JP2590341Y2 - 電磁波シールド性ガスケット - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、電子機器における金属
筐体とその蓋や扉との間に介在させる電磁波シールド性
ガスケットに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】コンピュータやその周辺機器などの電子
機器における金属筐体とその蓋や扉との間には、ＥＭＩ
（電磁干渉ないし電磁障害）対策またはＲＦＩ（電波障
害）対策のため、開口部を塞ぐ電磁波シールド性ガスケ
ットが必要とされる。

【０００３】シールド性ガスケットの筐体への固定方法
としては、従来、金属製のクリップによる差し込み方
式、筐体に設けた長孔への差し込み方式が採用されてい
る。これらの方式のほか、粘着テープを用いて固定する
方式もある。

【０００４】このうち筐体に設けた長孔への差し込み方
式に関する文献としては、たとえば、次に列挙するもの
が知られている。

【０００５】実開昭５８−１４７２８５号公報（実公昭
６１−４４４７３号公報）には、膨出状のパッキン部材
と、その背面側から突き出した差し込み部とからなる導
電性ゴムパッキンが示されている。

【０００６】実開昭６０−１０１７９７号公報には、導
電性を有する部材で作成された内部に空洞を有するシー
ルドパッキンであって、該シールドパッキン内部の空洞
の内面に、弾性材で構成された補強部材を設けたシール
ドパッキンにつき開示があり、その一態様として、シリ
コーンゴムとカーボンブラックとを混ぜて作成した内部
が空洞の導電ゴムの内面にシリコーンゴムのみで作成さ
れた補強部を有し、かつ矢印形の突起を有するシールド
パッキンが示されている。

【０００７】実開昭６１−７９５９７号公報には、導電
性ゴムからなるパッキング本体の表面の外側部のうち、
少なくとも電磁波受射面に、金属繊維からなるメリヤス
編成の金網を埋設し、該金網の編み目の一部をパッキン
グ本体の外表面に露出させた電磁波シールド用パッキン
グにつき開示があり、Ｏ字形断面のパッキング本体に矢
印形の突起部を設けた態様も記載されている。

【０００８】実開昭６１−１８３５９８号公報には、弾
性力を加勢するバネ部材を設けた矢印形の差し込み部を
有するガスケットにつき開示がある。

【０００９】実開平１−１４５１９７号公報には、導電
性で弾性のあるチューブの内方に金属材料の導線を組み
込んだシールドパッキンにつき開示があり、矢印形の取
り付け部を設けた態様も記載されている。

【００１０】特開平４−２９７０９５号公報には、矢印
形等の突起を付設したパッキン本体を、突起を含めて金
網で覆うようにしたキャビネット電磁シールド構造が示
されている。

【００１１】実開平４−８５７８９号公報およびそれに
対応する米国特許第５１４２１０１号明細書には、矢印
形などの装着部を有しかつ弾力性を有する芯材の表面に
金属メッシュを接着被覆すると共に、弾性変形の大きな
コーナー部の表面に金属メッシュと接着しない分離部を
設けた電磁波シールド性ガスケットが示されている。金
属メッシュとは、たとえば金属線を編目状に編んだもの
である。

【００１２】一方、金属製のクリップによる差し込み方
式として、米国特許第４８５７６６８号明細書には、銀
コートナイロン織布などのシース内に発泡性樹脂を注入
しながら連続発泡させることによりコアを形成させて多
機能ガスケットを得る方法につき開示があり、そのガス
ケットに金属クリップを付加する態様についても記載さ
れている。

【００１３】先に述べた実開平４−８５７８９号公報
（米国特許第５１４２１０１号明細書）の第１７図に
は、装着部の端部を直角状に折り曲げた態様も示されて
いる。

【００１４】

【考案が解決しようとする課題】シールド性ガスケット
の筐体への固定方法のうち、粘着テープを用いて固定す
る方式は、粘着テープが経時変化することを免かれない
ので、ある期間が経過すると剥がれを生ずるという問題
点がある。

【００１５】シールド性ガスケットの筐体への固定方法
のうち、筐体に開けた長孔への差し込み方式は、矢印形
の差し込み部を長孔に見合った長さにしなければならな
いので、製造工程が煩雑となる上、装着時の作業性も必
ずしも良いとは言えない。

