JP2599158B2 - 家畜のカンピロバクター・ジェジュニ感染症の予防及び治療剤 - Google Patents

家畜のカンピロバクター・ジェジュニ感染症の予防及び治療剤

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JP2599158B2
JP2599158B2 JP62328328A JP32832887A JP2599158B2 JP 2599158 B2 JP2599158 B2 JP 2599158B2 JP 62328328 A JP62328328 A JP 62328328A JP 32832887 A JP32832887 A JP 32832887A JP 2599158 B2 JP2599158 B2 JP 2599158B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、家畜のカンピロバクター・ジェジュニ感染
症の予防及び治療剤並びに予防及び治療方法に関する。
さらに詳しくは、本発明は、牛、豚、羊、犬、猫等家
畜のカンピロバクター・ジェジュニ感染症の生薬を用い
る予防及び治療剤並びに予防及び治療方法に関する。
[従来の技術] カンピロバクター・ジェジュニ感染症は、豚、羊、牛
などの家畜の細菌生伝染病の1つで、病原体は、Campyl
obacter属の細菌、カンピロバクター・ジェジュニ(Cam
pylobacter jejuni)、である。
特にCampylobacter jejuniによる感染症は、牛、豚、
羊、犬、猫、めん羊などの家畜にみられる。豚では3〜
6ヵ月令時頃に特に感受性が高く、発病率は5〜70%と
事例によって大きく異なるが、死亡率は50%以上にも及
び。甚急性の場合、何らの前駆症状を呈することなく突
然に死亡する。しかし、一般には食欲廃絶や血便の排泄
がみられ、体表は蒼白となって著しい貧血状態を呈す
る。通常は血塊の混在するタール様下痢便であり、異臭
を放つ。発熱は必ずしも伴わない。発病豚は発病後数時
間以内遅くとも24時間以内で死亡することが多い。死亡
を免れたものは、数日以内に回復するが、その後の成長
は劣る。
牛、犬等でもCampylobacter jejuni感染によって下痢
を起こす。このようにCampylobacter jejuni感染症は家
畜にとって重大な疾病である。
このような重大な伝染病であるにもかかわらず、有効
な対策はほとんどなく、適切な飼育管理を行なうことな
どの対策がとられているが実際には予防できないことが
多い。
また、これまでに本疾病を予防及び治療するために、
例えば抗生物質やその他の抗菌剤を飼料と共に投与する
方法も行なわれている。しかし、近年特に耐性菌の発生
や動物への抗生物質の残留性の問題などがあって、抗生
物質などの投与を家畜等に対して行なうことは適当でな
いという気運が高まりつつある。従って、抗生物質など
を用いない本症の予防及び治療方法並びに予防及び治療
剤の開発が望まれている。
[問題点を解決するための手段] 本発明者らは、上記の問題点を解決すべく研究した結
果、ある種の生薬に本疾病を抑制する効果がある事を見
出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の目的は、家畜のカンピロバクター・ジ
ェジュニ感染症の予防及び治療剤並びに同症の予防及び
治療方法を提供することにある。
本発明は、オウレン、オウバク、チモ、エンメイソウ
及びゴバイシからなる群から選択された1種または2種
以上の生薬を含有する家畜のカンピロバクター・ジェジ
ュニ感染症の予防及び治療剤を提供するものである。
本発明はまた、原末の形態の生薬、有機溶剤、有機溶
剤と水との混合物または水で抽出して得られる生薬エキ
ス、または生薬有効成分を含有する上記の家畜のカンピ
ロバクター・ジェジュニ感染症の予防及び治療剤を提供
するものである。
本発明はまた、生薬を飼料中に配合してなる家畜のカ
ンピロバクター・ジェジュニ感染症の予防及び治療剤を
提供するものである。
さらに本発明は、オウレン、オウバク、チモ、エンメ
イソウ及びゴバイシからなる群から選択された1種また
は2種以上の生薬の有効量を投与することからなる家畜
のカンピロバクター・ジェジュニ感染症の予防及び治療
