JP2534361Y2 - コネクタ用ｅｍｉシールド性面状ガスケット - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、コネクタと筐体の接続
端子部分との間に介在させるＥＭＩ（電磁干渉）シール
ド性ガスケットに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】電気・電子機器のノイズ対策としては、
装置内部から発生するノイズを減衰させると共に、外部
から侵入するノイズを遮蔽することが必要である。ノイ
ズには放射ノイズと伝導ノイズとがあり、伝導ノイズ対
策としてはノイズカットトランス、ノイズフィルタ、シ
ールドコネクタなどを用いる方法が採用されており、放
射ノイズ対策としては、筐体を金属体または高導電体に
したり、回路基板と回路基板との間に金属板を挿入する
などの方法が採用されている。

【０００３】筐体、コネクタ、ケーブルなどに電磁波シ
ールド対策を施しても、これらの接続部からも電磁波が
漏洩するので、その対策も講じなければならない。そこ
で、筐体の接合部や筐体の本体と蓋との間に介在させる
ガスケットとして電磁波シールド性ガスケットを用い、
筐体の接続端子部分とコネクタ間にも電磁波シールド性
を有する材料を介在させることが必要となる。

【０００４】このうち、筐体の接合部や筐体の本体と蓋
との間に介在させるガスケットとしては、ワイヤメッシ
ュガスケット、ワイヤ埋め込み型ガスケット、導電性エ
ラストマーガスケット、スプリング・フィンガー・スト
リップガスケットなどが用いられている。（たとえば、
「ノイズ対策、シールド材料と手法、株式会社情報調査
会発行、平成元年２月２８日初版発行」の６０頁の表
２．２０を参照）

【０００５】また、以下に列挙するような多数の出願も
なされている。

【０００６】・特開昭６０−１３７０９９号公報（エラ
ストマーからなる成形体の表面または表面近傍に、前記
エラストマー中に配合された磁性体の凝集による導電層
が形成された導電性ガスケット）

【０００７】・特開昭６１−２１９１９９号公報（ヒモ
状の導電性フォームの少なくとも片面に部分的に設けた
粘着剤あるいは粘着剤層を介して剥離紙が積層されてな
る電磁シールド用ガスケット）

【０００８】・特開平１−２３５３９８号公報（ゴム層
の表面に導電性を有する繊維層を積層してなる導電性シ
ートを筒状に折り曲げることにより中空部を形成した導
電性パッキン）

【０００９】・実開昭５８−７４３８９号公報（伸縮自
在の編み方で編まれた金属網を折り曲げ自在の金属線を
芯部として棒状とした電波漏洩防止用線状ガスケット）

【００１０】・実開昭５８−１８９８５４号公報（耐水
性を備えた弾性材からなるパッキン本体に電磁シールド
性能の良好な部材を一体的に設けた電子装置用パッキ
ン）

【００１１】・実開昭６９−１０１７９７号公報（導電
性を有する部材で作成された内部に空洞を有するシール
ドパッキンの空洞の内面に弾性材で構成された補強部材
を設けたシールドパッキン）

【００１２】・実開昭６１−２７３９９号公報（心材と
該心材に被覆された導電性物質層からなり、上記心材が
合成樹脂発泡体もしくはゴム発泡体で作られている電磁
シールド用ガスケット）

【００１３】・実開昭６１−７９５９７号公報（導電性
ゴムからなるパッキング本体の表面の外側部に金属繊維
からなるメリヤス編成の金網を埋設し、該金網の編み目
の一部をパッキング本体の外表面に露出させた電磁波シ
ールド用パッキング）

【００１４】・実開昭６１−１４９３９９号公報（金属
粉を含むシリコーンゴムより形成されたシールド層と低
硬度の弾性シリコーンゴム層とからなる電磁波シールド
用パッキン）

【００１５】・実開昭６２−１４７９７号公報（弾性変
形可能な円柱上の芯体と、この芯体の回りに被覆する黒
鉛質のカーボン繊維による不織布とで構成した電磁波シ
ールド用パッキング）

【００１６】・実開昭６３−１７４４９６号公報（筒状
の金属メッシュの内部に弾力性心材を挿入配置したパッ
キン材において、前記金属メッシュの外側から高分子塗
布層を形成すると共に、該高分子塗布層のうち金属メッ
シュ上に付着している部分の少なくとも一部を金属メッ
シュが露出するまで除去した構造を有する電磁波シール
ド用パッキン材）

