JP2604674B2 - ポリアリーレンスルフィドの製造装置 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィドの製造装置

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JP2604674B2
JP2604674B2 JP4291909A JP29190992A JP2604674B2 JP 2604674 B2 JP2604674 B2 JP 2604674B2 JP 4291909 A JP4291909 A JP 4291909A JP 29190992 A JP29190992 A JP 29190992A JP 2604674 B2 JP2604674 B2 JP 2604674B2
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陽一 今井
俊幸 平野
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  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリアリーレンスルフ
ィド(以下ではPASと言うことがある)の製造装置に
関し、特には高分子量のPASを製造するための装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】PASの基本的な製造方法としては、ジ
ハロ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とを、有機アミ
ド溶媒中で反応させる方法が知られている(特公昭45
−3368号公報)。しかし、この方法で製造されたP
ASは分子量が低いので、従来、熱架橋処理によって高
分子量化されていた。しかし、架橋されたPASは、フ
ィルム、シート、繊維等へと加工することが困難であ
る。
【0003】熱架橋によらない高分子量PASが近年製
造されるようになってきている。そのような高分子量P
ASは、フィルム、シート、繊維等に加工した場合の機
械物性に優れ、また射出成形の分野においても溶融加工
時の低剪断応力域で高い流動性を示すこと、及び色が明
るい等の利点を有するので、需要が増大している。
【0004】重合のみによって高分子量PASを製造す
るための種々の改善された方法が知られている。基本的
には、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物のモル
比を高く(たとえば0.980〜1.01)設定するこ
とが必要とされている。
【0005】しかし、重合温度を230℃以上に高くす
ると、高モル比の反応系は不安定となり、高分子量のP
ASがもはや得られなく、またせっかく生成したPAS
が解重合してチオフェノールを生じる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高分子量の
PASを製造でき、かつ生成したPASの解重合が少な
いところのPASの製造装置を提供することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】 本発明者らは、高分子
量PASの製造に関する上記問題を解決するために、重
合メカニズムをつぶさに吟味した。その結果、液相の大
気圧下における沸点を超える温度に液相を加熱し、かつ
反応時に閉じた反応缶の気相部分を冷却することによ
り、上記問題を全て改善でき、かつ、生成したPASの
解重合を回避できる高分子量PASの製造装置を見出
し、本発明に到達した。
【0008】即ち、本発明は、有機アミド系溶媒中でア
ルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させて
ポリアリーレンスルフィドを製造する装置において、
(A)液相の大気圧下における沸点を超える温度に液相
を加熱せしめる機構、及び(B)閉じた反応缶の気相部
分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮さ
せ、これを液相に還流せしめる機構を有することを特徴
とする、ポリアリーレンスルフィドの製造装置である。
【0009】PASの重合は一般に180〜350℃の
範囲で行われ、反応缶を加熱してやらねばならない。従
