JP2587437B2 - 電気接点用Ag−酸化物系複合条材の製造方法 - Google Patents

電気接点用Ag−酸化物系複合条材の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、主に中負荷用電気接点に用いられる電気接
点用Ag−酸化物系複合条材の製造方法に関する。
〔従来の技術〕
従来より、中負荷用電気接点材料として、AgやAg−Ni
あるいはAgにCd,Sb,Sn,ZnあるいはInなどの酸化物を配
した所謂Ag−酸化物系材料がある。
Ag−酸化物系材料は耐溶着性、耐消耗性および接触安
定性等の接点特性が優れているために主に中電流以上の
領域で用いられているが、この接点特性が優れる理由と
しては、AgやAg−Niと比較してアーク電圧・電流が低い
ためアークが発生し易く、このアークによって接点の構
成成分である酸化物等が発揮するため接点表面の清浄化
やアークの吹消効果が向上し、これによって優れた接点
特性が得られるとされている。
このように、Ag−酸化物系材料は、Ag中に5〜20wt%
程度の酸化物を分散させて接点特性を向上させている
が、その反面塑性加工能が著しく低下し、酸化物量の増
加に伴って条材に加工することが困難になる。
また、Ag−酸化物系材料は、Ag中に酸化物が分散して
いるため接点として台材等に溶接することが非常に難し
いもので、これらの理由によって加工性や溶接性に優れ
たAgやAg−Niに比べて条材で多用されないこととなって
いる。
すなわち、Ag中に酸化物を分散させたAg−酸化物系の
粉体、片体、短線あるいは粒体を焼結後加工する場合、
粉体、片体、短線あるいは粒体間の強度が小さいために
引き抜き加工等でワレが発生しやすく、特に酸化物量が
8wt%を超えることの傾向が顕著に現れ、線材や条材等
への加工が極めて難しくなる。
そこでこの粉体や粒体間の強度を増すために、例えば
特開昭54−33207号のようにAg−酸化物系薄片の周囲にA
gに富んだ層を形成する方法がある。
さらに、別の方法として特開昭54−33206号や特開昭5
4−34057号のように内部酸化能を有するAg合金の外周に
Ag層を形成し、加工後内部酸化あるいは内部酸化後に加
工する方法等がある。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかし、上記の従来技術によると、前者は粉体や粒体
の処理が単純ではなくコストが高くなる問題があり、後
者は内部酸化処理後の条材中心部に酸化物の希薄な層が
出現するため接点特性が低下するという問題がある。
〔問題点を解決する為の手段〕
本発明は、Ag中に酸化物を分散させたAg−酸化物系の
粉体、片体、短線あるいは粉体を成形、焼結後、条材に
加工する製造方法において、条材の外周にFeもしくはMn
を0.01〜1.0wt%添加したAg合金を600℃以上の温度で熱
間圧着した後所定の寸法の条材に加工し、しかもその複
合条材断面積に占めるAg合金の面積比率を5〜35%とし
たことを特徴とする。
〔作用〕
以上の構成によると、条材の外周にFeもしくはMnを0.
01〜1.0wt%添加して強化したAg合金を熱間圧着したこ
とにより、Ag−酸化物系の粉体間あるいは片体、短線、
粒体間の強度不足を補って条材への塑性加工能を向上さ
せ、さらにAgの拡張力を増加させると共に過剰な伸びを
制御することによって被覆層が伸び過ぎないように作用
することになる。
そこで、上記した被覆するAg合金のFeもしくはMnの量
を0.01〜1.0wt%に限定した理由は、0.01wt%未満の添
加では拡張力の増加が小さいため、内部基材の補強効果
が不充分であり、1.0wt%を超えるとAgへの固溶が急激
に減じて均質な材料が得られないと共に電気抵抗が高く
なり過ぎることになる為である。
複合条材断面に占めるAg合金の面積比を5〜35%に限
定した理由は、5%未満では被覆層の強度が小さく、引
き抜き加工時の張力に耐え得ずに破断する恐れがある。
また、35%を超えると一般的に使用される条材寸法にお
いて、耐溶着性等の接点特性が劣下することになる。
〔実 施 例〕
以下に本発明の実施例を説明する。
第1実施例 Agを17.8kg、Cdを1.6kg、Sbを0.6kgを高周波炉で溶解
し、溶湯を水アトマイズによって89%Ag−8%Cd−3%
S合金の粉体を得た。
この粉体を700℃で内部酸化させた後、成形・焼結し
て芯材となし、Agに0.1wt%のFeを添加したAg合金製の
筒に充填後、同材質の蓋を溶接した。
なお、筒の厚さは直径φ3mmの線に加工したときに0.1
mm前後となるように設定した。さらにこの複合ビットを
大気中で850℃に加熱し、熱間押し出し機により直径φ1
0mmの棒とした後、焼鈍と引き抜き加工を繰り返して直
径φ3mmの複合線材を得た。
同様の方法によって以下の表にNo.2〜No.9に示すよう
な複合線材を得た。
また、上記したNo.1〜No.9を被覆層を形成しない所謂
従来法で上記と同様の方法で作製したものと加工性およ
びワレの有無を比較して同様に示した。
〔発明の効果〕 以下詳細に説明した本発明によると、Ag−酸化物系材
料を、FeもしくはMnを添加したAg合金の被覆手段で覆っ
たことにより、Ag−酸化物系の粉体間あるいは片体、短
線、粉体間の強度不足を補って条材への塑性加工能を向
上させ、さらにAgの拡張力を増加させると共に伸びを抑
制することによって被覆層が伸び過ぎないように作用す
ることになり、表に示す如く表面のワレが発生せず、加
工性が良好となり、例えば従来法ではNo.2、3、4、8
および9は直径φ6mmの引き抜き加工時に断線し、No.
2、5、6、7は加工可能であるが表面にワレが発生し
ているが、本発明はそのようなことは起こることがな
く、引き抜き加工等の塑性加工能が向上して接点用条材
の製造を容易に行うことができる効果を有する。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Ag中に酸化物を分散させたAg−酸化物系の
    粉体、片体、短線もしくは粒体を成形・焼結した条材に
    加工する電気接点用Ag−酸化物系複合条材の製造方法に
    おいて、Ag−酸化物系素材の外周に0.01〜1wt%のFeま
    たはMnを添加したAg合金を600℃以上の温度で熱間圧着
    後、所定の寸法の条件に加工し、その複合条材の断面に
    占めるAg合金の面積比率を5〜35%としたことを特徴と
    する電気接点用Ag−酸化物系複合条材の製造方法。
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