方法を提供するものである。
本発明はまた、原末の形態の生薬、有機溶剤、有機溶
剤と水との混合物または水で抽出して得られる生薬エキ
ス、または生薬有効成分の形態で投与することからなる
家畜のカンピロバクター・ジェジュニ感染症の予防及び
治療方法を提供するものである。
本発明はまた生薬を飼料中に配合して投与することか
らなる家畜のカンピロバクター・ジェジュニ感染症の予
防及び治療方法を提供するものである。
本発明での前記家畜とは、例えば犬および猫等の愛玩
動物並びに牛、豚および羊等を意味する。
オウレン(黄連)は、オウレン(Coptisjaponica Mak
ino)の根茎から細根を焼去ったものである。このもの
は成分としてベルベリン、パルマチン等を含み、ヒトの
健胃苦味、整腸薬として用いられている。
オウバク(黄柏)は、キハダ(Phellodendronamurens
e Ruprecht)またはその他の同属他種植物の樹皮のコル
ク層を除いたものである。このものは成分として、ベル
ベリン、パルマチン等を含み、ヒトの健胃、整腸、収れ
ん及び消炎薬として用いられている。
チモ(知母)は、ハナスゲ(Anemanhenaasphodeloide
s Bunge)の根茎である。このものは成分としてサポニ
ン、ステロイドサポニン、タンニン等を含み、ヒトの消
炎、解熱、止瀉、利尿、鎮痛薬として用いられている。
エンメイソウ(延命草)は、ヒキオコシ(Isodon jap
onica Hara)またはクロバナヒキオコシ(Isodon trich
ocarpus Kudo)の茎葉である。このものは成分として、
プレクトランチン及びエンメインを含み、ヒトの健胃苦
味薬として消化不良、食欲不振、腹痛等の治療に用いら
れる。
ゴバイシ(五倍子)は、ヌルデノミミフシアブラムシ
(Melaphis chinensis J.Bell)の刺傷により、主とし
てヌルデ(Rhus javanica Linn)の葉に生じたゴール
であって、成分としてタンニン、没食子酸、脂肪、樹脂
等を含み、五倍子チンキ、タンニン酸、没食子酸、ピロ
ガロールの製造原料とされる。
上記したように、本発明で用いる生薬のオウレン、オ
ウバク、チモ、エンメイソウ及びゴバイシの夫々は、そ
れらを単独か、または組合わせてヒトの疾病の予防及び
治療のために従来から使用されていたものである。しか
し、これらをヒト以外の哺乳類の疾病の予防及び治療の
目的、殊にそれらの感染症の予防及び治療の目的で使用
する試みは、これまでになされたことがなかった。
本発明者らは、上記した生薬の薬効に着目して種々研
究を行なった結果、家畜がカンピロバクター・ジェジュ
ニ(Campylobacter jejuni)に感染することによって発
生するカンピロバクター・ジェジュニ感染症の予防及び
治療に、上記した生薬の1種または2種以上を組合わせ
て投与することがきわめて有効であることを見出して本
発明を完成したのである。
即ち、下記するように、上記特定の種類の生薬及びそ
れらの抽出物がインビトロ及びインビボにおいて細菌Ca
mpylobacter jejuniに対し、特異的に静菌作用及び殺菌
作用があることが明らかになった。そしてこのCampylob
acter jejuniに対する抑制効果の結果、これら生薬を家
畜に投与した場合にCampylobacter jejuniを原因とする
家畜の疾病であるカンピロバクター感染症を予防及び治
癒することができたのである。
そしてこの家畜に特有の疾病に対してこれら生薬及び
その抽出物が有効であることは予想もしえなかったこと
で、本発明者らによってはじめて明らかにされたことで
ある。
これら生薬は原末そのまままたは抽出エキス、生薬有
効成分の形態で直接投与したり、またこれらのものを飼
料に添加したりあるいは溶液製剤、分散製剤、半固形製
剤、粉粒体製剤、成型製剤、浸出製剤、注射用製剤等に
製剤化して使用する。
抽出エキスは、例えば水、有機溶剤または水と有機溶
剤との混合物を使用して溶剤抽出し、それをそのまま
か、濃縮してか、希釈してか、または溶剤を除去して用
いられる。
有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、
n−プロパノール、n−ブタノール、アセトン、酢酸エ