って、熱経済のために、反応缶あるいは反応装置全体を
保温材で覆うのが常識である。ところが、本発明では、
反応缶の気相部分をむしろ冷却することにより高分子量
のPASを容易に得ることができ、PASの解重合が少
なくなる。もちろん、本発明の装置は従来の装置に比べ
て熱経済的には不利であるが、上記の利点が欠点を補っ
て余りある。
【0010】本発明の装置おいて還流される液体は、水
とアミド系溶媒の蒸気圧差の故に、液相バルクに比較し
て水含有率が高い。この水含有率の高いリフラックス液
は、反応溶液上部に水含有率の高い層を形成する。その
結果、残存のアルカリ金属硫化物(たとえばNa
2 S)、ハロゲン化アルカリ金属(たとえばNaC
l)、オリゴマー等が、その層に多く含有されるように
なる。従来法においては230℃以上の高温下で、生成
したPASとNa2 S等の原料及び副生成物とが均一に
混じりあった状態では、高分子量のPASが得られない
ばかりでなく、せっかく生成したPASの解重合も生
じ、チオフェノールの副生成が認められる。しかし、本
発明では、反応缶の気相部分を積極的に冷却して、水分
に富む還流液を多量に液相上部に戻してやることによっ
て上記の不都合な現象が回避でき、反応を阻害するよう
な因子を真に効率良く除外でき、高分子量PASを得る
ことができるものと思われる。但し、本発明は上記現象
による効果のみにより限定されるものではなく、気相部
分を冷却することによって生じる種々の影響によって、
高分子量のPASが得られるのである。
【0011】閉じた反応缶の気相部分を冷却する手段
は、外部冷却あるいは内部冷却であることができる。好
ましくは、(a)反応缶の外側上部に巻きつけた外部冷
却コイル、(b)反応缶の内側上部に取付けた内部冷却
コイル、(c)反応缶の外側上部に取付けた冷媒ジャケ
ット、(d)反応缶の外側上部に液体又は気体を直接に
散布又は吹きつけるユニット、又は(e)たとえば反応
缶の上に取付けた、リフラックスコンデンサーである。
しかし、反応缶内の還流量を増大させる効果がある限
り、他の公知手段を用いることもできる。かかる冷却手
段が、反応缶の気相部分全体に亘る必要はない。冷却効
果が液相部分に達すると熱経済的に不利であるので、気
相部分の上方のみを冷却することが好ましく、またそれ
で十分である。また、液相を加熱せしめる機構として
は、例えば、図1〜5に示される内部加熱コイル、熱媒
ジャケット等が挙げられる。
【0012】反応缶壁面又は内部冷却手段壁面で凝縮し
た水/アミド系溶媒混合物は、該壁面を伝って落下して
反応缶内の液相上部に達し、あるいは適宜の手段により
集められて反応缶内の液相上部に導かれる。
【0013】一方、液相バルクの温度は、所定の一定温
度に保たれ、あるいは所定の温度プロフィールに従って
コントロールされる。一定温度とする場合、230〜2
75℃の温度で0.1〜20時間反応を行うことが好ま
しい。より好ましくは、240〜265℃の温度で1〜
6時間である。より高い分子量のPASを得るには、2
段階以上の反応温度プロフィールを用いることが好まし
い。第1段階は195〜240℃の温度で行うことが好
ましい。温度が低いと反応速度が小さすぎ、実用的では
ない。240℃より高いと反応速度が速すぎて、十分に
高分子量なPASが得られないのみならず、副反応速度
が著しく増大する。第1段階の終了は、重合反応系内ジ
ハロ芳香族化合物残存率が1モル%〜40モル%、且つ
分子量が3,000〜20,000の範囲内の時点で行
うことが好ましい。より好ましくは、重合反応系内ジハ
ロ芳香族化合物残存率が2モル%〜15モル%、且つ分
子量が5,000〜15,000の範囲である。残存率
が40モル%を越えると、第2段階の反応で解重合など
副反応が生じやすく、一方、1モル%未満では、最終的
に高分子量PASを得難い。その後昇温して、最終段階
の反応は、反応温度240〜270℃の範囲で、1時間
〜10時間行うことが好ましい。温度が低いと十分に高
分子量化したPASを得ることができず、又270℃よ
り高い温度では解重合等の副反応が生じやすくなり、安
定的に高分子量物を得難くなる。
【0014】実際の操作としては、先ず不活性ガス雰囲
気下で、アミド系溶媒中のアルカリ金属硫化物中の水分
量が所定の量となるよう、必要に応じて脱水又は水添加
する。水分量は、0.5〜2.5モル(アルカリ金属硫
化物1モル当り)であることが好ましい。0.5モル未
