JP2582457Y2 - アンチスキッドブレーキ装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は自動車等の車両に用いら
れるブレーキ液還流式のアンチスキッドブレーキ装置に
関する。

【０００２】

【従来の技術】ブレーキ液還流式のアンチスキッドブレ
ーキ装置は各種知られているが、中でも、実開平３−２
８７０号公報に示されているように、マスターシリンダ
からホイールシリンダへブレーキ液を供給する主ブレー
キ回路の途中に、マスターシリンダ側液圧とホイールシ
リンダ側液圧との差圧が設定値に達するまでは流路を開
放し、アンチスキッド制御時に該差圧が設定値以上にな
ると流路を絞る流量制御弁を設けて、アンチスキッド制
御時にホイールシリンダ側液圧の上昇勾配を抑制する緩
増圧特性が得られて、液圧を適正値に制御しようとした
ものが知られている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】流量制御弁は前述のよ
うに、マスターシリンダ側液圧とホイールシリンダ側液
圧との差圧が設定値以上となると流路を絞るように作動
するため、アンチスキッド非作動の急増圧時、即ち、急
制動時にあっても、前記差圧が設定値以上になると該流
量制御弁が作動して流路絞りによるオリフィス効果が生
じてしまい、ブレーキの利きがあまくなってしまう。

【０００４】そこで、本考案はアンチスキッド制御時に
オリフィス効果によるホイールシリンダの緩増圧特性が
得られると共に、通常ブレーキの急制動時にあってはマ
スターシリンダ側液圧とホイールシリンダ側液圧との差
圧が設定値以上となっても、流路を解放のままとして急
制動効果を高めることができる流量制御弁を備えたアン
チスキッドブレーキ装置を提供するものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】通常ブレーキ時にマスタ
ーシリンダからホイールシリンダにブレーキ液を供給す
る主ブレーキ回路と、アンチスキッド制御時に前記ホイ
ールシリンダから主ブレーキ回路側にブレーキ液を加
圧，還流させる還流回路とを備えると共に、前記主ブレ
ーキ回路にマスターシリンダ側液圧とホイールシリンダ
側液圧との差圧に応じて作動し、該差圧が設定値に達す
るまでは流路を開放し、該差圧が設定値以上になると流
路を絞る流量制御弁を設けた構造であって、前記流量制
御弁は、シリンダ本体と、シリンダ本体に配設され、か
つ一側部に細径部を備えたピストンと、該ピストンの移
動により流量制御作動される弁部とを備え、かつ、ピス
トンの一側部とシリンダ本体との間にマスターシリンダ
側の液圧がそれぞれ導入される第１液室と第２液室とを
隔成する一方、これら液室を隔成する隔壁に前記ピスト
ンの細径部を貫通させてその先端側を第１液室に臨ま
せ、前記ピストンの他側部とシリンダ本体との間にホイ
ールシリンダ側の液圧が導入される第３液室を隔成し、
該第３液室にスプリングを配設して前記ピストンを第
１，第２液室側へ付勢して成り、前記弁部は、第１液室
を入力室と出力室に隔成する弁座と、前記ピストンの細
径部を挿通させるべく該弁座に形成した孔と、該孔を閉
塞すべく入力室に配設した弁体と、該弁体を前記弁座側
へ付勢するスプリングと、前記弁座の孔周縁に形成した
オリフィス溝とで構成して成り、前記第２液室に連絡す
るマスターシリンダ側の液圧通路にはオリフィスを設け
てある。

【０００６】

【作用】通常ブレーキ時は流量制御弁の第１液室，第２
液室にマスターシリンダ側液圧が作用し、第３液室にホ
イールシリンダ液圧が作用するが、これら第１液室，第
２液室と、第３液室との差圧が設定値未満のため、弁部
は流路を開放状態のままとし、マスターシリンダからの
ブレーキ液がホイールシリンダへ供給される。

【０００７】アンチスキッド制御時には、ホイールシリ
ンダ内のブレーキ液が還流回路に排出されて該ホイール
シリンダが減圧されることにより、第１液室，第２液室
と、第３液室との差圧が設定値以上になると、ピストン
が第３液室側に移動して弁部が流路を絞る方向に作動
し、オリフィス効果を発揮する。

【０００８】通常ブレーキの急制動時にマスターシリン
ダに高い液圧が発生すると、この液圧が高められたブレ
ーキ液の第２液室への導入はオリフィスによって規制さ
れる一方、第１液室へは速やかに導入され、第１液室と
第３液室との差圧が設定値以上となるが、該第１液室に
臨むピストンの受圧面積は十分に小さくしてあるため、
また、第２液室側に設けたオリフィスにより、該ピスト
ンを不動のままとして、マスターシリンダからの高圧の
ブレーキ液を開放された流路を経由してホイールシリン
ダへ供給することができる。