【００１６】シールド性ガスケットの筐体への固定方法
のうち、金属製のクリップによる差し込み方式は、機械
的強度および導電性能の点ですぐれているが、ガスケッ
ト本体に対するクリップの固定を要するので生産性が劣
り、またコストが高くなるという問題点がある。

【００１７】実開平４−８５７８９号公報（米国特許第
５１４２１０１号明細書）に開示のガスケットは、金属
メッシュとして金属線を編目状に編んだものを用いてい
るため電磁波シールド性がやや不足すること、ガスケッ
トのコーナー部に接着剤不塗布部を設けつつ他部に接着
材を塗布する操作が煩雑となり、生産性が劣ることなど
の不利がある。

【００１８】本考案は、このような背景下において、筐
体への固定をワンタッチで行うことができ、繰り返し筐
体の蓋や扉の開閉を行ったりクリップの抜き差しを行っ
たりしても、成形体に包被した導電体シートが損傷しな
いため、常に信頼性ある電磁波シールド性が得られ、し
かも低コストで製造することのできるガスケットを提供
することを目的とするものである。

【００１９】

【課題を解決するための手段】本考案の電磁波シールド
性ガスケットは、導電性織布または金属箔から選ばれた
導電体シート(21)の裏面全面にホットメルト接着剤層(2
2)を設けた構成を有する接着剤層付き導電体シート(2)
が、パッキン部(11)とクリップ部(12)との同時押出成形
物である成形体(1) の外面に沿って包被されたガスケッ
トであって、前記接着剤層付き導電体シート(2) が、成
形体(1) のクリップ部(12)側においてのみホットメルト
接着され、かつパッキン部(11)上面側では非接着の状態
にあることを特徴とするものである。

【００２０】以下本考案を詳細に説明する。

【００２１】成形体(1) は、パッキン部(11)とクリップ
部(12)とを同時押出成形することにより成形される。成
形法としては異形押出成形法が採用される。パッキン部
(11)は通常中空に形成する。

【００２２】成形体(1) の材質は、弾力性や剛性、強
度、さらにはコストも考慮すると、パッキン部(11)につ
いては軟質ポリ塩化ビニル、クリップ部(12)については
硬質ポリ塩化ビニルとすることが特に好ましいが、ポリ
ウレタン、シリコーン、ネオプレンゴム、ＥＰＤＭをは
じめとする合成ゴムまたはエラストマーなどの弾力性素
材から作られた未発泡体や発泡体であってもよい。

【００２３】導電体シート(21)としては、導電性織布ま
たは金属箔が用いられ、金属箔の場合には裏面に合成樹
脂フィルム層が設けられていてもよい。このうち導電性
織布としては、金属細線（モネル、カッパーウェルド、
アルミニウム、スズメッキ銅等）あるいは金属コート繊
維（合成繊維にメッキ、蒸着、スパッタリング等の手段
により金属コートした繊維）からなるマルチフィラメン
ト糸またはモノフィラメント糸を製織したもの、合成繊
維糸を用いて製織した織布に金属コートを施したものな
どがあげられる。金属箔としては、通常アルミニウム箔
が用いられる。

【００２４】接着剤層付き導電体シート(2) は、上記の
導電体シート(21)の裏面全面にホットメルト接着剤層(2
2)を設けたものである。ここでホットメルト接着剤層(2
2)の形成に用いるホットメルト接着剤としては、ポリエ
ステル系、ポリオレフィン系、エチレン−酢酸ビニル共
重合体系、エチレン−アクリレート共重合体系、エチレ
ン−アクリル酸共重合体系、ポリアミド系、ポリウレタ
ン系、合成性ゴム系をはじめとする各種のホットメルト
接着剤が用いられる。導電体シート(21)に対するホット
メルト接着剤層(22)の形成は、ホットメルト接着剤の溶
液または分散液を塗布するか、ホットメルト接着剤を溶
融状態でコートすることによりなされる。

【００２５】そして本考案においては、上記の接着剤層
付き導電体シート(2) が、成形体(1) のクリップ部(12)
側においてのみホットメルト接着され、かつパッキン部
(11)上面側では非接着の状態にあるようにする。

【００２６】この場合、接着剤層付き導電体シート(2)
が、成形体(1) のクリップ部(12)側においてのみホット
メルト接着されているが、そのクリップ部(12)の内面側
上面および内面側下面の双方においては非接着状態とな
っており、かつパッキン部(11)上面側では非接着の状態
にあることが好ましい。