チル、エーテル、塩化メチレン、クロロホルム、ベンゼ
ン、四塩化炭素、石油エーテル等が使用され、特にメタ
ノール、エタノールが望ましい。これらの有機溶剤は1
種または2種以上の混合物として用いることができる。
この溶剤抽出は、生薬をこれらの溶剤に冷浸または温
浸して行なうことができる。冷浸の場合には15〜25℃、
温浸の場合は35〜45℃の温度範囲で行なうことができ
る。抽出時間は、抽出温度によって異なるが、一般的に
は約5日間または可溶性成分が充分に溶けるまでとす
る。
生薬有効成分は、例えば、上記抽出エキスをさらに各
種溶剤を用いて浸盪し、この溶剤に移行する画分を採り
出し、その溶剤を留去したものを有効画分、即ち有効成
分として用いることもできる。
この場合に使用される溶剤は、非極性溶剤例えば、低
級脂肪族エーテル類(ジエチルエーテル、エチルメチル
エーテル等);低級ハロゲンアルカン類(クロロホル
ム、ジクロルエタン、ジブロモエタン等);ベンゼン類
(ベンゼン、トルエン、キシレン等);その他の石油系
溶剤(石油エーテル、石油ベンゼン、リグロイン等)等
が例としてあげられる。
また、この有効画分を採り出した残りの水溶液を、水
及びある種の有機溶剤に水を飽和させたものを使用する
ことにより浸盪抽出し、水洗し、残分である有機溶剤層
に移行する画分の溶剤を留去したものも、有効画分即ち
有効成分として用いることができる。この有効画分は上
記の有効画分とは、物理化学的性質が異なり、検出され
る成分も異なるものである。
投与量は、生薬の原末重量で換算して0.001mg/体重kg
/日〜100g/体重kg/日の範囲である。この量は予防剤と
して用いる場合と治療剤として用いる場合では異なり、
一般的には後者の方が投与量は多くなる。
投与方法は、経口投与または非経口投与することがで
き、非経口投与としては筋肉内投与、腹腔内投与、経皮
投与、経鼻投与、静脈内投与等が可能である。
[発明の効果] 以上詳述したように、本発明によればカンピロバクタ
ー・ジェジュニ感染症の有効な予防及び治療剤並びに有
効な予防及び治療方法が提供される。
本発明の予防及び治療剤は生薬またはそれから得られ
るエキス等を主薬とするため、抗生物質等の場合の耐性
菌の発生や副作用の問題が全くなく、安心して投与する
ことができる。
また、薬剤の残留による人体への影響の心配がないた
め、肉用牛などに対するカンピロバクター・ジェジュニ
感染症の予防及び治療のための薬物として適用である。
さらに、抗生物質等を用いる場合に比べて、安価に同
疾病を予防及び治療することができる。
以下本発明を試験例及び実施例によりさらに詳しく説
明する。
試験例 1 Campylobacter jejuniの各種生薬に対する感受性を調
べた。
各種生薬を、生薬に対し7倍量の50%エタノール水溶
液中に加え、16時間抽出してアルコール抽出物とした。
抽出物を直径8mmのディスクに25μlずつしみ込ませ
乾燥させた。このディスクをCampylobacter jejuniの菌
株を塗ったスキロー寒天培地に置き、37℃で18時間微好
気培養した後、阻止円の直径を測定した。
次にその試験結果を示せば表1のとおりである。
実施例 1 基礎飼料 とうもろこし 250重量部 マイロ 492重量部 ふすま 35重量部 脱脂米糠 35重量部 大豆粕 85重量部 なたね粕 40重量部 綿実粕 10重量部 魚粉 5重量部 肉骨粉 10重量部 糖密 20重量部 炭酸カルシウム 11重量部 食塩 3重量部 プレミックス 4重量部 前記基礎飼料にオウレン粉末を重量比で2%添加し供
飼料料とした。
120日令の健康な豚100頭に前記供飼料料を自由摂餌さ
せ180日令まで飼育した。また対照区として前記供飼料
に代えて基礎飼料を用いた以外は前記と同様に行なっ
た。
次に飼育期間中にカンピロバクター・ジェジュニの野
外感染によって死亡した頭数を観察した。その結果本発
明の試験区において死亡した豚は3頭/100頭であったの
に対し、対照区では38頭/100頭であった。
実施例 2〜5 実施例1においてオウレンの代わりにオウバク、チ
モ、エンメイソウ、ゴバイシを基礎飼料に1%添加した
以外は実施例1と同様に行なった。
次にその試験結果を示せば表2のとおりである。