満では、反応速度が速すぎ、副反応等の好ましくない反
応が生じるし、2.5モルを越えると反応速度が小さく
なり、しかも反応終了後の濾液中にフェノール等の副生
成物量が増大し、重合度も上がらない。ジハロ芳香族化
合物は最初から反応系に入れておいても良いし、系内水
分量調整時又は調整後に加えても良い。使用量はアルカ
リ金属硫化物1モルに対して、0.9〜1.1モルの範
囲が高分子量PASを得るには望ましい。
【0015】反応時の気相部分の冷却は、一定温度での
1段反応の場合では、反応開始時から行うことが望まし
いが、少なくとも250℃以下の昇温途中から行わなけ
ればならない。多段階反応では、第1段階の反応から冷
却を行うことが望ましいが、遅くとも第1段階反応の終
了後の昇温途中から行うことが好ましい。冷却効果の度
合いは、通常反応缶内圧力が最も適した指標である。圧
力の絶対値については、反応缶の特性、攪拌状態、系内
水分量、ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物との
モル比等によって異なる。しかし、同一反応条件下で冷
却しない場合に比べて、反応缶圧力が低下すれば、リフ
ラックス量が増加して、反応溶液気液界面における温度
が低下していることを意味しており、その相対的な低下
の度合いが水分含有量の多い層と、そうでない層との分
離の度合いを示していると考えられる。そこで、冷却は
反応缶内圧が、冷却をしない場合と比較して低くなる程
度に行わなければならない。冷却の程度は、都度の使用
する装置、運転条件などに応じて、当業者が適宜設定で
きる。
【0016】本発明を、図面を参照しながら説明する。
図1は、(a) 反応缶の外側上部に巻きつけた冷却コイル
を有する装置を示す。反応缶1には配管8から反応原料
が仕込まれて液相を成し、該液相は攪拌手段2によって
攪拌される。反応缶の液相部分は、熱媒ジャケット3に
より被われ、ジャケット3に配管4から熱媒が流入し、
配管5より流出する。反応缶の液相部分には、内部加熱
コイル6が配置されており、この中にも熱媒が流入及び
流出する。反応缶の上部には、配管8から加圧用の窒素
を導入でき、放圧時にも窒素ガスが配管8から流出す
る。なお、硫化ソーダなどを仕込んだ後に、加熱脱水す
る際には、配管8から吸引する。重合反応終了後に、生
成したPASを含むスラリーは、配管9から取り出され
る。
【0017】反応缶の外側上部には、外部冷却コイル1
1が巻かれており、たとえば20〜90℃の冷媒、たと
えば水が配管13からコントロールバルブで流量を制御
されながら入り、配管12から流出する。従って、反応
缶の上方の気相部分は冷却され、気相の一部が凝縮し
て、反応缶の壁を伝って落下し、液相中に還流する。反
応缶の全体は、保温材10で被われている。
【0018】図2は、別の態様を示し、反応缶の内側上
部に内部冷却コイル21が取付けられている。図2にお
いて図1と共通の数字は、図1と同じ物を示す(以下の
図でも同様)。冷却コイル21の表面で凝縮した液体
は、冷却コイルを伝って下り、更に反応缶壁を伝って液
相に還流する。あるいは、冷却コイル21の表面で凝縮
し、落下する液滴を受ける樋を設け、集めた液体を液相
に還流させることもできる。
【0019】図3においては、反応管の外側上部に冷却
ジャケット31が取付けられている。
【0020】図4においては、配管42から水が供給さ
れ、ノズル41により反応缶の外側上部に直接に散布さ
れる。水は、多孔性の保温材サポートたとえばSUS性
スポンジ層44中をゆっくりと下方に流れ、配管43か
ら排出される。
【0021】図5においては、反応缶の上部には保温材
がなく、反応缶の壁がむき出しになっている。配管52
から加圧空気が供給され、ノズル51により反応缶の外
側上部に空気が吹きつけられる。
【0022】本発明に従う装置により製造されたPAS
を含むスラリーは、配管9より取出され、当業者にとっ
て公知の後処理法によって副生成物から分離され、乾燥
される。
【0023】本発明において使用する有機アミド系溶媒
は、PAS重合のために知られており、たとえばN‐メ
チルピロリドン(以下NMP)、N,N‐ジメチルホル
ムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチル
カプロラクタム等、及びこれらの混合物を使用でき、N
MPが好ましい。これらは全て、水よりも低い蒸気圧を