【０００９】

【実施例】以下、本考案の一実施例を図面と共に詳述す
る。

【００１０】図１は１つのホイールシリンダに対するブ
レーキ液回路を例示するもので、１は通常ブレーキ時に
ブレーキペダル２の踏み込み量に応じて液圧を発生する
マスターシリンダ３からホイールシリンダ４にブレーキ
液を供給する主ブレーキ回路、５はアンチスキッド制御
時にホイールシリンダ４のブレーキ液を主ブレーキ回路
１に還流させる還流回路で、これら主ブレーキ回路１と
還流回路５はマスターシリンダ３とホイールシリンダ４
との間に並列に接続してある。

【００１１】６は主ブレーキ回路１に配設した液圧制御
弁としての常開型のインレットバルブ、７は還流回路５
に配設した液圧制御弁としての常閉型のアウトレットバ
ルブで、これらインレットバルブ６，アウトレットバル
ブ７は、何れも図外のコントロールユニットからの制御
信号により、車輪のスキッド状態に応じて開閉制御され
る。

【００１２】還流回路５にはアウトレットバルブ７の排
出側にリザーバ８と液圧ポンプ９とがこの順に配設され
ていると共に、液圧ポンプ９の吐出側の通路にダンパ室
１０が配設され、ホイールシリンダ４からアウトレット
バルブ７を介して排出されたブレーキ液はこのダンパ室
１０を通り、主ブレーキ回路１側に還流するようにして
ある。

【００１３】そして、主ブレーキ回路１と還流回路５と
の合流部１１と、インレットバルブ６との間に流量制御
弁２０を配設してある。

【００１４】この実施例にあっては、ブレーキ解除時に
ホイールシリンダ４からブレーキ液をマスターシリンダ
３へ戻すチェック弁１２をインレットバルブ６と並列に
設けているが、このチェック弁１２は、インレットバル
ブ６，流量制御弁２０をバイパスして設けるようにして
もよい。

【００１５】２１は流量制御弁２０のシリンダ本体で、
該シリンダ本体２１内には一側の開口端部からピストン
２２，液室隔成部材２３，２４を順次挿入，配置して、
第１液室２５，第２液室２６，第３液室２７を隔成して
ある。

【００１６】ピストン２２は第１液室２５に臨む第１受
圧面２８と、第２液室２６に臨む第２受圧面２９と、第
３液室２７に臨む第３受圧面３０とを備えている。第１
受圧面２８は、第２受圧面２９の中心部からピン状に突
出成形され、液室隔成部材２３を貫通して第１液室２５
に突出する細径部２２ａの端面に形成され、該第１受圧
面２８の受圧面積を第２受圧面２９の受圧面積よりも十
分に小さくしてある。

【００１７】また、このピストン２２は第３受圧面３０
に形成したスプリングシート２２ｂと、第３液室２７の
端壁との間に弾装したスプリング３１により一方向に付
勢してある。この実施例では第１受圧面２８と第２受圧
面２９との総合受圧面積と、第３受圧面３０の受圧面積
とを等しくしてある。

【００１８】第１液室２５には、２つのポート３２，３
３を形成してあり、ポート３２をマスターシリンダ３側
に連絡すると共に、ポート３３をインレットバルブ６側
に連絡して、マスターシリンダ３側からのブレーキ液を
この第１液室２５を経由してホイールシリンダへ供給す
るようにしてある。

【００１９】第２液室２６は、ポート３４を形成して、
このポート３４をオリフィス３５を介してマスターシリ
ンダ３側に連絡し、該マスターシリンダ３の液圧が導入
されるようにしてある。

【００２０】一方、第３液室２７はポート３６を形成し
て、該ポート３６よりホイールシリンダ４の液圧が導入
されるようにしてある。

【００２１】そして、前記第１液室２５に、ポート３２
とポート３３との中間部に弁部３７を配設してある。

【００２２】弁部３７は、着座面に弁体着座時に流路を
絞るオリフィス溝３９を形成した弁座３８と、スプリン
グ４１により弁座３８に着座する方向に付勢された球状
の弁体４０とを備え、前記弁座３８をピストン２２の細
径部２２ａの先端部を囲繞する位置に配置して、通常状
態にあっては弁体４０が前記細径部２２ａ端面の第１受
圧面２８に弾接して弁座３８から離間し、流路を開放し
得るようにしてある。

【００２３】図中４２はピストン２２，液室隔成部材２
３，２４の各周側に装着したシール部材、４３はシリン
ダ本体２１の開口端部に螺装したナットを示す。

【００２４】次に以上の実施例装置の作用について説明
する。

【００２５】通常ブレーキ時は、ブレーキペダル２の踏
み込み量に応じてマスターシリンダ３で発生した液圧が
第１液室２５，第２液室２６に作用するが、ホイールシ
リンダ４のブレーキ液は還流回路５側に排出されないた
め、これら第１液室２５，第２液室２６と、第３液室２
７との差圧が設定値以上になることはなく、従って、弁
部３７は流路を開放状態のままとし、マスターシリンダ
３からのブレーキ液を該第１液室２５および開状態にあ
るインレットバルブ６を経由してホイールシリンダ４へ
供給し、該ホイールシリンダ４の内圧を上昇させて速や
かな制動応答性が得られる。