【００２７】また接着剤層付き導電体シート(2) が、成
形体(1) のクリップ部(12)側においてのみホットメルト
接着されているが、そのクリップ部(12)の内面側上面お
よび内面側下面のうちの少なくとも一方においては非接
着状態となっており、かつパッキン部(11)上面側では非
接着の状態にあることも好ましい。

【００２８】接着剤層付き導電体シート(2) は導電体シ
ート(21)の裏面全面にホットメルト接着剤層(22)を設け
た構成を有するので、クリップ部(12)に対する目的部位
のホットメルト接着は、単に目的部位に熱板を押し当て
るだけでよい。

【００２９】

【作用】上述の構成を有する本考案の電磁波シールド性
ガスケットは、電子部品を用いた機器の金属筐体同士の
接合部、筐体と蓋体との間、筐体と扉との間、蓋体と扉
との間などに装着される。

【００３０】たとえば、金属製の蓋体と金属製の扉との
間の電磁波シールドを図る場合を例にとると、本考案の
電磁波シールド性ガスケットのクリップ部(12)を扉の上
部に差し込んで装着した場合、クリップ部(12)を差し込
んだ部分において扉とガスケットとが強く接触して導通
状態になり、またガスケットの上面と蓋体の下端とが接
触して導通状態になり、しかもガスケットの外面に沿っ
て接着剤層付き導電体シート(2) が包被されているの
で、扉と蓋体との間が導通状態になり、その結果良好な
電磁波シールド性が発揮される。

【００３１】この場合、接着剤層付き導電体シート(2)
は、成形体(1) のパッキン部(11)上面側では非接着の状
態となっているので、繰り返し筐体の扉の開閉を行って
も（さらには繰り返し筐体の扉に対するクリップ部(12)
の差し込みを行っても）、接着剤層付き導電体シート
(2) の大部分が浮いた状態にあるので、接着剤層付き導
電体シート(2) が摩擦により損傷するおそれがなく、常
に信頼性ある電磁波シールド性が得られる。

【００３２】

【実施例】次に実施例をあげて本考案をさらに説明す
る。

【００３３】実施例１ 図１は本考案の電磁波シールド性ガスケットの一例を示
した切断断面図である。図２は図１のガスケットの作製
に用いた成形体(1) の切断断面図である。図３は図１の
ガスケットの使用状態を示した説明図である。

【００３４】導電体シート(21)として、ポリエステル繊
維糸の平織り布に銅メッキを施した後、その上からさら
にニッケルメッキを施した導電性織布を準備し、その導
電性織布の裏面全体にポリエステル系のホットメルト接
着剤溶液を塗布、乾燥して、ホットメルト接着剤層(22)
を形成させた。これにより、接着剤層付き導電体シート
(2) が得られた。

【００３５】別途、異形押出成形法により軟質ポリ塩化
ビニルと硬質ポリ塩化ビニルとを同時押出成形すること
により、軟質ポリ塩化ビニルからなるパッキン部(11)と
硬質ポリ塩化ビニルとからなるクリップ部(12)とが一体
となった図２の断面形状を有する長尺の成形体(1) を
得、ついでこれを所定の長さ（たとえば２０００mm）に
切断した。

【００３６】上記の接着剤層付き導電体シート(2) を、
そのホットメルト接着剤層(22)側が内側になるようにし
て、まずクリップ部(12)の内部に押し込んだ後、残りの
部分を成形体(1) のクリップ部(12)の下面およびパッキ
ン部(11)に巻きつけた。

【００３７】この状態で成形体(1) のクリップ部(12)の
底面側に熱板を数秒押し当てたところ、接着剤層付き導
電体シート(2) は成形体(1) のクリップ部(12)の底面の
みにおいてホットメルト接着された状態で成形体(1) の
外面に沿って包被され、図１に示した電磁波シールド性
ガスケットが作製された。図１中、(a) はホットメルト
接着部である。

【００３８】次に図３のように、このガスケットのクリ
ップ部(12)を金属製の扉(3) の上部に差し込み、金属製
の蓋体(4) との間の電磁波シールドを行ったところ、３
０００回以上の扉(3) の開閉によっても、包被した接着
剤層付き導電体シート(2) の損傷は認められなかった。
これは、接着剤層付き導電体シート(2) がパッキン部(1
1)上面において固定されていないためである。