持つ。
【0024】本発明で用いられるアルカリ金属硫化物も
公知であり、たとえば、硫化リチウム、硫化ナトリウ
ム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及び
これらの混合物である。これらの水和物及び水溶液であ
っても良い。又、これらにそれぞれ対応する水硫化物及
び水和物を、それぞれに対応する水酸化物で中和して用
いることができる。安価な硫化ナトリウムが好ましい。
【0025】本発明で用いられるジハロ芳香族化合物
は、たとえば特公昭45‐3368号公報記載のものか
ら選ぶことができるが、好ましくはp‐ジクロロベンゼ
ンである。又、少量(20モル%以下)のジフェニルエ
ーテル、ジフェニルスルホン又はビフェニルのパラ、メ
タ又はオルトジハロ物を1種類以上用いて共重合体を得
ることができる。具体的には、m‐ジクロロベンゼン、
o‐ジクロロベンゼン、p,p′‐ジクロロジフェニル
エーテル、m,p′‐ジクロロジフェニルエーテル、
m,m′‐ジクロロジフェニルエーテル、p,p′‐ジ
クロロジフェニルスルホン、m,p′‐ジクロロジフェ
ニルスルホン、m,m′‐ジクロロジフェニルスルホ
ン、p,p′‐ジクロロビフェニル、m,p′‐ジクロ
ロビフェニル、m,m′‐ジクロロビフェニルである。
【0026】PASの分子量をより大きくするために、
1,3,5‐トリクロロベンゼン、1,2,4‐トリク
ロロベンゼン等のポリハロ化合物をp‐ジクロロベンゼ
ンに対して、好ましくは5モル%以下の濃度で使用する
こともできる。
【0027】又、他の少量添加物として、末端停止剤、
修飾剤としてのモノハロ化物を併用することもできる。
【0028】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に説明する。
【0029】実施例において、分子量は1−クロロナフ
タレンを移動層としてゲルパーミエーションクロマトグ
ラフィで210℃において測定した保持時間を、標準ポ
リスチレン分子量換算し、更にユニバーサルキャリブレ
ーション法で補正したピークトップ分子量である。装置
はセンシュー科学製SSC−7000を用いた。
【0030】
【実施例1】図1に示す外部冷却コイルを有する150
リットルオートクレーブを用いた。フレーク状硫化ソー
ダ(60.8重量%Na2 S)19.253kgと、N
−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略記する)4
5.0kgを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら204
℃まで昇温して、水4.442kgを留出させた。その
後オートクレーブを密閉して180℃まで冷却し、パラ
ジクロロベンゼン(以下p−DCB)と略記する)2
1.940kgとNMP18.0kgを仕込んだ。液温
150℃で窒素ガスで1kg/cm2 Gに加圧して昇温
を開始した。液温220℃で3時間攪拌しつつ、反応缶
上部の外側に巻きつけたコイルに20℃の冷媒を流し冷
却した。その後昇温して、液温260℃で3時間攪拌
し、次に降温させると共に反応缶上部の冷却を止めた。
反応缶上部を冷却中、液温が下がらないように一定に保
持した。反応中の最高圧力は、8.71kg/cm2
であった。得られたスラリーを常法により瀘過、温水洗
を繰り返し、120℃で4.5時間乾燥させて白色粉末
状の製品を得た。得られたポリフェニレンスルフィド
は、分子量が42,000であった。又、反応率(1−
(残存p−DCBの重量/仕込p−DCBの重量))
は、98.4%であった。尚、反応生成物中にチオフェ
ノールは認められなかった(チオフェノールの測定はガ
スクロマトグラフィを用いて行った)。
【0031】
【実施例2】図4に示す散水ノズルを有する4m3 オー
トクレーブを用いた。
【0032】フレーク状硫化ソーダ(60.3重量%N
2 S)513.4kgと、NMP1190kgを仕込
んだ。窒素気流下攪拌しながら204℃まで昇温して、
水111.3kgを留出させた。その後オートクレーブ
を密閉して180℃まで冷却し、p−DCB583.1
kgとNMP400kgを仕込んだ。液温150℃で窒
素ガスで1kg/cm2 Gに加圧して昇温を開始した。
液温215℃で5時間攪拌しつつ、反応缶上部に水をか
けて冷却を行った。その後昇温し、液温255℃で4時
