2種以上の疎水性溶剤に溶解
した溶液である。ここで使用される疎水性溶剤は以下の
要件を具備することが必要である。すなわち、 毒性がないこと 不快臭が無いこと 無色であるかもしくはごく薄い淡色であること 発色剤の溶解性がよく溶液の安定性があること マイクロカプセル化が容易であること マイクロカプセルの貯蔵安定性があること 発色反応を妨げず発色速度が早いこと 発色像ににじみがなく、かつ長期保存後でも鮮明な
発色像が得られること 安価であること などである。
従来この種の記録材料の溶剤として、フエニルキシリ
ルエタン、フエニルエチルフエニルエタンのようなジア
リルアルカン、アルキルナフタレン油、アルキルビスフ
エニル、部分水素添加ターフエニルなどの芳香族環を複
数個有する芳香族炭化水素、または塩素化パラフインな
どが使用されている。
しかしこれらの溶剤は高価であり、かつ得られた感圧
複写材料は発色速度が必ずしも満足できるものではな
い。
[発明が解決しようとする課題] 本発明は従来の感圧複写材料の有するこれらの問題点
を解決し、発色性能に優れ、かつ安価な感圧複写材料を
提供するものである。
すなわち、本発明の感圧複写材料は、前記諸特性を満
たした特定の溶剤と、顕色剤の特定された組み合わせに
より得られるもので、特に従来の感圧複写材料の欠点で
あった低温発色速度を改善した感圧複写材料を提供する
ものである。
[課題を解決するための手段] すなわち本発明は電子受容性顕色剤および該顕色剤に
接触して発色する電子供与性発色剤を溶解して成る発色
剤溶液を用いた感圧複写材料に於いて該溶液の溶剤が、 (a)常圧換算の沸点が260℃以上で40℃における粘度
が3cSt以上の非縮合型または縮合型の芳香族環を少なく
とも2個有する芳香族炭化水素および/または40℃にお
ける粘度が3cSt以上の塩素化パラフイン油を50〜95容量
%、 (b)石油を蒸留して得られる灯油留分を5〜50容量%
から成り、 かつ該顕色剤が多価金属化カルボキシ変性テルペンフ
エノール樹脂、またはその誘導体から成ることを特徴と
する感圧複写材料 に関するものである。以下に本発明をさらに詳しく説明
する。
上記(b)項の石油を蒸留して得られる灯油留分とし
ては、石油精製工程から得られる通常の灯油留分を用い
ることができるが、溶剤として用いるために特に臭気改
善の為に水素精製したものが好ましい。灯油留分と呼称
されるものであればいずれでも使用できる。しかし沸点
170℃以上の成分を主とする灯油留分が臭気の面から特
に好ましい。なお、以下本明細書では特に言及しない限
り沸点とは常圧換算の沸点を示す。
上記(a)項の沸点260℃以上でかつ40℃における粘
度が3cSt以上の非縮合型または縮合型の芳香族環を少な
くとも2個有する芳香族炭化水素の例としては、フエニ
ルキシリルエタン、フエニルエチルフエニルエタン、フ
エニルクミルエタン、フエニル第2ブチルフエニルメタ
ンのようなジアリールアルカン、ジイソプロピルナフタ
レンのようなアルキルナフタレン、第2ブチルビフエニ
ル、イソプロピルジフエニルのようなアルキルまたはシ
クロアルキルビフエニル、部分水素添加ターフエニルな
どが挙げられる。
40℃における粘度が3cSt以上の塩素化パラフインとし
ては灯油留分または軽油留分から得られたノルマルパラ
フインの塩素化物などが用いられる。塩素化パラフイン
は粘度が上記範囲に入る限り塩素含有量、分子量などは
特に限定されない。これらは単独または混合して使用で
きる。
上記(a)項の成分は40℃における粘度が3cSt未満で
は、発色特性の改善が認められない。粘度の上限値は特
に限定されないが、余り高粘度になると灯油留分を混合
することによる相乗効果が見られにくいため好ましくな
い。かかる観点から通常40℃での粘度が100cStまでのも
のが使用される。
また非縮合型または縮合型の芳香族環を少なくとも2
個有する芳香族炭化水素の沸点が260℃未満ではそれが
分子量の小さいものとなり、そのため該化合物の蒸気圧
が高く、また臭気が大きくなるので好ましくない。
40℃における粘度が3cStより小さい灯油留分と、沸点
260℃以上でかつ40℃における粘度が3cSt以上の非縮合
型または縮合型の芳香族環を少なくとも2個有する芳香