【００１７】・実開昭６３−１８５２９６号公報（ゴム
材からなるガスケット芯材に金属棒を貫入し、該ガスケ
ット芯材を金属網で被覆した可撓性の電磁シールド用ガ
スケット）

【００１８】・実開昭６３−１９１６９３号公報（金属
の螺旋と、該螺旋内に充填された粘弾性体とからなるパ
ッキング部材）

【００１９】・実開平１−６５１９３号公報（導電ゴム
部材の内部に導電性の金属微粒子を容積変化可能に封入
したシールドパッキン）

【００２０】・実開平１−１４５１９７号公報（導電性
で弾性のあるチューブの内方に金属材料の導線を組み込
んだシールドパッキン）

【００２１】さらに、米国特許第４８５７６６８号明細
書には、銀コートナイロン織布などのシース内にウレタ
ンフォームコアを連続的に形成させながら充填してガス
ケットを作成することが示されている。

【００２２】一方、筐体の接続端子部分とコネクタ間に
介在させる電磁波シールド性材料としては、従来、次に
列挙するようなフラットなガスケットが用いられてい
る。

【００２３】(a) 銅、アルミニウムなどの金属箔に打ち
抜きにより嵌装孔を形成したもの (b) ニッケル、銅、銀などの金属粉を練り込んで成形し
た成形品 (c) 上記(b) の成形品を打ち抜いて嵌装孔を形成したも
の (d) 金属細線を埋め込んだゴムまたはスポンジを打ち抜
いて嵌装孔を形成したもの

【００２４】

【考案が解決しようとする課題】筐体の接合部や筐体の
本体と蓋との間に介在させるガスケットは、その形状が
基本的には紐状であるので、筐体とコネクタ間に介在さ
せるガスケットとしては適当ではない。

【００２５】従来コネクタ用のガスケットとして採用さ
れていた上記(a) のガスケットは、金属箔そのものを使
用しているのでクッション性がなく、そのためコネクタ
接続時に間隙を生じて電磁波が漏洩することがある。

【００２６】上記(b), (c)のガスケットは、必要な導電
性を確保するには多量の金属粉を配合しなければならな
いところ、そのように多量の金属粉を配合すると弾力性
が損なわれる結果、コネクタ接続時に強い圧締力を要
し、操作性が悪くなる。また多量の金属粉の配合はコス
ト的に不利となる。

【００２７】上記(D) のガスケットもコネクタ接続時に
強い圧締力を要する上、製造コストが高いという不利が
ある。

【００２８】本考案は、すぐれた電磁波シールド性を有
し、コネクタ接続時の操作性が良好で、しかも比較的廉
価に製造できるコネクタ用ＥＭＩシールド性面状ガスケ
ットを提供することを目的とするものである。

【００２９】

【課題を解決するための手段】本考案のコネクタ用ＥＭ
Ｉシールド性面状ガスケットは、矩形シート状の弾力性
コア(1) の裏面から一方の側面、表面、反対側側面を経
て裏面に至りそこで重なり合い部(2a)を生ずるように金
属繊維糸製の布(2) が包被一体化された包被体(3) に、
さらに嵌装用の打ち抜き孔(4) が設けられているもので
ある。

【００３０】この場合、包被体(3) の重なり合い部(2a)
側の面に、粘着剤層(5) （殊に導電性の粘着剤層）を介
して剥離性シート(6) が積層されていることが望まし
く、また、包被体(3) の布(2) で包被されていない方の
一対の側面に、弾力性を有する導電性塗膜層(7) が設け
られていることが好ましい。

【００３１】以下本考案を詳細に説明する。

【００３２】弾力性コア(1) としては、ポリウレタン、
シリコーン、ネオプレンゴム、ＥＰＤＭをはじめとする
合成ゴムまたはエラストマーなどの弾力性素材から作ら
れた未発泡体や発泡体が用いられる。

【００３３】弾力性コア(1) は、ガスケット製品とした
段階では矩形シート状を有するようにする。なお矩形と
は、通常はフラットな矩形とするが、場合によっては湾
曲した矩形とすることもある。