間攪拌し、降温させると共に反応缶上部の冷却を止め
た。反応缶上部を冷却中、液温が下がらないように一定
に保持した。反応中の最高圧力は9.2kg/cm2
であった。得られたスラリーを常法により瀘過、温水洗
を繰り返し、130℃乾燥機で乾燥させて白色粉末状の
製品を得た。得られたポリフェニレンスルフィドは、分
子量が46、500であった。又、反応率は98.6%
であった。反応生成物中にチオフェノールは検出されな
かった。
【0033】
【実施例3】図5に示す空気吹き付けノズルを4個有す
る150リットルオークレーブを用いた。
【0034】60.8重量%Na2 Sを含有するフレー
ク状硫化ソーダ19.253kgと、NMP45.0k
gを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら204℃まで昇
温して、水4.074kgを留出させた。その後オート
クレーブを密閉して180℃まで冷却し、p−DCB2
1.940kgとNMP18.0kgを仕込んだ。液温
150℃で窒素ガスで1kg/cm2 Gに加圧して昇温
を開始した。液温240℃に昇温した時点から、20リ
ットル/分の流量で15℃の空気を8ヶ所のノズルから
反応缶上部に吹きつけて冷却した。液温250℃で2時
間攪拌を続け、降温させると共に反応缶上部の冷却を止
めた。反応缶上部を冷却中、液温が下がらないように一
定に保持した。反応中の最高圧力は8.89kg/cm
2 Gであった。得られたスラリーを常法により瀘過、温
水洗を繰り返し、120℃で4.5時間乾燥させて、白
色粉末状の製品を得た。得られたポリフェニレンスルフ
ィドは分子量が30,300であった。又、反応率は9
8.6%であった。反応生成物中にチオフェノールは検
出されなかった。
【0035】
【実施例4】図2に示す内部冷却コイルを有する150
リットルオークレーブを用いた。
【0036】60.3重量%Na2 Sを含有するフレー
ク状硫化ソーダ16.825kgと、NMP39.0k
gを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら204℃まで昇
温して、水3.627kgを留出させた。その後オート
クレーブを密閉して180℃まで冷却し、p−DCB1
9.206kgとNMP15.6kgを仕込んだ。液温
150℃で窒素ガスで1kg/cm2 Gに加圧して昇温
を開始した。215℃に液温を保持しつつ、6時間攪拌
した後、再度昇温した。220℃から、内部冷却コイル
に冷媒体(20℃)を流し冷却を行いながら、250℃
まで昇温させ、この温度で3時間攪拌を続けた。次に降
温と同時に、内部冷却コイルに冷媒を流すのを止めた。
反応中の最高圧力は、8.61kg/cm2 Gであっ
た。得られたスラリーを実施例1と同様に処理して、白
色粉末状の製品を得た。得られたポリフェニレンスルフ
ィドは分子量が44,500であった。又、反応率は9
9.2%であった。尚、反応生成物中にチオフェノール
は認められなかった。
【0037】
【実施例5】図3に示す冷媒ジャケットを有する2m3
オートクレーブを用いた。
【0038】フレーク状硫化ソーダ(60.8重量%N
2 S)256.7kgと、NMP600kgを仕込ん
だ。窒素気流下攪拌しながら204℃まで昇温して、水
57.6kgを留出させた。その後オートクレーブを密
閉して180℃まで冷却し、p−DCB293.1kg
とNMP200kgを仕込んだ。液温150℃で窒素ガ
スで1kg/cm2 Gに加圧して昇温を開始した。液温
215℃で4.5時間攪拌しつつ、ジャケットに冷媒
(20℃)を流し冷却を行った。その後昇温し、液温2
55℃で3時間攪拌し、降温させると共に反応缶上部の
冷却を止めた。反応缶上部を冷却中、液温が下がらない
ように一定に保持した。反応中の最高圧力は8.55k
g/cm2 Gであった。得られたスラリーを常法により
瀘過、温水洗を繰り返し、130℃乾燥機で乾燥させて
白色粉末状の製品を得た。得られたポリフェニレンスル
フィドは、分子量が48,300であった。又、反応率
は98.9であった。反応生成物中にチオフェノールは
検出されなかった。
【0039】
【比較例1】外部冷却コイルに冷媒を流さなかった以外
は、実施例1と同様の方法で重合を行った。反応中の最
高圧力は10.3kg/cm2 Gであった。得られたポ
リマーは分子量が27,500であり、反応率は99.