族炭化水素または塩素化パラフイン油との混合割合は、
前者が5〜50容量%、後者が50〜95容量%、好ましくは
前者が5〜40容量%で後者が60〜95容量%の範囲であ
る。
前者が5容量%未満では発色性の改善が見られない。
同じく前者が50容量%を超える場合は発色剤の溶解性が
低下し実用的ではない。
本発明では顕色剤として多価金属化カルボキシ変性テ
ルペンフエノール樹脂またはその誘導体を用いることが
必要である。
現在感圧複写紙の顕色剤として一般的に使用されてい
るノボラック型フエノール樹脂などでは、たとえ本発明
の溶剤組成物であっても発色速度の優れた感圧複写紙は
得られない。
また多価金属カルボキシル変性テルペンフエノール樹
脂またはその誘導体としては、環状モノテルペン類とフ
エノール類を酸性触媒の存在下に縮合し、これにカルボ
キシル基を常法により導入した生成物を多価金属化して
得られる、多価金属化カルボキシル変性テルペンフエノ
ール樹脂などを例示できる。たとえば特開昭62−19486
号公報に開示のようにフエノールとα−ピネンとを三フ
ッ化ほう素触媒により縮合し、次いで金属ナトリウムの
存在下で炭酸ガスの導入により得られた共縮合樹脂をカ
ルボキシル化し、さらに塩化亜鉛等により多価金属化し
多価金属化カルボキシ変性テルペンフエノール樹脂が製
造される。この場合の多価金属としては同じく亜鉛、ア
ルミニウム、バリウム、錫、鉄、カルシウム、鉛などが
挙げられる。好ましくは亜鉛である。
なお、本発明の範囲以内でサリチル酸などの芳香族カ
ルボン酸またはその金属塩と溶液もしくは分散媒中で混
合または溶融混合して使用することもできる。
発色剤の具体的化合物を例示すると、トリアリールメ
タン系発色剤として、3,3−ビス(p−ジメチルアミノ
フエニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタル
バイオレットラクトン、以下「CVL」という)、3,3−ビ
ス(p−ジメチルアミノフエニル)フタリド、3−(p
−ジメチルアミノフエニル)−3−(1,2−ジメチルイ
ンドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルア
ミノフエニル)−3−(2−メチルインドール−3−イ
ル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフエニル)−
3−(2−フエニルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−
5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス−(1,2−ジメ
チルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタ
リド、3,3−ビス−(3−エチルカルバゾール−3−イ
ル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス−(2
−フエニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミ
ノフタリド、3−p−ジメチルアミノフエニル−3−
(1−メチルピロール−2−イル)−6−ヂメチルアミ
ノフタリド等がある。
ジフエニルメタン系発色剤としては、4,4′−ビス−
ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−
ハロフエニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロ
ロフエニルロイコオーラミン等がある。
キサンテン系発色剤としては、ローダミンB−アニリ
ノラクタム、ローダミンB(p−ニトロアニリノ)ラク
タム、ローダミンB(p−クロロアニリノ)ラクタム、
3−ジメチルアミノ−6−メトキシフルオラン、3−ジ
エチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチル
アミノ−7−クロロ−6−メチルフルオラン、3−ジエ
チルアミノ−7−(アセチルメチルアミノ)フルオラ
ン、3−ジエチルアミノ−7−(ジベンジルアミノ)フ
ルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(メチルベンジル
アミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(クロ
ロエチルメチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミ
ノ−7−(ジエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチル
アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等があ
る。
チアジン系発色剤としては、ベンゾイルロイコメチレ
ンブルー、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー等
がある。
スピロピラン系発色剤としては、3−メチル−スピロ
−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラ
ン、3,3′−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン、3−
ベンジル−スピロ−ジナフトピラン、3−メチル−ナフ
ト 3−メトキシ−ベンゾ)−スピロピラン、3−プロ
ピル−スピロ−ジベンゾジピラン等がある。
本発明の感圧複写材料、例えば感圧複写紙を例にと
り、その一般的な製造法を述べると、上記発色剤を0.1
〜10重量%の割合で本発明の溶剤組成物に溶解した溶液
をゼラチンおよびアラビヤゴムの混合水溶液に乳化分散
させ、次いでコアセルベーシヨン法により乳化した油滴
の回りにゼラチン膜を形成させる。最近では、In−Situ
重合法、界面重合法などにより、合成樹脂膜でマイクロ
カプセル化する方法も広く用いられる。
かくして生成した微細油滴のカプセルエマルジヨンを
紙に塗布し、この塗布面と対向する紙の面または塗布面
に層状に上記顕色剤を塗布することにより、感圧複写紙
のような感圧複写材料が製造される。
[実施例] 次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれ
らの実施例のみに限定されるものではない。
実験例−A 沸点範囲160〜252℃の石油留分をニッケル−タングス
テン系触媒を用いて水素化精製した後蒸留し、沸点範囲
175〜195℃の灯油留分を得た(40℃における粘度=1.2c
St)。
芳香族環を2個有する芳香族炭化水素油としてフエニ
ルキシリルエタン(沸点290〜305℃、40℃における粘度
=5.1cSt)を用い、上記灯油留分を混合し、以下に示す
ような発色剤溶液を得、これについて発色剤溶液の安定
性、感圧複写紙とした場合の発色速度を比較した。この
中で溶剤A−1は対照例、A−2、A−6は比較例、A
−3〜A−5は本発明の実施例である。
発色剤溶液の安定性は加熱したクリスタルバイオレッ
トラクトン(CVL)5%溶液を調製し、室温に5時間放
置したときのCVL結晶析出の有無によった。また発色速
度の測定法は次によった。すなわちCVLが5%溶解した
溶液を、尿素およびホルマリンを用いたIn−Situ重合法
によりマイクロカプセル化し、得られたマイクロカプセ
ルエマルジョンに糊料、保護剤を加え、マイヤーバーを
用いて上質紙に塗布し、感圧複写紙の上葉紙を得た。ま
た顕色剤として、3,5−ジ−(α−メチルベンジル)サ
リチル酸亜鉛塩を塗布した下葉紙およびフエノールとα
−ピネンとの縮合樹脂を炭酸ガスによりカルボキシル化
して、さらに塩化亜鉛と反応させることにより製造した
亜鉛化カルボキシ変性テルペンフエノール樹脂を塗布し
た下葉紙を準備した。上葉紙のマイクロカプセル塗布面
を、下葉紙の顕色剤と重ね合わせ、衝撃式印刷機を用い
て発色させた。
発色後(衝撃後)3秒および60秒後の下葉紙の反射率
を反射分光光度計を用いて測定し、発色濃度を求めた。
60分後の発色濃度に対する、3分後の発色濃度の比をも
って発色速度とした。この測定は−3℃で行った。結果
を表−1に示した。
なお、表に記載の発色速度は、フエニルキシリルエタ
ン単独の場合に対する比(相対値)で表わした。以下の