【００３４】金属繊維糸製の布(2) としては、モネル、
カッパーウェルド、アルミニウム、スズメッキ銅などの
細線あるいは合成繊維に金属をコートした繊維からなる
マルチフィラメント糸またはモノフィラメント糸を織製
または編製したものが用いられる。

【００３５】上述の弾力性コア(1) をこの金属繊維糸製
の布(2) で包被一体化することにより包被体(3) が形成
されるが、その際には、矩形シート状の弾力性コア(1)
の裏面から一方の側面、表面、反対側側面を経て裏面に
至り、そこで重なり合い部(2a)を生ずるように金属繊維
糸製の布(2) が包被一体化される。

【００３６】この包被一体化は、工業的には、長尺の弾
力性コア(1) または長尺の金属繊維糸製の布(2) の少な
くとも一方に接着剤や粘着剤（これらも導電性のものを
用いることができる）を塗布しておき、弾力性コア(1)
を芯にして金属繊維糸製の布(2) を折り曲げながら巻い
ていくことにより達成できる。また、長尺の金属繊維糸
製の布(2) を折り曲げつつ巻きながら、そこへ弾力性コ
ア(1) 形成用の組成物を充填していくことによっても達
成できる。

【００３７】長尺の弾力性コア(1) を長尺の金属繊維糸
製の布(2) で包被一体化して包被体(3) とした後は、こ
の包被体(3) を所定の長さに切断すると共に、嵌装用の
打ち抜き孔(4) を設ける。この際、ビス止め用の孔(41)
やアース線挿通用の孔(42)も設けるようにする。

【００３８】筐体の接続端子部分またはコネクタに対す
るガスケットの装着を容易にするために、包被体(3) の
重なり合い部(2a)側の面に、粘着剤層(5) （殊に導電性
の粘着剤層）を介して剥離性シート(6) を積層すること
が望ましい。この場合、粘着剤層(5) は必ずしも上記の
面の全面を覆うように設ける必要はなく、上記の面のう
ちの限られた面積を覆うように設けたり、線状または複
線状に設けたり、点状に設けたりしてもよい。部分的に
設けることは、ガスケットの装着時の導通性の点からは
むしろ有利である。

【００３９】また、上記のような工業的な製造方法を採
用するときは、長尺の包被体(3) を所定の長さに切断す
るときに切断面が生ずるので、その切断面、つまり包被
体(3) の布(2) で包被されていない方の一対の側面に、
弾力性を有する導電性塗膜層(7) を設けることが好まし
い。導電性塗膜層(7) の設置は、嵌装用の打ち抜き孔
(4) 、さらにはビス止め用の孔(41)やアース線挿通用の
孔(42)に対しても行うことができる。ここで導電性塗膜
層(7) は、金属粉、導電性金属酸化物、カーボン粉、金
属コート無機質粉などの導電性物質を配合したゴムやエ
ラストマーあるいは導電性物質を配合した伸縮性塗膜を
与える樹脂組成物を塗布することにより形成できる。こ
のようにすれば、前記の切断面が外観上美麗になる上、
包被体(3)の表裏両面および４側面のすべての面が導電
性を有することになる。

【００４０】

【作用】上述の構成を有する本考案のコネクタ用ＥＭＩ
シールド性面状ガスケットは、筐体の接続端子部分とコ
ネクタとの間に介在した状態で使用される。金属繊維糸
製の布(2) は弾力性コア(1) を１周しているので、表裏
両面は導通しており、また包被した金属繊維糸製の布
(2) の両端部は重なり合い部(2a)としてあるので、すぐ
れた電磁波シールド性を奏する。

【００４１】包被体(3) の片面（重なり合い部(2a)側の
面）に粘着剤層(5) を介して剥離性シート(6) が積層さ
れているときは、まず剥離性シート(6) を剥離除去して
から、その粘着剤層(5) 側の面を筐体の接続端子部分ま
たはコネクタに貼着してコネクタを接続すればよい。

【００４２】本考案のガスケットの使用により、筐体と
コネクタ間の間隙からの電磁波の漏洩は確実に防止され
ることになる。

【００４３】

【実施例】次に実施例をあげて本考案をさらに説明す
る。

【００４４】実施例１ 図１は本考案のコネクタ用ＥＭＩシールド性面状ガスケ
ットの一例を示した平面図であり、図２は図１のＡ−Ａ
断面図、図３は図１のＢ−Ｂ断面図である。

