JP2600194B2 - 柱主筋の重ね継手 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 《産業上の利用分野》 この発明は柱主筋の重ね継手に関する。

《従来の技術》 従来、柱主筋と柱主筋との接続方法として、重ね継
手，圧接，溶接継手，ネジ，グリップ等の機械継手とす
る場合等がある。

重ね継手とは接続する柱主筋と柱主筋とをオーバーラ
ップさせその間に打設されたコンクリートの付着力によ
って柱主筋同士を接続するものである。

圧接・溶接継手とは接続する柱主筋と柱主筋とを突き
合わせて柱主筋の端面同士を圧接又は溶接により接合
し、柱主筋同士を接続するものである。

ネジ・グリップ等の機械継手とは、柱主筋と柱主筋と
を突き合わせて柱主筋の端部に螺刻された雄ネジに、双
方に跨がらせてナットを外嵌することにより又は柱主筋
と柱主筋とを挿入して双方に跨がらせてグリップを外嵌
することにより、柱主筋同士を接続するものである。

《発明が解決しようとする問題点》 しかし重ね継手による場合は、高層鉄筋コンクリート
構造物の如く、柱の主筋が太径化した場合は、継手部に
おいて、接続する上主筋と下主筋とがオーバーラップす
ることにより、主筋が密集しすぎた状態となり、継手部
におけるコンクリートの充填度が悪くなり十分な継手強
度が得られないという問題点があった。また、一本一本
の鉄筋を重ね継手とするため作業能率が悪く、更に重ね
部分の長さが不揃いとなる，重ね継手部分の横補強筋の
配置が不正確となる等、十分な品質の確保が得られない
という問題点があった。

圧接継手とする場合には、接続する主筋同士はオーバ
ーラップしないため主筋が密集しすぎることはないもの
の、鉄筋籠として全体の鉄筋を同時に接続することは不
可能であり、作業時間にも長時間を要し、少々の雨天で
も施工が行えない時、作業能率が悪く、また作業に熟練
技術者が必要という問題点があった。

ネジ，グリップ等の機械継手による場合は、接続する
主筋同士はオーバーラップしないため主筋が密集しすぎ
ることはないものの、鉄筋籠として全体の鉄筋を同時に
接続することは不可能であり、コストが高くつくという
問題点があった。

この発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので
あって、その目的とするところは、柱の主筋が太径化し
た場合においても継手部分の主筋が密集しすぎることが
なく、また作業能率に優れ、更に十分な品質の確保が得
られるような柱主筋の継手を提供するにある。

《問題点を解決するための手段》 上記の目的を達成するために、本発明に係る柱主筋の
継手は、中空断面のプレキャストコンクリート材であっ
て、柱主筋に外嵌されたときに該柱主筋の位置となる位
置に対応させて該プレキャストコンクリート材の内面に
沿って鉄筋を、前記柱主筋と同数本埋設し、かつ該鉄筋
を取り囲み該鉄筋に当接させて横補強筋を埋設したもの
を、接合のため挿入した柱の上主筋及び下主筋の双方に
跨がらせて該上主筋及び下主筋の接合部分に外嵌すると
ともに、この接合部分において前記上主筋及び前記下主
筋の端面同士を合致させてなることを特徴とする重ね継
手とした。

《実 施 例》 第１図及び第２図は本発明に係る柱主筋の重ね継手の
一実施例の説明図であり、以下同図に基づいて本発明の
一実施例を説明する。

本発明の実施にあたって、まず中空断面のプレキャス
トコンクリート材２を用意する。プレキャストコンクリ
ート材２は長さが柱脚から梁下までの長さを有し、断面
は中空部4,外周部６とも矩形となっており、中空部の
縦，横の幅は、柱主筋９の矩形の鉄筋籠の縦，横の幅と
略同一となっている。従ってプレキャストコンクリート
材２を柱主筋９の鉄筋籠に外嵌したとき柱主筋９がプレ
キャストコンクリートザー２の内面８に近接又は接触す
るようになっている。