0%であった。又、反応生成物中には200ppmのチ
オフェノールが存在することが判明した。
【0040】
【比較例2】外部冷却コイルに270℃の熱媒を流すこ
と以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。反応
中の最高圧力は11.2kg/cm2 Gであった。得ら
れたポリマーは分子量22,000であり、反応率は、
99.1%であった。また、得られたポリマーは若干茶
色味を帯びた白色粉末であった。又、反応生成物中には
400ppmのチオフェノールが存在することが判明し
た。
【0041】
【比較例3】反応缶上部に水をかけなった以外は、実施
例2と同様にして行った。反応中の最高圧力は10.8
kg/cm2 Gであった。得られたポリマーは分子量2
3,500であり、反応率は99.0%であった。又、
反応生成物中には250ppmのチオフェノールが存在
することが判明した。
【0042】
【比較例4】反応缶上部を保温材で覆い、空気を吹き付
けなかった以外は、実施例3と同様にして行った。反応
中の最高圧力は10.8kg/cm2 Gであった。得ら
れたポリマーは分子量26,500であり、反応率は9
8.9%であった。又、反応生成物中には140ppm
のチオフェノールが存在することが判明した。
【0043】
【比較例5】内部冷却コイルに冷媒を流さなかった以外
は、実施例4と同様の方法で重合を行った。反応中の最
高圧力は、10.9kg/cm2 であった。得られたポ
リマーは分子量27,000であり、反応率は98.8
%であった。又反応生成物中には、175ppm のチオフ
ェノールが存在することが判明した。
【0044】
【発明の効果】本発明の装置により、チオフェノール等
の副反応生成物の発生を著しく押えることができ、より
高分子量のPASをより安定的に得ることができる。特
にこの装置によって得られる、分子量33,000以上
の高分子量で熱架橋していないPASは、架橋タイプP
ASでは加工できなかったフィルム、シート、繊維等の
分野にも、容易に用いることができる。又、射出成形分
野においても、低剪断域での高流動性を生かして、ウェ
ルド強度の向上、薄肉成形物の高強度化等々の優れた物
性を示す。又、熱架橋させていないため色合いが明る
く、顔料を混ぜることにより種々な色相をもたせること
が可能となる。又、熱を加えていないため、分子末端の
修飾が容易であり、この特性を利用して繊維状充填剤と
の親和性の向上、或は、他のポリマーとの相溶性向上を
図り、優れた物性をもたせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】外部冷却コイルを有する装置。
【図2】内部冷却コイルを有する装置。
【図3】冷媒ジャケットを有する装置。
【図4】液体を散布するユニットを有する装置。
【図5】気体を散布するユニットを有する装置。
【符号の説明】
1 反応缶 2 攪拌手段 3 熱媒ジャケット 4,5 熱媒用配管 6 内部加熱コイル 8 原料供給用、窒素加圧用および脱水用配管 9 スラリー取出用配管 10 保温材 11 外部冷却コイル 21 内部冷却コイル 31 冷却ジャケット 41 冷却用液体ノズル 42 冷却用液体流入配管 44 多孔性保温材サポート 43 冷却用液体流出配管 51 気体用ノズル

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化
    物とジハロ芳香族化合物とを反応させてポリアリーレン
    スルフィドを製造する装置において、(A)液相の大気
    圧下における沸点を超える温度に液相を加熱せしめる機
    構、及び(B)閉じた反応缶の気相部分を冷却すること
    により反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に
    還流せしめる機構を有することを特徴とする、ポリアリ
    ーレンスルフィドの製造装置。
  2. 【請求項2】 (B)機構が、(a)反応缶の外側上部
    に巻きつけた外部冷却コイル、(b)反応缶の内側上部
    に取付けた内部冷却コイル、(c)反応缶の外側上部に
    取付けた冷媒ジャケット、(d)反応缶の外側上部に液
    体又は気体を直接に散布又は吹きつけるユニット、又は
    (e)リフラックスコンデンサーを有する請求項1の装
    置。
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