【００４５】ブロック状のポリウレタンスポンジを２mm
厚にスライスした後、３５mm巾に裁断し、この裁断物を
長さ方向に長尺につないで弾力性コア(1) とした。

【００４６】また、金属繊維糸製の布(2) の一例とし
て、モネル細線のマルチフィラメント糸を織製して得た
８０mm巾の平織り布を準備した。

【００４７】上記の金属繊維糸製の布(2) の片面に導電
性のウレタン系接着剤を塗布すると共に、上記の弾力性
コア(1) を芯にしてこの金属繊維糸製の布(2) を折り曲
げながら巻いていった。これにより、弾力性コア(1) の
裏面から一方の側面、表面、反対側側面を経て裏面に至
り、そこで重なり合い部(2a)を生ずるように金属繊維糸
製の布(2) が包被一体化された。

【００４８】別途、片面をシリコーン系剥離剤で処理し
たクラフト紙からなる長尺の剥離性シート(6) の剥離性
処理面に導電性の粘着剤層(5) を設けたものを用意し、
その粘着剤層(5) 側の面を上記で得た包被体(3) の重な
り合い部(2a)側の面に圧着積層した。

【００４９】ついで、このようにして得た剥離性シート
(6) 付きの包被体(3) を７８mm長さに切断すると共に、
図２，３のように嵌装用の打ち抜き孔(4) 、ビス止め用
の孔(41)およびアース線挿通用の孔(42)を打ち抜きによ
り設けた。

【００５０】これにより、図１に平面図、図２，３に断
面図を示したコネクタ用ＥＭＩシールド性面状ガスケッ
トが得られた。

【００５１】このガスケットを使用するにあたっては、
剥離性シート(6) を剥離除去してから、その粘着剤層
(5) 側の面をコネクタに貼着し、ついでこのコネクタを
筐体の接続端子部分に接続すればよい。

【００５２】実施例２ 図４は本考案のコネクタ用ＥＭＩシールド性面状ガスケ
ットの他の一例を示した断面図である。

【００５３】実施例１と同様にして長尺の包被体(3) を
得た後、７８mm長さに切断し、さらに嵌装用の打ち抜き
孔(4) 、ビス止め用の孔(41)およびアース線挿通用の孔
(42)を打ち抜きにより設けた。

【００５４】ついでその切断面に、ニッケル粉を配合し
たウレタン系塗料を塗布し、導電性塗膜層(7) を形成さ
せた。

【００５５】これにより、図４に断面図を示したコネク
タ用ＥＭＩシールド性面状ガスケットが得られた。

【００５６】

【考案の効果】本考案のコネクタ用ＥＭＩシールド性面
状ガスケットは、すぐれた電磁波シールド性を有すると
共に、コネクタ接続時の操作性が良好で、しかも比較的
廉価に製造できる。従って本考案は実用上極めて有用で
ある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案のコネクタ用ＥＭＩシールド性面状ガス
ケットの一例を示した平面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ断面図である。

【図３】図１のＢ−Ｂ断面図である。

【図４】本考案のコネクタ用ＥＭＩシールド性面状ガス
ケットの他の一例を示した断面図である。

【符号の説明】

(1) …弾力性コア、(2) …金属繊維糸製の布、(2a)…重
なり合い部、(3) …包被体、(4) …打ち抜き孔、(41)…
ビス止め用の孔、(42)…アース線挿通用の孔、(5) …粘
着剤層、(6) …剥離性シート、(7) …導電性塗膜層

Claims (3)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】矩形シート状の弾力性コア(1) の裏面から
   一方の側面、表面、反対側側面を経て裏面に至りそこで
   重なり合い部(2a)を生ずるように金属繊維糸製の布(2)
   が包被一体化された包被体(3) に、さらに嵌装用の打ち
   抜き孔(4) が設けられているコネクタ用ＥＭＩシールド
   性面状ガスケット。
2. 【請求項２】包被体(3) の重なり合い部(2a)側の面に、
   粘着剤層(5) を介して剥離性シート(6) が積層されてい
   る請求項１記載のＥＭＩシールド性面状ガスケット。
3. 【請求項３】包被体(3) の布(2) で包被されていない方
   の一対の側面に、弾力性を有する導電性塗膜層(7) が設
   けられている請求項１記載のＥＭＩシールド性面状ガス
   ケット。