プレキャストコンクリート材２には内面８に沿って、
中空部４に挿入される柱主筋９と略同一径の鉄筋10が長
手方向の全長にわたってコンクリート11内に埋設されて
いる。鉄筋10の埋設位置は中空部４に柱主筋９が挿入さ
れたとき柱主筋９の位置となる位置に対応させてその位
置の近傍となるように配慮されている。また鉄筋10の埋
設個数は中空部４に挿入される鉄筋籠の柱主筋９の数と
同数である。

また、内面８に沿って埋設された鉄筋10の外側には、
鉄筋10の全体を取り囲んでかつ鉄筋10に当接させて鉄板
フープ12が埋設されている。鉄板フープ12は所定幅，厚
さの鉄板を折り曲げて矩形の輪としたものであり、プレ
キャストコンクリート材２の長手方向に一定間隔毎に複
数個埋設されている。鉄板フープ12は柱主筋の継手部の
剪断補強筋となるものである。鉄板フープ12の代わりに
鉄筋を折り曲げて矩形の輪としたフープ筋を用いてもよ
い。

次に、既にコンクリートが梁やスラブに打設されて、
柱主筋９（継手部分において下主筋となる部分，以下9a
とする）のみが突出している建築現場において、その突
出している柱主筋9aに上記プレキャストコンクリート材
２を外嵌しコンクリートが打設されているスラブ14の上
に立脚する。突出している柱主筋9aの長さは柱のうちの
り長さ（柱脚から梁下までの長さ）の略２分の１であ
り、プレキャストコンクリート材２を突出している柱主
筋9aに外嵌しスラブ14の上に立脚したとき、突出してい
る柱主筋9aの上端面はプレキャストコンクリート材２の
略中央部に位置する。

次に柱主筋及び梁主筋を組んで構成した組立鉄筋籠16
の柱主筋９（継手部分において上主筋となる部分，以下
9bとする）をスラブ14の上に立脚している断面中空のプ
レキャストコンクリート材２の上端面18より挿入し、柱
主筋９の上主筋9bと下主筋9aとを突き合わせる。鉄筋籠
16の柱主筋9bのそれぞれの鉄筋径及び配設位置等は、す
でにコンクリートが打設されコンクリートの上に突出し
ている柱主筋９の下主筋9aと同じであり、柱主筋９の上
主筋9bと下主筋9aとを突き合わせたとき、上主筋9bのそ
れぞれと下主筋9aのそれぞれとは軸線を一致させて端面
同士が合致し、しかも径が同じであるため、合致したそ
れぞれの上主筋と下主筋とは一つの直線的な鉄筋棒を形
成する。そしてそれぞれの鉄筋棒にはプレキャストコン
クリート材２に埋設された鉄筋10が、一本一本対応する
ように近接して存在している。また、柱主筋９の上主筋
9bと下主筋9aとを突き合わせたとき、スラブ14の上に立
脚しているプレキャストコンクリート材２の上端面は、
上主筋9bと下主筋9aとを接合後、打設される梁コンクリ
ートの下面の位置に一致する。

この状態でプレキャストコンクリート材２の中空部４
にコンクリートを打設すると、下主筋とそれらに近接す
る鉄筋10とは重ね継手を構成しそれらの鉄筋同士が結合
し、また鉄筋10とそれに近接する上主筋とは重ね継手を
構成し鉄筋同士が結合するため、結局下主筋とその上に
位置する上主筋とが近接する鉄筋10を介して重ね継手を
構成し、下主筋とその上に位置する上主筋とが結合す
る。

本発明に係る継手は下主筋と上主筋とを軸線を等しく
して、これらの端面同士を合致させて突き合わせ継手を
構成するものであるため柱主筋が太径化した場合におい
ても継手部分の主筋が密集しすぎることがない。

また、打設されたコンクリート上に突出した下主筋9a
にプレキャストコンクリー材２を被せ、プレキャストコ
ンクンリート材２の上端面から鉄筋籠16の上主筋9bを挿
入することにより柱主筋の継手部を構成させるものであ
るため作業が容易であり作業が短時間で済む。