実験例では何れも対応する2環芳香族炭化水素単独の場
合の発色速度に対する比(相対値)で示した。
表−1から分かるように本発明の溶剤組成物は、フエ
ニルキシリルエタン単独の場合に比べ発色速度が大きく
発色剤溶液の安定性も優れている。
実験例−B 2環芳香族炭化水素油として、ジイソプロピルナフタ
レン(沸点292〜305℃、40℃における粘度=6.3cSt)を
用い、実験例−Aと同様な方法で発色剤溶液の安定性、
感圧複写紙の発色速度を求めた。結果を表−2に示し
た。表中、B−1は対照例、B−2、B−5は比較例、
B−3、B−4は実施例である。実験例−Aと同様に本
発明の溶剤組成物は発色速度、発色剤溶液の安定性の何
れも優れている。
実験例−C 2環芳香族炭化水素油として、水素化ターフエニル
(沸点330〜390℃、40℃における粘度=24.0cSt)を用
いて、実験例−Aと同様に発色剤溶液の安定性、感圧複
写紙の発色速度を求めた。結果を表−3に示した。C−
1は対照例、C−2とC−4は比較例、C−3は実施例
である。実験例−Aと同様に本発明の溶剤組成物は発色
速度、発色剤溶液の安定性、何れも優れている。
実験例−D 塩素化パラフイン油として、味の素(株)製の商品名
「エンパラK−45」(40℃における粘度=51cSt)を用
い、実験例−Aと同様に発色剤溶液の安定性、感圧複写
紙の発色速度を求めた。結果を表−4に示した。表中、
D−1は対照例、D−2とD−4は比較例、D−3は実
施例である。実験例−Aと同様に本発明の溶剤組成物は
発色速度、発色剤溶液の安定性、いずれも優れていた。
実験例−E 比較例として次の実験を行った。
2環芳香族炭化水素油として、フエニルエチルフエニ
ルメタン(沸点290〜295℃、40℃における粘度2.7cSt)
を用い、実験例−Aと同様にして感圧複写紙の発色速
度、発色剤溶液の臭気を求めた。結果を表−5に示し
た。本実験例の場合、粘度の低い水素添加低重合体を加
えても発色速度の改善は認められず、臭気もよくない。
実験例−F 比較例として、顕色剤に市販のノボラック型パラフエ
ニルフエノール樹脂を用い、実験例−Aと同様に2環芳
香族炭化水素油として、フエニルキシリルエタンを用
い、感圧複写紙の発色速度を求めた。結果を表−6に示
した。顕色剤としてサリチル酸誘導体の亜鉛塩または多
価金属化カルボキシ変性テルペンフエノール樹脂を用い
た場合とは反対に、発色速度が低下することが分かる。
以上のように本発明の感圧複写紙は低温における発色
速度に優れている。
また上記のように特定に粘度を有する炭化水素を特定
の割合で混合した溶剤組成物と、特定の顕色剤を組み合
わせることにより初めて染料溶液の安定性と低温におけ
る優れた発色性能が得られるが、このことは予測不能の
ことであった。
[発明の効果] 本発明の溶剤は従来の芳香族炭化水素の単独溶剤より
も優れた発色速度を有する。また、これに配合する灯油
留分は安価であることから、本発明によれば安価な感圧
複写材料が得られる。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電子受容性顕色剤および該顕色剤に接触し
    て発色する電子供与性発色剤を溶剤に溶解して成る発色
    剤溶液を用いた感圧複写材料に於いて該溶液の溶剤が、 (a)常圧換算の沸点が260℃以上で40℃における粘度
    が3cSt以上の非縮合型または縮合型の芳香族環を少なく
    とも2個有する芳香族炭化水素および/または40℃にお
    ける粘度が3cSt以上の塩素化パラフイン油を50〜95容量
    %および (b)石油を蒸留して得られる灯油留分5〜50容量%か
    ら成り、 かつ該顕色剤が多価金属化カルボキシ変性テルペンフエ
    ノール樹脂またはその誘導体から成ることを特徴とする
    感圧複写材料。
  2. 【請求項2】前記灯油留分が、沸点170℃以上の成分を
    主として含むことを特徴とする特許請求の範囲第1項記
    載の感圧複写材料。
  3. 【請求項3】前記多価金属が亜鉛である特許請求の範囲
    第1項記載の感圧複写材料。
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