【００２６】アンチスキッド制御時に、アウトレットバ
ルブ７が開弁すると共に液圧ポンプ９が稼動し、ホイー
ルシリンダ４内のブレーキ液が還流回路５に排出され
て、該ホイールシリンダ４が減圧されることにより、第
１液室２５，第２液室２６と、第３液室２７との差圧が
設定値以上になると、ピストン２２がスプリング３１の
ばね力に抗して第３液室２７側に移動し、該ピストン２
２の細径部２２ａ端面の第１受圧面２８が弁部３７の弁
体４０から離間するようになる。これにより、弁体４０
はスプリング４１のばね力により弁座３８に着座し、流
路をオリフィス溝３９の開溝面積に絞ってオリフィス効
果を発揮し、ホイールシリンダ４の緩増圧特性を得るこ
とができる。

【００２７】通常ブレーキの急制動時にマスターシリン
ダ３に高い液圧が発生すると、この高圧のブレーキ液の
第２液室２６への導入はオリフィス３５によって規制さ
れる一方、第１液室２５へは速やかに導入される。この
ため、第１液室２５と第３液室２７との差圧は設定値以
上となるが、該第１液室２５に臨むピストン２２の第１
受圧面２８の受圧面積は十分に小さくしてあるため、ま
た、オリフィス３５が設けられているため、該ピストン
２２を不動のままとして、弁部３７の流路を開放状態に
維持し、マスターシリンダ３からの高圧のブレーキ液を
第１液室２５を通してホイールシリンダ４へ供給するこ
とができ、従って、速やかな急制動応答性を得ることが
できる。

【００２８】

【００２９】

【考案の効果】以上のように本考案によれば、アンチス
キッド制御時には、マスターシリンダ側の液圧とホイー
ルシリンダ側の液圧との差圧を感知して弁部の流路を絞
り、オリフィス効果によるホイールシリンダの緩増圧特
性を得ることができると共に、通常ブレーキの急制動時
には前記差圧が生じてもピストンの移動を抑制し、弁部
の流路を開放のままとして急制動応答性を高めることが
できるという実用上多大な効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示すブレーキ系統図。

【図２】同実施例の弁部の略示的断面図。

【符号の説明】

１…主ブレーキ回路、２…ブレーキペダル、３…マスタ
ーシリンダ、４…ホイールシリンダ、５…還流回路、２
０…流量制御弁、２１…シリンダ本体、２２…ピスト
ン、２５…第１液室、２６…第２液室、２７…第３液
室、３５…オリフィス、３７…弁部。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 通常ブレーキ時にマスターシリンダから
   ホイールシリンダにブレーキ液を供給する主ブレーキ回
   路と、アンチスキッド制御時に前記ホイールシリンダか
   ら主ブレーキ回路側にブレーキ液を加圧，還流させる還
   流回路とを備えると共に、前記主ブレーキ回路にマスタ
   ーシリンダ側液圧とホイールシリンダ側液圧との差圧に
   応じて作動し、該差圧が設定値に達するまでは流路を開
   放し、該差圧が設定値以上になると流路を絞る流量制御
   弁を設けた構造であって、 前記流量制御弁は、シリンダ本体と、シリンダ本体に配
   設され、かつ一側部に細径部を備えたピストンと、該ピ
   ストンの移動により流量制御作動される弁部とを備え、
   かつ、ピストンの一側部とシリンダ本体との間にマスタ
   ーシリンダ側の液圧がそれぞれ導入される第１液室と第
   ２液室とを隔成する一方、これら液室を隔成する隔壁に
   前記ピストンの細径部を貫通させてその先端側を第１液
   室に臨ませ、前記ピストンの他側部とシリンダ本体との
   間にホイールシリンダ側の液圧が導入される第３液室を
   隔成し、該第３液室にスプリングを配設して前記ピスト
   ンを第１，第２液室側へ付勢して成り、前記弁部は、第１液室を入力室と出力室に隔成する弁座
   と、前記ピストンの細径部を挿通させるべく該弁座に形
   成した孔と、該孔を閉塞すべく入力室に配設した弁体
   と、該弁体を前記弁座側へ付勢するスプリングと、前記
   弁座の孔周縁に形成したオリフィス溝とで構成して成
   り 、前記 第２液室に連絡するマスターシリンダ側の液圧通路
   にはオリフィスを設けたことを特徴とするアンチスキッ
   ドブレーキ装置。