特に、上下の主筋9a、9bの位置に対応させて、プレキ
ャストコンクリート材２の内面に沿って、柱主筋９と同
数本の鉄筋10を配設したため、プレキャストコンクリー
ト材２を柱主筋９の接合部分に外嵌するだけで、上下の
主筋9a、9bに対応させて鉄筋10を一本一本添えてなる重
ね継手を一括して構成することができるので、上下の主
筋9a、9bを一本一本接合する作業を省略することができ
るとともに、上下の柱主筋9a、9b間での反応の伝達を確
実なものとすることができる。

更に剪断補強筋は当初からプレキャストコンクリート
材２の中に正確に埋設しておくものであるため、剪断補
強筋の配置が不正確となる等が生じず、継手部の品質を
十分に確保することができる。

本実施例ではプレキャストコンクリート材２の長手方
向長さを柱のうちのり長さとし、鉄筋籠16の柱主筋9a,9
bを柱のほぼ1/2の長さとしたが、柱主筋9a,9bをプレキ
ャスト材２に挿入する長さは計算上必要な長さとし、本
実施例より短かくてもよい。また、これと逆に、柱主筋
9a,9bの長さを柱のほぼ1/2の長さとし、プレキャスト材
に埋設される鉄筋10を所定の必要長さに短くしてもよ
い。

また、本実施例では、組立鉄筋籠16は柱主筋及び梁主
筋の双方を組んで構成したが、組立鉄筋籠を柱主筋のみ
を組んで構成したものとし、その組立鉄筋籠を用いて柱
主筋同士を接合し、梁主筋はその後現場において組込ん
でもよい。

《発明の効果》 上記本発明の柱主筋の重ね継手によれば、柱の上主筋
と下主筋とを突き合わせてそれの双方に跨らせて中空断
面のプレキャストコンクリート材を外嵌するものである
ため、柱主筋の接合作業の能率の向上を図ることができ
る。

特に、上下の柱主筋の位置に対応させて、プレキャス
トコンクンリート材の内面に沿って、これらの柱主筋と
同数本の鉄筋を配設するため、柱主筋の接合部分にプレ
キャストコンクリート材を外嵌するだけで、上下の柱主
筋に跨らせて鉄筋を添えてなる重ね継手を一括して構成
することができ、柱主筋を一本一本接合する作業を省略
することができるとともに、上下の柱主筋間での応力の
伝達を確実なものとすることができる。

また、下主筋と上主筋との端面を合致させて突き合わ
せ継手を構成するので、上下の柱主筋の軸線を一致させ
て接合することができ、柱主筋が太径化した場合であっ
ても継手部分の主筋が密集しすぎることがなく、継手部
におけるコンクリートの充填度が悪くなり十分な継手強
度が得られないということがない。

更に横補強筋は当初からプレキャストコンクリート材
の中に埋設しておくものであるため、横補強筋の配置等
に関して十分な品質を確保することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示し、中空断面のプレキャ
ストコンクリート材をスラブの上に突出した柱主筋に外
嵌してスラブの上に立脚させ、プレキャストコンクンリ
ート材の上端面から鉄筋籠の柱主筋を挿入している状態
を示す一部断面正面図であり、第２図は第１図における
II−II断面図である。 ２……中空断面のプレキャストコンクリート材 ４……中空部、６……外周部 ８……内面、９……柱主筋 9a……下主筋、9b……上主筋 10……鉄筋、11……コンクリート 12……鉄板フープ、14……スラブ 16……組立鉄筋籠

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴江 俊晴 東京都千代田区神田司町２丁目３番地 株式会社大林組東京本社内 (56)参考文献 特開 昭62−121249（ＪＰ，Ａ)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】中空断面のプレキャストコンクリート材で
   あって、柱主筋に外嵌されたときに該柱主筋の位置とな
   る位置に対応させて該プレキャストコンクリート材の内
   面に沿って鉄筋を、前記柱主筋と同数本埋設し、かつ該
   鉄筋を取り囲み該鉄筋に当接させて横補強筋を埋設した
   ものを、接合のため挿入した柱の上主筋及び下主筋の双
   方に跨がらせて該上主筋及び下主筋の接合部分に外嵌す
   るとともに、該接合部分において前記上主筋及び前記下
   主筋の端面同士を合致させてなることを特徴とする柱主
   筋の重ね継手。