【００３９】ちなみに、接着剤層付き導電体シート(2)
を成形体(1) の全面外面にホットメルト接着したとき
は、１０００回以内の扉(3) の開閉で、パッキン部(11)
の上面において接着剤層付き導電体シート(2) が損傷
し、導通性が不安定となった。

【００４０】実施例２ 図４は本考案の電磁波シールド性ガスケットの他の一例
を示した切断断面図である。

【００４１】クリップ部(12)の底面側とクリップ部(12)
の内面側上面の２ケ所において熱板を押し当てて接着剤
層付き導電体シート(2) のホットメルト接着を行ったほ
かは実施例１を繰り返し、図４に示した電磁波シールド
性ガスケットを得た。この実施例２のガスケットは、こ
れを筐体に対し何回も抜き差しする使い方をするときに
有利である。

【００４２】実施例３ 図５は本考案の電磁波シールド性ガスケットのさらに他
の一例を示した切断断面図である。

【００４３】この実施例３においては、成形体(1) のパ
ッキン部(11)およびクリップ部(12)の形状が実施例１と
は異なっており、また接着剤層付き導電体シート(2) と
して、アルミニウム箔とポリエステルフィルムとのラミ
ネート物からなる導電体シート(21)のポリエステルフィ
ルム側の面の全面にエチレン−酢酸ビニル共重合体から
なるホットメルト接着剤層(22)を設けたものを用い、さ
らにはこの接着剤層付き導電体シート(2) による包被お
よびホットメルト接着部(a) の形成を図５に示したよう
に行ってある。

【００４４】

【考案の効果】本考案の電磁波シールド性ガスケット
は、筐体への固定をワンタッチで行うことができるこ
と、繰り返し筐体の蓋や扉の開閉を行ったりクリップの
抜き差しを行ったりしても、成形体に包被した導電体シ
ートが損傷しないため、常に信頼性ある電磁波シールド
性が得られること、低コストで製造することができるこ
となどのすぐれた効果を奏する。よって本考案は実用上
極めて有用である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の電磁波シールド性ガスケットの一例を
示した切断断面図である。

【図２】図１のガスケットの作製に用いた成形体(1) の
切断断面図である。

【図３】図１のガスケットの使用状態を示した説明図で
ある。

【図４】本考案の電磁波シールド性ガスケットの他の一
例を示した切断断面図である。

【図５】本考案の電磁波シールド性ガスケットのさらに
他の一例を示した切断断面図である。

【符号の説明】

(1) …成形体、(11)…パッキン部、(12)…クリップ部、
(2) …接着剤層付き導電体シート、(21)…導電体シー
ト、(22)…ホットメルト接着剤層、(3) …扉、(4) …蓋
体、(a) …ホットメルト接着部

Claims (3)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】導電性織布または金属箔から選ばれた導電
   体シート(21)の裏面全面にホットメルト接着剤層(22)を
   設けた構成を有する接着剤層付き導電体シート(2) が、
   パッキン部(11)とクリップ部(12)との同時押出成形物で
   ある成形体(1) の外面に沿って包被されたガスケットで
   あって、 前記接着剤層付き導電体シート(2) が、成形体(1) のク
   リップ部(12)側においてのみホットメルト接着され、か
   つパッキン部(11)上面側では非接着の状態にあることを
   特徴とする電磁波シールド性ガスケット。
2. 【請求項２】接着剤層付き導電体シート(2) が、成形体
   (1) のクリップ部(12)側においてのみホットメルト接着
   されているが、そのクリップ部(12)の内面側上面および
   内面側下面の双方においては非接着状態となっており、
   かつパッキン部(11)上面側では非接着の状態にあること
   を特徴とする請求項１記載の電磁波シールド性ガスケッ
   ト。
3. 【請求項３】接着剤層付き導電体シート(2) が、成形体
   (1) のクリップ部(12)側においてのみホットメルト接着
   されているが、そのクリップ部(12)の内面側上面および
   内面側下面のうちの少なくとも一方においては非接着状
   態となっており、かつパッキン部(11)上面側では非接着
   の状態にあることを特徴とする請求項１記載の電磁波シ
   ールド性ガスケット。