実施例 6 オウレン、オウバク、チモ、エンメイソウ、ゴバイシ
の各々を1kgとり、これをそれぞれ10の水に入れ100℃
で1時間抽出した。各々の水抽出物を1000倍に希釈し、
抽出エキスとした。この抽出エキスを水の代わりに給与
し180日令になるまで飼育した。なお飼料は実施例1で
使用した基礎飼料を用いた。
なお対照区は前記抽出エキスの代わりに水を給与した
以外は前記と同様に行なった。
次に飼育期間中における野外感染によるカンピロバク
ター・ジェジュニによって死亡した頭数を観察した。そ
の結果試験区は対照区より死亡頭数は少なかった。
実施例 7 基礎飼料 とうもろこし 300重量部 マイロ 135重量部 ふすま 70重量部 大豆粕 246重量部 小麦粉 180重量部 イエローグリス 7重量部 糖密 30重量部 炭酸カルシウム 14.5重量部 第3りん酸カルシウム 11重量部 食塩 5重量部 ビタミン・ミネラル剤 1.5重量部 前記基礎飼料にオウレン粉末を重量比で1%添加し供
試飼料とした。この供試飼料を60日令の健康な牛50頭に
自由に摂餌させ180日令まで飼育した。なお対照区は前
記供試飼料の代わりに基礎飼料を与えた。
次に飼育期間中における野外感染によるカンピロバク
ター・ジェジュニによって下痢をした頭数を観察した。
その結果本発明の試験区はカンピロバクター・ジェジ
ュニ感染によって下痢をした牛は0頭であったのに対
し、対照区は16頭であった。
実施例 8〜11 実施例7においてオウレンの代わりにオウバク、チ
モ、エンメイソウ、ゴバイシの各粉末を用いた以外は実
施例7と同様に行なった。
次にその結果を示せば表3のとおりである。
実施例 12 実施例7で使用した供試飼料を70日令の健康な羊50頭
に自由に摂餌させ180日令まで飼育した。なお対照区は
実施例7で使用した基礎飼料を給与した。そして前記飼
育期間中における野外感染によるカンピロバクター・ジ
ェジュニによって下痢をした頭数を観察した。
その結果本発明の試験区は0頭であったのに対し、対
照区は20頭であった。
実施例 13〜16 実施例12においてオウレン粉末の代わりにオウバク、
チモ、エンメイソウ、ゴバイシの各粉末を使用した以外
は実施例12と同様に行なった。
次にその結果を示せば表4のとおりである。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−210038(JP,A) 特開 昭51−61612(JP,A) 特開 昭57−26549(JP,A) 特開 昭57−132847(JP,A) 赤松金芳著、「新訂和漢薬」、医歯薬 出版株式会社、昭和55年10月15日、第1 版第5刷発行、第454,301,589,97, 268頁参照

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】オウレン、オウバク、チモ、エンメイソウ
    及びゴバイシからなる群から選択された1種または2種
    以上の生薬を含有する家畜のカンピロバクター・ジェジ
    ュニ感染症の予防及び治療剤。
  2. 【請求項2】生薬が原末の形態である特許請求の範囲第
    1項に記載の予防及び治療剤。
  3. 【請求項3】生薬が有機溶剤、水と有機溶剤との混合物
    または水で抽出した生薬エキス及び/またはそれから得
    られた生薬有効成分である特許請求の範囲第1項に記載
    の予防及び治療剤。
  4. 【請求項4】生薬が飼料中に配合されてなる特許請求の
    範囲第1項に記載の予防及び治療剤。
  5. 【請求項5】家畜が牛、豚、羊、犬、猫である特許請求
    の範囲第1項に記載の予防及び治療剤。
JP62328328A 1987-12-26 1987-12-26 家畜のカンピロバクター・ジェジュニ感染症の予防及び治療剤 Expired - Lifetime JP2599158B2 (ja)

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赤松金芳著、「新訂和漢薬」、医歯薬出版株式会社、昭和55年10月15日、第1版第5刷発行、第454,301,589,97,268頁参照

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